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第四章 王宮炎上
第13話 アスターレン王宮炎上(5)
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「リア!?」
叫んだライオットが指差す先に、美女が囚われていた。虹色のボールの中に閉じ込められているのか、彼女が何か叫んでいる声は聞こえない。
「ふーん、お前が原因か?」
黒い魔性が口角を持ち上げる。笑みを浮かべたのではなく――作った。
物騒な雰囲気を纏い、彼は無造作に右手の指をライオットへ向ける。直後、彼の頬に一筋の傷が刻まれた。巻き込まれた髪もいくらか散る。
真空の刃を指先ひとつで操り、ジルは紫の瞳を細めた。無詠唱の魔術ではない。かくあれと願う魔法でもなかった。
魔性たる青年の感情が揺れ、それに精霊が引き摺られて起こした現象だ。
「言い訳を聞いてやろう。彼女を傷つけ、記憶を奪った……その理由を」
淡桃のドレスを纏ったルリアージェが何かを訴える。だが聞き取ったジルは無視して、視線をライオットへ戻した。隣の王太子も、その後ろで震える国王にも興味はない。
人の世界や国、柵は。彼に対し一切意味を持たなかった。
記憶を失ったルリアージェ、その右手を傷つける魔術を行使した理由が知りたいのだ。
まどろっこしい。
かつてのジルならば、過去を読み解く方法を得ていた。過去を記憶した空気を焼いて、炎の中にその映像を取り出す術が使えたのだ。すべての魔力と霊力を解放することが叶わぬ今の身では、届かない高みだった。
それ故の問いかけ。
「……リアを開放してくれ」
ライオットの発言に王太子が息を呑む。護衛の騎士がライオットを引き寄せ、己の身体で庇った。だが、僅かに遅い。
「っ!」
ジルが右手に宿した空間ごと切り裂くような透明の刃が振り下ろされ、護衛の騎士を背中から二つに切り捨てる。断面から血を吹き出す暇すらなく、鮮やかに身体は割れた。そして……庇われたライオット王子の右腕が地に落ちる。
「ぐぁ…ああっ」
叫んだライオットに魔術師が駆け寄る。杖をかざし治癒を施すが、落ちた腕を元に戻すほどの術は使えなかった。すでに王宮の火事を収めるために魔力を使った彼らに、大きな術を使う魔力は残っていない。
ましてや、上級の魔術を使う実力がなかった。魔力が充実していたとしても、彼らの使う術では腕を繋ぐ効果は得られない。
必死で血止めを行う魔術師を横目に、王太子が義弟を庇うように前に立った。慌てて周囲を囲む騎士が決死の覚悟で肉の壁を築く。
「オレは一度しか聞かないぞ?」
苛立ちながらの問いかけを無視されたジルは、くつくつと喉を鳴らして笑う。目の前の惨劇も、殺された人間も、彼にとって価値はない。
叫んだライオットが指差す先に、美女が囚われていた。虹色のボールの中に閉じ込められているのか、彼女が何か叫んでいる声は聞こえない。
「ふーん、お前が原因か?」
黒い魔性が口角を持ち上げる。笑みを浮かべたのではなく――作った。
物騒な雰囲気を纏い、彼は無造作に右手の指をライオットへ向ける。直後、彼の頬に一筋の傷が刻まれた。巻き込まれた髪もいくらか散る。
真空の刃を指先ひとつで操り、ジルは紫の瞳を細めた。無詠唱の魔術ではない。かくあれと願う魔法でもなかった。
魔性たる青年の感情が揺れ、それに精霊が引き摺られて起こした現象だ。
「言い訳を聞いてやろう。彼女を傷つけ、記憶を奪った……その理由を」
淡桃のドレスを纏ったルリアージェが何かを訴える。だが聞き取ったジルは無視して、視線をライオットへ戻した。隣の王太子も、その後ろで震える国王にも興味はない。
人の世界や国、柵は。彼に対し一切意味を持たなかった。
記憶を失ったルリアージェ、その右手を傷つける魔術を行使した理由が知りたいのだ。
まどろっこしい。
かつてのジルならば、過去を読み解く方法を得ていた。過去を記憶した空気を焼いて、炎の中にその映像を取り出す術が使えたのだ。すべての魔力と霊力を解放することが叶わぬ今の身では、届かない高みだった。
それ故の問いかけ。
「……リアを開放してくれ」
ライオットの発言に王太子が息を呑む。護衛の騎士がライオットを引き寄せ、己の身体で庇った。だが、僅かに遅い。
「っ!」
ジルが右手に宿した空間ごと切り裂くような透明の刃が振り下ろされ、護衛の騎士を背中から二つに切り捨てる。断面から血を吹き出す暇すらなく、鮮やかに身体は割れた。そして……庇われたライオット王子の右腕が地に落ちる。
「ぐぁ…ああっ」
叫んだライオットに魔術師が駆け寄る。杖をかざし治癒を施すが、落ちた腕を元に戻すほどの術は使えなかった。すでに王宮の火事を収めるために魔力を使った彼らに、大きな術を使う魔力は残っていない。
ましてや、上級の魔術を使う実力がなかった。魔力が充実していたとしても、彼らの使う術では腕を繋ぐ効果は得られない。
必死で血止めを行う魔術師を横目に、王太子が義弟を庇うように前に立った。慌てて周囲を囲む騎士が決死の覚悟で肉の壁を築く。
「オレは一度しか聞かないぞ?」
苛立ちながらの問いかけを無視されたジルは、くつくつと喉を鳴らして笑う。目の前の惨劇も、殺された人間も、彼にとって価値はない。
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