【完結】帝国滅亡の『大災厄』、飼い始めました

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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第四章 王宮炎上

第14話 帝国の遺産(10)

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「もう……やめてくれ……」

 必死で懇願する緑の魔性に、羽ばたいて顔を寄せたジルが声をかけた。大きく広げた漆黒の翼が、まるで悪魔の手のように彼に影を落とす。

「お前は、そう言われてやめたか?」

 優しい声で、絶望の言葉を……。

 魔性である以上、他者を傷つけた経験はある筈。命乞いをされて、弱者を許し見逃したのか? あるわけがない。強い立場の者が、足元の虫や雑草を踏みつける行為を悔やむか? それもない。

 己の立場に置き換えればわかるだろう。



 目を見開いた少年へ、心底楽し気に笑う。背を滑った黒髪を指先で弄りながら、1/3を血で満たした球体の中へ視線を戻した。

「ほら、また花が咲くぞ」

 新しい花が開き、すぐに萎んで中央の黒い実を落とす。すぐに芽吹いた新たな蔦が、悲鳴を上げて逃げる魔性を貫き、肉体を肉片に変えながら絡んだ。顔も手足も形が分からなくなるほど崩れ、彼らは最後の魔力が尽きるまで植物になぶられる。

 最後の命の一滴まで搾り取り、花はほんのりピンク色に染まった。魔草ラフレアが齎した残酷な饗宴に、ジルの笑みが深くなる。

 愚かにもオレに逆らった魔性は片付けた。彼らの残骸でしかない血と肉片を包んだ結界を、ぎゅっと握った仕草で消滅させる。球体を消した煉瓦の敷石に赤は残されていなかった。

「さて、これで宴は終わりだ。お前解放してやろう」

 目覚めなかったルリアージェの額へ褒美のキスを落とし、無造作に右手を振った。羽虫を払うように軽い動きで、緑の魔性が転送される。ここではない、どこか離れた場所に送られた魔性は安堵するのか、失った仲間に涙するのか。



「残るは――人間か」

 ルリアージェの治癒によって命繋いだ人間たちを見つめ、ジルは眉を顰めた。

 滅ぼしてしまいたい、
 殺したい、
 焼き尽くしたい。

 左腕の中でぐったり身を任せる眠り姫の存在がなければ、きっと思うままにアスターレンを滅ぼした。だが、彼女の存在と記憶の喪失がなければ、この国に見向きもしなかったことも事実だ。

 複雑な感情に眉を寄せたまま、美貌の魔性は視線を左腕の美女に向けた。閉じられた瞼の下の蒼い瞳が無性に見たい。反面、自分を認識しない彼女の眼差しに苛立つだろう。
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