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第七章 風の谷と大地の魔女
第19話 大地の魔女(4)
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「魔王が復活?」
ルリアージェの呟きに、舌打ちしたジルがライラを睨む。まだ知らせるつもりはなかった事実をあっさりバラした大地の魔女は、肩を竦めてジルの視線をかわした。
「隠してもバレるわよ」
「説明しろ、ジル」
長い黒髪の先を掴んで引っ張るルリアージェの仕草に、驚いたライラがジルを見つめる。彼は黒い翼と黒髪を厭っていた。ずっと呪いに近い感情を持って、己の外見を否定してきたのだ。なのにルリアージェが触れることを許している。
封じられた1000年前には想像もできなかったジルの変化に、ライラは好ましさを感じた。きっといい傾向なのだろう、彼にとってルリアージェは救いなのだ。
精霊を使役する神族の血を引く翼ある者は、精霊の子であるライラにとって居心地の良い相手だ。だから彼の声が名を口にした瞬間、召還の意思がないと知りながらも顕現した。魔王に組して己を封じたライラを許さず殺そうとしても仕方ない。そう考えていたのに、彼はあっさりライラを受け入れた。
その変化は、魔性殺しの異名を持つ『死神』に相応しくないかも知れない。ジルの行動を縛り、彼を不利な状況に追い込む原因となる可能性もあった。
だとしても、悪い変化ではないのだ――彼自身にとって。
「あたくしが説明するわ。ジルは神族の母と上級魔性の父を持つ『禁忌の子』なの。アティン帝国全盛の頃にジルはある事情で人間と敵対した。その辺はあとで彼自身が話してくれると思うから、省略するわね」
子供の外見に似合わぬ大人びた気遣いを見せるライラは『ある事情』の詳細を省いた。ほっとした顔で目を伏せたジルに気付かないルリアージェは静かに頷く。
「アティンを滅ぼしたジルは止まらなかった。狂気に身を任せて、世界を滅ぼしかねない力を揮ったのよ。魔性は人間が滅びても気にしないけれど、魔王達には世界を滅ぼしたくない理由があった。だからジルを止めるために、彼らは協力し合ったの。足りない力を補うために、あたくしも協力したわ」
長い三つ編みを弄りながら、ライラは悪びれずに話を続ける。かつての己の行動を一切恥じていないし、後悔もしていない証拠だった。あの時は世界を維持するために、ジルを封じる必要があった。その力を持っている以上、精霊にとって主に等しい翼ある者に逆らうのも仕方ない。
ライラの身勝手な考えではなく、ジルも同様に考えるだろう。敵味方の区別や思考の過程が、人間と他の種族の大きな違いだった。
ルリアージェの呟きに、舌打ちしたジルがライラを睨む。まだ知らせるつもりはなかった事実をあっさりバラした大地の魔女は、肩を竦めてジルの視線をかわした。
「隠してもバレるわよ」
「説明しろ、ジル」
長い黒髪の先を掴んで引っ張るルリアージェの仕草に、驚いたライラがジルを見つめる。彼は黒い翼と黒髪を厭っていた。ずっと呪いに近い感情を持って、己の外見を否定してきたのだ。なのにルリアージェが触れることを許している。
封じられた1000年前には想像もできなかったジルの変化に、ライラは好ましさを感じた。きっといい傾向なのだろう、彼にとってルリアージェは救いなのだ。
精霊を使役する神族の血を引く翼ある者は、精霊の子であるライラにとって居心地の良い相手だ。だから彼の声が名を口にした瞬間、召還の意思がないと知りながらも顕現した。魔王に組して己を封じたライラを許さず殺そうとしても仕方ない。そう考えていたのに、彼はあっさりライラを受け入れた。
その変化は、魔性殺しの異名を持つ『死神』に相応しくないかも知れない。ジルの行動を縛り、彼を不利な状況に追い込む原因となる可能性もあった。
だとしても、悪い変化ではないのだ――彼自身にとって。
「あたくしが説明するわ。ジルは神族の母と上級魔性の父を持つ『禁忌の子』なの。アティン帝国全盛の頃にジルはある事情で人間と敵対した。その辺はあとで彼自身が話してくれると思うから、省略するわね」
子供の外見に似合わぬ大人びた気遣いを見せるライラは『ある事情』の詳細を省いた。ほっとした顔で目を伏せたジルに気付かないルリアージェは静かに頷く。
「アティンを滅ぼしたジルは止まらなかった。狂気に身を任せて、世界を滅ぼしかねない力を揮ったのよ。魔性は人間が滅びても気にしないけれど、魔王達には世界を滅ぼしたくない理由があった。だからジルを止めるために、彼らは協力し合ったの。足りない力を補うために、あたくしも協力したわ」
長い三つ編みを弄りながら、ライラは悪びれずに話を続ける。かつての己の行動を一切恥じていないし、後悔もしていない証拠だった。あの時は世界を維持するために、ジルを封じる必要があった。その力を持っている以上、精霊にとって主に等しい翼ある者に逆らうのも仕方ない。
ライラの身勝手な考えではなく、ジルも同様に考えるだろう。敵味方の区別や思考の過程が、人間と他の種族の大きな違いだった。
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