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第七章 風の谷と大地の魔女
第19話 大地の魔女(5)
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「魔王達の思惑とあたくしの想いが一致した結果、ジルは封じられた。あのときの貴方、途中で手を抜いたものね」
くすくす笑いながら、ライラはくるんと手の中で茶色の三つ編みをまわす。
「ジルを封じた時にトラブルが起きたの。ありていに言えば呪いみたいなものよ。大きすぎる力を揮った代償として、魔王は全員が深い眠りについた。目覚めの鍵はジルの解放――つまり、これから彼らが目覚めるというわけ。あたくしも巻き込まれて力の大半を封じられて、しばらく身を隠す破目に陥ったわ」
肩を竦める仕草は大人そのものだ。子供の外見との違和感が大きい。
「ジルが解放されれば、魔王の眠りも解ける。だから魔性達の動きが活発になっているわ」
そこから先は言われずとも分かった。彼らが活発に活動する理由は、ジルへの攻撃だ。魔王が目覚めるときの手土産として、敵対者の消滅を報告したいのだろう。配下の暴走を止める者が不在ならば、己の能力で撃退するしかない。
「つまり、襲撃はしばらく続くのだな?」
「……リアったら、王族みたいな言葉を使うのね」
何気ないライラの指摘に、わずかに笑みを濁らせたジルに気付いた存在はいない。ライラも深い意味のある指摘ではなかったらしく、そのまま話を流してしまった。
「そう、しばらく襲われるわ。でも安心して? あたくしがリアを護るわ」
「それはオレの役目だ。手を出すな」
「あら、あたくしの実力は知っているでしょう? まだ封印が残っている貴方より、解放されたあたくしの方が強いわよ」
ライラがまたもや爆弾を投下する。基本的に自由なのか、身勝手なのか。彼女は相手の立場や心境を思いやる前に暴露する癖があるようだ
「確かにすべてを解放していないが、残念ながら拮抗するレベルの力は使える」
霊力と魔力を合わせれば、全力のライラ相手でも勝てる自信があった。だから彼女が仲間になると言い出したときに反対しなかったのだ。脅威になる存在ならば、身のうちに危険分子を取り入れるような真似は許さない。
ぶわっと強い風が彼らの間を駆け抜けた。咄嗟に結界を張ったジルが、ルリアージェの腰に手を回して引き寄せる。無視されたライラが頬を膨らませて、腰に手を当てた。怒っているぞと全身で示すが、抗議するより先に風の刃が飛んでくる。
ヒュ! 乾いた音で刃が通り過ぎ、ライラの三つ編みの先を少し落とした。はらはら散る茶色の髪を見送ったライラが、三つ編みの穂先を握る。すっぱり切り落とされた痕跡に、少女の表情が強張った。
「ちょっと……誰に刃を向けてるの? 貴方、殺すわよ!」
くすくす笑いながら、ライラはくるんと手の中で茶色の三つ編みをまわす。
「ジルを封じた時にトラブルが起きたの。ありていに言えば呪いみたいなものよ。大きすぎる力を揮った代償として、魔王は全員が深い眠りについた。目覚めの鍵はジルの解放――つまり、これから彼らが目覚めるというわけ。あたくしも巻き込まれて力の大半を封じられて、しばらく身を隠す破目に陥ったわ」
肩を竦める仕草は大人そのものだ。子供の外見との違和感が大きい。
「ジルが解放されれば、魔王の眠りも解ける。だから魔性達の動きが活発になっているわ」
そこから先は言われずとも分かった。彼らが活発に活動する理由は、ジルへの攻撃だ。魔王が目覚めるときの手土産として、敵対者の消滅を報告したいのだろう。配下の暴走を止める者が不在ならば、己の能力で撃退するしかない。
「つまり、襲撃はしばらく続くのだな?」
「……リアったら、王族みたいな言葉を使うのね」
何気ないライラの指摘に、わずかに笑みを濁らせたジルに気付いた存在はいない。ライラも深い意味のある指摘ではなかったらしく、そのまま話を流してしまった。
「そう、しばらく襲われるわ。でも安心して? あたくしがリアを護るわ」
「それはオレの役目だ。手を出すな」
「あら、あたくしの実力は知っているでしょう? まだ封印が残っている貴方より、解放されたあたくしの方が強いわよ」
ライラがまたもや爆弾を投下する。基本的に自由なのか、身勝手なのか。彼女は相手の立場や心境を思いやる前に暴露する癖があるようだ
「確かにすべてを解放していないが、残念ながら拮抗するレベルの力は使える」
霊力と魔力を合わせれば、全力のライラ相手でも勝てる自信があった。だから彼女が仲間になると言い出したときに反対しなかったのだ。脅威になる存在ならば、身のうちに危険分子を取り入れるような真似は許さない。
ぶわっと強い風が彼らの間を駆け抜けた。咄嗟に結界を張ったジルが、ルリアージェの腰に手を回して引き寄せる。無視されたライラが頬を膨らませて、腰に手を当てた。怒っているぞと全身で示すが、抗議するより先に風の刃が飛んでくる。
ヒュ! 乾いた音で刃が通り過ぎ、ライラの三つ編みの先を少し落とした。はらはら散る茶色の髪を見送ったライラが、三つ編みの穂先を握る。すっぱり切り落とされた痕跡に、少女の表情が強張った。
「ちょっと……誰に刃を向けてるの? 貴方、殺すわよ!」
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