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第十二章 死神の城
第32話 呼ばなくても現れる客(3)
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トルカーネにとって配下と呼ぶレベルに到達していない。擁護するフリをしてばっさり切り捨てたライラは、挑発するように周囲に複数の魔法陣を描いた。理解して解除する能力がない魔物にとって、魔法陣は恐怖の対象でしかない。
格の違いを見せ付ける少女は、目の前に現れた魔法陣に眉を顰めた。鮮やかな赤を纏った魔法陣は転移用だが、ジルの城がある空間に直接転移してくる強者に嫌な予感がする。
「いやだ、マリニスじゃない」
真っ赤な髪と瞳の青年に舌打ちする。転移魔法陣から姿を現した少年は、きっちりと髪を後ろでひとつに括っていた。切れ目がちのキツい印象の瞳がライラに向くと、驚いたように少し見開かれた。
「大地の魔女ライラか」
なぜここにと問う必要はない。彼らにとって味方も敵も同じようなものだ。共同戦線を張ったとしても、気分次第でどちらにも転ぶのが魔性の性格だった。
「ジフィールに挨拶に寄ったのだが、奴はどこだ?」
「城の中で美女と一緒よ。今は来ないわ」
間違っていないが、随分荒っぽい説明だった。ライラの言葉が終わった直後、マリニスは長袍の袖から刀を引き抜く。実際に袖の中に隠されていたのではなく、ジルの亜空間に似た空間から引き出したのだろう。三日月のような形に反った刀の先は大きく二つに割れていた。
かつてジルと戦った際も、マリニスはこの龍刀と呼ぶ武器を愛用した。良く見れば、名の通り龍と呼ばれる架空の生物が刀身に彫刻されている。
「ならば、呼び出すまで」
「させるわけないでしょう!」
マリニスが振るった龍刀から炎が城を切りつけ、間に飛び出したリシュアが水の盾で防いだ。一瞬で水の盾が沸騰し、水蒸気爆発を起こす。爆音と衝撃に巻き込まれた魔物が吹き飛んだ。
「…リシュア、もう少し考えなさいよ。風で防げばよかったのに」
高温の蒸気が立ち込める中、ライラは文句を言いながら長い髪を引き寄せた。蒸気のせいで髪が丸まって巻き毛のようになっている。唇を尖らせて抗議する少女の隣で、リシュアは申し訳なさそうに眉尻をさげた。
「すみません、次は氷にしますね」
「なぁんだ。まだ遊んでるのか? 煩すぎだ」
空中に現れた魔法陣からジルが現れる。高温の蒸気に舌打ちして、翼を広げた。途端に涼しい風が生まれて蒸気を押し流す。空間に満たした霊力が翼もつ者の願いに反応した形だった。願うだけでいい。魔力も魔法陣も必要なかった。
「さてと……マリ……なんだっけ? まあいいや、呼ばれてないのに顔出しやがって…迷惑だ」
「貴様、俺を愚弄するか!」
「やだ、ジルったらお茶目さんね」
笑い出したライラと怒るマリニス、リシュアは考えの読めない仮面のような笑みを貼り付けている。どちらにも味方しないあたり、賢い処世術かもしれない。
城を維持するために作り出した空間を見回し、魔物だらけの状況に溜め息を吐いた。何もない空中に浮かんだ城の下は、奈落のようで先が見えない。すでに落ちた魔物を数えるように目をこらしたジルが舌打ちした。
「せっかく整えたお気に入りの場所だぞ。ゴミを捨てるな」
敗れて落ちた魔物から立ち上る魔力を風で巻き上げて、右手で器用に操る。左手に浮かべた魔法陣へと吸い込ませて、魔力の竜巻を消した。
「これでよし」
簡単そうに行われた”片付け”の非常識さに、マリニスは目を瞠り、ライラとリシュアは顔を見合わせた。
格の違いを見せ付ける少女は、目の前に現れた魔法陣に眉を顰めた。鮮やかな赤を纏った魔法陣は転移用だが、ジルの城がある空間に直接転移してくる強者に嫌な予感がする。
「いやだ、マリニスじゃない」
真っ赤な髪と瞳の青年に舌打ちする。転移魔法陣から姿を現した少年は、きっちりと髪を後ろでひとつに括っていた。切れ目がちのキツい印象の瞳がライラに向くと、驚いたように少し見開かれた。
「大地の魔女ライラか」
なぜここにと問う必要はない。彼らにとって味方も敵も同じようなものだ。共同戦線を張ったとしても、気分次第でどちらにも転ぶのが魔性の性格だった。
「ジフィールに挨拶に寄ったのだが、奴はどこだ?」
「城の中で美女と一緒よ。今は来ないわ」
間違っていないが、随分荒っぽい説明だった。ライラの言葉が終わった直後、マリニスは長袍の袖から刀を引き抜く。実際に袖の中に隠されていたのではなく、ジルの亜空間に似た空間から引き出したのだろう。三日月のような形に反った刀の先は大きく二つに割れていた。
かつてジルと戦った際も、マリニスはこの龍刀と呼ぶ武器を愛用した。良く見れば、名の通り龍と呼ばれる架空の生物が刀身に彫刻されている。
「ならば、呼び出すまで」
「させるわけないでしょう!」
マリニスが振るった龍刀から炎が城を切りつけ、間に飛び出したリシュアが水の盾で防いだ。一瞬で水の盾が沸騰し、水蒸気爆発を起こす。爆音と衝撃に巻き込まれた魔物が吹き飛んだ。
「…リシュア、もう少し考えなさいよ。風で防げばよかったのに」
高温の蒸気が立ち込める中、ライラは文句を言いながら長い髪を引き寄せた。蒸気のせいで髪が丸まって巻き毛のようになっている。唇を尖らせて抗議する少女の隣で、リシュアは申し訳なさそうに眉尻をさげた。
「すみません、次は氷にしますね」
「なぁんだ。まだ遊んでるのか? 煩すぎだ」
空中に現れた魔法陣からジルが現れる。高温の蒸気に舌打ちして、翼を広げた。途端に涼しい風が生まれて蒸気を押し流す。空間に満たした霊力が翼もつ者の願いに反応した形だった。願うだけでいい。魔力も魔法陣も必要なかった。
「さてと……マリ……なんだっけ? まあいいや、呼ばれてないのに顔出しやがって…迷惑だ」
「貴様、俺を愚弄するか!」
「やだ、ジルったらお茶目さんね」
笑い出したライラと怒るマリニス、リシュアは考えの読めない仮面のような笑みを貼り付けている。どちらにも味方しないあたり、賢い処世術かもしれない。
城を維持するために作り出した空間を見回し、魔物だらけの状況に溜め息を吐いた。何もない空中に浮かんだ城の下は、奈落のようで先が見えない。すでに落ちた魔物を数えるように目をこらしたジルが舌打ちした。
「せっかく整えたお気に入りの場所だぞ。ゴミを捨てるな」
敗れて落ちた魔物から立ち上る魔力を風で巻き上げて、右手で器用に操る。左手に浮かべた魔法陣へと吸い込ませて、魔力の竜巻を消した。
「これでよし」
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