198 / 386
第十四章 リュジアン
第43話 氷の大地(1)
しおりを挟む
凍りついた一面の大地を前に、ルリアージェは言葉がなかった。真っ白な景色は物の凹凸がわからなくなるのだと、驚きながら純白の景色を見渡す。吹雪いているため、ジルの結界が彼女を包んでいた。
風船の中にいるような状況なので、寒さはほとんど感じない。城を出る前にしっかり防寒用のコートを着込み、帽子を被り、手袋を付けられた。大げさだと笑った少し前の自分に、足りないくらいだと教えてやりたい。
「すごい、な」
「だろ? だからもう少し毛皮を羽織ったほうがいいと思う」
「そうね。リアの格好は寒そうだわ」
毛皮の固まりかと疑うほどライラは着膨れている。寒いのが苦手らしい。温度を操ることが得意なリオネルはスマートにコートを羽織った程度で、周囲を魔力で覆っていた。薄い膜のように見える魔力が寒さを遮断するようだ。
パウリーネは首筋に狐らしき毛皮を巻いて、真っ白な毛皮を羽織っていた。コートというより手足もすっぽり覆うローブに近い形だ。足元まで届くポンチョに近い。リシュアは人間として振舞った頃の名残なのか、帽子や手袋を含めしっかりコートやブーツで覆って素肌をほとんど見せなかった。
「そうか?」
「この結界を出ると寒いから、首にはこれ。あと……耳当ても欲しいかな」
ピアスがあると危険だと、装飾品はほとんど身につけていない。毛皮やコートの下に隠れる指輪とネックレスだけ残し、ピアスも髪飾りも外していた。手袋とお揃いのブルーグレーの毛皮で作られた、マフラーや耳当てをジルが取り出す。
「お前も寒そうだぞ」
「うーん、オレはあまり寒さとか暑さとか感じないからな」
そう呟くが、さすがにリオネルのような薄着ではない。黒に近い濃グレーのコートを羽織り、同色の手袋と帽子を身に着けていた。黒髪を珍しく短くしている。魔族の身体は魔力の塊ともいえるので、ある程度爪や髪の長さは調整が可能なのだ。
「さすがにその格好では、旅行者として通用しませんよ」
リシュアの指摘に、防寒しすぎのライラ以外は考え込んだ。
「結界を張った馬車は?」
「そんなの、王侯貴族くらいしか利用しませんので目立ちます」
パウリーネの提案は、あっさりリシュアに却下された。確かに王侯貴族並みの装備を整えた旅行者は目立ちすぎるだろう。
冷たい風が吹いている外を見ながら、ルリアージェは初めての雪景色に見惚れていた。こうして実害がなければ、ずっと見ていられそうな気がした。南の鮮やかな風景とは真逆の、白しかない景色は眩しい。
「普通の旅行者はどうするのよ」
素直に尋ねるライラへ、リシュアが眉をひそめて考え込む。彼も王族だったため、一般人の旅行支度に詳しくない。ある意味、世間知らずばかりだった。6人もいて、誰も普通の人族の生活を知らないのだ。
風船の中にいるような状況なので、寒さはほとんど感じない。城を出る前にしっかり防寒用のコートを着込み、帽子を被り、手袋を付けられた。大げさだと笑った少し前の自分に、足りないくらいだと教えてやりたい。
「すごい、な」
「だろ? だからもう少し毛皮を羽織ったほうがいいと思う」
「そうね。リアの格好は寒そうだわ」
毛皮の固まりかと疑うほどライラは着膨れている。寒いのが苦手らしい。温度を操ることが得意なリオネルはスマートにコートを羽織った程度で、周囲を魔力で覆っていた。薄い膜のように見える魔力が寒さを遮断するようだ。
パウリーネは首筋に狐らしき毛皮を巻いて、真っ白な毛皮を羽織っていた。コートというより手足もすっぽり覆うローブに近い形だ。足元まで届くポンチョに近い。リシュアは人間として振舞った頃の名残なのか、帽子や手袋を含めしっかりコートやブーツで覆って素肌をほとんど見せなかった。
「そうか?」
「この結界を出ると寒いから、首にはこれ。あと……耳当ても欲しいかな」
ピアスがあると危険だと、装飾品はほとんど身につけていない。毛皮やコートの下に隠れる指輪とネックレスだけ残し、ピアスも髪飾りも外していた。手袋とお揃いのブルーグレーの毛皮で作られた、マフラーや耳当てをジルが取り出す。
「お前も寒そうだぞ」
「うーん、オレはあまり寒さとか暑さとか感じないからな」
そう呟くが、さすがにリオネルのような薄着ではない。黒に近い濃グレーのコートを羽織り、同色の手袋と帽子を身に着けていた。黒髪を珍しく短くしている。魔族の身体は魔力の塊ともいえるので、ある程度爪や髪の長さは調整が可能なのだ。
「さすがにその格好では、旅行者として通用しませんよ」
リシュアの指摘に、防寒しすぎのライラ以外は考え込んだ。
「結界を張った馬車は?」
「そんなの、王侯貴族くらいしか利用しませんので目立ちます」
パウリーネの提案は、あっさりリシュアに却下された。確かに王侯貴族並みの装備を整えた旅行者は目立ちすぎるだろう。
冷たい風が吹いている外を見ながら、ルリアージェは初めての雪景色に見惚れていた。こうして実害がなければ、ずっと見ていられそうな気がした。南の鮮やかな風景とは真逆の、白しかない景色は眩しい。
「普通の旅行者はどうするのよ」
素直に尋ねるライラへ、リシュアが眉をひそめて考え込む。彼も王族だったため、一般人の旅行支度に詳しくない。ある意味、世間知らずばかりだった。6人もいて、誰も普通の人族の生活を知らないのだ。
0
あなたにおすすめの小説
【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる
三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。
こんなはずじゃなかった!
異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。
珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に!
やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活!
右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり!
アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。
処刑前夜に逃亡した悪役令嬢、五年後に氷の公爵様に捕まる〜冷徹旦那様が溺愛パパに豹変しましたが私の抱いている赤ちゃん実は人生2周目です〜
放浪人
恋愛
「処刑されるなんて真っ平ごめんです!」 無実の罪で投獄された悪役令嬢レティシア(中身は元社畜のアラサー日本人)は、処刑前夜、お腹の子供と共に脱獄し、辺境の田舎村へ逃亡した。 それから五年。薬師として穏やかに暮らしていた彼女のもとに、かつて自分を冷遇し、処刑を命じた夫――「氷の公爵」アレクセイが現れる。 殺される!と震えるレティシアだったが、再会した彼は地面に頭を擦り付け、まさかの溺愛キャラに豹変していて!?
「愛しているレティシア! 二度と離さない!」 「(顔が怖いです公爵様……!)」
不器用すぎて顔が怖い旦那様の暴走する溺愛。 そして、二人の息子であるシオン(1歳)は、実は前世で魔王を倒した「英雄」の生まれ変わりだった! 「パパとママは僕が守る(物理)」 最強の赤ちゃんが裏で暗躍し、聖女(自称)の陰謀も、帝国の侵略も、古代兵器も、ガラガラ一振りで粉砕していく。
無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました
結城芙由奈@コミカライズ連載中
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから――
※ 他サイトでも投稿中
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
99歳で亡くなり異世界に転生した老人は7歳の子供に生まれ変わり、召喚魔法でドラゴンや前世の世界の物を召喚して世界を変える
ハーフのクロエ
ファンタジー
夫が病気で長期入院したので夫が途中まで書いていた小説を私なりに書き直して完結まで投稿しますので応援よろしくお願いいたします。
主人公は建築会社を55歳で取り締まり役常務をしていたが惜しげもなく早期退職し田舎で大好きな農業をしていた。99歳で亡くなった老人は前世の記憶を持ったまま7歳の少年マリュウスとして異世界の僻地の男爵家に生まれ変わる。10歳の鑑定の儀で、火、水、風、土、木の5大魔法ではなく、この世界で初めての召喚魔法を授かる。最初に召喚出来たのは弱いスライム、モグラ魔獣でマリウスはガッカリしたが優しい家族に見守られ次第に色んな魔獣や地球の、物などを召喚出来るようになり、僻地の男爵家を発展させ気が付けば大陸一豊かで最強の小さい王国を起こしていた。
【完結】辺境に飛ばされた子爵令嬢、前世の経営知識で大商会を作ったら王都がひれ伏したし、隣国のハイスペ王子とも結婚できました
いっぺいちゃん
ファンタジー
婚約破棄、そして辺境送り――。
子爵令嬢マリエールの運命は、結婚式直前に無惨にも断ち切られた。
「辺境の館で余生を送れ。もうお前は必要ない」
冷酷に告げた婚約者により、社交界から追放された彼女。
しかし、マリエールには秘密があった。
――前世の彼女は、一流企業で辣腕を振るった経営コンサルタント。
未開拓の農産物、眠る鉱山資源、誠実で働き者の人々。
「必要ない」と切り捨てられた辺境には、未来を切り拓く力があった。
物流網を整え、作物をブランド化し、やがて「大商会」を設立!
数年で辺境は“商業帝国”と呼ばれるまでに発展していく。
さらに隣国の完璧王子から熱烈な求婚を受け、愛も手に入れるマリエール。
一方で、税収激減に苦しむ王都は彼女に救いを求めて――
「必要ないとおっしゃったのは、そちらでしょう?」
これは、追放令嬢が“経営知識”で国を動かし、
ざまぁと恋と繁栄を手に入れる逆転サクセスストーリー!
※表紙のイラストは画像生成AIによって作られたものです。
実は家事万能な伯爵令嬢、婚約破棄されても全く問題ありません ~追放された先で洗濯した男は、伝説の天使様でした~
空色蜻蛉
恋愛
「令嬢であるお前は、身の周りのことは従者なしに何もできまい」
氷薔薇姫の異名で知られるネーヴェは、王子に婚約破棄され、辺境の地モンタルチーノに追放された。
「私が何も出来ない箱入り娘だと、勘違いしているのね。私から見れば、聖女様の方がよっぽど箱入りだけど」
ネーヴェは自分で屋敷を掃除したり美味しい料理を作ったり、自由な生活を満喫する。
成り行きで、葡萄畑作りで泥だらけになっている男と仲良くなるが、実は彼の正体は伝説の・・であった。
【完結】剣聖と聖女の娘はのんびりと(?)後宮暮らしを楽しむ
O.T.I
ファンタジー
かつて王国騎士団にその人ありと言われた剣聖ジスタルは、とある事件をきっかけに引退して辺境の地に引き籠もってしまった。
それから時が過ぎ……彼の娘エステルは、かつての剣聖ジスタルをも超える剣の腕を持つ美少女だと、辺境の村々で噂になっていた。
ある時、その噂を聞きつけた辺境伯領主に呼び出されたエステル。
彼女の実力を目の当たりにした領主は、彼女に王国の騎士にならないか?と誘いかける。
剣術一筋だった彼女は、まだ見ぬ強者との出会いを夢見てそれを了承するのだった。
そして彼女は王都に向かい、騎士となるための試験を受けるはずだったのだが……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる