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第十四章 リュジアン
第43話 氷の大地(2)
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「すこし手前の町に戻って、旅行者として入国し直すか」
ジルの提案が一番現実的に思われた。氷の大地は一度見たのだし、観光の目的のひとつは終わりだ。しかし本命が雪祭りなのだから、他の観光客と一緒に乗合馬車で移動すれば目立たない。もっともな意見に、パウリーネが難色を示した。
「私達が目立たないわけがありませんわ」
「あたくしも、そう思うけれど……ほかに案がないのよね」
ライラもどこか渋い顔をしている。ルリアージェがこてんと首をかしげて見回し、すぐに納得した。やたらと美形が多い。種類の違う3人の美形、美女、狐尻尾の少女、自分……誘拐やら勧誘が引けを切らない集まりだろう。彼らが巻き込まれた場合、騒動は大きくなって目立つのは必然だった。
下手すれば関係者以外の馬車ごと消されかねない。
「王侯貴族は自前の馬車なのでしょう? だったら貴族のフリをすればいいわ」
パウリーネの提案は目から鱗だった。ぱちくり瞬きしたルリアージェにとっても、非常に有用な案のような気がしたし、ライラは「そうね」と賛同しかけている。
「サークレラの貴族って名乗ればバレないだろ」
ジルは無責任に、リシュアに話を振る。元サークレラ国王だった彼が頷けば、この話は決まるだろう。そして主至上主義のリシュアがジルの提案を断るわけもなく……。
「サークレラの公爵家にしましょうか」
にっこり笑ったリシュアの言葉が決定打となり、目立つ集団はサークレラ国の公爵家ご一行様として国境付近まで戻ることとなった。
国境の町ハシエラに転移で戻った彼らは、ひとまず大きな屋敷に陣取った。リシュア曰く、かつての公爵家の別宅らしい。現在のサークレラ国の公爵家は2つ。それを3つに変更してくると言い残して消えてしまった。
「大丈夫だろうか」
「国王だから平気だろ」
ジルはけろりと言い放ったが、ルリアージェが心配するのは「無事に公爵家を増やせるか」ではなく「騒動を起こさずに彼が戻ってくるか」なのだが、気付いていない。
「リシュアは魅了があるから、簡単に情報を書き換えて戻るわ。ついでだから今後も肩書きとして利用すればいいのよ。そうしたらリアが追われることはなくなるもの」
「追われているのですか?」
何も知らないパウリーネが首をかしげる。そこで彼女への説明が中途半端なことに気付いた。様々な来客騒動で忘れていたとも言う。
ジルの提案が一番現実的に思われた。氷の大地は一度見たのだし、観光の目的のひとつは終わりだ。しかし本命が雪祭りなのだから、他の観光客と一緒に乗合馬車で移動すれば目立たない。もっともな意見に、パウリーネが難色を示した。
「私達が目立たないわけがありませんわ」
「あたくしも、そう思うけれど……ほかに案がないのよね」
ライラもどこか渋い顔をしている。ルリアージェがこてんと首をかしげて見回し、すぐに納得した。やたらと美形が多い。種類の違う3人の美形、美女、狐尻尾の少女、自分……誘拐やら勧誘が引けを切らない集まりだろう。彼らが巻き込まれた場合、騒動は大きくなって目立つのは必然だった。
下手すれば関係者以外の馬車ごと消されかねない。
「王侯貴族は自前の馬車なのでしょう? だったら貴族のフリをすればいいわ」
パウリーネの提案は目から鱗だった。ぱちくり瞬きしたルリアージェにとっても、非常に有用な案のような気がしたし、ライラは「そうね」と賛同しかけている。
「サークレラの貴族って名乗ればバレないだろ」
ジルは無責任に、リシュアに話を振る。元サークレラ国王だった彼が頷けば、この話は決まるだろう。そして主至上主義のリシュアがジルの提案を断るわけもなく……。
「サークレラの公爵家にしましょうか」
にっこり笑ったリシュアの言葉が決定打となり、目立つ集団はサークレラ国の公爵家ご一行様として国境付近まで戻ることとなった。
国境の町ハシエラに転移で戻った彼らは、ひとまず大きな屋敷に陣取った。リシュア曰く、かつての公爵家の別宅らしい。現在のサークレラ国の公爵家は2つ。それを3つに変更してくると言い残して消えてしまった。
「大丈夫だろうか」
「国王だから平気だろ」
ジルはけろりと言い放ったが、ルリアージェが心配するのは「無事に公爵家を増やせるか」ではなく「騒動を起こさずに彼が戻ってくるか」なのだが、気付いていない。
「リシュアは魅了があるから、簡単に情報を書き換えて戻るわ。ついでだから今後も肩書きとして利用すればいいのよ。そうしたらリアが追われることはなくなるもの」
「追われているのですか?」
何も知らないパウリーネが首をかしげる。そこで彼女への説明が中途半端なことに気付いた。様々な来客騒動で忘れていたとも言う。
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