12 / 321
11.明日もいてくれるといいな
しおりを挟む
食べている間に「猫舌」とは熱いご飯でケガする人だと教えてもらった。わかったと頷けば、いい子だと頭を撫でてもらえる。これも新しく覚えた。あとはキスの時に舌の上のひりひりも治してもらったこと。冷ました食べ物は痛くないことも知った。僕はいままで冷たい食べ物しか知らなかったから、驚いたんだ。
ゆっくり噛み締める肉は、顎が疲れる。温かいのより、もっと熱い感じで噛むと汁が出た。こんな食べ物初めてだ。たまにスープに入ってた塊より、ずっと大きかった。
「ん……もしかして固形物はダメか」
いつまでも口を動かして飲み込めない僕の姿に、セティが困ったような顔をする。眉の外側がへたりと垂れて、なんだか悪いことをした気分だ。慌ててごくんと飲み込んだ。まだ味がするからもったいなかったけど、セティにそんな顔させたくない。
「この大きさならいいかな」
小さく小さく、セティが食べ物を分ける。スプーンやフォークという道具を両手に持たされたけど、一度も使ってなかった。これでセティみたいに食べ物を切ったり刺したりして食べるのは、まだ難しい。あーんの合図で口を開けると、今度はすぐに噛み終わった。
食べ物がばらばらになったら飲み込む。ゆっくり時間をかけて食べる間に、セティは皿に残った食べ物を自分の口に放り込んだ。僕も上手になったら、あーんをしよう。僕が嬉しくなることは、セティも喜んでくれるから。
いつもよりたくさん食べたから、すぐに眠くなった。ごしごしと目元を擦ると、慌てたセティがスプーンやフォークを片付ける。僕の手から取られた銀の道具は机に置かれた。こうしてみると、きらきらして綺麗だな。ぼんやり眺めていると、セティに抱っこされる。
「さっきの部屋で寝よう。疲れただろ」
僕は歩いてないし、食べ物で顎が痛いくらいで何もしてない。なのに、すごく眠かった。疲れるって、眠くなること……かも。セティが何か言って立ち上がる。聞いたことがない言葉だ。さっき食べ物やお水を持ってきてくれた甲高い声の人も、知らない言葉だった。
ベッドのある部屋に戻って、僕は無意識に足首に手をやった。長さが足りないと転んじゃう。たまに短いまま忘れられることがあって……触った足首に何もないので目で確かめる。ああ、そうか。セティが取ってくれたんだ。ほわりと顔が崩れて、そのままベッドに横になった。
明日もセティがいてくれるといいな。
夜中に怖くなって目を開く。外から明かりが入っていて、僕はそちらを見た。知らない場所……どうしよう。ベッドを降りようとした腰に、手が絡みついて引き戻された。
「……どうした? 便所か」
セティの声に、怖さが消えていく。なんだ、ここにいたんだ。僕の後ろにいたんだね。くるりと反対を向いてぎゅっと抱き着いた。手を叩かれたり喚かれることはなくて、温かい毛布に包まれて腕に引き寄せられて目を閉じる。
よかった。僕まだ1人になってない。お気に入りの毛布を鼻先に持ってくると、いつもの匂いがして落ち着いた。セティは朝までいてくれる――そう思ったらまた眠くなる。怖いのも、セティがいれば平気。そう思ったのが最後で、僕はなんだか温かい夢を見た。
ゆっくり噛み締める肉は、顎が疲れる。温かいのより、もっと熱い感じで噛むと汁が出た。こんな食べ物初めてだ。たまにスープに入ってた塊より、ずっと大きかった。
「ん……もしかして固形物はダメか」
いつまでも口を動かして飲み込めない僕の姿に、セティが困ったような顔をする。眉の外側がへたりと垂れて、なんだか悪いことをした気分だ。慌ててごくんと飲み込んだ。まだ味がするからもったいなかったけど、セティにそんな顔させたくない。
「この大きさならいいかな」
小さく小さく、セティが食べ物を分ける。スプーンやフォークという道具を両手に持たされたけど、一度も使ってなかった。これでセティみたいに食べ物を切ったり刺したりして食べるのは、まだ難しい。あーんの合図で口を開けると、今度はすぐに噛み終わった。
食べ物がばらばらになったら飲み込む。ゆっくり時間をかけて食べる間に、セティは皿に残った食べ物を自分の口に放り込んだ。僕も上手になったら、あーんをしよう。僕が嬉しくなることは、セティも喜んでくれるから。
いつもよりたくさん食べたから、すぐに眠くなった。ごしごしと目元を擦ると、慌てたセティがスプーンやフォークを片付ける。僕の手から取られた銀の道具は机に置かれた。こうしてみると、きらきらして綺麗だな。ぼんやり眺めていると、セティに抱っこされる。
「さっきの部屋で寝よう。疲れただろ」
僕は歩いてないし、食べ物で顎が痛いくらいで何もしてない。なのに、すごく眠かった。疲れるって、眠くなること……かも。セティが何か言って立ち上がる。聞いたことがない言葉だ。さっき食べ物やお水を持ってきてくれた甲高い声の人も、知らない言葉だった。
ベッドのある部屋に戻って、僕は無意識に足首に手をやった。長さが足りないと転んじゃう。たまに短いまま忘れられることがあって……触った足首に何もないので目で確かめる。ああ、そうか。セティが取ってくれたんだ。ほわりと顔が崩れて、そのままベッドに横になった。
明日もセティがいてくれるといいな。
夜中に怖くなって目を開く。外から明かりが入っていて、僕はそちらを見た。知らない場所……どうしよう。ベッドを降りようとした腰に、手が絡みついて引き戻された。
「……どうした? 便所か」
セティの声に、怖さが消えていく。なんだ、ここにいたんだ。僕の後ろにいたんだね。くるりと反対を向いてぎゅっと抱き着いた。手を叩かれたり喚かれることはなくて、温かい毛布に包まれて腕に引き寄せられて目を閉じる。
よかった。僕まだ1人になってない。お気に入りの毛布を鼻先に持ってくると、いつもの匂いがして落ち着いた。セティは朝までいてくれる――そう思ったらまた眠くなる。怖いのも、セティがいれば平気。そう思ったのが最後で、僕はなんだか温かい夢を見た。
270
あなたにおすすめの小説
前世が飼い猫だったので、今世もちゃんと飼って下さい
夜鳥すぱり
BL
黒猫のニャリスは、騎士のラクロア(20)の家の飼い猫。とってもとっても、飼い主のラクロアのことが大好きで、いつも一緒に過ごしていました。ある寒い日、メイドが何か怪しげな液体をラクロアが飲むワインへ入れています。ニャリスは、ラクロアに飲まないように訴えるが……
◆いつもハート、エール、しおりをありがとうございます。冒頭暗いのに耐えて読んでくれてありがとうございました。いつもながら感謝です。
◆お友達の花々緒さんが、表紙絵描いて下さりました。可愛いニャリスと、悩ましげなラクロア様。
◆これもいつか続きを書きたいです、猫の日にちょっとだけ続きを書いたのだけど、また直して投稿します。
この契約結婚は君を幸せにしないから、破棄して、逃げて、忘れます。
箱根ハコ
BL
誰もが羨む将来の騎士団長候補であるルーヴェルは、怪物を倒したところ、呪われてしまい世にも恐ろしい魔獣へと姿を変えられてしまった。
これまで彼に尊敬の目を向けてきたというのに、人々は恐れ、恋人も家族も彼を遠ざける中、彼に片思いをしていたエルンは言ってしまった。
「僕が彼を預かります!」
僕だけは、彼の味方でいるんだ。その決意とともに告げた言葉がきっかけで、彼らは思いがけず戸籍上の夫婦となり、郊外の寂れた家で新婚生活を始めることになってしまった。
五年後、ルーヴェルは元の姿に戻り、再び多くの人が彼の周りに集まるようになっていた。
もとに戻ったのだから、いつまでも自分が隣にいてはいけない。
この気持ちはきっと彼の幸せを邪魔してしまう。
そう考えたエルンは離婚届を置いて、そっと彼の元から去ったのだったが……。
呪いのせいで魔獣になり、周囲の人々に見捨てられてしまった騎士団長候補✕少し変わり者だけど一途な植物学者
ムーンライトノベルス、pixivにも投稿しています。
【完結】僕がハーブティーを淹れたら、筆頭魔術師様(♂)にプロポーズされました
楠結衣
BL
貴族学園の中庭で、婚約破棄を告げられたエリオット伯爵令息。可愛らしい見た目に加え、ハーブと刺繍を愛する彼は、女よりも女の子らしいと言われていた。女騎士を目指す婚約者に「妹みたい」とバッサリ切り捨てられ、婚約解消されてしまう。
ショックのあまり実家のハーブガーデンに引きこもっていたところ、王宮魔術塔で働く兄から助手に誘われる。
喜ぶ家族を見たら断れなくなったエリオットは筆頭魔術師のジェラール様の執務室へ向かう。そこでエリオットがいつものようにハーブティーを淹れたところ、なぜかプロポーズされてしまい……。
「エリオット・ハワード――俺と結婚しよう」
契約結婚の打診からはじまる男同士の恋模様。
エリオットのハーブティーと刺繍に特別な力があることは、まだ秘密──。
⭐︎表紙イラストは針山糸様に描いていただきました
【完結】冷血孤高と噂に聞く竜人は、俺の前じゃどうも言動が伴わない様子。
N2O
BL
愛想皆無の竜人 × 竜の言葉がわかる人間
ファンタジーしてます。
攻めが出てくるのは中盤から。
結局執着を抑えられなくなっちゃう竜人の話です。
表紙絵
⇨ろくずやこ 様 X(@Us4kBPHU0m63101)
挿絵『0 琥』
⇨からさね 様 X (@karasane03)
挿絵『34 森』
⇨くすなし 様 X(@cuth_masi)
◎独自設定、ご都合主義、素人作品です。
【完結】王子様たちに狙われています。本気出せばいつでも美しくなれるらしいですが、どうでもいいじゃないですか。
竜鳴躍
BL
同性でも子を成せるようになった世界。ソルト=ペッパーは公爵家の3男で、王宮務めの文官だ。他の兄弟はそれなりに高級官吏になっているが、ソルトは昔からこまごまとした仕事が好きで、下級貴族に混じって働いている。机で物を書いたり、何かを作ったり、仕事や趣味に没頭するあまり、物心がついてからは身だしなみもおざなりになった。だが、本当はソルトはものすごく美しかったのだ。
自分に無頓着な美人と彼に恋する王子と騎士の話。
番外編はおまけです。
特に番外編2はある意味蛇足です。
この俺が正ヒロインとして殿方に求愛されるわけがない!
ゆずまめ鯉
BL
五歳の頃の授業中、頭に衝撃を受けたことから、自分が、前世の妹が遊んでいた乙女ゲームの世界にいることに気づいてしまったニエル・ガルフィオン。
ニエルの外見はどこからどう見ても金髪碧眼の美少年。しかもヒロインとはくっつかないモブキャラだったので、伯爵家次男として悠々自適に暮らそうとしていた。
これなら異性にもモテると信じて疑わなかった。
ところが、正ヒロインであるイリーナと結ばれるはずのチート級メインキャラであるユージン・アイアンズが熱心に構うのは、モブで攻略対象外のニエルで……!?
ユージン・アイアンズ(19)×ニエル・ガルフィオン(19)
公爵家嫡男と伯爵家次男の同い年BLです。
2度目の異世界移転。あの時の少年がいい歳になっていて殺気立って睨んでくるんだけど。
ありま氷炎
BL
高校一年の時、道路陥没の事故に巻き込まれ、三日間記憶がない。
異世界転移した記憶はあるんだけど、夢だと思っていた。
二年後、どうやら異世界転移してしまったらしい。
しかもこれは二度目で、あれは夢ではなかったようだった。
再会した少年はすっかりいい歳になっていて、殺気立って睨んでくるんだけど。
【WEB版】監視が厳しすぎた嫁入り生活から解放されました~冷徹無慈悲と呼ばれた隻眼の伯爵様と呪いの首輪~【BL・オメガバース】
古森きり
BL
【書籍化決定しました!】
詳細が決まりましたら改めてお知らせにあがります!
たくさんの閲覧、お気に入り、しおり、感想ありがとうございました!
アルファポリス様の規約に従い発売日にURL登録に変更、こちらは引き下げ削除させていただきます。
政略結婚で嫁いだ先は、女狂いの伯爵家。
男のΩである僕には一切興味を示さず、しかし不貞をさせまいと常に監視される生活。
自分ではどうすることもできない生活に疲れ果てて諦めた時、夫の不正が暴かれて失脚した。
行く当てがなくなった僕を保護してくれたのは、元夫が口を開けば罵っていた政敵ヘルムート・カウフマン。
冷徹無慈悲と呼び声高い彼だが、共に食事を摂ってくれたりやりたいことを応援してくれたり、決して冷たいだけの人ではなさそうで――。
カクヨムに書き溜め。
小説家になろう、アルファポリス、BLoveにそのうち掲載します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる