【完結】愛執 ~愛されたい子供を拾って溺愛したのは邪神でした~

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

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39.早く育ってくれ(SIDEセティ)

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*****SIDE セティ



 イシスが目にした男の姿を確認した。あれは神殿関係者だろう。どうやら居場所を察知されたか。面倒臭い連中だが、今は泳がせておく。もしイシスに危害を加えたら、いや……加える素振りを見せた時点で殺してやろう。

 誰もが目を背けるほど無惨な死を与え、魂も引き裂いてやる。それを神殿の入り口に飾ってやったら、命じた奴もさぞ驚くだろうさ。冗談で済ます気はなかった。

 だが……今は目の前のイシスだ。可愛くも残酷な子供だった。成長しきらない身体で、幼くすら感じられる仕草や表情を向けるくせに、無意識で誘う。その媚態に踊らされても、手が出せる年齢じゃなかった。だから残酷なのだ。

 こちらの欲を煽って、途中で諦めさせる。痛いのは嫌いだと泣くくせに、オレのためなら痛くても我慢すると健気なことを考える。愛らしい生き物だった。今までも純粋なだけの子供や自己犠牲が得意な聖人はいたが、こんなにオレを惹きつける子供はいなかった。

「おいで」

「うん! セティのキス好き」

 ちゅっと唇や首筋に口付ける子供を抱き上げ、ベッドの上に横たえた。身体のあちこちにキスをして、吸い上げて所有印を刻む。

「ん……っ、くすぐ……きゃ、んんっ」

 擽ったい、そう訴えるのに羞恥心は薄かった。だから己の無防備な身体を隠そうとしない。薄い肌の色に映える胸の飾りが淡く色づいていた。赤い舌で唇を舐める所作も、笑いながら身を捩る所作も……無自覚にオレを誘惑する。

 まだ痩せて細い腕をつかみ、肉の薄いあばらの浮いた胸を見れば……溜め息をついて諦めるしかなかった。これ以上無体な真似は出来ない。

「……おまじないは終わりだ」

「仲良くなれた?」

「ああ、仲良しだ。できるだけ早く育ってくれ」

 切実な願いを込めたつぶやきに、イシスは不思議そうに眼を見開いてから自分の体を眺める。口数が少ない子供だが、考えが筒抜けなので問題はなかった。自分の体が大きく育つ方法を真剣に悩み始めたイシスをベッドに横たえる。

 早ければ明日には何らかの情報が届く。遅くても3日後にこの街を出るつもりだった。この国はティターンと同じで、邪神教だが……それゆえに居心地が悪い。

 腕の中で向きを変えていたイシスが、オレの腕を枕に目を閉じた。まだ頭の中でご飯をたくさん食べる方法を考えているのが、必死で可愛かった。夢の中で喉を詰まらせなければいいが。そんなことを思いながら目を閉じる。

「ねえ、タイフォン。僕のお願い、忘れてないよね?」

「問題ない。3日後には動く。失せろ」

 薄目を開けてアトゥムを睨みつける。結界のぎりぎり外側、壁に近い部屋の隅に現れた金髪の神は肩を竦めた。どうやら念押しに来ただけらしい。結界越しだから実害はないと放置すれば、とんでもない言葉を投げて消えた。

「その子に手を出すのは犯罪だからね」

「っ、わかってる!」

 思わず叫んでしまい、寝たばかりのイシスが目を開く。何でもないと微笑んで寝かしつけ、オレは次からもっと結界を広く張ることを決意した。ついでに音や視線も遮っておこう。
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