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本編
136.夫となる男を連れた凱旋だ ***SIDEアデリナ
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力尽くで構わないと言われた。浮かれながら、旅支度を整える。イエンチュ王国へは一日半の道のりだった。夫と定めた男を見上げる。フォルクハルト、リヒター帝国の皇帝の末弟だと聞いた。あの女傑ガブリエラ様のご子息だが……他の女が産んだ子で血は繋がらないようだ。
ガブリエラ様の実子であれば、なおよかったが……あの美しいトリアも実のお子ではないと聞く。ならば構わん。トリアと義理の姉妹として繋がれるのだ。フォルクハルトの強さは認めていた。この男になら今後の人生と身を任せても後悔しないだろう。
やはり男は、強ければ強いほどいい。イエンチュの部族を総浚いした結果、外へ探しに出たのは正解だったな。皇族だから馬車に乗ってぞろぞろと行列を作ると思えば、少数精鋭で騎乗にて移動と告げられた。こういうところも好ましい。
「アデリナ、準備ができたか?」
「問題ない」
女性らしくないあたしを、それでも妻にすると言い切った。鍛えて武骨な手足、指、硬い手のひら、太い胴回り……何もかもが輝いて見える。実家への凱旋だ。周囲の女戦士どもに自慢してやろう。にやりと笑い、愛馬に跨った。
この砦の厩は居心地がよかったらしく、毛艶も機嫌もいい。愛馬の首をぽんぽんと叩き、フォルクハルトの指示を待った。あたしより強い男に従うのは、屈辱ではなく誇りだ。彼の馬が地を蹴るのを見届け、愛馬の手綱を引いた。同行する騎士は五人ほど、皆、立派な体格をしている。
連れて行くと、女どもが群がりそうだな。夫フォルクハルトに粉を掛けたら叩きのめすが、それ以外は大目に見てやろうか。一日半の距離を、ほぼ一日に短縮して走る。馬の休憩以外は馬上にあり、かなり急ぎの強行軍だった。
「早くトリアに会いたいからな」
「わかった」
同じ気持ちだ。頷きあい、視線を交わすだけで伝わる。父の言葉は誠だった。同じレベルに達した者同士、意思の疎通に言葉は不要だと。戦い、剣先を交え、ともに眠れば兄弟も同じ。教わった言葉が、実感となって胸に広がった。
イエンチュ王国の国境を示す塀は存在しない。どこから攻め込まれても防いでみせる! その意気込みと、同盟国への信頼の表れだ。相反するようだが、どちらも本心だった。信頼する相手であっても、卑怯な不意打ちがあれば受けて立つ。
集落が見えてきた。思い出したのは、馬泥棒の話だ。ガブリエラ様もトリアも、不快だと表情を曇らせた。おそらく、死体を持ち去ったのはイエンチュの民だろう。どの部族かわからないが、必ず取り戻す。そして褒めてもらうのだ!
馬の速度を上げて、フォルクハルトの前に出た。
「あたしが先に立つ。ここはあたしの縄張りだからな」
「よし、任せる!」
驚いて振り返った。あたしに任せる、と? ここは敵地も同然なのに、あたしを信頼しているのか。期待されたら応えるのが戦士の流儀。犯人を見つけて、あんたに引き渡してみせよう。
「戻ったのか? 後ろの連中は……」
「あたしの夫と、その従者だ。この国から恥知らずが出た。探すから手伝え」
第三の部族タラバンテではないが、共闘関係にある第五の部族シャリアの男だ。あたしの夫になると宣言して戦い、敗れた。フォルクハルトを見て驚いた顔をするが、頷いて並走する。馬上で簡単な説明を行い、シャリアの長へ取次ぎを願う。
どの種族が相手でも勝って、トリアに褒めてもらうのだ。フォルクハルトも撫でてくれるかもしれない。普通の女のように、甘やかしてほしかった。報酬として強請ってみよう。浮かれる気持ちを抑えながら、シャリアの町の門をくぐった。
ガブリエラ様の実子であれば、なおよかったが……あの美しいトリアも実のお子ではないと聞く。ならば構わん。トリアと義理の姉妹として繋がれるのだ。フォルクハルトの強さは認めていた。この男になら今後の人生と身を任せても後悔しないだろう。
やはり男は、強ければ強いほどいい。イエンチュの部族を総浚いした結果、外へ探しに出たのは正解だったな。皇族だから馬車に乗ってぞろぞろと行列を作ると思えば、少数精鋭で騎乗にて移動と告げられた。こういうところも好ましい。
「アデリナ、準備ができたか?」
「問題ない」
女性らしくないあたしを、それでも妻にすると言い切った。鍛えて武骨な手足、指、硬い手のひら、太い胴回り……何もかもが輝いて見える。実家への凱旋だ。周囲の女戦士どもに自慢してやろう。にやりと笑い、愛馬に跨った。
この砦の厩は居心地がよかったらしく、毛艶も機嫌もいい。愛馬の首をぽんぽんと叩き、フォルクハルトの指示を待った。あたしより強い男に従うのは、屈辱ではなく誇りだ。彼の馬が地を蹴るのを見届け、愛馬の手綱を引いた。同行する騎士は五人ほど、皆、立派な体格をしている。
連れて行くと、女どもが群がりそうだな。夫フォルクハルトに粉を掛けたら叩きのめすが、それ以外は大目に見てやろうか。一日半の距離を、ほぼ一日に短縮して走る。馬の休憩以外は馬上にあり、かなり急ぎの強行軍だった。
「早くトリアに会いたいからな」
「わかった」
同じ気持ちだ。頷きあい、視線を交わすだけで伝わる。父の言葉は誠だった。同じレベルに達した者同士、意思の疎通に言葉は不要だと。戦い、剣先を交え、ともに眠れば兄弟も同じ。教わった言葉が、実感となって胸に広がった。
イエンチュ王国の国境を示す塀は存在しない。どこから攻め込まれても防いでみせる! その意気込みと、同盟国への信頼の表れだ。相反するようだが、どちらも本心だった。信頼する相手であっても、卑怯な不意打ちがあれば受けて立つ。
集落が見えてきた。思い出したのは、馬泥棒の話だ。ガブリエラ様もトリアも、不快だと表情を曇らせた。おそらく、死体を持ち去ったのはイエンチュの民だろう。どの部族かわからないが、必ず取り戻す。そして褒めてもらうのだ!
馬の速度を上げて、フォルクハルトの前に出た。
「あたしが先に立つ。ここはあたしの縄張りだからな」
「よし、任せる!」
驚いて振り返った。あたしに任せる、と? ここは敵地も同然なのに、あたしを信頼しているのか。期待されたら応えるのが戦士の流儀。犯人を見つけて、あんたに引き渡してみせよう。
「戻ったのか? 後ろの連中は……」
「あたしの夫と、その従者だ。この国から恥知らずが出た。探すから手伝え」
第三の部族タラバンテではないが、共闘関係にある第五の部族シャリアの男だ。あたしの夫になると宣言して戦い、敗れた。フォルクハルトを見て驚いた顔をするが、頷いて並走する。馬上で簡単な説明を行い、シャリアの長へ取次ぎを願う。
どの種族が相手でも勝って、トリアに褒めてもらうのだ。フォルクハルトも撫でてくれるかもしれない。普通の女のように、甘やかしてほしかった。報酬として強請ってみよう。浮かれる気持ちを抑えながら、シャリアの町の門をくぐった。
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