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本編
157.孫娘達への狼藉は許しがたい ***SIDEライフアイゼン公爵
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ああ、何と愚かなことか。帝国貴族のレベルも下がったものだ。そういや、以前にマインラートの皇妃選びに口出しした貴族を、大粛清したことがあった。腐った根を徹底的に駆除したつもりだったが、どうやら新しく植えた苗も腐ったようだ。
大粛清で貴族の数は半減した。関わっていなかった貴族の爵位をあげ、新たに功績のあった者を貴族として認める。あれから二十年余り、落ち着いたと思っていたが。代替わりに粛清は付き物だが、想定より腐っていた。臭くてたまらん。
大した能力は持たぬが、過失がなかったために残された。ただそれだけの存在が、格上の皇族を見下すなど愚の骨頂だ。ガブリエラ皇妃は、その能力とカリスマ性で望まれた。何も取り得がなく残った程度の雑草が、大輪の花を貶すなど許されない。
生まれた子はすべて立派に育った。母のカリスマ性を受け継いだ長男、賢さに振りきった次男、戦いだけに特化した三男。最後の姫は美貌と才能を詰め込んだ、天からの授かりものだ。兄三人の才能を足して割ったような優秀さに加え、扱いづらい皇子達を纏める逸材だった。
足元にも及ばぬ虫けらが「皇族の血が穢れた」などとほざく。怒りで震えながら、突入を指示した。
「皇族など恐るるに足らず!」
怒りが突き抜けた瞬間だった。あまりに腹が立ちすぎて、口角が持ち上がる。笑みに見える表情は、仮面のように本心を覆い隠した。
どうしてやろうか。簡単に殺して終わるほど優しくはないぞ? マインラートも、わしも。殺してくれと懇願するまで、生かしてやろう。断食をしても薬や流動食で補い、自害を防いで、死にたくなる状況へ追い込んでやる。
「これはこれは、大層な顔が揃っておるではないか」
突入した騎士の後ろから、お道化た口調で続く。踏み込んだ部屋で、予想通りだった顔ぶれを睥睨した。コルヴィッツ侯爵、こいつは一番汚い言葉を使った。孫娘も同然の可愛いヴィクトーリアを罵った口は、引き裂いてやろうか。
我が孫で養女のコルネリアも、じぃと呼んで懐くヴィクトーリアも。二人が夜会で襲われたと聞いた際は、怒りで目の前が赤くなった。仕掛けた罠と知っていても、感情は素直だ。それも我がライフアイゼン公爵家の夜会で、ことを起こそうと考えるなど。筆頭公爵家を舐めすぎではないか?
歴史が古い貴族は、その歴史が赤く血塗られ、黒で隠蔽されるものだ。だから知らぬ、で済まないのが貴族社会だった。隠蔽された闇に呑み込まれれば、二度と浮上は叶わない。ゆえに足を踏み入れぬよう、警戒するのが常になっている。その努力を怠れば、沈んで終わる。
今回はその程度の罰で許す気はなかった。
ハイトマン伯爵は、ヴィクトーリアを襲う計画へ積極的に関与した。マルクス侯爵は愚かにも、コルヴィッツ侯爵に賛同して横領に加担している。ネルリンガー伯爵、エステン子爵、トロスト子爵……すべて滅ぼしてやろう。二度と社交界で名を聞くことはない。
「生意気な目が気に入らん。その顔も汚い」
踏みつけた後、マインラートも辛辣な言葉を吐いた。このような顔は知らん、貴族ではない、と。ならば遠慮は要らぬな。騎士に引きずられて俗物が消えた場は、酒と煙草の臭いが漂っていた。
「くそっ、服や髪に臭いがついた……」
吐き捨てるマインラートは、神殿で待つ異母弟に叱られると肩を落とす。その背中をどんと叩いた。
「わしのところで、風呂に入るか?」
「おお! そうするか。助かる」
ライフアイゼン公爵邸で、一番香りのいい石鹸を貸してやろう。なぁに、大神官殿に「何をしてきた?」と睨まれるくらいのもんだ。言い訳して萎れたところへ、見舞いに行くのも楽しそうだからな。性格が悪い? 今更だろ。お前の親友だぞ? マインラート。性格が良かったら、とっくに病んでいるさ。
大粛清で貴族の数は半減した。関わっていなかった貴族の爵位をあげ、新たに功績のあった者を貴族として認める。あれから二十年余り、落ち着いたと思っていたが。代替わりに粛清は付き物だが、想定より腐っていた。臭くてたまらん。
大した能力は持たぬが、過失がなかったために残された。ただそれだけの存在が、格上の皇族を見下すなど愚の骨頂だ。ガブリエラ皇妃は、その能力とカリスマ性で望まれた。何も取り得がなく残った程度の雑草が、大輪の花を貶すなど許されない。
生まれた子はすべて立派に育った。母のカリスマ性を受け継いだ長男、賢さに振りきった次男、戦いだけに特化した三男。最後の姫は美貌と才能を詰め込んだ、天からの授かりものだ。兄三人の才能を足して割ったような優秀さに加え、扱いづらい皇子達を纏める逸材だった。
足元にも及ばぬ虫けらが「皇族の血が穢れた」などとほざく。怒りで震えながら、突入を指示した。
「皇族など恐るるに足らず!」
怒りが突き抜けた瞬間だった。あまりに腹が立ちすぎて、口角が持ち上がる。笑みに見える表情は、仮面のように本心を覆い隠した。
どうしてやろうか。簡単に殺して終わるほど優しくはないぞ? マインラートも、わしも。殺してくれと懇願するまで、生かしてやろう。断食をしても薬や流動食で補い、自害を防いで、死にたくなる状況へ追い込んでやる。
「これはこれは、大層な顔が揃っておるではないか」
突入した騎士の後ろから、お道化た口調で続く。踏み込んだ部屋で、予想通りだった顔ぶれを睥睨した。コルヴィッツ侯爵、こいつは一番汚い言葉を使った。孫娘も同然の可愛いヴィクトーリアを罵った口は、引き裂いてやろうか。
我が孫で養女のコルネリアも、じぃと呼んで懐くヴィクトーリアも。二人が夜会で襲われたと聞いた際は、怒りで目の前が赤くなった。仕掛けた罠と知っていても、感情は素直だ。それも我がライフアイゼン公爵家の夜会で、ことを起こそうと考えるなど。筆頭公爵家を舐めすぎではないか?
歴史が古い貴族は、その歴史が赤く血塗られ、黒で隠蔽されるものだ。だから知らぬ、で済まないのが貴族社会だった。隠蔽された闇に呑み込まれれば、二度と浮上は叶わない。ゆえに足を踏み入れぬよう、警戒するのが常になっている。その努力を怠れば、沈んで終わる。
今回はその程度の罰で許す気はなかった。
ハイトマン伯爵は、ヴィクトーリアを襲う計画へ積極的に関与した。マルクス侯爵は愚かにも、コルヴィッツ侯爵に賛同して横領に加担している。ネルリンガー伯爵、エステン子爵、トロスト子爵……すべて滅ぼしてやろう。二度と社交界で名を聞くことはない。
「生意気な目が気に入らん。その顔も汚い」
踏みつけた後、マインラートも辛辣な言葉を吐いた。このような顔は知らん、貴族ではない、と。ならば遠慮は要らぬな。騎士に引きずられて俗物が消えた場は、酒と煙草の臭いが漂っていた。
「くそっ、服や髪に臭いがついた……」
吐き捨てるマインラートは、神殿で待つ異母弟に叱られると肩を落とす。その背中をどんと叩いた。
「わしのところで、風呂に入るか?」
「おお! そうするか。助かる」
ライフアイゼン公爵邸で、一番香りのいい石鹸を貸してやろう。なぁに、大神官殿に「何をしてきた?」と睨まれるくらいのもんだ。言い訳して萎れたところへ、見舞いに行くのも楽しそうだからな。性格が悪い? 今更だろ。お前の親友だぞ? マインラート。性格が良かったら、とっくに病んでいるさ。
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