【完結】妻ではなく他人ですわ【書籍化決定】

綾雅(りょうが)要らない悪役令嬢

文字の大きさ
188 / 222
本編

187.結婚式まで指折り数える

しおりを挟む
 エック兄様に届いた来賓からの手紙により、結婚式は二週間の間に纏めて行われると決まった。滞在できる限界が二週間前後なのよ。祝いの品を積んだ馬車で、王侯貴族が不自由しない荷物と一緒に移動するのよ? 騎士団だってついて来るわ。

 そんな大所帯が移動すれば、遠い国なら片道に一か月ほどかかる。国境を接した国だって、二週間は移動に費やされる。一番早く駆けつけそうなのは、イエンチュ王国ね。国境を接している上に、タラバンテ部族の機動力が高いの。呼んだら三日で駆けつけそう。

 私室で、運び込まれたドレスを確認する。結婚式は、私から始まる予定よ。到着日時は予定されており、早めに到着するよう手配されている。それでも天候や盗賊、事故など、不測の事態で到着が遅れる可能性があった。

 ここばかりは距離があるから仕方ないわ。当初はルヴィ兄様の結婚式から……と思っていたけれど、万が一にも遅れる国が出たら? 彼らの面目を潰してしまうわ。ルヴィ兄様の結婚式にケチがつくのも嫌だった。リヒター帝国の正統なる後継なのに、軽んじられたみたいでしょう?

 だから、まずは私。女性であるから適齢期が……と理由を付けた。トルソーが着るドレスは、フィッシュテールだ。皇族の女性が着用するのは珍しく、記録を見てもガブリエラ様くらいだった。公式行事ではなく、視察先で着用している。

 王侯貴族の女性は、足を見せることを「はしたない」と考える慣習があった。だからドレスの形はすべて足首まで隠す。形によっては引きずるほど長い。

 私のドレスはひざ下から緩やかに後ろへ向けて長くなり、裾は引きずっていた。全体の色は柔らかな青紫のグラデーションで、裾へ向けて色が濃くなる。内側に白いスカートを着用し、開いたフロント部分から見えるようにした。これなら問題ないはず。

「素敵ね、私もこのタイプのドレスが欲しいわ」

 手伝いに来たマルグリットの言葉に、ふふっと笑う。彼女は布をふんだんに使ったAラインを選んだ。プリンセスラインのように内側から膨らませないけれど、歩くと広がるスカートが美しいわ。皇妃であるためリヒテン・ブルーの鮮やかな絹で作らせたドレスに、白いレースを重ねている。全体にレースが重なるから、幻想的で素敵だった。

「作らせてはいかが? 皇妃殿下」

「あら……気が早いですわ。ローヴァイン公爵夫人」

 互いに少し先の呼び名を口にして、くすくすと笑い合う。コルネリアやアデリナのドレスも、出来上がった頃ね。ドレスの色は皇族の象徴色を取り入れたり、自分の好きな色を差し色に使ったり。お祝いなんだもの、華やかに仕上げたいわ。

「披露宴も同じドレスにする、そう通達を出したから何種類も作らなくて済んだわね」

 来賓や貴族にも通達していた。理由は、ここしばらく神殿が騒がしかったこと。神々への信仰を示すと説明すれば、誰も異論はなかった。加えて、人心が落ち着いていない。戦寸前まで騒動が大きくなったデーンズ王国や、王が急逝したアルホフ王国、他国に吸収された領地……。

 一人勝ちしたリヒター帝国の祝い事で、豪華にしすぎると反発を招くわ。だから一点だけ満足できる豪華なドレスを作って終わり。せっかく幸せの象徴として最高のドレスを作るのに、一回しか着ないなんてもったいないわ。結婚式のドレスなんて目立ちすぎて、何度も着用する機会はなさそうだもの。

 結婚式まであと七日、指折り数えて待つ程度の時間だけ。そうしたら私は、二度目の結婚衣装を着て大好きな人の隣に立つ。絶対に幸せになるから、逃がさないわよ? 覚悟してね、クラウス。
しおりを挟む
感想 146

あなたにおすすめの小説

夫が運命の番と出会いました

重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。 だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。 しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?

白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』

鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」 華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。 王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。 そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。 レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。 「お願いだ……戻ってきてくれ……」 王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。 「もう遅いわ」 愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。 裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。 これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。

『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』

放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」 王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。 しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!? 「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!) 怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。

婚約破棄されたので公爵令嬢やめます〜私を見下した殿下と元婚約者が膝をつく頃、愛を囁くのは冷酷公爵でした〜

nacat
恋愛
婚約者に裏切られ、蔑まれ、全てを失った公爵令嬢リリアナ。 「あなたのような女、誰が愛すると?」そう言い放った王太子と元友人に嘲られても、彼女は涙を見せなかった。 だが、冷たく美しい隣国の公爵セドリックと出会った瞬間、運命は静かに動き出す。 冷酷と噂された男の腕のなかで、彼女は再び自分を取り戻していく。 そして――彼女を捨てた者たちは、彼女の眩い幸福の前に膝をつく。 「これは、ざまぁを通り越して愛された令嬢の物語。」

手放してみたら、けっこう平気でした。

朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。 そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。 だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。

地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが

克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。 心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。

あの子を好きな旦那様

はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」  目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。 ※小説家になろうサイト様に掲載してあります。

見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい

水空 葵
恋愛
 一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。  それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。  リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。  そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。  でも、次に目を覚ました時。  どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。    二度目の人生。  今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。  一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。  そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか? ※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。  7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m

処理中です...