204 / 222
本編
203.煌びやかで眩しい披露の場へ
しおりを挟む
朝から肌を磨く。そのために早朝から宮殿へ来たの。まずジルヴィアの顔を見て、変わりないことにほっとする。目を覚まして手を伸ばすから、小さな指を握って微笑んだ。本当に可愛い。この子のためなら何でもできる気がした。
抱き上げたいけれど、すぐに準備が始まる。またねと手を振り、後ろ髪を引かれながら入浴へ。大きな夜会の時はいつも同じ手順で、肌を磨き上げた。公爵邸に来て、初めての大きな社交ね。エリーゼが手慣れた様子で指示を出し、侍女達が準備に動いた。
銀髪を整え、するりとした指通りに満足して頷く。香油は薔薇にしたのね。銀髪自体が清楚なイメージだから鈴蘭や百合を想像する人が多いけれど、私は薔薇のほうが好き。磨いた肌に化粧をのせる前に、軽い食事をした。
男性と女性は準備時間が違う。そのため、クラウスはいま書類と格闘しているらしいわ。公爵になったことで、領地が増えたの。私が所有していた皇族の直轄領の一部が編入されていた。といっても、ほとんどは森なの。領民は面積から想像するより少ない。
自然豊かな別荘を貰った際、森や周辺の集落が付属した感じね。道は整備されて通りやすい。現状維持で構わないと伝えたら、クラウスも頷いた。開発して観光地にしたら、別荘が騒がしくなるから。二人で籠るのにぴったりの建物なのよ。
広すぎず、狭すぎず。丸太を組んだ造りで、テラスから見る風景が最高だった。少しして落ち着いたら、クラウスと滞在するつもり。
食事を終えた手に保湿用のオイルが塗り込まれ、爪を紅で染めていく。草花の色を利用し、薄い紫に色付けされた。紅は毒々しいし、ピンクより象徴色の紫のほうがドレスに似合うわ。青も使ったドレスだから、色が馴染むでしょう。
着色を終えた爪は、乾くまで動かせない。その間に保湿した肌に別のクリームが塗られた。揉み込む侍女の手が温かくて、眠くなりそうだわ。そういえば、食後だったわね。欠伸をしたいけれど、皺が寄るからダメなの。噛み殺して我慢した。
準備は着々と進み、ドレスを装着していく。着ると表現するより、そのほうが似合うくらい。下から履いたり、上から被ったり。ここでようやく口紅をのせ、髪を整える。最後に宝飾品を飾ったら完成ね。
「ありがとう、エリーゼ。他の皆も感謝するわ」
出来上がりを鏡で確認し、くるりと回って頷いた。結婚式の時より、化粧が鮮やかになった。華やかさを足す意味もあるけれど、夜会だから肌の色が綺麗に見えるように。昼間に行われる結婚式では淡い化粧でも美しく映える。夜は間接照明になるため、全体に暗く見えてしまうの。
「準備は出来ましたか? 私の姫君」
廊下で待っていたクラウスが、微笑んで手を差し伸べる。とても美しいと褒め「ベッドへ引きずり込みたい」なんて言い出した。その冗談、とても楽しいわ。
化粧は仮面、あまり表情を動かすと崩れやすくなるのよ。そう伝えて、彼の手を取った。中の宮の東側から、大広間へ向かう。開いている扉の前を通り過ぎるとき、思わず声が漏れた。
「凄いわね」
「なんというか、迫力があります」
正直に言っていいのよ、クラウス。眩しくて派手でしょう? お父様とガブリエラ様が張り切っていたから、ある程度覚悟はしていたわ。でも想像の上を行くのが、あの二人なのね。エスコートされて歩く私は、毅然と顔を上げて進む。
準備された大広間は人が集まっており、かなり賑やかだ。やや離れた控え室へ入れば、二組が優雅にお茶を飲んでいた。ルヴィ兄様とマルグリットは宮殿の主だからわかる。フォルト兄様とアデリナも、一時的に奥の宮に滞在しているから当然ね。
エック兄様達はどうしたのかしら? ガブリエラ様達も遅れているわね。
抱き上げたいけれど、すぐに準備が始まる。またねと手を振り、後ろ髪を引かれながら入浴へ。大きな夜会の時はいつも同じ手順で、肌を磨き上げた。公爵邸に来て、初めての大きな社交ね。エリーゼが手慣れた様子で指示を出し、侍女達が準備に動いた。
銀髪を整え、するりとした指通りに満足して頷く。香油は薔薇にしたのね。銀髪自体が清楚なイメージだから鈴蘭や百合を想像する人が多いけれど、私は薔薇のほうが好き。磨いた肌に化粧をのせる前に、軽い食事をした。
男性と女性は準備時間が違う。そのため、クラウスはいま書類と格闘しているらしいわ。公爵になったことで、領地が増えたの。私が所有していた皇族の直轄領の一部が編入されていた。といっても、ほとんどは森なの。領民は面積から想像するより少ない。
自然豊かな別荘を貰った際、森や周辺の集落が付属した感じね。道は整備されて通りやすい。現状維持で構わないと伝えたら、クラウスも頷いた。開発して観光地にしたら、別荘が騒がしくなるから。二人で籠るのにぴったりの建物なのよ。
広すぎず、狭すぎず。丸太を組んだ造りで、テラスから見る風景が最高だった。少しして落ち着いたら、クラウスと滞在するつもり。
食事を終えた手に保湿用のオイルが塗り込まれ、爪を紅で染めていく。草花の色を利用し、薄い紫に色付けされた。紅は毒々しいし、ピンクより象徴色の紫のほうがドレスに似合うわ。青も使ったドレスだから、色が馴染むでしょう。
着色を終えた爪は、乾くまで動かせない。その間に保湿した肌に別のクリームが塗られた。揉み込む侍女の手が温かくて、眠くなりそうだわ。そういえば、食後だったわね。欠伸をしたいけれど、皺が寄るからダメなの。噛み殺して我慢した。
準備は着々と進み、ドレスを装着していく。着ると表現するより、そのほうが似合うくらい。下から履いたり、上から被ったり。ここでようやく口紅をのせ、髪を整える。最後に宝飾品を飾ったら完成ね。
「ありがとう、エリーゼ。他の皆も感謝するわ」
出来上がりを鏡で確認し、くるりと回って頷いた。結婚式の時より、化粧が鮮やかになった。華やかさを足す意味もあるけれど、夜会だから肌の色が綺麗に見えるように。昼間に行われる結婚式では淡い化粧でも美しく映える。夜は間接照明になるため、全体に暗く見えてしまうの。
「準備は出来ましたか? 私の姫君」
廊下で待っていたクラウスが、微笑んで手を差し伸べる。とても美しいと褒め「ベッドへ引きずり込みたい」なんて言い出した。その冗談、とても楽しいわ。
化粧は仮面、あまり表情を動かすと崩れやすくなるのよ。そう伝えて、彼の手を取った。中の宮の東側から、大広間へ向かう。開いている扉の前を通り過ぎるとき、思わず声が漏れた。
「凄いわね」
「なんというか、迫力があります」
正直に言っていいのよ、クラウス。眩しくて派手でしょう? お父様とガブリエラ様が張り切っていたから、ある程度覚悟はしていたわ。でも想像の上を行くのが、あの二人なのね。エスコートされて歩く私は、毅然と顔を上げて進む。
準備された大広間は人が集まっており、かなり賑やかだ。やや離れた控え室へ入れば、二組が優雅にお茶を飲んでいた。ルヴィ兄様とマルグリットは宮殿の主だからわかる。フォルト兄様とアデリナも、一時的に奥の宮に滞在しているから当然ね。
エック兄様達はどうしたのかしら? ガブリエラ様達も遅れているわね。
482
あなたにおすすめの小説
夫が運命の番と出会いました
重田いの
恋愛
幼馴染のいいなづけとして育ってきた銀狼族の族長エーリヒと、妻ローゼマリー。
だがエーリヒに運命の番が現れたことにより、二人は離別する。
しかし二年後、修道院に暮らすローゼマリーの元へエーリヒが現れ――!?
白い結婚を捨てた王妃は、もう二度と振り向かない ――愛さぬと言った王子が全てを失うまで』
鍛高譚
恋愛
「私は王妃を愛さない。彼女とは白い結婚を誓う」
華やかな王宮の大聖堂で交わされたのは、愛の誓いではなく、冷たい拒絶の言葉だった。
王子アルフォンスの婚姻相手として選ばれたレイチェル・ウィンザー。しかし彼女は、王妃としての立場を与えられながらも、夫からも宮廷からも冷遇され、孤独な日々を強いられる。王の寵愛はすべて聖女ミレイユに注がれ、王宮の権力は彼女の手に落ちていった。侮蔑と屈辱に耐える中、レイチェルは誇りを失わず、密かに反撃の機会をうかがう。
そんな折、隣国の公爵アレクサンダーが彼女の前に現れる。「君の目はまだ死んでいないな」――その言葉に、彼女の中で何かが目覚める。彼はレイチェルに自由と新たな未来を提示し、密かに王宮からの脱出を計画する。
レイチェルが去ったことで、王宮は急速に崩壊していく。聖女ミレイユの策略が暴かれ、アルフォンスは自らの過ちに気づくも、時すでに遅し。彼が頼るべき王妃は、もはや遠く、隣国で新たな人生を歩んでいた。
「お願いだ……戻ってきてくれ……」
王国を失い、誇りを失い、全てを失った王子の懇願に、レイチェルはただ冷たく微笑む。
「もう遅いわ」
愛のない結婚を捨て、誇り高き未来へと進む王妃のざまぁ劇。
裏切りと策略が渦巻く宮廷で、彼女は己の運命を切り開く。
これは、偽りの婚姻から真の誓いへと至る、誇り高き王妃の物語。
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
婚約破棄されたので公爵令嬢やめます〜私を見下した殿下と元婚約者が膝をつく頃、愛を囁くのは冷酷公爵でした〜
nacat
恋愛
婚約者に裏切られ、蔑まれ、全てを失った公爵令嬢リリアナ。
「あなたのような女、誰が愛すると?」そう言い放った王太子と元友人に嘲られても、彼女は涙を見せなかった。
だが、冷たく美しい隣国の公爵セドリックと出会った瞬間、運命は静かに動き出す。
冷酷と噂された男の腕のなかで、彼女は再び自分を取り戻していく。
そして――彼女を捨てた者たちは、彼女の眩い幸福の前に膝をつく。
「これは、ざまぁを通り越して愛された令嬢の物語。」
手放してみたら、けっこう平気でした。
朝山みどり
恋愛
エリザ・シスレーは伯爵家の後継として、勉強、父の手伝いと努力していた。父の親戚の婚約者との仲も良好で、結婚する日を楽しみしていた。
そんなある日、父が急死してしまう。エリザは学院をやめて、領主の仕事に専念した。
だが、領主として努力するエリザを家族は理解してくれない。彼女は家族のなかで孤立していく。
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。
あの子を好きな旦那様
はるきりょう
恋愛
「クレアが好きなんだ」
目の前の男がそう言うのをただ、黙って聞いていた。目の奥に、熱い何かがあるようで、真剣な想いであることはすぐにわかった。きっと、嬉しかったはずだ。その名前が、自分の名前だったら。そう思いながらローラ・グレイは小さく頷く。
※小説家になろうサイト様に掲載してあります。
見捨てられた逆行令嬢は幸せを掴みたい
水空 葵
恋愛
一生大切にすると、次期伯爵のオズワルド様に誓われたはずだった。
それなのに、私が懐妊してからの彼は愛人のリリア様だけを守っている。
リリア様にプレゼントをする余裕はあっても、私は食事さえ満足に食べられない。
そんな状況で弱っていた私は、出産に耐えられなくて死んだ……みたい。
でも、次に目を覚ました時。
どういうわけか結婚する前に巻き戻っていた。
二度目の人生。
今度は苦しんで死にたくないから、オズワルド様との婚約は解消することに決めた。それと、彼には私の苦しみをプレゼントすることにしました。
一度婚約破棄したら良縁なんて望めないから、一人で生きていくことに決めているから、醜聞なんて気にしない。
そう決めて行動したせいで良くない噂が流れたのに、どうして次期侯爵様からの縁談が届いたのでしょうか?
※カクヨム様と小説家になろう様でも連載中・連載予定です。
7/23 女性向けHOTランキング1位になりました。ありがとうございますm(__)m
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる