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本編
31.誤認と疑惑の晩餐会へようこそ
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着飾った私は、ヴェールで顔を隠す。これは義母のガブリエラ様も同じだった。二人で意味ありげなヴェールを着け、彼らの勝手な憶測を掻き立てる。小道具は物語を進めるのに、とても役立つわ。私達がヴェールをしているからって、不幸があったとは限らないけれど、ね。
用意した晩餐会の席を確かめる。皇族が五人、席を一つずつ空けてから、左右に公爵家を四つ並べた。壁のある左側にノイベルト公爵家、ルーベンス公爵家が入る。ルーベンス公爵家は、私に紅茶をかけた公爵令嬢の実家だった。何かしらの恨みを持っている可能性があるでしょう?
扉に近い右側は、ギーレン公爵家が座る。忠誠心に厚いライフアイゼン公爵家が、一番末席となった。入り口に近い席に忠臣を置くのも、罠の一つよ。ライフアイゼン公爵夫妻には、事前に情報を与えていた。もし作戦が漏れれば、忠臣が逆臣に変わっただけのこと。
お父様は青い顔で「うちは女性のほうが怖い」と呟いた。軽く視線を流したら、顔を背けられてしまったけれど。慣例に従えば、晩餐会は左右に分かれて座る。皇帝も頂点の席に座らないのだが、今回はわざと椅子を置いた。玉座に似せて、少しばかり豪華な椅子を用意する。
上座に前皇帝夫妻、私とエック兄様は下座となる右側に座る予定だ。料理はメインまで。デザートは作らないよう指示した。ところがエック兄様は作るよう指示する。残るから勿体無いと訴えたら、使用人や騎士への褒美だと口にした。
万が一にもデザートを用意しなかった話が外に漏れれば、公爵達に用心されてしまう。失念した部分を補うエック兄様は、驚いた様子で忙しなく瞬きした。
「トリアが見落とすなど珍しいですね」
「勘が鈍ったみたい。これから取り戻しますわ」
黒確定はノイベルト公爵、怪しい灰色は、ルーベンス公爵とギーレン公爵でしょうね。現時点で疑いが薄いのは、ライフアイゼン公爵のみ。この中で帝国の青の瞳を持つのは、ギーレン公爵家だけ。
「着替えてきますわ」
紺色の地味なドレスを選んだ。着飾る必要はない。断罪の場であり、罠を仕掛ける猟場なのだから。狩りにも、相応しい装いがあるの。肌を磨き、化粧を施す。髪は結わずにヴェールで覆い、紺色のドレスを纏った。私らしくない、やや大きめのサイズを用意させている。
急遽手配して間に合わなかった感じが、よく出ていると思うわ。鏡の前のいま一つ垢抜けない姿に、満面の笑みで頷いた。事情を知らない侍女達は、不満そうね。黒い靴を履き、紅の色だけ変更した。赤い口紅が透けて見えそうなんだもの。
念には念を入れなくちゃね。
「お嬢様、お時間でございます」
「コンラート、よろしくね」
前回はフォルト兄様だったけれど、執事に頼んだ。まだフォルト兄様の出番は先だもの。でも外出禁止のストレスが溜まりそうだから、早めに終わらせないといけない。
「こちらをお持ちになりますか?」
「あら、準備がいいのね。ありがとう」
すでに椿の扇を持っているが、追加でもう一本受け取る。ずっしりとした重さに、口元が緩んだ。いけない、引き締めておかないと。きゅっと結び直し、深呼吸した。公爵家は先に揃っているはず。ここからは表情も行動も、演技が必要よ。
扉をくぐり、静々と歩く。お父様とガブリエラ様は、ちょうど席に着くところね。お兄様達はまだで、一番いいタイミングだった。用意された席に腰掛け、わずかに顎を引く。悲しそうに見えるかしら。
用意した晩餐会の席を確かめる。皇族が五人、席を一つずつ空けてから、左右に公爵家を四つ並べた。壁のある左側にノイベルト公爵家、ルーベンス公爵家が入る。ルーベンス公爵家は、私に紅茶をかけた公爵令嬢の実家だった。何かしらの恨みを持っている可能性があるでしょう?
扉に近い右側は、ギーレン公爵家が座る。忠誠心に厚いライフアイゼン公爵家が、一番末席となった。入り口に近い席に忠臣を置くのも、罠の一つよ。ライフアイゼン公爵夫妻には、事前に情報を与えていた。もし作戦が漏れれば、忠臣が逆臣に変わっただけのこと。
お父様は青い顔で「うちは女性のほうが怖い」と呟いた。軽く視線を流したら、顔を背けられてしまったけれど。慣例に従えば、晩餐会は左右に分かれて座る。皇帝も頂点の席に座らないのだが、今回はわざと椅子を置いた。玉座に似せて、少しばかり豪華な椅子を用意する。
上座に前皇帝夫妻、私とエック兄様は下座となる右側に座る予定だ。料理はメインまで。デザートは作らないよう指示した。ところがエック兄様は作るよう指示する。残るから勿体無いと訴えたら、使用人や騎士への褒美だと口にした。
万が一にもデザートを用意しなかった話が外に漏れれば、公爵達に用心されてしまう。失念した部分を補うエック兄様は、驚いた様子で忙しなく瞬きした。
「トリアが見落とすなど珍しいですね」
「勘が鈍ったみたい。これから取り戻しますわ」
黒確定はノイベルト公爵、怪しい灰色は、ルーベンス公爵とギーレン公爵でしょうね。現時点で疑いが薄いのは、ライフアイゼン公爵のみ。この中で帝国の青の瞳を持つのは、ギーレン公爵家だけ。
「着替えてきますわ」
紺色の地味なドレスを選んだ。着飾る必要はない。断罪の場であり、罠を仕掛ける猟場なのだから。狩りにも、相応しい装いがあるの。肌を磨き、化粧を施す。髪は結わずにヴェールで覆い、紺色のドレスを纏った。私らしくない、やや大きめのサイズを用意させている。
急遽手配して間に合わなかった感じが、よく出ていると思うわ。鏡の前のいま一つ垢抜けない姿に、満面の笑みで頷いた。事情を知らない侍女達は、不満そうね。黒い靴を履き、紅の色だけ変更した。赤い口紅が透けて見えそうなんだもの。
念には念を入れなくちゃね。
「お嬢様、お時間でございます」
「コンラート、よろしくね」
前回はフォルト兄様だったけれど、執事に頼んだ。まだフォルト兄様の出番は先だもの。でも外出禁止のストレスが溜まりそうだから、早めに終わらせないといけない。
「こちらをお持ちになりますか?」
「あら、準備がいいのね。ありがとう」
すでに椿の扇を持っているが、追加でもう一本受け取る。ずっしりとした重さに、口元が緩んだ。いけない、引き締めておかないと。きゅっと結び直し、深呼吸した。公爵家は先に揃っているはず。ここからは表情も行動も、演技が必要よ。
扉をくぐり、静々と歩く。お父様とガブリエラ様は、ちょうど席に着くところね。お兄様達はまだで、一番いいタイミングだった。用意された席に腰掛け、わずかに顎を引く。悲しそうに見えるかしら。
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