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「証拠はほら、ここに」
娘に呆れられた父は頑張った。それはもう、侍従や付き添いの騎士が顔を引き攣らせるほど、全力で証拠探しをしたのだ。部屋中の引き出しから中身を投げ、ついでに引き出しそのものも放り出した。絨毯も捲り、下に何か隠されていないか調べる。
寝台は二度と使えないほど破壊された。柱の中に空洞がないかチェックする念の入れようだ。誰も話題に出さないが、ミューレンベルギア妃の私室は、人の住める状態ではなかった。嵐が通り過ぎた直後の荒れ具合である。
そこまでして家探しすれば、多少は妙な物も出るだろう。発見された手紙の束は、乱暴に放り投げた引き出しの二重底に隠されていた。普通に中身を確認するだけでは、見逃してしまう。ある意味、デルフィニューム公爵の乱暴さのお陰だった。
「お手紙……ですか」
これまたベタな証拠ですこと。得意げに父が持ってきた手紙は、宛先がなかった。通常の郵便手段ではなく、特殊なルートで行き来したことを示している。中を開くと暗号になっているが、その解読用の紙まで一緒に保管されていた。
「少なくとも、この紙だけは別に保管するべきでしょうに」
私なら丸暗記して解読の手がかりは残しません。そう呟くカレンデュラの隣で、クレチマスが手紙を何通か開いた。じっくり目を通し、あっさり解読していく。手がかりの紙を利用せず読んだクレチマスは、嫌そうに顔をしかめた。
「これ、違う作品だぞ。花冠がどうとか……コミカライズされたやつだ」
思惑が外れたと言わんばかりの独り言に反応したのは、靴を履いたばかりのティアレラだった。
「え? コミカライズの花冠……それって『花冠に愛を誓う』じゃないかしら」
きょとんとした顔の婚約者を置いて、クレチマスに近づく。が、愛らしいリッピアに気づいて、手前で足を止めた。婚約者にずかずか近づいたら、警戒されちゃう。ティアレラは「セーフ」と言いながら息を吐いた。
「セーフ? もしかしてにほ……むぐぅ」
日本人なの? 尋ねようとした聖女ビオラの口を、カレンデュラが塞ぐ。むぐむぐと動く唇を指先で摘んで「しぃ、後でね」と言い聞かされ、ビオラは涙目で頷いた。結構痛かったらしい。解放されて唇を指先で撫でた。
「かのお国の話は後日よ。まずはこの国の危機を救わなくては、ね」
カレンデュラのもっともな発言に、全員が重々しく頷いた。半数以上は、かの国って何だ? と内心で首を傾げていたが。この国の危機が最優先なのは間違いない。
「ホスタ王国には、帝国と連名で警告を行うとしよう。穏便な方法と現実的な方法、カレンデュラはどちらを好む?」
セントーレアの皇太子は、婚約者に決断を委ねる。本来なら国王が聞かれる質問だが、この場で異議を申し立てる者はいなかった。一番の当事者であり、巻き込まれた被害者であり、帝国を動かせる最強の駒を持つ女性なのだから。
淑女らしい仕草で扇を広げ、カレンデュラはひらりと仰いだ。その動きは、まるで首を落とすように斜めだった。
「なるほど。過激な方で行こう」
心得たと頷くコルジリネの黒い微笑に、デルフィニューム公爵は項垂れる。美しい最愛の娘は過激なところがあり、その過激さを煽る男を婚約者に認めてしまった。この国がセントーレア帝国に呑まれる日も近いんじゃないか? 不安が過ぎるも、何もできない自分を理解している。だからこそ、項垂れるしかなかった。
娘に呆れられた父は頑張った。それはもう、侍従や付き添いの騎士が顔を引き攣らせるほど、全力で証拠探しをしたのだ。部屋中の引き出しから中身を投げ、ついでに引き出しそのものも放り出した。絨毯も捲り、下に何か隠されていないか調べる。
寝台は二度と使えないほど破壊された。柱の中に空洞がないかチェックする念の入れようだ。誰も話題に出さないが、ミューレンベルギア妃の私室は、人の住める状態ではなかった。嵐が通り過ぎた直後の荒れ具合である。
そこまでして家探しすれば、多少は妙な物も出るだろう。発見された手紙の束は、乱暴に放り投げた引き出しの二重底に隠されていた。普通に中身を確認するだけでは、見逃してしまう。ある意味、デルフィニューム公爵の乱暴さのお陰だった。
「お手紙……ですか」
これまたベタな証拠ですこと。得意げに父が持ってきた手紙は、宛先がなかった。通常の郵便手段ではなく、特殊なルートで行き来したことを示している。中を開くと暗号になっているが、その解読用の紙まで一緒に保管されていた。
「少なくとも、この紙だけは別に保管するべきでしょうに」
私なら丸暗記して解読の手がかりは残しません。そう呟くカレンデュラの隣で、クレチマスが手紙を何通か開いた。じっくり目を通し、あっさり解読していく。手がかりの紙を利用せず読んだクレチマスは、嫌そうに顔をしかめた。
「これ、違う作品だぞ。花冠がどうとか……コミカライズされたやつだ」
思惑が外れたと言わんばかりの独り言に反応したのは、靴を履いたばかりのティアレラだった。
「え? コミカライズの花冠……それって『花冠に愛を誓う』じゃないかしら」
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「セーフ? もしかしてにほ……むぐぅ」
日本人なの? 尋ねようとした聖女ビオラの口を、カレンデュラが塞ぐ。むぐむぐと動く唇を指先で摘んで「しぃ、後でね」と言い聞かされ、ビオラは涙目で頷いた。結構痛かったらしい。解放されて唇を指先で撫でた。
「かのお国の話は後日よ。まずはこの国の危機を救わなくては、ね」
カレンデュラのもっともな発言に、全員が重々しく頷いた。半数以上は、かの国って何だ? と内心で首を傾げていたが。この国の危機が最優先なのは間違いない。
「ホスタ王国には、帝国と連名で警告を行うとしよう。穏便な方法と現実的な方法、カレンデュラはどちらを好む?」
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淑女らしい仕草で扇を広げ、カレンデュラはひらりと仰いだ。その動きは、まるで首を落とすように斜めだった。
「なるほど。過激な方で行こう」
心得たと頷くコルジリネの黒い微笑に、デルフィニューム公爵は項垂れる。美しい最愛の娘は過激なところがあり、その過激さを煽る男を婚約者に認めてしまった。この国がセントーレア帝国に呑まれる日も近いんじゃないか? 不安が過ぎるも、何もできない自分を理解している。だからこそ、項垂れるしかなかった。
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