15 / 95
15 慣れてるふり
しおりを挟む
テオドールに手を引かれたまま王宮内を抜けだし外へ出ると、辺りには暖かな日差しが降り注ぎ、柔らかく風がそよいでいた。
見上げた空の眩しさに足を止めれば、テオドールが不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「眩しさに目が眩んだだけですよ」
「そうか? でもフェリチアーノは細いから心配だな、室内に戻った方が良いか?」
「これでも私は男ですよ? そこまで軟ではありません。それにゆっくりと朝の散歩をするなんて久々ですから、どうかこのままで」
表情を和らげたテオドールは、自然にフェリチアーノの腰を抱き寄せ歩き出す。テオドールは恋人が居なかったと言うが、その行動一つ一つが慣れている者のそれだった。
恋人が居ないのに慣れた態度が出ると言う事は、もしかしたら相当遊んできたのかもしれないと思い至り、チラリとテオドールの顔を窺った。
程よく逞しい体と、短く整えられた髪に、垂れ目がちな目、それに加えて笑うとフェリチアーノより年が上の筈だが、少しばかりの幼さが垣間見え男らしさの中にも可愛らしさがあった。これは嘸かし男女問わず選びたい放題だったのだろうとフェリチアーのは思うのだ。
「テオドール様は随分と慣れていらっしゃいますね?」
「そんな事は無いと思うが……何故そう思う?」
「行動が全てスマートで手馴れていらっしゃるからですよ、随分と遊ばれて来たのですね?」
「は!? 俺がか!?」
予想外のフェリチアーノの発言に驚き、テオドールは慌てふためいた。その様子に思っていた反応と違うと、フェリチアーノは小首を傾げる。
「違うのですか?」
「遊ぶわけがないだろ!! 確かに恋人は欲しかったが、それは誰でもいいわけじゃなくてだなっ」
顔を赤らめ慌てふためくテオドールに、フェリチアーノはまたもや首を傾げる。
それをみたテオドールは肩を落とし、羞恥に染めた顔で言いにくそうに言葉を紡いだ。
「俺の肩書や、外見に群がって来るような人達じゃなくて、本当に心から愛せる者と……その、恋人になりたかったんだよ」
「それはなんとまぁ……随分と、乙女思考と言いますか……」
フェリチアーノより高い背を縮こませ、手で顔を覆い隠してしまったテオドールは乙女思考と言う事に自覚があるのだろう、耳まで真っ赤に染め上げてしまっていた。
その様子が余りにも見た目から想像した物とかけ離れており、面白くなってしまったフェリチアーノは、くすくすと笑い声を上げてしまう。
「笑う事ないだろう」
「すみません、あまりにも可愛らしかったものですから」
「はぁ!? 可愛らしいだって!? 冗談だろう!」
羞恥から一転、怪訝な顔をフェリチアーノに向けたテオドールに、更にフェリチアーノは笑ってしまう。
あまりの笑われ様に、溜息をついたテオドールに、フェリチアーノは流石に笑い過ぎてしまったかと心配になる。
「すみません、不敬ですよね」
「あぁもういいよ、顔に似合わず乙女思考な自覚はあるからな」
不貞腐れた様に歩き出したテオドールの後を追いかけながら、またもや口端が上がりそうになるのを咳ばらいをして押し込んだフェリチアーノは、テオドールの隣に並び歩いた。
「疑問なのですが、遊んでいたわけでもなく恋人も全くいなかったのなら、何故さらりと動けるのでしょう? 陛下にも予行演習として私は最適だと先程言われましたしたが、その必要はなさそうに見えますよ?」
「父上は何をフェリチアーノに話しているんだか……俺の行動は、そうだな。全部が全部、物心ついた時から見慣れて来た事をそのままやってるだけだからな、別に慣れている訳じゃない」
政略結婚であった王と王妃はそうは思わせない程仲が良いのは有名な話だ。恋愛結婚だった他の王子や王女は言わずもがなである。
そんな中で育って来たテオドールは、彼等がどういう動きをし、どういう態度で相手に接していて言葉を紡いでいるかと言う物を嫌になる程見て来たし、自身の恋人が出来た時には……と想像をしたのも数えきれない程で、年が一番近い姉とは恋愛小説も沢山読んだ程だった。
実践をしなくとも培われて来た知識が、フェリチアーノと言う仮の恋人が出来た事によってここぞとばかりに発揮されている訳だが、やはり実践を積んでいない分細かな所の配慮が今朝の様に抜け落ちてしまうのだ。
木漏れ日が落ちる並木道を歩きながら、成る程とテオドールの話に耳を傾ける。
愛が溢れた家族の下で育って来たテオドールが、自身もその愛を掴もうとするのは当然の事に思えた。
見上げた空の眩しさに足を止めれば、テオドールが不思議そうに顔を覗き込んでくる。
「眩しさに目が眩んだだけですよ」
「そうか? でもフェリチアーノは細いから心配だな、室内に戻った方が良いか?」
「これでも私は男ですよ? そこまで軟ではありません。それにゆっくりと朝の散歩をするなんて久々ですから、どうかこのままで」
表情を和らげたテオドールは、自然にフェリチアーノの腰を抱き寄せ歩き出す。テオドールは恋人が居なかったと言うが、その行動一つ一つが慣れている者のそれだった。
恋人が居ないのに慣れた態度が出ると言う事は、もしかしたら相当遊んできたのかもしれないと思い至り、チラリとテオドールの顔を窺った。
程よく逞しい体と、短く整えられた髪に、垂れ目がちな目、それに加えて笑うとフェリチアーノより年が上の筈だが、少しばかりの幼さが垣間見え男らしさの中にも可愛らしさがあった。これは嘸かし男女問わず選びたい放題だったのだろうとフェリチアーのは思うのだ。
「テオドール様は随分と慣れていらっしゃいますね?」
「そんな事は無いと思うが……何故そう思う?」
「行動が全てスマートで手馴れていらっしゃるからですよ、随分と遊ばれて来たのですね?」
「は!? 俺がか!?」
予想外のフェリチアーノの発言に驚き、テオドールは慌てふためいた。その様子に思っていた反応と違うと、フェリチアーノは小首を傾げる。
「違うのですか?」
「遊ぶわけがないだろ!! 確かに恋人は欲しかったが、それは誰でもいいわけじゃなくてだなっ」
顔を赤らめ慌てふためくテオドールに、フェリチアーノはまたもや首を傾げる。
それをみたテオドールは肩を落とし、羞恥に染めた顔で言いにくそうに言葉を紡いだ。
「俺の肩書や、外見に群がって来るような人達じゃなくて、本当に心から愛せる者と……その、恋人になりたかったんだよ」
「それはなんとまぁ……随分と、乙女思考と言いますか……」
フェリチアーノより高い背を縮こませ、手で顔を覆い隠してしまったテオドールは乙女思考と言う事に自覚があるのだろう、耳まで真っ赤に染め上げてしまっていた。
その様子が余りにも見た目から想像した物とかけ離れており、面白くなってしまったフェリチアーノは、くすくすと笑い声を上げてしまう。
「笑う事ないだろう」
「すみません、あまりにも可愛らしかったものですから」
「はぁ!? 可愛らしいだって!? 冗談だろう!」
羞恥から一転、怪訝な顔をフェリチアーノに向けたテオドールに、更にフェリチアーノは笑ってしまう。
あまりの笑われ様に、溜息をついたテオドールに、フェリチアーノは流石に笑い過ぎてしまったかと心配になる。
「すみません、不敬ですよね」
「あぁもういいよ、顔に似合わず乙女思考な自覚はあるからな」
不貞腐れた様に歩き出したテオドールの後を追いかけながら、またもや口端が上がりそうになるのを咳ばらいをして押し込んだフェリチアーノは、テオドールの隣に並び歩いた。
「疑問なのですが、遊んでいたわけでもなく恋人も全くいなかったのなら、何故さらりと動けるのでしょう? 陛下にも予行演習として私は最適だと先程言われましたしたが、その必要はなさそうに見えますよ?」
「父上は何をフェリチアーノに話しているんだか……俺の行動は、そうだな。全部が全部、物心ついた時から見慣れて来た事をそのままやってるだけだからな、別に慣れている訳じゃない」
政略結婚であった王と王妃はそうは思わせない程仲が良いのは有名な話だ。恋愛結婚だった他の王子や王女は言わずもがなである。
そんな中で育って来たテオドールは、彼等がどういう動きをし、どういう態度で相手に接していて言葉を紡いでいるかと言う物を嫌になる程見て来たし、自身の恋人が出来た時には……と想像をしたのも数えきれない程で、年が一番近い姉とは恋愛小説も沢山読んだ程だった。
実践をしなくとも培われて来た知識が、フェリチアーノと言う仮の恋人が出来た事によってここぞとばかりに発揮されている訳だが、やはり実践を積んでいない分細かな所の配慮が今朝の様に抜け落ちてしまうのだ。
木漏れ日が落ちる並木道を歩きながら、成る程とテオドールの話に耳を傾ける。
愛が溢れた家族の下で育って来たテオドールが、自身もその愛を掴もうとするのは当然の事に思えた。
55
あなたにおすすめの小説
恵方巻を食べてオメガになるはずが、氷の騎士団長様に胃袋を掴まれ溺愛されています
水凪しおん
BL
「俺はベータだ。けれど、クラウス様の隣に立ちたい」
王城の厨房で働く地味な料理人ルエンは、近衛騎士団長のクラウスに叶わぬ恋をしていた。身分も属性も違う自分には、彼との未来などない。そう諦めかけていたある日、ルエンは「伝説の恵方巻を食べればオメガになれる」という噂を耳にする。
一縷の望みをかけ、ルエンは危険な食材探しの旅へ! しかし、なぜかその旅先にはいつもクラウスの姿があって……?
勘違いから始まる、ベータ料理人×氷の騎士団長の胃袋攻略ラブファンタジー!
抑制剤の効かない薬師オメガは森に隠れる。最強騎士団長に見つかり、聖なるフェロモンで理性を溶かされ、国を捨てた逃避行の果てに番となる
水凪しおん
BL
「この香りを嗅いだ瞬間、俺の本能は二つに引き裂かれた」
人里離れた森で暮らす薬師のエリアルは、抑制剤が効かない特異体質のオメガ。彼から放たれるフェロモンは万病を癒やす聖なる力を持つが、同時に理性を失わせる劇薬でもあった。
ある日、流行り病の特効薬を求めて森を訪れた最強の騎士団長・ジークフリートに見つかってしまう。エリアルの香りに強烈に反応しながらも、鋼の理性で耐え抜くジークフリート。
「俺が、貴方の剣となり盾となる」
国を救うための道具として狙われるエリアルを守るため、最強の騎士は地位も名誉も投げ捨て、国を敵に回す逃避行へと旅立つ。
シリアスから始まり、最後は辺境での幸せなスローライフへ。一途な騎士と健気な薬師の、運命のBLファンタジー。
【運命】に捨てられ捨てたΩ
あまやどり
BL
「拓海さん、ごめんなさい」
秀也は白磁の肌を青く染め、瞼に陰影をつけている。
「お前が決めたことだろう、こっちはそれに従うさ」
秀也の安堵する声を聞きたくなく、逃げるように拓海は音を立ててカップを置いた。
【運命】に翻弄された両親を持ち、【運命】なんて言葉を信じなくなった医大生の拓海。大学で入学式が行われた日、「一目惚れしました」と眉目秀麗、頭脳明晰なインテリ眼鏡風な新入生、秀也に突然告白された。
なんと、彼は有名な大病院の院長の一人息子でαだった。
右往左往ありながらも番を前提に恋人となった二人。卒業後、二人の前に、秀也の幼馴染で元婚約者であるαの女が突然現れて……。
前から拓海を狙っていた先輩は傷ついた拓海を慰め、ここぞとばかりに自分と同居することを提案する。
※オメガバース独自解釈です。合わない人は危険です。
縦読みを推奨します。
新訳 美女と野獣 〜獣人と少年の物語〜
若目
BL
いまはすっかり財政難となった商家マルシャン家は父シャルル、長兄ジャンティー、長女アヴァール、次女リュゼの4人家族。
妹たちが経済状況を顧みずに贅沢三昧するなか、一家はジャンティーの頑張りによってなんとか暮らしていた。
ある日、父が商用で出かける際に、何か欲しいものはないかと聞かれて、ジャンティーは一輪の薔薇をねだる。
しかし、帰る途中で父は道に迷ってしまう。
父があてもなく歩いていると、偶然、美しく奇妙な古城に辿り着く。
父はそこで、庭に薔薇の木で作られた生垣を見つけた。
ジャンティーとの約束を思い出した父が薔薇を一輪摘むと、彼の前に怒り狂った様子の野獣が現れ、「親切にしてやったのに、厚かましくも薔薇まで盗むとは」と吠えかかる。
野獣は父に死をもって償うように迫るが、薔薇が土産であったことを知ると、代わりに子どもを差し出すように要求してきて…
そこから、ジャンティーの運命が大きく変わり出す。
童話の「美女と野獣」パロのBLです
僕を惑わせるのは素直な君
秋元智也
BL
父と妹、そして兄の家族3人で暮らして来た。
なんの不自由もない。
5年前に病気で母親を亡くしてから家事一切は兄の歩夢が
全てやって居た。
そこへいきなり父親からも唐突なカミングアウト。
「俺、再婚しようと思うんだけど……」
この言葉に驚きと迷い、そして一縷の不安が過ぎる。
だが、好きになってしまったになら仕方がない。
反対する事なく母親になる人と会う事に……。
そこには兄になる青年がついていて…。
いきなりの兄の存在に戸惑いながらも興味もあった。
だが、兄の心の声がどうにもおかしくて。
自然と聞こえて来てしまう本音に戸惑うながら惹かれて
いってしまうが……。
それは兄弟で、そして家族で……同性な訳で……。
何もかも不幸にする恋愛などお互い苦しみしかなく……。
あと一度だけでもいいから君に会いたい
藤雪たすく
BL
異世界に転生し、冒険者ギルドの雑用係として働き始めてかれこれ10年ほど経つけれど……この世界のご飯は素材を生かしすぎている。
いまだ食事に馴染めず米が恋しすぎてしまった為、とある冒険者さんの事が気になって仕方がなくなってしまった。
もう一度あの人に会いたい。あと一度でもあの人と会いたい。
※他サイト投稿済み作品を改題、修正したものになります
捨てられた生贄オメガ、魔王城で極上の『巣作り』始めます!~不眠症の魔王様、私のクッションで爆睡して溺愛モードに突入~
水凪しおん
BL
「役立たずのオメガ」として冷遇され、血も涙もない魔王への生贄として捨てられたリノ。
死を覚悟して連れてこられた魔王城は、寒くて硬くて、居住性最悪のブラック環境だった!?
「こんなところで寝られるか!」
極限状態で発動したオメガ特有の『巣作り本能』と、神業レベルの裁縫スキルが火を噴く!
ゴミ同然の布切れをフカフカのクッションに、冷たい石床を極上のラグマットにリフォーム。
すると、不眠症で常にイライラしていた魔王ザルドリスが、リノの作った「巣」のあまりの快適さに陥落してしまい……?
「……貴様、私を堕落させる気か」
(※いいえ、ただ快適に寝たいだけです)
殺されるどころか、魔王様に気に入られ、気付けば城中がリノの虜に。
捨てられた生贄オメガが、裁縫一つで魔王城を「世界一のマイホーム」に変える、ほのぼの逆転溺愛ファンタジー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる