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最推しの訪問
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「リュオン殿下、ご機嫌麗しく存じます。この度は私ごときの為にわざわざお越しくださりありがとうございます」
新生オフィーリアにしては我ながらなかなかだと思う挨拶の文言と身体に染みついた極上のカーテシーでリュオン殿下を迎える。
先程装備をバージョンアップしたのでそれに見合う挨拶をと私なりに頑張ってみた。
とはいっても貴族令嬢のいろいろは既ににこの身体と頭に染みついているので、実際のところそこまで頑張ってというわけでもないのだけど。
大事なのは脳内の引き出しを正しく開けることである。
「…………」
………?
「…………」
………???
しかしカーテシーのままいつまで待ってもリュオン殿下からの声がかからない。
この体勢、割とキツいんだけど?
だけどリュオン殿下のお声かけがないのに礼を崩すのは不敬なことだ。
だけどだけどそれが分かっていてもこの体勢はなかなかににキツい。
ハッ!もしや!嫌がらせ???
足がプルプルしてきた私はついそんなことを思った。
そして不敬覚悟で少し顔を上げ、そっと殿下を伺い見ると…
………固まってる。
これは…恐らく、いや、確実に、新生オフィーリアの変わり様に驚き過ぎてフリーズしてらっしゃる。
しかし、流石リュオン殿下、驚いた顔も神々しい。
流石私の最推しだわ。
中庭の時は状況的にゆっくり見れなかったけど、こうして見ると本当に素晴らしいとしか言いようがないわ。
…と、脱線してしまった。
そうじゃなくて、足がプルプルしてるんだって。
さて、どうしたものか?
そんなことを思いながら長いカーテシーの体勢にとうとう限界点が見えてきた頃、ようやく我にかえったリュオン殿下が言葉を発してくれた。
とはいっても一瞬我に返って「うむ、気にするな」とだけ言ってまたフリーズしてるけど。
それでもまあ良かった。
危うく足が使い物にならなくなるところだったし。
私はカーテシーの体勢を解いて密かに息を吐き、改めてリュオン殿下と向き合った。
するとリュオン殿下はフリーズしたまま口元に手をあててほのかに頬を染めていた。
え?え?なに?なんなの?
もしかして装備を変えて少しは好感度が上がったとか?
いやいや、それだとチョロ過ぎて心配になるレベル…
あ、でも、いくら嫌いでもしがらみとか諸々含めての婚約者がいるのに、そこを無視してあっさりヒロインちゃんに陥落するのを考えたら確かにチョロいのかも…
ということは奪い返すのは思ったよりも簡単?
それより問題は奪い返した後なの?
あまりにチョロいと誰かに奪われて奪い返してのエンドレスな未来しか見えないし…
ていうか王族がそれってどうなの?
でもゲームの内容的に…
うーん…
よし、いくら見た目だけ変わってもオフィーリアはオフィーリアだし、リュオン殿下はさっさと帰るだろうから、帰ったら作戦の見直しでもするか。
そう心に決めた私は微笑ながら未だ呆けているリュオン殿下を客間に案内したのだった。
新生オフィーリアにしては我ながらなかなかだと思う挨拶の文言と身体に染みついた極上のカーテシーでリュオン殿下を迎える。
先程装備をバージョンアップしたのでそれに見合う挨拶をと私なりに頑張ってみた。
とはいっても貴族令嬢のいろいろは既ににこの身体と頭に染みついているので、実際のところそこまで頑張ってというわけでもないのだけど。
大事なのは脳内の引き出しを正しく開けることである。
「…………」
………?
「…………」
………???
しかしカーテシーのままいつまで待ってもリュオン殿下からの声がかからない。
この体勢、割とキツいんだけど?
だけどリュオン殿下のお声かけがないのに礼を崩すのは不敬なことだ。
だけどだけどそれが分かっていてもこの体勢はなかなかににキツい。
ハッ!もしや!嫌がらせ???
足がプルプルしてきた私はついそんなことを思った。
そして不敬覚悟で少し顔を上げ、そっと殿下を伺い見ると…
………固まってる。
これは…恐らく、いや、確実に、新生オフィーリアの変わり様に驚き過ぎてフリーズしてらっしゃる。
しかし、流石リュオン殿下、驚いた顔も神々しい。
流石私の最推しだわ。
中庭の時は状況的にゆっくり見れなかったけど、こうして見ると本当に素晴らしいとしか言いようがないわ。
…と、脱線してしまった。
そうじゃなくて、足がプルプルしてるんだって。
さて、どうしたものか?
そんなことを思いながら長いカーテシーの体勢にとうとう限界点が見えてきた頃、ようやく我にかえったリュオン殿下が言葉を発してくれた。
とはいっても一瞬我に返って「うむ、気にするな」とだけ言ってまたフリーズしてるけど。
それでもまあ良かった。
危うく足が使い物にならなくなるところだったし。
私はカーテシーの体勢を解いて密かに息を吐き、改めてリュオン殿下と向き合った。
するとリュオン殿下はフリーズしたまま口元に手をあててほのかに頬を染めていた。
え?え?なに?なんなの?
もしかして装備を変えて少しは好感度が上がったとか?
いやいや、それだとチョロ過ぎて心配になるレベル…
あ、でも、いくら嫌いでもしがらみとか諸々含めての婚約者がいるのに、そこを無視してあっさりヒロインちゃんに陥落するのを考えたら確かにチョロいのかも…
ということは奪い返すのは思ったよりも簡単?
それより問題は奪い返した後なの?
あまりにチョロいと誰かに奪われて奪い返してのエンドレスな未来しか見えないし…
ていうか王族がそれってどうなの?
でもゲームの内容的に…
うーん…
よし、いくら見た目だけ変わってもオフィーリアはオフィーリアだし、リュオン殿下はさっさと帰るだろうから、帰ったら作戦の見直しでもするか。
そう心に決めた私は微笑ながら未だ呆けているリュオン殿下を客間に案内したのだった。
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