婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月

文字の大きさ
8 / 39

最推しの訪問

しおりを挟む
「リュオン殿下、ご機嫌麗しく存じます。この度は私ごときの為にわざわざお越しくださりありがとうございます」

新生オフィーリアにしては我ながらなかなかだと思う挨拶の文言と身体に染みついた極上のカーテシーでリュオン殿下を迎える。

先程装備をバージョンアップしたのでそれに見合う挨拶をと私なりに頑張ってみた。

とはいっても貴族令嬢のいろいろは既ににこの身体と頭に染みついているので、実際のところそこまで頑張ってというわけでもないのだけど。

大事なのは脳内の引き出しを正しく開けることである。

「…………」

………?

「…………」

………???

しかしカーテシーのままいつまで待ってもリュオン殿下からの声がかからない。

この体勢、割とキツいんだけど?

だけどリュオン殿下のお声かけがないのに礼を崩すのは不敬なことだ。

だけどだけどそれが分かっていてもこの体勢はなかなかににキツい。

ハッ!もしや!嫌がらせ???

足がプルプルしてきた私はついそんなことを思った。

そして不敬覚悟で少し顔を上げ、そっと殿下を伺い見ると…

………固まってる。

これは…恐らく、いや、確実に、新生オフィーリアの変わり様に驚き過ぎてフリーズしてらっしゃる。

しかし、流石リュオン殿下、驚いた顔も神々しい。

流石私の最推しだわ。

中庭の時は状況的にゆっくり見れなかったけど、こうして見ると本当に素晴らしいとしか言いようがないわ。

…と、脱線してしまった。

そうじゃなくて、足がプルプルしてるんだって。

さて、どうしたものか?

そんなことを思いながら長いカーテシーの体勢にとうとう限界点が見えてきた頃、ようやく我にかえったリュオン殿下が言葉を発してくれた。

とはいっても一瞬我に返って「うむ、気にするな」とだけ言ってまたフリーズしてるけど。

それでもまあ良かった。

危うく足が使い物にならなくなるところだったし。

私はカーテシーの体勢を解いて密かに息を吐き、改めてリュオン殿下と向き合った。

するとリュオン殿下はフリーズしたまま口元に手をあててほのかに頬を染めていた。

え?え?なに?なんなの?

もしかして装備を変えて少しは好感度が上がったとか?

いやいや、それだとチョロ過ぎて心配になるレベル…

あ、でも、いくら嫌いでもしがらみとか諸々含めての婚約者がいるのに、そこを無視してあっさりヒロインちゃんに陥落するのを考えたら確かにチョロいのかも…

ということは奪い返すのは思ったよりも簡単?

それより問題は奪い返した後なの?

あまりにチョロいと誰かに奪われて奪い返してのエンドレスな未来しか見えないし…

ていうか王族がそれってどうなの?

でもゲームの内容的に…

うーん…

よし、いくら見た目だけ変わってもオフィーリアはオフィーリアだし、リュオン殿下はさっさと帰るだろうから、帰ったら作戦の見直しでもするか。

そう心に決めた私は微笑ながら未だ呆けているリュオン殿下を客間に案内したのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

執着のなさそうだった男と別れて、よりを戻すだけの話。

椎茸
恋愛
伯爵ユリアナは、学園イチ人気の侯爵令息レオポルドとお付き合いをしていた。しかし、次第に、レオポルドが周囲に平等に優しいところに思うことができて、別れを決断する。 ユリアナはあっさりと別れが成立するものと思っていたが、どうやらレオポルドの様子が変で…?

私は既にフラれましたので。

椎茸
恋愛
子爵令嬢ルフェルニア・シラーは、国一番の美貌を持つ幼馴染の公爵令息ユリウス・ミネルウァへの想いを断ち切るため、告白をする。ルフェルニアは、予想どおりフラれると、元来の深く悩まない性格ゆえか、気持ちを切り替えて、仕事と婚活に邁進しようとする。一方、仕事一筋で自身の感情にも恋愛事情にも疎かったユリウスは、ずっと一緒に居てくれたルフェルニアに距離を置かれたことで、感情の蓋が外れてルフェルニアの言動に一喜一憂するように…? ※小説家になろう様、カクヨム様にも掲載しております。

7年ぶりに私を嫌う婚約者と目が合ったら自分好みで驚いた

小本手だるふ
恋愛
真実の愛に気づいたと、7年間目も合わせない婚約者の国の第二王子ライトに言われた公爵令嬢アリシア。 7年ぶりに目を合わせたライトはアリシアのどストライクなイケメンだったが、真実の愛に憧れを抱くアリシアはライトのためにと自ら婚約解消を提案するがのだが・・・・・・。 ライトとアリシアとその友人たちのほのぼの恋愛話。 ※よくある話で設定はゆるいです。 誤字脱字色々突っ込みどころがあるかもしれませんが温かい目でご覧ください。

婚約を解消したら、何故か元婚約者の家で養われることになった

下菊みこと
恋愛
気付いたら好きな人に捕まっていたお話。 小説家になろう様でも投稿しています。

【完結】離婚を切り出したら私に不干渉だったはずの夫が激甘に豹変しました

雨宮羽那
恋愛
 結婚して5年。リディアは悩んでいた。  夫のレナードが仕事で忙しく、夫婦らしいことが何一つないことに。  ある日「私、離婚しようと思うの」と義妹に相談すると、とある薬を渡される。  どうやらそれは、『ちょーっとだけ本音がでちゃう薬』のよう。  そうしてやってきた離婚の話を告げる場で、リディアはつい好奇心に負けて、夫へ薬を飲ませてしまう。  すると、あら不思議。  いつもは浮ついた言葉なんて口にしない夫が、とんでもなく甘い言葉を口にしはじめたのだ。 「どうか離婚だなんて言わないでください。私のスイートハニーは君だけなんです」 (誰ですかあなた) ◇◇◇◇ ※全3話。 ※コメディ重視のお話です。深く考えちゃダメです!少しでも笑っていただけますと幸いです(*_ _))*゜

うっかり結婚を承諾したら……。

翠月るるな
恋愛
「結婚しようよ」 なんて軽い言葉で誘われて、承諾することに。 相手は女避けにちょうどいいみたいだし、私は煩わしいことからの解放される。 白い結婚になるなら、思う存分魔導の勉強ができると喜んだものの……。 実際は思った感じではなくて──?

十三回目の人生でようやく自分が悪役令嬢ポジと気づいたので、もう殿下の邪魔はしませんから構わないで下さい!

翠玉 結
恋愛
公爵令嬢である私、エリーザは挙式前夜の式典で命を落とした。 「貴様とは、婚約破棄する」と残酷な事を突きつける婚約者、王太子殿下クラウド様の手によって。 そしてそれが一度ではなく、何度も繰り返していることに気が付いたのは〖十三回目〗の人生。 死んだ理由…それは、毎回悪役令嬢というポジションで立ち振る舞い、殿下の恋路を邪魔していたいたからだった。 どう頑張ろうと、殿下からの愛を受け取ることなく死ぬ。 その結末をが分かっているならもう二度と同じ過ちは繰り返さない! そして死なない!! そう思って殿下と関わらないようにしていたのに、 何故か前の記憶とは違って、まさかのご執心で溺愛ルートまっしぐらで?! 「殿下!私、死にたくありません!」 ✼••┈┈┈┈••✼••┈┈┈┈••✼ ※他サイトより転載した作品です。

クリスティーヌの本当の幸せ

宝月 蓮
恋愛
ニサップ王国での王太子誕生祭にて、前代未聞の事件が起こった。王太子が婚約者である公爵令嬢に婚約破棄を突き付けたのだ。そして新たに男爵令嬢と婚約する目論見だ。しかし、そう上手くはいかなかった。 この事件はナルフェック王国でも話題になった。ナルフェック王国の男爵令嬢クリスティーヌはこの事件を知り、自分は絶対に身分不相応の相手との結婚を夢見たりしないと決心する。タルド家の為、領民の為に行動するクリスティーヌ。そんな彼女が、自分にとっての本当の幸せを見つける物語。 小説家になろう、カクヨムにも投稿しています。

処理中です...