婚約者を奪い返そうとしたらいきなり溺愛されました

宵闇 月

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憂鬱なお見舞い(side リュオン)

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私は今、婚約者であるオフィーリアが住むローズ公爵邸に向かっている。

先日オフィーリアが突然倒れたらしく、婚約者としてそのお見舞いに行く為だ。

正直なところ憂鬱だけどな。

オフィーリアは私の愛するエルリナと違って傲慢で山のようなプライドの持ち主だ。

少しでも気に入らないことがあるとまるで幼子が癇癪を起こしたかのように甲高い声で叫び、理不尽なことでも平気で言う。

かと思えば私には媚びてきて自分が疎まれていることをまるで分かってない。

そしていつも的外れに他者を糾弾する。

はぁ…本当に最悪だ。

さっさと行ってさっさと帰ろう。

私はそう心に決めてまた溜息を吐いた。

そういえば昔のオフィーリアはそんな風ではなかったな…

何故ああなったのか?

ふとそんなことを思ったが、エルリナの愛らしい笑顔がチラついて、即座に考えることを放棄した。

そしてそのまま愛するエルリナを思い出して物思いに耽っていると馬車がローズ公爵邸の目の前に停まった。

私が王子としての表情を作って馬車を降りると既に出迎えが待っており、一旦エントランスに案内される。

憂鬱な気分をお首にも出さず侍従からお見舞いの花束を受け取りオフィーリアを待つが、本音はオフィーリアに会わずにこの花束だけ預けて立ち去りたい。

だから花束を渡したら早々に立ち去ろう。

とりあえず病み上がりの婚約者に無理はさせられないとでも言っておけばいいだろう。

気遣うでもオフィーリアなら喜んで受け入れるはずだ。

第二王子とはいえ王子には変わりない。

やらなければならない仕事も山積みだ。

だから好意を持てない相手の為に時間を割くのは不本意だ。

私はそんな下衆な思いでオフィーリアを待った。

この後まさか予想だにしなかったような現実が待っているとも知らずに。

そしてこの訪問によって自分の運命が変わるとも思わずに。
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