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080 増える面倒事
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ハンフリー領テレンスの街、グレイとフラッグだけを連れてツアイス伯爵の館に向かった。
馬車も護衛もヒンメル伯爵家の物で、変な顔をされたが正門から中へ入り玄関前に横付けをする。
急いで開けられた扉から細面の男が出てきて迎えてくれた。
御者が馬車の扉を開けると、ヘイラート様が降りて身分証を男に突きつけた。
「王国の紋章が何を意味するのか知っているな」
「はい。承知致しております」
流石は公爵家の嫡男様、下位の物に対する扱いをよく心得ている。
男が頭を下げている隙にヘイラート様の後ろに立つ。
グレイも続いて降りようとするのを制して、ヘイラート様の横に立ち男に確認する。
「ツアイス伯爵は何故迎えに出ないのだ」
「主は留守で御座いますので、私が御用を受け賜りたく」
「お前の名は?」
「当家の執事を致しております、エリックと申します」
「エリックか、此に見覚えはあるよな」
エリックの目の前に、ゲイルの持っていた身分証を突きつけた。
一瞬頬がピクリと動いたが、それだけ。
ゲイル達は戻ってこないし、バネッサで俺達が大暴れをしていたのは伝わっている筈なので、心の準備は出来ていたって事か。
でも残念、馬車から降りてきたグレイを見て頬が痙攣している。
「ツアイス伯爵は何処にいる? 素直に喋るか、痛い思いをして喋るか好きな方を選べ」
青い顔をして立ち尽くしているので質問を変える。
「ヒンメル伯爵が来た筈だが?」
これも黙り、グレイに魔力は一つだと念を押してから、鼻パッチンをお願いする。
〈パチン〉と軽い音がしてエリックが仰け反り、涙目で鼻を押さえて呻いているので股間パッチンに切り替えると、エビの様に後ろに飛びすさりながら座り込んでしまった。
「喋らなければ段々と威力が上がるよ。使い物にならなくなっても良いのかな?」
股間を押さえれば鼻に、鼻を押さえれば股間に、段々と強くなる衝撃を受けて土下座を始めた。
「お許し下さい! 何でも喋ります!」
「ツアイス伯爵の居場所とヒンメル伯爵が来たのか聞いているんだ」
「主は側近達を連れて出て行かれました。ヒンメル伯爵様が来て二日目の事です」
「ヒンメルが来たのは何時だ?」
「十日近くになります。お出でなされて暫く二人だけでお話しをなされて、ヒンメル伯爵様は直ぐに出立致しました」
一週間以上前ではどうにもならないが、果たして逃げた先が安全地帯なのかな。
「エリック、お客様ですか?」
「誰だ?」
「アリアンヌ奥様です」
奥様、思わずヘイラートの顔を見ると、彼も困惑している。
「ちょっと待て! 伯爵は誰と出ていったのだ?」
「ですから側近と護衛達を連れて出掛けられました」
「家族は?」
「全て居られますが」
また面倒な事になったぞ。
「どうします?」
「私はランディス殿の指示に従えと命じられています」
王都で襲われた時の後、ヒューヘン宰相と会った時の言葉を思い出した『王国は君を責める事はしないし、必要なら代わりの者を送る事になる』と言っていたが、やはりこうなる事を見越していたって事か。
鼻と股間が焦げたエリックを見て眉をひそめる奥様にご挨拶。
「ツアイス伯爵夫人、執事のエリックにも見せましたが、此を御存知ですよね」
王国の身分証を見せると驚いている。
「此方はホールデンス公爵様の御嫡男であられる、ヘイラート・ホールデンス様です。重要な話がありますので、ご家族の方々を伯爵の執務室にお呼び願います」
俺の身分証を見て驚いていたが、ヘイラート様の提示した二枚の身分証を見て黙って頷いた。
冒険者の小僧が示す身分証よりも、ホールデンス公爵と王国の身分証の方が信用あるよなぁ。
グレイにエリックの治療を頼み、怪我が治ってホッとしているエリックを蹴り飛ばす。
「その汚い物を隠す服に着替えて、執務室に来い!」
* * * * * * *
執務室に集まったのは、ツアイス伯爵夫人と嫡男のラルフ・ツアイスに彼の妻と子供達。
それに三男と彼の妻で、皆不安げな表情で集まった。
ヘイラート様に事の説明をさせようと思ったが、お前が最高責任者だと目で促されてしまった。
この辺は公爵家の嫡男、嫌な役目は人に押しつける抜け目のなさは父親譲りか。
「集まってもらったのは他でもない。ツアイス伯爵は俺の従える幻獣と俺の暗殺に関与した疑いで王国から追われている」
「お待ち下さい。貴方は宰相閣下と同格の身分証をお持ちと執事より伝えられましたが、確認させてもらえますか」
「尤もだ、彼、ヘイラート殿も王国の大臣と同等の資格を与えられているので確認しろ」
エリックに身分証を預けると、ヘイラート様の分と二枚を嫡男に手渡している。
それを受け取り入念にチェックしていたが、王国の紋章を確認して態度が変わった。
「失礼致しました。ランディス様が先程仰られた事は事実ですか? お二人以外はヒンメル伯爵家の部下のようですが」
「ヒンメル伯爵は俺を襲った罪と逐電の疑いがあり、屋敷は王国の騎士団が押さえている」
疲れ切った十数人が、屋敷に居残っているだけだがな。
「此の地もそうなるはずだが、緊急事態故それが出来ない。ラルフと言ったな、何れ此の地の接収に王国から代官が来るだろう。それまではお前が治めろ。
何事も無く引き渡す事が出来たなら、軽い処罰で済む様に宰相閣下に口添えをしてやろう」
「万が一父が戻りましたら・・・」
「側近共々監禁しておけ。俺達はロンベルト領スザンヌの街へ行き、ブリスト伯爵に会わねばならないので後は任せたぞ」
頭を下げるラルフに「俺と幻獣の事は執事のエリックに聞け。少しは事情を知っているはずだ」と教えておいた。
話を聞いて逃げ出すか、観念して王国の使いに領地を引き渡すかは好きにしろって所だ。
そのまま待たせている馬車に乗り、ラルフ達の見送りを受けてツアイス伯爵邸を後にした。
* * * * * * *
ランディスの乗る馬車に付き従うタイガーキャット、王国の通達ではタイガーキャット二頭と聞いていたのだが、一頭だけでも迫力があった。
馬車が正門から出て行くと、エリックを執務室に連れて行きランディスの言葉を受けて尋問を始めた。
エリックは父から命じられた事をゲイルなる冒険者に伝えていただけで、肝心な事は何一つ知らなかった。
父の裏の顔を知っている男は父と共に姿を消していて、何も判らずじまいになってしまった。
エリックの話を聞いて絶望したが、ランディスの『何事も無く引き渡す事が出来たなら、軽い処罰で済む様に宰相閣下に口添えをしてやろう』との言葉を思い出し、ツアイス家を存続させるために出来る限りの事をしようと誓った。
* * * * * * *
「ランディス殿はあれで良いのですか」
「気に入らないが執事も命令されての事だろうし、置いて行かれた所を見ると重用されていたとは思えない。それにブラビアでのんびりしていて、最悪の事態になった時に、間に合いませんでしたは不味いですからね。タイラント以下三家の事は、王国が何とかするでしょう」
「しかし、ヒンメルとツアイスは逃してしまいましたね」
「それはどうかな」
「どうかな、とは?」
「タイラント公爵の本音は知らないが、ホールデンス公爵様と張り合い、クラウディオ王国を利用して上に立ちたかった。クラウディオ王国との繋がりにヒンメル、ツアイスを利用したが、二人はクラウディオ王国に取り込まれていた様で逆に利用されていたらしい。それが露見して逃げ出す羽目になったが、逃げ込まれたクラウディオ王国はどう思うかな」
「ホールデンス王国に対する、工作拠点を失ったって事ですか」
「裏工作をする拠点が一つって事は無いでしょうが、手痛いしくじりですね。それだけなら未だ良いが、自国に逃げ込まれると裏で糸を引いていた事を公然と認める事になる。流石にそれは不味いでしょうから、両名は無事に逃げ込んだからと言って、厚遇されるとは思えません。利用価値なんて欠片も無くなったのですから居てもらっては困りますからね。それに、三家が消えた力の空白に乗じて侵攻してきても、グレイやアッシュを排除出来るかな」
「侵略が失敗すれば、二人は疫病神扱いですか」
歩くのが面倒になり、俺の隣りにジャンプしてきたグレイをモフりながら肩を竦めておく。
* * * * * * *
ロンベルト領スザンヌの街に到着しブリスト伯爵邸に向かったが、ブラビアからスザンヌの迄の間に、何度も早馬に追い越されすれ違った。
だが俺達の乗った馬車と判っているはずだが、一度も止められなかったので戦争までにはならない様だ。
クラウディオ王国も、アッシュとグレイを相手に戦争する不利は判っているはずなので無理はしないか。
ブリスト伯爵邸に到着すると、正門が開けられていて中へ通された。
出迎えには当主である伯爵が立っているので、ヘイラート様を馬車から先に降ろしてその陰に隠れた。
「ヒューヘン宰相殿より事情は伺っております。彼がランディス殿ですか」
ヘイラート様が横により俺を押し出して「私はランディス殿の補佐を命じられた、ヘイラート・ホールデンスです」と逃げやがる。
「あー、ブリスト伯爵様、面倒事はヘイラート様にどうぞ。私はクラウディオ王国から侵攻が有ったときの防衛担当です。状況をお報せください」
玄関前で使用人も多数いるので、執務室に移動して巨大な机に置かれた地図の前に立つ。
ブリスト伯爵の領都スザンヌ、 クレメンテと続き、その先にイザークという国境の町が在る。
草原の中程に幅50m程の川が流れていて此が国境となる。
川を越え草原の向こうにクラウディオ王国のマルゼブ砦が在り、背後にマルゼブの町となる
ホールデンス王国側も、国境の川イザーク砦イザークの町と全く同じ配置で、お互いに相手の動向を探っているとの事だった。
現在マルゼブ砦には常駐兵しか居らず、町も平穏だと説明を受けた。
馬車も護衛もヒンメル伯爵家の物で、変な顔をされたが正門から中へ入り玄関前に横付けをする。
急いで開けられた扉から細面の男が出てきて迎えてくれた。
御者が馬車の扉を開けると、ヘイラート様が降りて身分証を男に突きつけた。
「王国の紋章が何を意味するのか知っているな」
「はい。承知致しております」
流石は公爵家の嫡男様、下位の物に対する扱いをよく心得ている。
男が頭を下げている隙にヘイラート様の後ろに立つ。
グレイも続いて降りようとするのを制して、ヘイラート様の横に立ち男に確認する。
「ツアイス伯爵は何故迎えに出ないのだ」
「主は留守で御座いますので、私が御用を受け賜りたく」
「お前の名は?」
「当家の執事を致しております、エリックと申します」
「エリックか、此に見覚えはあるよな」
エリックの目の前に、ゲイルの持っていた身分証を突きつけた。
一瞬頬がピクリと動いたが、それだけ。
ゲイル達は戻ってこないし、バネッサで俺達が大暴れをしていたのは伝わっている筈なので、心の準備は出来ていたって事か。
でも残念、馬車から降りてきたグレイを見て頬が痙攣している。
「ツアイス伯爵は何処にいる? 素直に喋るか、痛い思いをして喋るか好きな方を選べ」
青い顔をして立ち尽くしているので質問を変える。
「ヒンメル伯爵が来た筈だが?」
これも黙り、グレイに魔力は一つだと念を押してから、鼻パッチンをお願いする。
〈パチン〉と軽い音がしてエリックが仰け反り、涙目で鼻を押さえて呻いているので股間パッチンに切り替えると、エビの様に後ろに飛びすさりながら座り込んでしまった。
「喋らなければ段々と威力が上がるよ。使い物にならなくなっても良いのかな?」
股間を押さえれば鼻に、鼻を押さえれば股間に、段々と強くなる衝撃を受けて土下座を始めた。
「お許し下さい! 何でも喋ります!」
「ツアイス伯爵の居場所とヒンメル伯爵が来たのか聞いているんだ」
「主は側近達を連れて出て行かれました。ヒンメル伯爵様が来て二日目の事です」
「ヒンメルが来たのは何時だ?」
「十日近くになります。お出でなされて暫く二人だけでお話しをなされて、ヒンメル伯爵様は直ぐに出立致しました」
一週間以上前ではどうにもならないが、果たして逃げた先が安全地帯なのかな。
「エリック、お客様ですか?」
「誰だ?」
「アリアンヌ奥様です」
奥様、思わずヘイラートの顔を見ると、彼も困惑している。
「ちょっと待て! 伯爵は誰と出ていったのだ?」
「ですから側近と護衛達を連れて出掛けられました」
「家族は?」
「全て居られますが」
また面倒な事になったぞ。
「どうします?」
「私はランディス殿の指示に従えと命じられています」
王都で襲われた時の後、ヒューヘン宰相と会った時の言葉を思い出した『王国は君を責める事はしないし、必要なら代わりの者を送る事になる』と言っていたが、やはりこうなる事を見越していたって事か。
鼻と股間が焦げたエリックを見て眉をひそめる奥様にご挨拶。
「ツアイス伯爵夫人、執事のエリックにも見せましたが、此を御存知ですよね」
王国の身分証を見せると驚いている。
「此方はホールデンス公爵様の御嫡男であられる、ヘイラート・ホールデンス様です。重要な話がありますので、ご家族の方々を伯爵の執務室にお呼び願います」
俺の身分証を見て驚いていたが、ヘイラート様の提示した二枚の身分証を見て黙って頷いた。
冒険者の小僧が示す身分証よりも、ホールデンス公爵と王国の身分証の方が信用あるよなぁ。
グレイにエリックの治療を頼み、怪我が治ってホッとしているエリックを蹴り飛ばす。
「その汚い物を隠す服に着替えて、執務室に来い!」
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執務室に集まったのは、ツアイス伯爵夫人と嫡男のラルフ・ツアイスに彼の妻と子供達。
それに三男と彼の妻で、皆不安げな表情で集まった。
ヘイラート様に事の説明をさせようと思ったが、お前が最高責任者だと目で促されてしまった。
この辺は公爵家の嫡男、嫌な役目は人に押しつける抜け目のなさは父親譲りか。
「集まってもらったのは他でもない。ツアイス伯爵は俺の従える幻獣と俺の暗殺に関与した疑いで王国から追われている」
「お待ち下さい。貴方は宰相閣下と同格の身分証をお持ちと執事より伝えられましたが、確認させてもらえますか」
「尤もだ、彼、ヘイラート殿も王国の大臣と同等の資格を与えられているので確認しろ」
エリックに身分証を預けると、ヘイラート様の分と二枚を嫡男に手渡している。
それを受け取り入念にチェックしていたが、王国の紋章を確認して態度が変わった。
「失礼致しました。ランディス様が先程仰られた事は事実ですか? お二人以外はヒンメル伯爵家の部下のようですが」
「ヒンメル伯爵は俺を襲った罪と逐電の疑いがあり、屋敷は王国の騎士団が押さえている」
疲れ切った十数人が、屋敷に居残っているだけだがな。
「此の地もそうなるはずだが、緊急事態故それが出来ない。ラルフと言ったな、何れ此の地の接収に王国から代官が来るだろう。それまではお前が治めろ。
何事も無く引き渡す事が出来たなら、軽い処罰で済む様に宰相閣下に口添えをしてやろう」
「万が一父が戻りましたら・・・」
「側近共々監禁しておけ。俺達はロンベルト領スザンヌの街へ行き、ブリスト伯爵に会わねばならないので後は任せたぞ」
頭を下げるラルフに「俺と幻獣の事は執事のエリックに聞け。少しは事情を知っているはずだ」と教えておいた。
話を聞いて逃げ出すか、観念して王国の使いに領地を引き渡すかは好きにしろって所だ。
そのまま待たせている馬車に乗り、ラルフ達の見送りを受けてツアイス伯爵邸を後にした。
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ランディスの乗る馬車に付き従うタイガーキャット、王国の通達ではタイガーキャット二頭と聞いていたのだが、一頭だけでも迫力があった。
馬車が正門から出て行くと、エリックを執務室に連れて行きランディスの言葉を受けて尋問を始めた。
エリックは父から命じられた事をゲイルなる冒険者に伝えていただけで、肝心な事は何一つ知らなかった。
父の裏の顔を知っている男は父と共に姿を消していて、何も判らずじまいになってしまった。
エリックの話を聞いて絶望したが、ランディスの『何事も無く引き渡す事が出来たなら、軽い処罰で済む様に宰相閣下に口添えをしてやろう』との言葉を思い出し、ツアイス家を存続させるために出来る限りの事をしようと誓った。
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「ランディス殿はあれで良いのですか」
「気に入らないが執事も命令されての事だろうし、置いて行かれた所を見ると重用されていたとは思えない。それにブラビアでのんびりしていて、最悪の事態になった時に、間に合いませんでしたは不味いですからね。タイラント以下三家の事は、王国が何とかするでしょう」
「しかし、ヒンメルとツアイスは逃してしまいましたね」
「それはどうかな」
「どうかな、とは?」
「タイラント公爵の本音は知らないが、ホールデンス公爵様と張り合い、クラウディオ王国を利用して上に立ちたかった。クラウディオ王国との繋がりにヒンメル、ツアイスを利用したが、二人はクラウディオ王国に取り込まれていた様で逆に利用されていたらしい。それが露見して逃げ出す羽目になったが、逃げ込まれたクラウディオ王国はどう思うかな」
「ホールデンス王国に対する、工作拠点を失ったって事ですか」
「裏工作をする拠点が一つって事は無いでしょうが、手痛いしくじりですね。それだけなら未だ良いが、自国に逃げ込まれると裏で糸を引いていた事を公然と認める事になる。流石にそれは不味いでしょうから、両名は無事に逃げ込んだからと言って、厚遇されるとは思えません。利用価値なんて欠片も無くなったのですから居てもらっては困りますからね。それに、三家が消えた力の空白に乗じて侵攻してきても、グレイやアッシュを排除出来るかな」
「侵略が失敗すれば、二人は疫病神扱いですか」
歩くのが面倒になり、俺の隣りにジャンプしてきたグレイをモフりながら肩を竦めておく。
* * * * * * *
ロンベルト領スザンヌの街に到着しブリスト伯爵邸に向かったが、ブラビアからスザンヌの迄の間に、何度も早馬に追い越されすれ違った。
だが俺達の乗った馬車と判っているはずだが、一度も止められなかったので戦争までにはならない様だ。
クラウディオ王国も、アッシュとグレイを相手に戦争する不利は判っているはずなので無理はしないか。
ブリスト伯爵邸に到着すると、正門が開けられていて中へ通された。
出迎えには当主である伯爵が立っているので、ヘイラート様を馬車から先に降ろしてその陰に隠れた。
「ヒューヘン宰相殿より事情は伺っております。彼がランディス殿ですか」
ヘイラート様が横により俺を押し出して「私はランディス殿の補佐を命じられた、ヘイラート・ホールデンスです」と逃げやがる。
「あー、ブリスト伯爵様、面倒事はヘイラート様にどうぞ。私はクラウディオ王国から侵攻が有ったときの防衛担当です。状況をお報せください」
玄関前で使用人も多数いるので、執務室に移動して巨大な机に置かれた地図の前に立つ。
ブリスト伯爵の領都スザンヌ、 クレメンテと続き、その先にイザークという国境の町が在る。
草原の中程に幅50m程の川が流れていて此が国境となる。
川を越え草原の向こうにクラウディオ王国のマルゼブ砦が在り、背後にマルゼブの町となる
ホールデンス王国側も、国境の川イザーク砦イザークの町と全く同じ配置で、お互いに相手の動向を探っているとの事だった。
現在マルゼブ砦には常駐兵しか居らず、町も平穏だと説明を受けた。
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#ヒラ俺
この度ついに完結しました。
1年以上書き続けた作品です。
途中迷走してました……。
今までありがとうございました!
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追記:2025/09/20
再編、あるいは続編を書くか迷ってます。
もし気になる方は、
コメント頂けるとするかもしれないです。
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