ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学

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22 原石

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 テーブルを傷付けない様に厚手の布を敷き、その上に様々な宝石の原石を並べる。
 瑪瑙、翡翠、紫水晶、ダイヤ、エメラルド等々、特にダイヤは水晶鉱石の様に一つの石に無数のダイヤがビッシリと付いた原石だ。
 ゲルアトさんフリーズしちゃったよ。
 俺だって、ダイヤの原石をみた時には笑っちゃったからなぁ。
 有り得ない事だが、鑑定ではダイヤと出るんだよね。
 他の原石も、素人が見ても上質で大きいと判る品質だ。
 
 「有り得ない。夢でも見ているのか」
 
 一人ぶつぶつと言っているし、フェルスもマジマジと見つめて身じろぎ一つしない。
 宝石に興味の無い俺でも、最初に見た時には呆れたので専門家が見たらそりゃーね。
 ゲルアトさんが落ち着くのを待って話しをはじめる。
 
 「宝石箱の物を売れば、そのうち入手先を疑われるのは間違いない。原石が有れば、疑う者にはこれを見せて相対取引の相手はプラチナランクの俺だと言えば・・・」
 
 「成るほど、私共は個人の方からも買い取りや再販をしています。原石や宝石の供給業者からも多数買い取っていますが、買い取りを控えても販売に影響が無ければ確かに疑われるます。然も、プラチナランクのユーヤ様より提供を受けているとなれば疑われない。ユーヤ様は冒険者ですので、何処で入手しているのか明かす必要も無いですからね」
 
 「プラチナランクにしてくれた冒険者ギルドのマスター曰く、プラチナランクには王家や有力貴族も迂闊に手を出せないそうです。誰かが何か言って来くれば俺の名前を出し、宝石が欲しければ俺を紹介すると言えば良いのですよ」
 
 「やれやれ、私はとんでもない方とお知り合いになった様ですね。噂話し何ですが王都の冒険者ギルドで、貴族連中を睨み倒して追い返した挙げ句、ギルドマスターとやり合う寸前まで行ったと聞こえてきたのですが」
 
 「やだなぁ、あれは貴族が俺のお肉を横取りしようとしたので追い返しただけですよ。ギルドマスターとはギルドが約束を破ったので話が拗れたが、直ぐに手打ちに為りましたよ」

 肉以外の部位は、ギルマスがネコババしたのか代金が未払いだけどね。

 「イヤイヤ責めているのでは無いのですよ。ギルドから無理矢理ドラゴンの貴重部位を買上げた貴族は、処刑されお家は廃絶になりました。冒険者ギルドに詰めかけた貴族の方々は、爵位を降格され家督を後継者に譲って永年蟄居になりました。当分貴方様に手出しをしようなんて人はいませんよ。それに、貴族の横暴にギルドマスターが敢然と立ち向かい、王家に問題の貴族達の処分をさせ和解したと、もう凄い噂です。ギルドマスターの人気はうなぎ登りですよ」
 
 あの野郎ちゃっかり美味しいところを一人締めかよ、まぁ俺はお肉を取り返したので後はどうでも良い。
 
 「それでですね、ギルドマスターがゴールドやシルバーランクの冒険者を率いて件の貴族の館に乗り込み、執務室の前で王国騎士団団長と直談判したそうです。そして王家の譲歩と問題の貴族達を処分させたと物語になり、芝居に迄なってそりゃーもう」
 
 オイオイ、フリックスのオッサンよー、今度飯をたかりに行くからな。
 
 「お父さん興奮しすぎよ。冒険者ギルドと貴族の揉め事は、今王都住民一番の関心事ですからね。ユーヤさん許してね」
 
 「へぇー貴族達は処分されたのですか、知らなかったなぁ。俺はあれからサランガに行っていまして、今日王都に着いたばかりなんですよ」
 
 見本の原石類は大き過ぎるので小分けにして欺瞞用に保存する事にし、宝石箱から又十数点をゲルアトさんに渡した。
 ゲルアトさんからは前回分の振込み額が書かれたメモを貰い、その日はゲルアト商会に泊まった。
 翌日朝食の席で王都でどうするのか聞かれたので家を借りるつもりなので商業ギルドに行くつもりだと話す。
 ゲルアト商会の手持ちの空き家が何軒か有るので、気に入った物が有れば自由に使っても良いと勧めるられた。
 貴族や王家とトラブルになる恐れを、それとなく仄めかして辞退した。
 
 王都商業ギルド、今度は間違わずに余計な婆・・・爺さんは回避し、不動産部門に直行して石造りで改築自由な借家をお願いした。
 平屋の小振りな倉庫が改築自由だと聞き見学に行き、持ち主に二階建てにし、て土魔法で屋根を造り、壁も補強したいと伝えると了解してくれた。
 数日後家主立ち会いの下屋根と扉を取り払い、土魔法で壁を補強し二階建てにして屋根を造り、元の出入り口を塞いで新たな場所に扉を付けた。
 
 5年間9,000,000ダーラとは、流石は王都家賃が高いが5年間は自由に出来るので良しとする。
 どうせ仮寝の場所なので、衣食住の体裁を整えたら転移魔法陣を使い、サランガの家かスタートゲートの家に跳ぶだけだ。
 家具を買い揃え伯爵様秘蔵の酒を少し飾り生活臭を出す。
 
 この際衣類やブーツも冒険者用と、普段の市民が着ている物を揃える事にして、冒険者御用達の店に行く。
 服のデサインは現在着ている服と同じで、ブーツもよく似た良い物を購入する。
 服の仕上がりは10日後なので、それまでは王都とサランガゲートやスタートゲートを往復する生活になりそうだ。
 普段市民が着ている服はよく判らないので、ゲルアトさんに紹介して貰った仕立屋で作ったが、ゲルアトさんが上流市民なのを忘れていた。
 
 支払いはカードで魔法の世界って進んでるねぇ、残高は000が沢山有るよ。
 蜥蜴も魔獣や薬草も沢山売ったし、伯爵様の財産を掻っ払って売りはらっているので全然減らないんだよな。
 使うより貯まる方が早すぎる。
 
 * * * * * * * *
 
 十日後冒険者御用達の店に服を引き取りに行くと、見知らぬオッサンに絡まれた。
 
 「ユーヤ最近獲物を全然持って来ないじゃないか。少しは卸してくれよ」
 
 「あんた誰よ」
 
 「そんなに拗ねるなよ。貴族の件は全て片付いたので、又ギルドに顔を出してくれよ。プラチナランカーが顔を出せば箔が付くからよ」
 
 「阿保か! 口の軽い奴等とは取り引きしないと言ったのを忘れたのか。王都の冒険者ギルドに用は無い消えろ!」
 
 「判ったよ消えるさ。だが忘れるな、お前はギルドに所属しているんだぞ」
 
 「お前が蜥蜴の貴重部位を取り返し、懐に入れたのは知っているが見逃してやっている。口の軽い詐欺師に用は無い、冒険者カードなら返してやるよ、糞野郎!」
 
 プラチナカードを投げ捨てて店を出た。
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