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26 お肉三昧な夜
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ゲルアト商会に行くと従業員が最敬礼で迎えてくれるが、何故か顔が引き攣り気味でギクシャクしている。
ゲルアトさんと言う前に2階に案内されたが、顔を合わせた途端に苦笑いで「王都で大騒ぎになってますよ」って言われた。
「あーあれね、もう終わりましたよ。王家と手打ちになりましたから。今日はお約束の蜥蜴のお肉を持って来ました」
「本当に・・・貴方って人は」
首を振りふり、ぼやき気味なゲルアトさん。
「漆黒で額に白い稲妻模様の猫と貴方には、如何なる手出しも無用。遣るのなら王家が相手をすると、全ての貴族と有力商人達に触れが出ました。御蔭で貴方と私の関係を知る商業ギルドから、根掘り葉掘りの問い合わせで参りました」
「それに有力商人達からもね」
「日頃ゲルアト商会を見下していた豪商達からは、猫撫で声のお問い合わせと称する、恫喝じみた関係強要までね」
ブランディとフェルス二人の、呆れた様なぼやきも聞こえる。
「あっ、それらは直ぐに俺の方に回して下さい。俺の借家を教えて、会いに行けと言って下されば良いですよ。但し殆ど留守ですから扉に貼紙で用件を・・・いや伝言受付の箱を付けておこう。箱に入れておけば、内容次第で俺が会いに行くと伝えて下さい。貴方からの紹介状は、無理に書かせたと判断しますから後はお任せを」
ニヤリと笑って伝えると、ゲルアトさん首を竦めて頷いている。
「でも、ルーシュの存在を隠さなくても良くなったのね」
「あぁ少しだけ力を示して、俺と同等の存在だと伝えたので、手出しはしないだろうね」
「だけど、真昼の落雷音が貴方だったとはね。どれ程の魔力を込めればあんな事が出来るのやら」
首を傾げながら、ブランディが呟く。
王都警備隊と王国騎士団の多数を一瞬でを生き埋めにしたし。
王国騎士団と団長を引き連れて王城に向かった俺を、多数の市民が遠巻きに見ていて噂になったらしい。
「俺の静かな余生が」
ゲルアトさんやブランディとフェルスに爆笑されたよ、失礼にも涙を浮かべて笑ってやがる。
「空飛ぶ蜥蜴のお肉、出すの止めようかなぁ。赤いおメメの可愛い蜥蜴なんだけど」
「それは殺生な。楽しみにしていたんですよ。ワイバーンなんて、先ず食べる機会は有りませんからね。料理人も張り切っています」
「食後のお酒の肴にはこの足を焼いて貰えませんか、胴体は茹でたら最高の出汁が出ます」
特大の沢蟹を肉を受け取りに来た料理人に差し出したが、甲羅の横幅が50センチ程で足を含むと横幅が1.5メートルを超えるので直接調理場まで運んだ。
足を一本丸焼きにして、殻を割って身を出してとお願いするのを忘れない。
食事の間は静かだった、時々溜息とうなり声が聞こえたがスルー。
ルーシュは俺の隣に椅子を置いてもらい、その上で悠然とお肉を食べているが、うなり声はルーシュじゃない。
食後の酒を楽しみながら、ゲルアトさんがしみじみと呟く。
「確かに王家や高位貴族豪商達にしか手が出ない味でした。言葉で表現するのは無理だが、金貨の山を築いてでも手に入れようとする気持ちは解りました」
酒のグラスを片手に優雅に蟹を頬張るフェルス、唸りながら噛み締めるブランディを横目に、笑うゲルアトさん。
「確かに珍味ですな、話に聞いた事は有りましたが。森の奥深く山麓の清んだ川に棲息する蟹ですね。それ程森の奥まで行かれるのですか」
「いやまぁ、確かに森の奥深い所ですけど、たまたま見つけたので見逃す手はないと思いまして、乱獲にならない程度に採りました」
「蟹って、こんなに美味しいのですね」
フェルスがニコニコ顔で食べている、酒の肴で無くデザートになっている。
酒は思い出した様にチビリと口直しに嘗めてはホクホクの蟹の身を口に運ぶ、幸せそうで何よりです。
ルーシュはお肉を食べた後自分でクリーンを使い、口周りを綺麗にすると俺の膝の上で寝ている。
「猫が生活魔法のクリーンを使っている」
呆れた様な声でフェルスが呟くが、ブランディとゲルアトさんも同意見の様で頷いている。
翌日の朝食の場で料理人が、ゲルアトさんに何か囁いている。
ブランディとフェルスはスープに没頭している、勿論俺も同様だけどね。
素人の俺が料理するお肉や蟹の出汁スープより、遥かに旨いんだ。
他事に気を取られていては、この美味さを見逃してしまう。
「ユーヤさん、夕べのワイバーンの肉と蟹が相当余っているのですが」
「それはゲルアトさんの懇意な方々を招いて楽しんで下さい。何ならもう少し置いていきましょうか」
首をブルブル振って拒否されたよ。有り難いが相手にしたくない相手まで招待しなければならない事になると厄介ですからと言われた。
食後ゲルアト商会を辞し、家に戻るとサランガゲートに跳ぶ。
* * * * * * * *
サランガ冒険者ギルドに顔を出し、家に居るので暇なら遊びに来てねと、伝言を頼む。
やって来たのはギルマスのドルーザさんだが、俺は冒険者を辞めたのでこれ以上の関わりを断った。
王都のギルマス、フリックスとの一連のやり取りを話し、以後冒険者ギルドとは一市民として付き合うので、そのつもりでいてくれと伝える。
ドルーザさんは呆れていたが、俺は平穏な生活をするので邪魔をしない様にと釘を刺しておく。
六日目にクルフとシャイニーがやって来たが、疲れた顔している。
訳を聞くとパーティー仲間を募ったが、実力が無いのに実力者面で狩りに出るので大変だと嘆いている。
お試しでパーティーに加えると、一回目の狩りで実力不足露呈で辞めて貰う奴が続出だそうだ。
それより何より、足手まといを死なせない様に補助するのが大変だと歎く。
今日は泊まってもらい、明日から少し転移魔法陣の試験を手伝ってもらう約束を取り付け、労いの焼肉パーティーだ。
シャイニーがお肉を噛みしめてフリーズして、続いてクルフの動きも止まる。
「何これ、前のアースドラゴンより美味しい」
すかさずエールを一口薦める。
「美味しいでしょ、エールで舌を洗いながら食べるともっと美味しいよ」
「これ、何のお肉?」
シャイニーとクルフの目が怖いよ、空飛ぶ蜥蜴と答えるとお肉を咥えたまま又々フリーズしちゃった。
赤いおメメの蜥蜴なのは黙っていよーうっと。
これ以上問題児扱いされるのは、俺の本意では在りません。
ゲルアトさんと言う前に2階に案内されたが、顔を合わせた途端に苦笑いで「王都で大騒ぎになってますよ」って言われた。
「あーあれね、もう終わりましたよ。王家と手打ちになりましたから。今日はお約束の蜥蜴のお肉を持って来ました」
「本当に・・・貴方って人は」
首を振りふり、ぼやき気味なゲルアトさん。
「漆黒で額に白い稲妻模様の猫と貴方には、如何なる手出しも無用。遣るのなら王家が相手をすると、全ての貴族と有力商人達に触れが出ました。御蔭で貴方と私の関係を知る商業ギルドから、根掘り葉掘りの問い合わせで参りました」
「それに有力商人達からもね」
「日頃ゲルアト商会を見下していた豪商達からは、猫撫で声のお問い合わせと称する、恫喝じみた関係強要までね」
ブランディとフェルス二人の、呆れた様なぼやきも聞こえる。
「あっ、それらは直ぐに俺の方に回して下さい。俺の借家を教えて、会いに行けと言って下されば良いですよ。但し殆ど留守ですから扉に貼紙で用件を・・・いや伝言受付の箱を付けておこう。箱に入れておけば、内容次第で俺が会いに行くと伝えて下さい。貴方からの紹介状は、無理に書かせたと判断しますから後はお任せを」
ニヤリと笑って伝えると、ゲルアトさん首を竦めて頷いている。
「でも、ルーシュの存在を隠さなくても良くなったのね」
「あぁ少しだけ力を示して、俺と同等の存在だと伝えたので、手出しはしないだろうね」
「だけど、真昼の落雷音が貴方だったとはね。どれ程の魔力を込めればあんな事が出来るのやら」
首を傾げながら、ブランディが呟く。
王都警備隊と王国騎士団の多数を一瞬でを生き埋めにしたし。
王国騎士団と団長を引き連れて王城に向かった俺を、多数の市民が遠巻きに見ていて噂になったらしい。
「俺の静かな余生が」
ゲルアトさんやブランディとフェルスに爆笑されたよ、失礼にも涙を浮かべて笑ってやがる。
「空飛ぶ蜥蜴のお肉、出すの止めようかなぁ。赤いおメメの可愛い蜥蜴なんだけど」
「それは殺生な。楽しみにしていたんですよ。ワイバーンなんて、先ず食べる機会は有りませんからね。料理人も張り切っています」
「食後のお酒の肴にはこの足を焼いて貰えませんか、胴体は茹でたら最高の出汁が出ます」
特大の沢蟹を肉を受け取りに来た料理人に差し出したが、甲羅の横幅が50センチ程で足を含むと横幅が1.5メートルを超えるので直接調理場まで運んだ。
足を一本丸焼きにして、殻を割って身を出してとお願いするのを忘れない。
食事の間は静かだった、時々溜息とうなり声が聞こえたがスルー。
ルーシュは俺の隣に椅子を置いてもらい、その上で悠然とお肉を食べているが、うなり声はルーシュじゃない。
食後の酒を楽しみながら、ゲルアトさんがしみじみと呟く。
「確かに王家や高位貴族豪商達にしか手が出ない味でした。言葉で表現するのは無理だが、金貨の山を築いてでも手に入れようとする気持ちは解りました」
酒のグラスを片手に優雅に蟹を頬張るフェルス、唸りながら噛み締めるブランディを横目に、笑うゲルアトさん。
「確かに珍味ですな、話に聞いた事は有りましたが。森の奥深く山麓の清んだ川に棲息する蟹ですね。それ程森の奥まで行かれるのですか」
「いやまぁ、確かに森の奥深い所ですけど、たまたま見つけたので見逃す手はないと思いまして、乱獲にならない程度に採りました」
「蟹って、こんなに美味しいのですね」
フェルスがニコニコ顔で食べている、酒の肴で無くデザートになっている。
酒は思い出した様にチビリと口直しに嘗めてはホクホクの蟹の身を口に運ぶ、幸せそうで何よりです。
ルーシュはお肉を食べた後自分でクリーンを使い、口周りを綺麗にすると俺の膝の上で寝ている。
「猫が生活魔法のクリーンを使っている」
呆れた様な声でフェルスが呟くが、ブランディとゲルアトさんも同意見の様で頷いている。
翌日の朝食の場で料理人が、ゲルアトさんに何か囁いている。
ブランディとフェルスはスープに没頭している、勿論俺も同様だけどね。
素人の俺が料理するお肉や蟹の出汁スープより、遥かに旨いんだ。
他事に気を取られていては、この美味さを見逃してしまう。
「ユーヤさん、夕べのワイバーンの肉と蟹が相当余っているのですが」
「それはゲルアトさんの懇意な方々を招いて楽しんで下さい。何ならもう少し置いていきましょうか」
首をブルブル振って拒否されたよ。有り難いが相手にしたくない相手まで招待しなければならない事になると厄介ですからと言われた。
食後ゲルアト商会を辞し、家に戻るとサランガゲートに跳ぶ。
* * * * * * * *
サランガ冒険者ギルドに顔を出し、家に居るので暇なら遊びに来てねと、伝言を頼む。
やって来たのはギルマスのドルーザさんだが、俺は冒険者を辞めたのでこれ以上の関わりを断った。
王都のギルマス、フリックスとの一連のやり取りを話し、以後冒険者ギルドとは一市民として付き合うので、そのつもりでいてくれと伝える。
ドルーザさんは呆れていたが、俺は平穏な生活をするので邪魔をしない様にと釘を刺しておく。
六日目にクルフとシャイニーがやって来たが、疲れた顔している。
訳を聞くとパーティー仲間を募ったが、実力が無いのに実力者面で狩りに出るので大変だと嘆いている。
お試しでパーティーに加えると、一回目の狩りで実力不足露呈で辞めて貰う奴が続出だそうだ。
それより何より、足手まといを死なせない様に補助するのが大変だと歎く。
今日は泊まってもらい、明日から少し転移魔法陣の試験を手伝ってもらう約束を取り付け、労いの焼肉パーティーだ。
シャイニーがお肉を噛みしめてフリーズして、続いてクルフの動きも止まる。
「何これ、前のアースドラゴンより美味しい」
すかさずエールを一口薦める。
「美味しいでしょ、エールで舌を洗いながら食べるともっと美味しいよ」
「これ、何のお肉?」
シャイニーとクルフの目が怖いよ、空飛ぶ蜥蜴と答えるとお肉を咥えたまま又々フリーズしちゃった。
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