ユーヤのお気楽異世界転移

暇野無学

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35 神々に祈る

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 アイヤ村とカリンカ村から、それぞれの特産果実アイヤの実とカリンカの実の収穫が始まった。
 一番最初の収穫物は神に捧げ、豊作に感謝する。
 商業神様と農業神様に捧げるのだが、手近な農業神様の神殿に行き祈る。
 
 《ユーヤ、久しいのう》
 
 《ご無沙汰致しておりますエダニカ様、今回はアイヤの実とカリンカの実が豊作となりましたので、奉納致したく参上しました》
 
 《うむうむ、何時もすまないねえー。お前が貧しい農家に力を貸し、我ら神への感謝と信仰を説いてくれたので、我等の神力も格段に上がっておる》
 
 《はい農作物は豊作で、収穫物の販売にはホーヘン様のお力添えにより多大な利益を上げて、皆喜んでいます。ホーヘン様はおられますか》
 
 《おぉユーヤ、良く呼んでくれた。此処はエダニカの神域なので、無断では来れぬからな》
 
 《何時もオークションでのお力添え、感謝しております。今回も些少ですが収穫した果実にエビ、蟹、魚と酒をお持ちしました他の神々様と共にお召し上がり下さい》
 
 《これこれユーヤ、儂を呼ばぬか。息災そうで何よりじゃ》
 
 《あー、ヨークス様・・・お久しぶりでーす》
 
 《お前、儂に対する態度が投げやりではないか》
 
 《いえいえ、ヨークス様に頂いた転移魔法陣を使う度に感謝していますし、黒猫のルーシュと楽しく生きています。ヨークス様の好きな空飛ぶ蜥蜴のお肉も持参していますよ》
 
 《おほ、そうかそうか、蜥蜴の肉か今夜は楽しみだわい。ささ出せだせ!》
 
 《相変わらずなお方ですねぇ。空飛ぶ蜥蜴のお肉、独り占めしちゃ駄目ですよ》
 
 《判っておる、心配するな。そうじゃ、お主のお陰で最近儂に対する祈りも増えてな、後光が増えた気分じゃ。ところで・・・酒は?》
 
 《はいはい、判っております》
 
 《おぉぅ。すまんのう催促して》
 
 《いえいえ慣れておりますので。、それでは皆様失礼します》
 
 《うむ、何時も有り難うな》
 《ちょくちょく頼むぞ》
 
 相変わらずなヨークス様だね。
 アイヤの実とカリンカの実か、名前が安直過ぎたかな。
 鑑定では判らずギルドでも誰も知らないので、村の名前を付けたのだがもう少し捻りを入れようかな。
 でも美味しいので人気は上々、飛ぶように売れているので良いけれど。
 
 ブラウンに頼み、ヨークス様や他の神々を奉る神殿の場所を確保しておかねば。
 それぞれの教会の縄張りもあるので、面倒なら全ての神々が集う神殿を建て、個別の神に対する祈りの場を造るか。
 そうした方が便利だし祈りの少ない神様も助かるだろう。
 
 ブラウンが練り上げた新たな街の概略図の中央から西、内環状線と中環状線の間に神々の神殿を造る事にした。
 図面に沿って街割の工事が始まると、城壁の外堀りだけを俺が造り他の工事は貧しい人や無職の人に遣らせる。
 井戸の位置は用水路設置後に大々的に穴を開けるが今は細々と水が吹き出しているだけ。
 
 ブラウンが外堀を見て庁舎と官僚達の住居の内堀も造ってくれと頼み込んで来たので、序でに頑張る。
 堀だけ有れば、警備もしやすいので助かりますと頭を下げられた。
 序でなので、全ての堀の中に穴を開け地下水で満たしておく。
 これで安全性が格段に上がった筈だ。

 * * * * * * * *

 用地が確保できたので、神殿造りを始める。
 虚仮威しの大神殿にせず、漆黒の魔力石が3枚ずつ横並びに円を描く様に配置する。
 正面の1枚のみ一回り大きな魔力石はヨークス様で、他は全て同じ大きさに揃えた。
 二重のストーンサークルで庇の長い屋根を付ける、上から見れば巨大なドーナッツだろうな。
 庇の先と魔力石の両側だけ等間隔の石柱で支える、見方にも依るが馬鹿でかい東家だ。
 基礎も漆黒の魔力石も床も全て俺の魔力を強く込めていて、破壊はまず不可能だろう。
 魔力石を狙って来る、不心得者に対する防止策だ。
 
 神殿が完成した時、一回り大きな魔力石にヨークス様の魔力を込めてもらい、ヨークス様のお姿を浮き上がらせてもらった。
 他の石には神力の高い神様達を均等に配置し、その間に神力の低い神々の姿を浮かび上がらせる。
 御姿と名前のみが漆黒の魔力石に浮かび上がり、中々良い雰囲気である。
 
 《ヨークス様、お姿が余りにも実物と違うのでは》
 
 《何を申す。我の若かりし頃を少しデフォルメして、威厳を付けただけじゃ。失礼な奴じゃのぅ》
 
 《ユーヤ、ヨークス様と関わったお主の不運と諦めよ》
 《そそ、我等もフルミナの世界に生まれしその時に、お前は農業神をやれの一言で放り出されたからな》
 《まあそれでも、創造神としての神力はそこそこ有るので何とか為っているからな。投げ出さずに頑張ってくれ、お主は儂らの希望だからな》
 
 《ヨークス様を見習い、気楽に遣らせてもらっています。何せフルミナに転移させられた時の約束は、お気楽な人生を送る筈だったのですから》
 
 《お主も我等も、共に苦労するなあ》
 《まぁ互い微力を尽くすか》
 
 《何と酷い奴らだ、創造神たる儂を蔑ろにしおって》
 
 《ヨークス様、他の神々の皆様に一つお願いが有ります。明日私以外の者もこれの地に足を踏み入れ祈りを捧げるでしょう。祈る人々の中で、信仰心篤く見込の有る者に、ほんの少しの加護を与えてもらえませんか。10段階の1か2の加護で、ホイホイ与える必要は有りません。授ける加護は、努力し精進する者にのみ与えてやって下さい。さすれば噂になり神々に対する祈りは深くなり神力の増強になると思います。加護の安売りはいけません!」
 
 《ユーヤ、中々の策士よのう》
 
 《いえいえ、神力が上がればフルミナの地が栄え、結果として民が潤います。信仰無くば、神の威光も霞の如く無散してしまいます。私は気楽な人生を送るために、皆様にお願いをしているだけです》
 
 《合判った。お主の望みを叶えよう》
 《うむ、お主には何かと世話になっておるでのう》
 《任せよ》
 《其方の望みなら叶えてやるぞ》
 
 《有り難う御座います皆様。でもヨークスってお気楽過ぎて良く物忘れするので、今ひとつ有り難みが・・・》
 
 《ブワーァッハハハは》
 
 大爆笑を招いてしまったよ。

 神殿が完成して見学自由と告げた翌日から、物珍しさから三々五々人が訪れ始めた。
 正面入口から入ると広めに造られた通路の突き当たりがヨークス様の碑だが、東家の手前左側に1枚の碑文が建つ。
 
 〔神を敬いて頼らず。願いて努力を怠らず。創造神ヨークス様の下に集う神々に祈りを〕
 それに続く複雑な文様が何か、誰にも判らなかった。
 神文ならば、かなりの長文だろうとは想像出来ただけだ。
 
 巨大な漆黒の魔力石の板に、白く浮き上がる一文に呆気に取られる人が続出した。
 中に入れば、それぞれの神のお姿とお名前のみが魔力石に浮かび上がっている。
 喜捨の箱は所々にぽつんと置かれていて、信じる神様のお姿の前には無い。
 それが噂になり噂が噂を呼び、街の工事中にも関わらず人々が訪れ始めた。
 
 ブラウンが工事に支障を来しかねないと困っているので、この街に入るには工事関係者以外からは、銅貨2,3枚を徴収してその金で交通整理と警備員を雇えと唆す。

 完成祝いに供物台に大量のお肉や果物、エビ、蟹、魚に酒を献上したが、神様達、ドンチャン騒ぎの果てに御利益の大盤振る舞いして無いだろうな。
 ・・・少し心配になってきた。
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