“元“悪役令嬢は二度目の人生で無双します(“元“悪役令嬢は自由な生活を夢見てます)

翡翠由

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引受人

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 私は獣道を闊歩する。そうしていると、たまに赤い目がギラリと光る二メートルくらいある狼が出てくる。

「うざったいわね」

 手で払いのけながら進んでいく。田舎というのはとても不便である。

 都に向かうまでの経路に山があるのだ。それを迂回しながら行くという手もあるだろうが、正直どっちも変わらない気がする。

 普通の人はさっきの狼の魔物に襲われないように山には登らないが、私にとっては手で払いのければ簡単に上半身を消滅させてしまう。

 かなりグロイ。

「魔物多いな、この山。あ、討伐証明部位……っと」

 なぜ転移できる私がわざわざ歩いて都に向かっているかといえば、受付さんに頼んで他の依頼も見繕ってもらったのだ。

 かっこよく組合を出た後にまたすぐ戻ってくるというのは自分でも恥ずかしいと思ったが、そこはご愛嬌。

 私が調査対象である以上、依頼は失敗に終わる可能性が高い。なので、少しでも受付さんの印象を悪くしないために他の依頼も受け持ったのである。

 え?体裁気にしすぎだって?

 人間ってのはどんな状況でも体裁気にするでしょうが!絶対にみんなそうだ!

 学校のテストで悪い点数をとっても見え張ってちょっと高い点数を他の人に教えたりしたこと絶対に一回はあるでしょ?そうでしょ?

 それと同じである。

「大臣ってのが来るのはまだ先ね。どうせ今は仙女の調査に追われているだろうし。田舎の視察なんて後回しにされるはず」

 反乱がおきたすぐ直後ではあるものの、結局反乱軍の行方は幕府は把握しきれていないし、どうしようもなくなったらきっと将軍を引っ張り出して戦わせるつもりだったのだろうな。

 放任主義である将軍が問題と言いたいところだけど、とりあえず大臣の政治の考えを変えられたらそれでいい。

 辞めさせるのがやっぱり一番手っ取り早いけど、政治についての考え方を改善させられたらそれでみんなハッピー!

 ……ってなったらいいけど。

「討伐証明部位……やっぱないや」

 上半身を消し飛ばしてしまったせいで、狼の牙という証明部位が一向に見当たらない。

「ここで時間かけてもあれだし、さっさと進もう」

 まだまだ山の道のりは長い。


 ♦


「なんの収穫もなしに街についてしまった……」

 まあ、しょうがないよね!

「手加減を覚えなくては……」

 体のリハビリも終了し、元気いっぱい常時パワーアップ状態のせいで前まで出来ていた力加減というものの感覚が狂ってしまった。

 もちろん、日常生活では細心の注意を払っているから今のところ問題はない。

 だが、戦闘中ともなるとそんなこと言ってられないんだよなー……。

「まあいいや」

 たどり着いた先は都に存在する冒険者組合。まあ、都であるのにも関わらず冒険者の数は異様に少ない。

 その理由は幕府側にある。

 なぜか幕府は冒険者という存在をよしとしていないのだ。そのせいで、幕府軍は冒険者というものを迫害というか差別している。

 なぜか……と疑問に思ったが、女神のせいか。思えば、女神は日本っていう国が大好きなのだそうで、日本にない文化はことごとく嫌っていたな。

 まあ、そんな冒険者にも依頼を出すくらいだから相当びっくりさせちゃったんだろうな、あの時の兵士たち……。

 元々は将軍のせいというかおかげというか……。

 冒険者組合の中に一歩踏み入ると、そこには数えられる程度の数の武装した男性がおり、ついでに、

「幕府軍?」

 受付では何やらもめている幕府の連中がいた。その連中に絡まれている受付の女性はこちらを見て、驚いた顔をしている。

 多分子供が来るところじゃないと言いたいのだろう。

 早く帰りなさいと目で訴えている。

 だが、その訴えを私が無視したことで、幕府軍が私に気づいたようだった。

「なんだこのガキは?」

「あ、あの……その娘は関係ないので、できれば――」

「うるさいぞ女が!今俺たちが聞いているだろうが!」

「す、すみません……」

 何やら、偉そうな態度。鼻につくな。

「で、仙人調査の引受人はいないのか?」

「そ、それが……今動けるSランク冒険者を我々は把握しきれておらず……」

「はっ!所詮は管理も行き届いていない組織かよ!あてにして損したぜ」

 そう言って幕府軍の一人が刀を抜いた。

 え、バカなの?

「こんな無能な組織なんてさっさと潰してしまえばいいものを……将軍様のためにも、俺らが潰してやろうか?」

 一応冒険者組合は全世界に数多く置かれている組織なんだけど……国際問題に発展するよ、そんなことしたら。

「ひっ!」

 刀を向けられた女性が悲鳴を上げる。他の冒険者たちは見て見ぬふりだ。

 こう見えても幕府の正規軍、それなりに訓練されているはずだ。普通の冒険者たちには少々骨が折れる相手だな。

「あの、すみません」

「あ?」

 幕府軍の連中がこちらを向く。

「あー、あなたたちに言ったわけじゃないわ」

 そう言って華麗に受付と幕府軍の連中の間に入る。

「な、このガキ!」

 受付さんはなんてことしてんの!?という目で見ている。

 いやぁ……ちょっとむかついたから……。

 《自重してください》

 いいじゃん別に。

「あの、依頼を引き受けたのですが」

「い、依頼……ですか?」

「はい」

 私がそう、平然を会話を進めていると、後ろから怒りに満ちた怒号が響く。

「このガキ!俺を無視するなぁ!」

 そう言ってシュンッと、細い刀が振り下ろされる音がした。

 冒険者の息を飲む音や、受付さんの青ざめた表情が窺える。

 ただし、それが私に命中することはなかった。

「は?」

 人差し指一本でその刀の勢いは削がれ、私の人差し指一本に傷すらつけられずに止まったのである。

「あ、これ冒険者証ね」

「は、はい……え?Sランク?」

 手の空いている片方の手で冒険者証を提示する。

「私が、仙人調査を引き受けるわ――」
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