猫の魔術師〜その猫がいずれ最強になるまでの話〜

翡翠由

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変幻の力

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「やあ、こうして会うのは初めてだね」

「はっ、アノマリー隊β部隊より参りました、シエラです」

「ご苦労、早速で悪いんだけれどこれについて聞きたい」

 リシルとアルフレッドが保健室へ向かい、教師陣が野次馬を押さえ込もうとしてる間にレインはシエラと共にコアを破壊されたガラスのゴーレムを観察することにした。

「どうやら魔術のようです。術式の後がうっすらと見えます」

「そうだね、それもかなりの使い手の魔術師のようだ。属性は土属性。ただ、ここまで凝った作りのゴーレムはあまり見かけないね」

「そうですね、ゴーレムは戦いにだしすぐに壊れるもの、ここまで素材に凝ったゴーレムもなかなかいないでしょう」

「だとすると、『異常現象』とは無関係なのか?」

「魔術であるからでしょうか?」

「いや、狙われた人物だ。狙われていたのは第三王子であるアルフレッド王子……もしくは公爵令嬢のリシルのどちらかだっただろう。少なくとも最初に遭遇した時にその場には彼らしかいなかった」

 魔術で生み出されたゴーレムというのも、今までの『異常現象』とは訳が違うため、やはりこれはただの暗殺なのではないだろうか?

「どこかの誰かが、アルフレッド皇子を狙って暗殺しようとしたのか……いや、それだとあまりにも派手だ。犯人の意図が読めない」

「陽動では?」

「陽動……確かにそうかもしれない。我々の目から何かを逸らしたかった。いや、あの二人に見られてはいけないものを見られそうになったから、咄嗟に誤魔化そうとしたということか?」

 そうなれば辻褄も合ってくる。あの二人はたまたまあの場所でており、そこでたまたま誰かが工作活動でも行っていたのだろう。この魔術学校に侵入できるほどの腕前であれば、ゴーレムの一体や二体程度訳ない。

「今後の動きはあの子達次第だね。もし、彼らがその『何か』を見てしまったのであれば、僕らのうちの誰かが常に護衛として張り付いた方がいい」

「それでは人手が足りなくなります。捨て置くべきでしょう」

 仮にもこの国のトップ二名を捨て置くなんて……シエラはなんて怖いもの知らずなのだろう。そんなところをヴァージが見込んで送り込んできたのかもしれないな。

「いや、それはダメだ。アルフレッド皇子は言わずもがな、皇子だから。リシルは……将来の皇族だからね」

「はあ」

「問題ない。彼らは学生だし、ちょうど皇子の兄から彼を頼まれていたんだ。勉学と恋愛の勉強でもさせるよ」

「?」

 流石にあのままでは可哀想だからね……告白するなんて余程の勇気がないとできないだろうに。

「さて、そろそろ教師たちもやってくるだろう。素材の一部だけ回収して……」

 頭に凄まじい衝撃が走る。気づけば、身体が先ほどのゴーレムのように倒され、一瞬何が起きたのかわからなかった。

(誰かから攻撃を受けた?どこから?方角はわかる、だがあそこには誰もいない……)

 レインが頭の中で思案していると、

「レイン隊長!?」

 シエラがかがみ込んで、こめかみに打ち込まれてできた穴を見て絶句している。

「大丈夫ですか!?今すぐ治療を……」

「問題ない」

「っ!」

 平然と立ち上がるレインを見てシエラは顔をこわばらせた。

「こんなのかすり傷でしかないよ。ほら、見て」

 手をかざし、その部分に魔力を込め手を離す。そこに傷と呼べるものは残っておらず、綺麗さっぱりと穴は塞がれて血すら流していないいつものレインへと戻っていた。

「そんな、一体どうやって?」

「仮にも特級魔術師だからね……ただの不意打ちで死ぬなんてダサいからしないよ」

「す、すごい!これが噂に聞いたあの〈変幻〉の力!」

「変幻?そんな大層なものじゃないんだけどなぁ」

 ただ、レインはこの肉体を消し炭にされようとも生還できる。ある意味では、変幻すら上回っている存在なのかもしれない。

「グレンにも連絡を飛ばしてくれ。校舎の方角から何かの魔術による攻撃を受けたって」

「了解しました」

「シエラはゴーレムの素材を回収して、警戒に戻って。僕は一度保健室に寄ってくる」

「はっ!」
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