46 / 62
刺激的な訓練 ※アルフレッド視点
しおりを挟む
魔術とは積み重ねである。
そう言ってきたのはレインだった。まだ出会っても日は浅いがレインの性格はよくわかるようになっていた。
世話焼きで鈍感で少しだけ天然なのに、魔術のことに関すれば途端に白熱するようなやつだ。
初めて会った時のインパクトは衝撃的なものである。
変なゴーレムに襲われていたところを助けてもらったのだ。もちろん最初は自分のためではなくリシルのためであったのはわかってる。同じクラスの友達らしいから。
だが、レインが戦う姿を見て思ったのだ。
かっこいいと。
魔術は使えず、筆記試験でどうにかギリギリ通過したにすぎないような自分には魔術を使うなんて夢のまた夢といった感じであり、それこそレインのように大立ち回りなんてできることは一生ないと思っていた。
だけど、レインは言ってくれたのだ。俺を、誰もが振り向くような完璧な人にして見せると、それこそ何をやっても優秀な兄上を超えるくらいの。そうすればきっとリシルも振り向くってさ。
その完璧な自分の理想像の中にはすでに、魔術を使えるという項目が増えていた。勉強を教えてもらいながら、いつ始まるかわからない魔術の話を楽しみに待っている日々が続く。
レインはたまにからかってきたり、年下なのに生意気なところもあるけれど、教えるのは上手で一緒にいて楽しかった。だからこそ、心のどこかで焦っていた。
レインは毎日研究をし続けていてどんどんと魔術の腕前を上げていっているというのに、自分はこのまま基礎の勉強だけをやり続けているのはどうなのかと。もちろん自分に足りていないことであるのはわかっているが、順番なんてどうでもいいだろう?
どうしてもレインのようになりたかった。早く、できるだけ早く。
だからこそ、もう直ぐに迫った魔術大会に目をつけたのだ。きっとこの機会を逃せば、自分はなあなあに学び続けるだけでいつになってもレインにも兄上にも追いつけないだろうなって。
一か八かで兄上にお願いしてみれば、それはかなりいい返事であった。魔術大会に出る腕前があればいいと。
レインの魔術の訓練はそれなりに過酷であった。体の中にある魔力が操れるようになるまで永遠とやらされ、外からの魔力の完治に苦戦していたら攻撃魔術を放たれたりした。それで強くなれるなら、とどうにか食らいついてきた。
そして今も。
「落とされるのは聞いてないけどなああああああああ!?」
上から見る帝都の景色はなかなかに悪くないものである。だがしかし、自分の命の危機が迫っていない状況下であることを前提とした話ではあるが。
これで、風の魔術の感覚を掴めなかったらどうなるのか、掴めたとしてこの後どうなるのかとか、色々と考えてしまうが、そんな考えは直ぐに振り払う。
そんなことをしている間に地面は間近に迫りつつあり、そして何よりレインを信用しているから。
「集中……」
体の中にある魔力はずっと燻り続けている。外から感じる風が全身に強い衝撃を打ち付ける。ひんやりとした強風は服を貫通して伝わってくる。
「大丈夫、できるはずだ」
いきなりで驚きはしたが、これは訓練だ。きっと自分ならできる。そのために今まで魔力の感覚を磨いてきたんだ。
一生かかっても使えないと思ってた魔術に手が届くかもしれない。やるしかないだろう?
「風よ……」
術式を作り、それは魔力に包まれて軌道の合図を待つ。呼びかけのセリフが合図となってその術式は込められた力が解き放たれた。
「わっ」
非常に弱い威力の『風球』だ。だが、この手で使えたのだ、風の魔術が!
「よくできました」
上から優しく包み込むように手を回される。地面まで後数十メートルと言ったところだった。
レインの手は地面に向けられ、そこから無詠唱の魔術が放たれる。地面から生まれたごく少量の水はすぐさま広がり、それに向かって飛び込んだ。衝撃はやって来ず、ただボヨンとトランポリンのように跳ねるだけだった。
「随分と刺激的な訓練だな……」
「これなら一発でしょ?」
「お前なあ……」
軽く言い放つレインに呆れながら、二人は笑い出した。
そう言ってきたのはレインだった。まだ出会っても日は浅いがレインの性格はよくわかるようになっていた。
世話焼きで鈍感で少しだけ天然なのに、魔術のことに関すれば途端に白熱するようなやつだ。
初めて会った時のインパクトは衝撃的なものである。
変なゴーレムに襲われていたところを助けてもらったのだ。もちろん最初は自分のためではなくリシルのためであったのはわかってる。同じクラスの友達らしいから。
だが、レインが戦う姿を見て思ったのだ。
かっこいいと。
魔術は使えず、筆記試験でどうにかギリギリ通過したにすぎないような自分には魔術を使うなんて夢のまた夢といった感じであり、それこそレインのように大立ち回りなんてできることは一生ないと思っていた。
だけど、レインは言ってくれたのだ。俺を、誰もが振り向くような完璧な人にして見せると、それこそ何をやっても優秀な兄上を超えるくらいの。そうすればきっとリシルも振り向くってさ。
その完璧な自分の理想像の中にはすでに、魔術を使えるという項目が増えていた。勉強を教えてもらいながら、いつ始まるかわからない魔術の話を楽しみに待っている日々が続く。
レインはたまにからかってきたり、年下なのに生意気なところもあるけれど、教えるのは上手で一緒にいて楽しかった。だからこそ、心のどこかで焦っていた。
レインは毎日研究をし続けていてどんどんと魔術の腕前を上げていっているというのに、自分はこのまま基礎の勉強だけをやり続けているのはどうなのかと。もちろん自分に足りていないことであるのはわかっているが、順番なんてどうでもいいだろう?
どうしてもレインのようになりたかった。早く、できるだけ早く。
だからこそ、もう直ぐに迫った魔術大会に目をつけたのだ。きっとこの機会を逃せば、自分はなあなあに学び続けるだけでいつになってもレインにも兄上にも追いつけないだろうなって。
一か八かで兄上にお願いしてみれば、それはかなりいい返事であった。魔術大会に出る腕前があればいいと。
レインの魔術の訓練はそれなりに過酷であった。体の中にある魔力が操れるようになるまで永遠とやらされ、外からの魔力の完治に苦戦していたら攻撃魔術を放たれたりした。それで強くなれるなら、とどうにか食らいついてきた。
そして今も。
「落とされるのは聞いてないけどなああああああああ!?」
上から見る帝都の景色はなかなかに悪くないものである。だがしかし、自分の命の危機が迫っていない状況下であることを前提とした話ではあるが。
これで、風の魔術の感覚を掴めなかったらどうなるのか、掴めたとしてこの後どうなるのかとか、色々と考えてしまうが、そんな考えは直ぐに振り払う。
そんなことをしている間に地面は間近に迫りつつあり、そして何よりレインを信用しているから。
「集中……」
体の中にある魔力はずっと燻り続けている。外から感じる風が全身に強い衝撃を打ち付ける。ひんやりとした強風は服を貫通して伝わってくる。
「大丈夫、できるはずだ」
いきなりで驚きはしたが、これは訓練だ。きっと自分ならできる。そのために今まで魔力の感覚を磨いてきたんだ。
一生かかっても使えないと思ってた魔術に手が届くかもしれない。やるしかないだろう?
「風よ……」
術式を作り、それは魔力に包まれて軌道の合図を待つ。呼びかけのセリフが合図となってその術式は込められた力が解き放たれた。
「わっ」
非常に弱い威力の『風球』だ。だが、この手で使えたのだ、風の魔術が!
「よくできました」
上から優しく包み込むように手を回される。地面まで後数十メートルと言ったところだった。
レインの手は地面に向けられ、そこから無詠唱の魔術が放たれる。地面から生まれたごく少量の水はすぐさま広がり、それに向かって飛び込んだ。衝撃はやって来ず、ただボヨンとトランポリンのように跳ねるだけだった。
「随分と刺激的な訓練だな……」
「これなら一発でしょ?」
「お前なあ……」
軽く言い放つレインに呆れながら、二人は笑い出した。
10
あなたにおすすめの小説
辺境貴族ののんびり三男は魔道具作って自由に暮らします
雪月夜狐
ファンタジー
書籍化決定しました!
(書籍化にあわせて、タイトルが変更になりました。旧題は『辺境伯家ののんびり発明家 ~異世界でマイペースに魔道具開発を楽しむ日々~』です)
壮年まで生きた前世の記憶を持ちながら、気がつくと辺境伯家の三男坊として5歳の姿で異世界に転生していたエルヴィン。彼はもともと物作りが大好きな性格で、前世の知識とこの世界の魔道具技術を組み合わせて、次々とユニークな発明を生み出していく。
辺境の地で、家族や使用人たちに役立つ便利な道具や、妹のための可愛いおもちゃ、さらには人々の生活を豊かにする新しい魔道具を作り上げていくエルヴィン。やがてその才能は周囲の人々にも認められ、彼は王都や商会での取引を通じて新しい人々と出会い、仲間とともに成長していく。
しかし、彼の心にはただの「発明家」以上の夢があった。この世界で、誰も見たことがないような道具を作り、貴族としての責任を果たしながら、人々に笑顔と便利さを届けたい——そんな野望が、彼を新たな冒険へと誘う。
異世界に転移したら、孤児院でごはん係になりました
雪月夜狐
ファンタジー
ある日突然、異世界に転移してしまったユウ。
気がつけば、そこは辺境にある小さな孤児院だった。
剣も魔法も使えないユウにできるのは、
子供たちのごはんを作り、洗濯をして、寝かしつけをすることだけ。
……のはずが、なぜか料理や家事といった
日常のことだけが、やたらとうまくいく。
無口な男の子、甘えん坊の女の子、元気いっぱいな年長組。
個性豊かな子供たちに囲まれて、
ユウは孤児院の「ごはん係」として、毎日を過ごしていく。
やがて、かつてこの孤児院で育った冒険者や商人たちも顔を出し、
孤児院は少しずつ、人が集まる場所になっていく。
戦わない、争わない。
ただ、ごはんを作って、今日をちゃんと暮らすだけ。
ほんわか天然な世話係と子供たちの日常を描く、
やさしい異世界孤児院ファンタジー。
バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します
namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。
マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。
その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。
「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。
しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。
「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」
公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。
前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。
これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。
ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?
音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。
役に立たないから出ていけ?
わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます!
さようなら!
5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!
家族転生 ~父、勇者 母、大魔導師 兄、宰相 姉、公爵夫人 弟、S級暗殺者 妹、宮廷薬師 ……俺、門番~
北条新九郎
ファンタジー
三好家は一家揃って全滅し、そして一家揃って異世界転生を果たしていた。
父は勇者として、母は大魔導師として異世界で名声を博し、現地人の期待に応えて魔王討伐に旅立つ。またその子供たちも兄は宰相、姉は公爵夫人、弟はS級暗殺者、妹は宮廷薬師として異世界を謳歌していた。
ただ、三好家第三子の神太郎だけは異世界において冴えない立場だった。
彼の職業は………………ただの門番である。
そして、そんな彼の目的はスローライフを送りつつ、異世界ハーレムを作ることだった。
二月から週二回更新になります。お気に入り・感想、宜しくお願いします。
辺境伯家次男は転生チートライフを楽しみたい
ベルピー
ファンタジー
☆8月23日単行本販売☆
気づいたら異世界に転生していたミツヤ。ファンタジーの世界は小説でよく読んでいたのでお手のもの。
チートを使って楽しみつくすミツヤあらためクリフ・ボールド。ざまぁあり、ハーレムありの王道異世界冒険記です。
第一章 テンプレの異世界転生
第二章 高等学校入学編 チート&ハーレムの準備はできた!?
第三章 高等学校編 さあチート&ハーレムのはじまりだ!
第四章 魔族襲来!?王国を守れ
第五章 勇者の称号とは~勇者は不幸の塊!?
第六章 聖国へ ~ 聖女をたすけよ ~
第七章 帝国へ~ 史上最恐のダンジョンを攻略せよ~
第八章 クリフ一家と領地改革!?
第九章 魔国へ〜魔族大決戦!?
第十章 自分探しと家族サービス
この聖水、泥の味がする ~まずいと追放された俺の作るポーションが、実は神々も欲しがる奇跡の霊薬だった件~
夏見ナイ
ファンタジー
「泥水神官」と蔑まれる下級神官ルーク。彼が作る聖水はなぜか茶色く濁り、ひどい泥の味がした。そのせいで無能扱いされ、ある日、無実の罪で神殿から追放されてしまう。
全てを失い流れ着いた辺境の村で、彼は自らの聖水が持つ真の力に気づく。それは浄化ではなく、あらゆる傷や病、呪いすら癒す奇跡の【創生】の力だった!
ルークは小さなポーション屋を開き、まずいけどすごい聖水で村人たちを救っていく。その噂は広まり、呪われた女騎士やエルフの薬師など、訳ありな仲間たちが次々と集結。辺境の村はいつしか「癒しの郷」へと発展していく。
一方、ルークを追放した王都では聖女が謎の病に倒れ……。
落ちこぼれ神官の、痛快な逆転スローライフ、ここに開幕!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる