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気が狂ってる
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圧倒的なまでの跳躍力は警備の視界を遥かに超えて、帝城を囲う壁も超え、その先まで飛ぶ。強化された足にはとてつもない負担がかかっているのが魔力を通じて感じられる。
レインが行う『身体強化』とは、肉体に直接強化魔術を付与することで成功する技である。
強化魔術とは、通常では特定の魔術を強化してして威力を増大させる目的で使用される。それには多大な魔力負荷が生じるのであるが、これはあまりにもコスパが悪いのだ。
強化魔術を使用するくらいなら数秒の時間を消費してもう一発同じ魔術を放った方が効率がいいと言われるくらいには悪い。だが、レインはその強化魔術を肉体に付与した。
当然、肉体の魔力は強化魔術により強化され、魔力は肉体に作用して身体能力を強化する。無理やり引き上げられた身体能力に肉体は耐えきれず、破裂する。
普通の肉体で行えばこうなり、最終的に死に絶えると学会で結論が出てた気がする。やはり長年魔術師は接近戦での闘い方も学ぼうとしてきたのだ。
不可能かとも思われるが、レインにはこれが可能だ。なぜなら、レインの肉体は魔力体でできているからだ。
肉体からそれにできる影までがレインの魔力体範囲内であり、影がない場所では人間の体の中に本体を隠すことで、人に見せる。
当然『身体強化』により乗っかっているとてつもない負荷は全てレインの魔力に乗せられており、レイン自体には一切の負荷はかかっていない。ノーリスクというわけではないものの、リスクを極限まで減らして肉体を強化できるというのはレインにしかできない芸当であった。
原理は簡単であるが、それは誰にも理解できるものではない。まず常識を疑うところから始めなくては気づけないからだ。
強化されたのはジャンプ力だけではない。壁を飛び越えて、広い敷地内の草むらに飛び込んだレインはそのまま走り出す。凄まじい速さは降り落ちる木の葉を再度吹き上げ、レインが通過した場所には強い風が吹いた。その速度を維持したままジャンプをすれば先ほどよりも飛距離は高く、中空時間も長い。
なんという力技。だけど、それでいいのだ。
「~~~~!」
アルフレッドは驚きのあまり声も出せなくなっている。いや、風圧で口が開けないようだ。下手に口を開いても舌を噛むかもしれないからそれでいいのだけど。
「うおっと」
飛び上がった時、帝城を警備する騎士に見られかけた。流石に、いきなり不自然に木の葉が舞ったらそりゃあ警戒するだろう。だが、騎士の視線を動かす前にレインの体はその場から離脱できるのが救いである。
「帝城って足場が少ないな」
肝心の帝城の外壁には腰を下ろして休めるような広いスペースはなかった一人分が立てるくらいの狭い隙間を少しずつ登っていく。落ちたら終わりという緊張感の中、レインは躊躇せずにそんな帝城の壁を登って行った。
「はあ……ああ、長いな」
疲れはしないが、道のりが長い。なんせ数百メートルもある建物なのだからそれはそれは精神的に疲れる。
ただ、それももう終わりだ。
「ほっそ!?」
帝城の頂上に到着すると、そこはもはや足場とすら呼べないようなところだった。本来人が登るようにできていないのだからそれで当たり前なのだが、バランスを取るのが非常に大変。
「アル君、ついたよ」
「ぇえ?え、ええええええええ!?」
「うわあ!ちょっと動かないで!」
取り乱すアルフレッドをどうにか押さえつけて落ち着かせる。
「たけええええ……」
「よし、じゃあ早速訓練を始めようか」
「訓練できるかぁ!足場狭すぎだろ!」
片足で細い足場にバランスを取っているが、いつ倒れてもおかしくない。確かにこんなところで訓練とか、頭がおかしいと思わなくもないが、
「別にここで訓練するわけじゃないよ」
「じゃあなんで登ったんだよ」
「こっから、飛び降りるんだ」
「……………は?」
「あれ?聞こえなかった?こっから飛び降りてその身で風を感じてもらうの。どれくらい強くて、どれくらいの冷たさで、どれくらいの魔力を含んでいるのか」
レインの場合は水中で一週間も暮らす羽目になった。そんなことになるくらいなら一瞬の命の危機で覚えてしまった方が早いだろう?
「レイン、ついに気が狂ったのか?」
「え、別に狂ってないけど?」
「こんなことをやろうと思うのは絶対に狂ってる」
「そうかなぁ?別に僕もやられたし」
「やられたの!?」
「話す余裕があるんだったら、早速飛ぶよ?」
「え、ちょっとま……」
「地面ギリギリでキャッチしてあげるから、できるだけ遠くまで飛んで!」
「あっ……」
そして、レインはアルフレッドを思いっきり空中へと投げ飛ばした。アルフレッドの涙が空中に浮かび上がってすぐに散っていく。
「ふう……じゃあ、追いかけますか」
そう言いながら、レインもアルフレッドの元へとジャンプする。
レインが行う『身体強化』とは、肉体に直接強化魔術を付与することで成功する技である。
強化魔術とは、通常では特定の魔術を強化してして威力を増大させる目的で使用される。それには多大な魔力負荷が生じるのであるが、これはあまりにもコスパが悪いのだ。
強化魔術を使用するくらいなら数秒の時間を消費してもう一発同じ魔術を放った方が効率がいいと言われるくらいには悪い。だが、レインはその強化魔術を肉体に付与した。
当然、肉体の魔力は強化魔術により強化され、魔力は肉体に作用して身体能力を強化する。無理やり引き上げられた身体能力に肉体は耐えきれず、破裂する。
普通の肉体で行えばこうなり、最終的に死に絶えると学会で結論が出てた気がする。やはり長年魔術師は接近戦での闘い方も学ぼうとしてきたのだ。
不可能かとも思われるが、レインにはこれが可能だ。なぜなら、レインの肉体は魔力体でできているからだ。
肉体からそれにできる影までがレインの魔力体範囲内であり、影がない場所では人間の体の中に本体を隠すことで、人に見せる。
当然『身体強化』により乗っかっているとてつもない負荷は全てレインの魔力に乗せられており、レイン自体には一切の負荷はかかっていない。ノーリスクというわけではないものの、リスクを極限まで減らして肉体を強化できるというのはレインにしかできない芸当であった。
原理は簡単であるが、それは誰にも理解できるものではない。まず常識を疑うところから始めなくては気づけないからだ。
強化されたのはジャンプ力だけではない。壁を飛び越えて、広い敷地内の草むらに飛び込んだレインはそのまま走り出す。凄まじい速さは降り落ちる木の葉を再度吹き上げ、レインが通過した場所には強い風が吹いた。その速度を維持したままジャンプをすれば先ほどよりも飛距離は高く、中空時間も長い。
なんという力技。だけど、それでいいのだ。
「~~~~!」
アルフレッドは驚きのあまり声も出せなくなっている。いや、風圧で口が開けないようだ。下手に口を開いても舌を噛むかもしれないからそれでいいのだけど。
「うおっと」
飛び上がった時、帝城を警備する騎士に見られかけた。流石に、いきなり不自然に木の葉が舞ったらそりゃあ警戒するだろう。だが、騎士の視線を動かす前にレインの体はその場から離脱できるのが救いである。
「帝城って足場が少ないな」
肝心の帝城の外壁には腰を下ろして休めるような広いスペースはなかった一人分が立てるくらいの狭い隙間を少しずつ登っていく。落ちたら終わりという緊張感の中、レインは躊躇せずにそんな帝城の壁を登って行った。
「はあ……ああ、長いな」
疲れはしないが、道のりが長い。なんせ数百メートルもある建物なのだからそれはそれは精神的に疲れる。
ただ、それももう終わりだ。
「ほっそ!?」
帝城の頂上に到着すると、そこはもはや足場とすら呼べないようなところだった。本来人が登るようにできていないのだからそれで当たり前なのだが、バランスを取るのが非常に大変。
「アル君、ついたよ」
「ぇえ?え、ええええええええ!?」
「うわあ!ちょっと動かないで!」
取り乱すアルフレッドをどうにか押さえつけて落ち着かせる。
「たけええええ……」
「よし、じゃあ早速訓練を始めようか」
「訓練できるかぁ!足場狭すぎだろ!」
片足で細い足場にバランスを取っているが、いつ倒れてもおかしくない。確かにこんなところで訓練とか、頭がおかしいと思わなくもないが、
「別にここで訓練するわけじゃないよ」
「じゃあなんで登ったんだよ」
「こっから、飛び降りるんだ」
「……………は?」
「あれ?聞こえなかった?こっから飛び降りてその身で風を感じてもらうの。どれくらい強くて、どれくらいの冷たさで、どれくらいの魔力を含んでいるのか」
レインの場合は水中で一週間も暮らす羽目になった。そんなことになるくらいなら一瞬の命の危機で覚えてしまった方が早いだろう?
「レイン、ついに気が狂ったのか?」
「え、別に狂ってないけど?」
「こんなことをやろうと思うのは絶対に狂ってる」
「そうかなぁ?別に僕もやられたし」
「やられたの!?」
「話す余裕があるんだったら、早速飛ぶよ?」
「え、ちょっとま……」
「地面ギリギリでキャッチしてあげるから、できるだけ遠くまで飛んで!」
「あっ……」
そして、レインはアルフレッドを思いっきり空中へと投げ飛ばした。アルフレッドの涙が空中に浮かび上がってすぐに散っていく。
「ふう……じゃあ、追いかけますか」
そう言いながら、レインもアルフレッドの元へとジャンプする。
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