長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ

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事故紹介、安易に首は外しちゃいけません

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「うっく……ひっく……うえぇぇ……」

 ボロボロとこぼれるしずくがエキドナの胸元をらしていく……感情のコントロールに定評がある(自称)エキドナが大号泣だった。
 だって無理だった。

「ひどいよう……お父さんとお母さんが亡くなって? 親戚は保険金で豪遊ごうゆう、弥生たちには一銭も無く豪雪地帯でボロアパート暮らし、しまいにはよくわかんないうちに殺されたとか……前世で君らなにしたのさ!? 僕らよりひどい状況じゃないかな!?」
「はい、エキドナおねーちゃん」
 
 文香がスカートのポケットからハンカチをエキドナに手渡す。
 そのハンカチには弥生が手縫いで補修した跡があり……エキドナが感極まってさらに号泣する。文香ですらなんかしちゃった!? と困り顔で兄と姉に振りかえる。

「今が転生だとしたら前世がエキドナさん言ったとおりだったりするんですよね~」
「弥生!! 君の感覚麻痺してるんじゃないのかな!? なんでそんなにポジティブなのさ!!」
「姉ちゃん明るいほうの腐女子だから」
「真司!! 君も大概だからね!? それは僕の父親もそうだけど枯れてるって言われる類の落ち着きっぷりだよ!?」

 突っ込み役はよ、と。エキドナが泣いたりいきどおったりで忙しい。
 特に弥生は真司と文香の無事を確認したとたん雰囲気が劇的に緩くなり……先ほどの身の上をへらへらと説明しているのだからエキドナの反応のほうが今は当たり前だったりする。

「おねーちゃんとおにーちゃん普段いっぱい頑張ってるからたまにこうなるのー」
「社会復帰にリハビリが必要なんじゃないかと僕は思うよ? とにかく君らの事情は分かったし、よろしくね文香……僕ら迷子仲間だ」
「わーい! エキドナおねーちゃんも迷子だー」

 無邪気に笑う文香とは裏腹うらはらに『あははー』と腑抜ふぬけまくっていた真司と弥生の表情が一変する。
 
「「迷子仲間!?」」
「実は僕も家族とばらばらになっちゃって……僕はバラバラになれるんだけどね」

 ――ごとん、ころころ!!

「こんな風に」

 外れた頭部が3人の前に転がってくる、エキドナがこれでもかとさわやかな笑顔で三人に笑いかけていたりするのがもう何かの冗談かという位怖い。文香なんてすでに血の気が引くぐらい青ざめていた。
 弥生、真司、文香の表情が消え、瞳孔どうこうがきゅっ! とすぼまって……目の前で起きたリアルホラーのせいで仲良く気絶した。

「え? 嘘……たったこれだけで……うわぁぁぁ!? ごめん! ちょっと、僕半分機械だから鉄板のギャグネタぐらいにしか思ってなくてね!? うえっ! 完全に白目むいてるぅぅ」

 慌てて自分の頭部を拾い上げてエキドナが卒倒した3人を何とか起こそうとする。
 しかし……そんな奮闘もむなしく起き上がっては首無し女エキドナを目撃して再び意識を旅立たせること数回、そして首をはめてからなら! と彼女が思いつくまでしばらく時間を有したのは言うまでもない。
 

 ――閑話休題それはさておき


「もういきなり腕とか足とか外さないでくださいね?」
「本当にごめんなさい。僕の配慮はいりょが足りなかったねぇ」

 ぺたん、と両手を合わせて平謝りのエキドナへ『じとぉ……』と言うのにふさわしいジト目で射貫く3人。さっきまでは頼れる先輩ポジションだったのがあっという間に問題児レベルに株が暴落ぼうらくしていた。
 
「さて、と……今度は僕の境遇きょうぐうだねぇ」
「ごまかした」
「えきどなおねーちゃんごまかした」
「次は両足外して偉い人にはわからんのですとかやりそう」

 ……ほんの少しだけエキドナの目尻に光るものが浮かぶ。

「なんで反応が僕の妹と同じなのかな!? 僕の何が悪いのさっ!!」

 両膝りょうひざを崩してよよよ……とポーズをとるエキドナに、3きょうだいが投げる視線は変わらない、だって……

「「「口元が超にやけてるから」」」

 しぐさと目元以外のエキドナが纏う雰囲気は『さあ、次はどうやって驚かせてやろうかっ!! 腰か!? それとも伝家の宝刀五体バラバラかっ!?』なのである。目は口程に物を言う。しかしだ、口が終始邪悪な感じにわらっていてはいくら素直な弥生達でも信用しない。
 
「くっ……手強いねぇ」
「話が進まないのでエキドナさんの事教えてください4文字で」
「まよった」
「即答か!?」
「大喜利の一つもできなくて何が半機械アンドロイドだ!!」

 大平原の真っただ中でそれはそれは楽しそうな4人であった。
 
「姉ちゃん、エキドナ姉……そろそろ真面目に」
「「うぃ!」」

 さすがに放置できなくて真司が嘆息たんそく交じりに注意する。どこ吹く風の弥生とエキドナが左右対称に敬礼もどきを実行、随分と仲が深まった(?)様子の2人に文香は分かってるのか分かってないのか。にこにことじゃれついていた。

「隠す必要もないからちゃんと話すんだけどさ……僕テロリストなんだよね」

 場が凍る。
 あんまりにもあっけらかんと犯罪者ですと発言されればそうだろうが、もうちょっとエキドナも言葉を選ぶ方法も取れただろうに、彼女はそうしなかった。

「正確には国家転覆、クーデターを起こした連中に反抗して追手がかけられた軍関係者。なんだけどさ……仲間と一緒に偽装家族を装って逃避行してる真っ最中に意識を失ってねぇ」

 エキドナは飄々ひょうひょうとしたしぐさで肩をすくめ、一息吸う。

「気が付いたら一人になってて……これから案内する村で目が覚めて数か月、今に至るって所かな」

 あんま大した話じゃないでしょ? そう言わんばかりの苦笑をエキドナは浮かべる。
 先ほどまでとは違う沈黙にエキドナは目を伏せた。
 
現在いまの僕の目的は両親と妹を探して一刻も早く合流する事なんだけど……僕の知る日本とこの世界はまるで違くてね。変な話だけど、この世界日本語通じるんだよ……一日の時間も24時間で昼と夜の時間差、気温差、植物の植生からざっくり4月位……この世界じゃ『緑の季節』っていうらしいけど」

 だからエキドナは即座に行動を起こした。
 人並を文字通り超越ちょうえつした存在ゆえに、昼は情報を集め、夜はそれを精査せいさし家族の手がかりを模索もさくする。
 そんな最中さなか邂逅かいこうした弥生達は現状打開のきっかけ、そうエキドナは期待していた。

「そう、だったんですか」

 弥生がぽつりとエキドナに答える。
 その表情はエキドナにはうかがい知れない、途中から怖くなって三人の顔から目線をそらしていたから。

「ごめんね! 重たかったよねぇ! 嘘嘘、じつは」

 ――ひっく

「うん??」

 一泊、三人がしゃくりあげたかと思えば…… 

「「「うっく……ひっく……うえぇぇ……」」」

 ついさっきエキドナがそうだった様に、3きょうだいは涙腺るいせん決壊けっかいしていたのだった。

「……あは、お人よしだねぇ。君ら」

 エキドナはふにゃりと双眸そうぼうを緩めて……涙を拭いてあげるために、腰にくくり付けていたタオルを弥生達に――会って間もない正体不明の相手の言葉を信じて泣きじゃくる子供たちに差し出す。

「お人よし過ぎておねーさんは心配だよ、まったく」

 簡単に騙されてしまいそうな3きょうだいに、一人のにぎやかしが加わった瞬間だった。
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