長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ

文字の大きさ
83 / 255

三国緊急会議 ⑤

しおりを挟む
「では、気を取り直して三十年ぶりくらいに三ヶ国緊急会議を実施いたします。ベルトリア共和国代表のライゼン首相並びにミルテアリア国魔法士ギルド筆頭フィヨルギュンギルド長、今回は急な要請にお答えいただきありがとうございます」

 いろいろあったが体裁と言うのは大事である。気安いメンバーだけでは話が進まないのでライゼンもフィヨルギュンも部下の一人をこの場に召喚して真面目に行こうと努力中だった。

「弥生秘書官、今回の……今回の……件。経緯と結果を報告してください」

 オルトリンデが手元の書類に目を落としつつ弥生に指示を出すが、なんだか煮え切らない。
 そんな上司の無茶ぶりに弥生はすらすらと答え始める。

「はい、今回のベルトリア共和国で起きた『変態女装メタルメイドゾンビちょんぱ』による『人身売買で手に入れた人間を使って悪い事するぜ』事件についてですが」
「まて弥生秘書官殿、その呼称は正式採用なのか!?」
「この事件の主犯と思われる『変態女装メタルメイドゾンビちょんぱ』……長いし語呂が悪いので『ちょんぱ(略)』にしますね? 同人物はわが国で数週間前に行われた空挺騎士団の飛竜体験のイベントにおいて『死霊事件』を引き起こした犯人の青年と特徴が一致しており、また『人身売買で手に入れた人間を使って悪い事するぜ』事件の際、我が国の要人警護として同行していた佐伯洞爺の前で関与を認めたため同一人物と判断しました」
「なんか我が国とウェイランドで呼称格差があると思うのは気のせいだろうかっ!?」

 つつーっとオルトリンデが弥生の手元にメモ帳をずらす。そこには『めんどいのでそのままするするするーっとスルーしてください』と記されており、弥生もまたそれを見て軽く頷く。
 
「よって超法規的措置によりしておられた国王陛下とライゼン首相の許可の元『汚物は消毒するに限るよね。あ、どこにいるかわかんないからとりあえず建物ごとマルっと焼いちゃお』作戦を決行」
「オルトリンデだな!? こんな悪意しかない文言絶対お前酒飲んで勢い任せに書いたに決まってるだろ!? そうだろ白状しろこらぁぁ!?」
「オルちゃんは纏めただけで、作戦は私がたてました!」
「弥生秘書官!! 今からでも遅くない、我が国に移住しようそうしよう!! 明らかに師匠に悪影響受けている!!」

 ちなみにライゼンの読みは完全に当たっており、オルトリンデが晩酌に飲んだワインがおいしかったのでノリノリで書いた物そのままである。
 それでも国の中枢が秘密裏に乗っ取られたとかベルトリア共和国の汚点にならない様、最大限配慮された上にライゼンの英断により被害は最小限だったと言う筋書きだ。まあ、それはそれ、これはこれなのでライゼンは大いに喚いた。

「はあ、はあ……」
「大丈夫~? ライゼン坊や」
「大丈夫かと問われて大丈夫以外の答えを返す奴がいると思うか? フィヨルギュンギルド長」
「……じゃあなんで大丈夫? って問いかけるのかしらね?」
「それどころじゃないんだが……」

 ちなみにライゼンさんの部下もフィヨルギュンさんの部下もまるでコントのようなやり取りにさっきから俯いて震えている。絶対顔を上げないようにしているが誰の目から見ても笑いをこらえているのは明らかだった。

「で、今後の奴への対応として……各国の立場を確認させてください。我が国ウェイランドは本日付で奴を『死霊使い:ジョン・ドゥ』と呼称、国内のあらゆる施設への周知をして発見次第即時殲滅の立場をとります。これには弥生秘書官を指揮官として含め遊撃部隊を結成し対応に当たります」

 ここまでライゼンを完全無視で通したオルトリンデが発表する。

「最初からその呼称でよかったんじゃないか!? 我が国もウェイランドと同じ対応で行く、ただし先日の戦闘を間近で見る限り我が国の騎士では対応が難しいためウェイランド、ミルテアリアに支援を求める」
「ミルテアリアも同じかな、ベルトリア共和国には私の方で見繕った第二魔法士団を防衛力として派遣するわ。期間はジョン・ドゥの死亡確認まで、物理は……オルトリンデ側から出せる?」
「はい、近衛騎士団と空挺騎士団から合計で中隊規模までは応援に出せますが半分づつ期間交代とさせてください。空挺騎士が三人も抜けているので……ライゼン首相、申し訳ありませんが」
「いや、無理を言っている自覚はある。戦力補強に冒険者ギルドと探索者ギルドにオーダーを出して早期に何とかしようと思う」

 各国の対応が統一できたことで、滞りなく会議は終わると思われた。
 実際弥生はオルトリンデよりそこまでの流れをあらかじめ聴いている。しかし、ライゼンから予想外の一言が漏れる。

「こんな事なら『コウ』と『ヤノカ』の移住先を聞いておけばよかった……あの二人ならきっといい案を出してくれるだろうに」

 何気ない、愚痴のようなライゼンの言葉に弥生の動きが止まった。
 聞けるはずのない名前……それは数年前に二度と会えることのない別れとなった両親の名前だった。

「弥生? ちょっと! 弥生!!」

 随分と遠くに聞こえるオルトリンデの声は扉の外で待っている真司や文香の耳にも届く。
 慌てて回復魔法を準備するライゼンとフィヨルギュンを茫然と見送って……弥生は倒れた。


しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

オバちゃんだからこそ ~45歳の異世界珍道中~

鉄 主水
ファンタジー
子育ても一段落した40過ぎの訳あり主婦、里子。 そんなオバちゃん主人公が、突然……異世界へ――。 そこで里子を待ち構えていたのは……今まで見たことのない奇抜な珍獣であった。  「何がどうして、なぜこうなった! でも……せっかくの異世界だ! 思いっ切り楽しんじゃうぞ!」 オバちゃんパワーとオタクパワーを武器に、オバちゃんは我が道を行く! ラブはないけど……笑いあり、涙ありの異世界ドタバタ珍道中。 いざ……はじまり、はじまり……。 ※この作品は、エブリスタ様、小説家になろう様でも投稿しています。

地上最強ヤンキーの転生先は底辺魔力の下級貴族だった件

フランジュ
ファンタジー
地区最強のヤンキー・北条慎吾は死後、不思議な力で転生する。 だが転生先は底辺魔力の下級貴族だった!? 体も弱く、魔力も低いアルフィス・ハートルとして生まれ変わった北条慎吾は気合と根性で魔力差をひっくり返し、この世界で最強と言われる"火の王"に挑むため成長を遂げていく。

異世界に転生したら?(改)

まさ
ファンタジー
事故で死んでしまった主人公のマサムネ(奥田 政宗)は41歳、独身、彼女無し、最近の楽しみと言えば、従兄弟から借りて読んだラノベにハマり、今ではアパートの部屋に数十冊の『転生』系小説、通称『ラノベ』がところ狭しと重なっていた。 そして今日も残業の帰り道、脳内で転生したら、あーしよ、こーしよと現実逃避よろしくで想像しながら歩いていた。 物語はまさに、その時に起きる! 横断歩道を歩き目的他のアパートまで、もうすぐ、、、だったのに居眠り運転のトラックに轢かれ、意識を失った。 そして再び意識を取り戻した時、目の前に女神がいた。 ◇ 5年前の作品の改稿板になります。 少し(?)年数があって文章がおかしい所があるかもですが、素人の作品。 生暖かい目で見て下されば幸いです。

【完結】追放された転生聖女は、無手ですべてを粉砕する

ゆきむらちひろ
ファンタジー
「祈るより、殴る方が早いので」 ひとりの脳筋聖女が、本人にまったくその気がないまま、緻密に練られたシリアスな陰謀を片っ端から台無しにしていく痛快無比なアクションコメディ。 ■あらすじ 聖女セレスティアは、その類稀なる聖なる力(物理)ゆえに王都から追放された。 実は彼女には前世の記憶があって、平和な日本で暮らしていたしがないOLだった。 そして今世にて、神に祈りを捧げる乙女として王国に奉仕する聖女に転生。 だがなぜかその身に宿ったのは治癒の奇跡ではなく、岩をも砕く超人的な筋力だった。 儀式はすっぽかす。祈りの言葉は覚えられない。挙句の果てには、神殿に押し入った魔物を祈祷ではなくラリアットで撃退する始末。 そんな彼女に愛想を尽かした王国は、新たに現れた完璧な治癒能力を持つ聖女リリアナを迎え入れ、セレスティアを「偽りの聖女」として追放する。 「まあ、田舎でスローライフも悪くないか」 追放された本人はいたって能天気。行く先も分からぬまま彼女は新天地を求めて旅に出る。 しかし、彼女の行く手には、王国転覆を狙う宰相が仕組んだシリアスな陰謀の影が渦巻いていた。 「お嬢さん、命が惜しければこの密書を……」 「話が長い! 要点は!? ……もういい、面倒だから全員まとめてかかってこい!」 刺客の脅しも、古代遺跡の難解な謎も、国家を揺るがす秘密の会合も、セレスティアはすべてを「考えるのが面倒くさい」の一言で片付け、その剛腕で粉砕していく。 果たしてセレスティアはスローライフを手にすることができるのか……。 ※「小説家になろう」、「カクヨム」、「アルファポリス」に同内容のものを投稿しています。 ※この作品以外にもいろいろと小説を投稿しています。よろしければそちらもご覧ください。

攻撃魔法を使えないヒーラーの俺が、回復魔法で最強でした。 -俺は何度でも救うとそう決めた-【[完]】

水無月いい人(minazuki)
ファンタジー
【HOTランキング一位獲得作品】 【一次選考通過作品】 ---  とある剣と魔法の世界で、  ある男女の間に赤ん坊が生まれた。  名をアスフィ・シーネット。  才能が無ければ魔法が使えない、そんな世界で彼は運良く魔法の才能を持って産まれた。  だが、使用できるのは攻撃魔法ではなく回復魔法のみだった。  攻撃魔法を一切使えない彼は、冒険者達からも距離を置かれていた。 彼は誓う、俺は回復魔法で最強になると。  --------- もし気に入っていただけたら、ブクマや評価、感想をいただけると大変励みになります! #ヒラ俺 この度ついに完結しました。 1年以上書き続けた作品です。 途中迷走してました……。 今までありがとうございました! --- 追記:2025/09/20 再編、あるいは続編を書くか迷ってます。 もし気になる方は、 コメント頂けるとするかもしれないです。

アルフレッドは平穏に過ごしたい 〜追放されたけど謎のスキル【合成】で生き抜く〜

芍薬甘草湯
ファンタジー
アルフレッドは貴族の令息であったが天から与えられたスキルと家風の違いで追放される。平民となり冒険者となったが、生活するために竜騎士隊でアルバイトをすることに。 ふとした事でスキルが発動。  使えないスキルではない事に気付いたアルフレッドは様々なものを合成しながら密かに活躍していく。 ⭐︎注意⭐︎ 女性が多く出てくるため、ハーレム要素がほんの少しあります。特に苦手な方はご遠慮ください。

追放王子の気ままなクラフト旅

九頭七尾
ファンタジー
前世の記憶を持って生まれたロデス王国の第五王子、セリウス。赤子時代から魔法にのめり込んだ彼は、前世の知識を活かしながら便利な魔道具を次々と作り出していた。しかしそんな彼の存在を脅威に感じた兄の謀略で、僅か十歳のときに王宮から追放されてしまう。「むしろありがたい。世界中をのんびり旅しよう」お陰で自由の身になったセリウスは、様々な魔道具をクラフトしながら気ままな旅を満喫するのだった。

転生したら最強種の竜人かよ~目立ちたくないので種族隠して学院へ通います~

ゆる弥
ファンタジー
強さをひた隠しにして学院の入学試験を受けるが、強すぎて隠し通せておらず、逆に目立ってしまう。 コイツは何かがおかしい。 本人は気が付かず隠しているが、周りは気付き始める。 目立ちたくないのに国の最高戦力に祭り上げられてしまう可哀想な男の話。

処理中です...