長女は家族を養いたい! ~凍死から始まるお仕事冒険記~

灰色サレナ

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迷子の迷子の保護者達、貴方の家族はどこですか? ⑨

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「という訳で三人寄らば文殊の知恵、皆様お知恵を……」

 とりあえず食料と水はあるというので洞窟の入り口を岩で塞いだレティシアは幸太郎と一緒にドワーフの集落へ戻る。そして着替えもそこそこに貸してもらった集落の片隅に建てたテントで即会議だ。

「斬っちゃっていいんじゃないですか?」

 即答する灰斗の意見は間違ってはいない。状況を見る限り突然変異のゴブリンが村から追い出された。その特殊個体が妊娠して生まれる子供がどうなるのかなど予測がつかない。見逃したが故、別な場所で悲劇が生まれる事もある。

「でも、可哀そうじゃない……何とか逃がすとか」

 人情的には誰にも迷惑をかけない様に言い含めて人里離れたところで暮らしてもらう。それ位なら付き合うという前提で夜ノ華は提案した。

「夜ノ華さん、野生の熊が可哀そうだからと見過ごして。私たちが立ち去った後、この集落のだれか……子供が襲われたらどうします?」
「う……それは確かに」
「言葉が通じるのであれば意思疎通が可能でしょう。しかし、彼らは魔物です。僕やレティシアさんみたいな人がすべてならそれでもいいでしょうが……」
「じゃあレティはなんでここに聞きに来たの?」
「私が聞きたかったのはゴブリンの寿命と、特殊個体についての取り扱いですわ。もし彼女を殺したがゆえに別な問題が発生しては意味がありませんもの」
「そっか……」

 しゅん、と分かりやすく落ち込む夜ノ華。その気持ちはレティシアにもよくわかる。しかし、それだけでは世の中通用しない事もわかっているのだ。

「幸太郎様はどう思われます?」

 会議が始まって以来、黙して語らない幸太郎にレティシアが声をかける。先ほどからずーーーっと、それこそレティシアが合流した時から何か上の空であった。

「あー、その。前提があるんだけど……レティシアさんから見てそのゴブリン。言葉を覚えられそうかな?」
「できると思いますわよ。根気はいるでしょうけど……」
「いや、灰斗……君なら一人を常時見張って……万が一の時苦しませずに何とかできるよな?」
「ん、ああ……まあ、できるけど。何を考えてるんだい?」
「幸太郎? 何か思いついたの?」

 一息、幸太郎は思い切って心の内を話しだした。

「ウェイランド。鍛冶国家ウェイランドに連れて行くのはどうだろうか?」
「「「ウェイランド?」」」

 三人にとっては寝耳に水なのか、視線が幸太郎に集中した。その意味は『はよ続き』だ。

「ほら、あそこ学術都市でもあって……統括ギルドって覚えているか夜ノ華」
「え、ああ……そういえばお城に隣接する塔がそうだったわよね」
「そうそう、そこでさ受付のエルフさんが言ってたの憶えてるか? 学ぼうとするなら魔物でも受け入れるって……」

 そう、二人が旅を初めてミルテアリアから出た時に最初に立ち寄った国がウェイランドだった。なんでもその近辺は三つの国がそれぞれ特色があり、学び舎として有名なのがその国でノルトノ民と呼ばれる巨人や幽霊と呼ばれると笑いながら訂正する不死族、ケモミミの騎士や魔族と呼ばれる人種も仲良く暮らしていた。
 少なくとも、会話がしっかりできる魔物がいきなり殺されたりすることはなさそうなのだ。

「そっか!! あそこなら……でも、どうやって戻るの?」
「それは……まだ考えてない」
「当てがありますの? 夜ノ華、幸太郎様」
「僕はやめた方が良いと思うけどなぁ。後腐れ無く今殺しておこうよ……実害出てるしさ」
「でも……なんか。その、うまく言えないんだけど」

 そう、幸太郎が持つ違和感はそれだけではない。しかし、夜ノ華や灰斗、レティシアを納得させられそうな説明ができるわけでもなかった。

「幸太郎、そのゴブリンは助けるべきだと思う?」
「思う」

 夜ノ華が真剣な声音で幸太郎に確認する。それに応える夫の目に迷いはなかった。
 ふ、と夜ノ華は肩の力を抜いて微笑みながら宣言する。

「じゃ、助けましょ。灰斗さん、レティ。お願い!!」
「本気かい?」
「うん、それができる灰斗さんだから……今は……助けよう!」
「あまりお勧めしませんわよ? 厄介ごとを背負うのですから」
「何事にも例外はあるもん。それはそれで割り切る!!」

 ゴブリン側から見ればなんとも自分勝手な物言いだが、ドワーフ達もこのままでは飢えてしまう。あちらを立てればこちらが立たない、ならば後はその場にいる当人たちが選択するしかない。
 その決断を幸太郎がしたのだ。妻である夜ノ華が信じなくて誰が信じるのか。

「夜ノ華……良いの、かい?」

 まさか即決で夜ノ華が肯定するとは思ってなかった幸太郎はあっけにとられるばかりだ。
 そんな幸太郎に夜ノ華は眉根を寄せて文句を返す。

「何よぅ不満なの?」
「違うよ。ありがとう……」
「私が幸太郎を信じてあげなくちゃ誰が信じるのよ」

 妻として夫を信じる。夜ノ華のシンプルな物言いにレティシアが思わず吹き出す。

「くっふ……確かに、そうです、わね」
「ちょっと! レティ!? 何笑ってるのよ!!」
「ごめんなさい……なんだか可笑しくて、あはは!」
「もう! そんなに涙流して笑う所じゃないでしょうが!!」

 なんだか気恥ずかしくなって夜ノ華の顔が真っ赤に染まる。そんな二人を見て灰斗も呆れたように笑いだす。

「仕方ありませんねぇ、幸太郎のわがままですから。狩りの師としてフォローぐらいしますか」
「灰斗……ありがとう」
「ただし、他の人間に害があるようだったら即時処理を。これだけは譲れません、良いですか?」
「もちろんだ」

 ぐっと握られた拳を灰斗は幸太郎の胸にトン、と添える。
 夜ノ華さんに感謝してくださいね? と言葉と共に。

「じゃあ、まずは話を聞きに行こうか!!」

 夜ノ華がレティシアの首根っこを腕で締めながら宣言する。

「はいよ」
「わかりましたわ」
「行こう!」

 そうしてこっそりと、ドワーフが眠った後に集落を後にした4人だった。 
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