103 / 171
第6部
第103話
しおりを挟む相手を威嚇するため、雄叫びをあげるクマは、右目で亮介の顔を見据えた。
「なぜ、この森に人間がいる。きさまから、同族のにおいがする。それに、これは……」
「兄者、あのチビ、においやすぜ!」
(チ、チビって、僕のこと!?)
クマに駆け寄ったキツネは、ビシッと亮介を指さした。
「このにおい、まちがいねぇ。あの丸太小屋の住人だ。この辺りの水氣のせいで、人間臭さが消えかけてるやがる」
たった今、禊をしたばかりの亮介とコリスは、清らかな状態にあり、自然界に悪影響をおよぼすような存在ではなかった。
「自己浄化をした理由を言え。さもなくば、そこの精霊もろとも、喰いちぎる」
水の精霊を捕え損ねたクマは、なんの関係もないジェミャを巻きこむかたちで、亮介を脅迫した。
(こ、こわい。ハイロさんと同じ灰色大熊なのに、こっちのクマさんは、ヤクザみたいだ……)
喰いちぎられなくない亮介は、ジェミャの背中を見つめ、どう説明すべきか悩んだ。
(どうしよう。正直に話せば長くなるし、ミュオンさんとハイロさんの関係が知れたら、どう思うか……)
ノネコの意見によると、ミュオンを拐ったクマの心理は、褒美を得た感覚に近いらしい。家捜しの目的は、人間と暮らす同族へ嫌悪感を突きつけるためだが、そこにいた水の精霊に気を取られ、不在だった亮介に対する関心よりも、ミュオンを奪い去ってやろうという物欲を優先した。さらに、いちど手に入れたミュオンに逃亡されたことで、ますます所有欲が増し、なんとしても独占(捕食)したくなった。
「……あれは、オレのものだ。どうやら、正体は精霊のようだが、そんなのはどうでもいい」
クマにとってミュオンは、獲物である。横取りされた以上、返してもらうまで執着するだけだ。
『ほう、水の精霊に心酔したか』
「ちがう。奪うのはオレだ。邪魔をするならば、きさまらを斃していく」
『ゾクゾクするねぇ、その眼光と貪欲な発言。おまえの雄々しさは認めてやろう。が、残念だったな。おまえの求める水の精霊は、すでにお手つきだ』
「ジェミャさん、ハイロさんとのことは、言わないほうが!」
うっかり口走った亮介をよそに、ついに標的の名前が判明したクマは、丸太小屋のある方角をにらんだ。
★つづく
26
あなたにおすすめの小説
オッサン、エルフの森の歌姫【ディーバ】になる
クロタ
BL
召喚儀式の失敗で、現代日本から異世界に飛ばされて捨てられたオッサン(39歳)と、彼を拾って過保護に庇護するエルフ(300歳、外見年齢20代)のお話です。
【完結済み】乙男な僕はモブらしく生きる
木嶋うめ香
BL
本編完結済み(2021.3.8)
和の国の貴族の子息が通う華学園の食堂で、僕こと鈴森千晴(すずもりちはる)は前世の記憶を思い出した。
この世界、前世の僕がやっていたBLゲーム「華乙男のラブ日和」じゃないか?
鈴森千晴なんて登場人物、ゲームには居なかったから僕のポジションはモブなんだろう。
もうすぐ主人公が転校してくる。
僕の片思いの相手山城雅(やましろみやび)も攻略対象者の一人だ。
これから僕は主人公と雅が仲良くなっていくのを見てなきゃいけないのか。
片思いだって分ってるから、諦めなきゃいけないのは分ってるけど、やっぱり辛いよどうしたらいいんだろう。
悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?
* ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。
悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう!
せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー?
ユィリと皆の動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵も動画もあがります。ほぼ毎日更新
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。動画を作ったときに更新
プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください!
普段「はい」しか言わない僕は、そばに人がいると怖いのに、元マスターが迫ってきて弄ばれている
迷路を跳ぶ狐
BL
全105話*六月十一日に完結する予定です。
読んでいただき、エールやお気に入り、しおりなど、ありがとうございました(*≧∀≦*)
魔法の名手が生み出した失敗作と言われていた僕の処分は、ある日突然決まった。これから捨てられる城に置き去りにされるらしい。
ずっと前から廃棄処分は決まっていたし、殺されるかと思っていたのに、そうならなかったのはよかったんだけど、なぜか僕を嫌っていたはずのマスターまでその城に残っている。
それだけならよかったんだけど、ずっとついてくる。たまにちょっと怖い。
それだけならよかったんだけど、なんだか距離が近い気がする。
勘弁してほしい。
僕は、この人と話すのが、ものすごく怖いんだ。
悪役令息に転生したのに、ヒーローもヒロインも不在で、拾って育てた執事が最強なんだが……なんで?!
はぴねこ
BL
前世の弟が好きだったゲームの世界に、悪役令息として転生してしまった俺。
本来なら、ヒロインをいじめ、ヒーローが活躍するための踏み台になる……
そんな役割のはずなのに、ヒーローともヒロインとも出会えない。
いじめる対象すら見つけられない新米悪役令息とか、ポンコツすぎないだろうか?
そんな俺に反して、子供の頃に拾って育てた執事は超優秀で、なぜか「悪役執事スキル」を着実に磨いている。
……いや、違う!
そうじゃない!!
悪役にならなきゃいけないのは俺なんだってば!!!
【完結】悪役令息の伴侶(予定)に転生しました
* ゆるゆ
BL
攻略対象しか見えてない悪役令息の伴侶(予定)なんか、こっちからお断りだ! って思ったのに……! 前世の記憶がよみがえり、反省しました。
BLゲームの世界で、推しに逢うために頑張りはじめた、名前も顔も身長もないモブの快進撃が始まる──! といいな!(笑)
本編完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
きーちゃんと皆の動画をつくりました!
もしよかったら、お話と一緒に楽しんでくださったら、とてもうれしいです。
インスタ @yuruyu0 絵もあがります
Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます
プロフのwebサイトから両方に飛べるので、もしよかったら!
本編以降のお話、恋愛ルートも、おまけのお話の更新も、アルファポリスさまだけですー!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる