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第6部
第105話
しおりを挟むなにかをたくらむジェミャは、うっすら笑みを浮かべ、『空気がうまい』などとつぶやいている。クマが長考におよぶため、キツネは「やい、そこの人間ども!」といって、亮介に説明を求めた。
「ううっ、あのキツネ、苦手だな。ぼくを壁に叩きつけたやつだよ~」
「でも、せっかく逢えたンだし、少し話をしてみよう。コリスくんは僕が守ってあげる」
「わ、リョースケくん、かっこいい~」
暴力をふるわれたコリスは、キツネの存在が怖くてたまらないらしい。亮介的には、ぬいぐるみのように見える。噛みつかれなければ、頭を撫でてみたい気持ちさえあった。
(よし、僕だけでも慎重になろう。ついジェミャさんをたよったけど、話がややこしくなっちゃったし、ちょっと反省!)
相談する相手がまちがっていた。余計に面倒な展開になってきたが、亮介はキツネとの対話に挑戦した。
「僕は、斗馬亮介! そこのキツネさん、どうしてクマさんは、そんなにミュオンさんを欲しがってるの? 先に教えてくれたら、こっちもちゃんと質問に答えるよ」
「あん? オレサマに、さぐりをいれる気かよ。へへっ、どうせなら、平和的に解決しようってか。……兄者はな、精霊を喰って、森じゅうに力を示すつもりなのさ。絶滅に瀕して姿を見せなくなった大神より、灰色大熊を王獣として崇める時代がきたってわけだ」
「ミュオンさんを食べても、精霊の力は手に入らないと思うけど……」
「ああん? 人間のおまえこそ、ふさわしかったとでも言いたいのかよ」
「そ、そんなつもりないよ」
「ケッ。いちど身に受けた加護は、そう消えることはないのか。おまえの全身の至るところから、人間でも半獣でもない、妙な水氣を感じるぜ。もしかして、無自覚か? 人間のくせに霊力を宿しやがって、それを使わない手は、ねぇんじゃねーの」
亮介は首のうしろに隠れているコリスに「そうなの?」と訊ねた。コリスは小さくうなずき、「初めてリョースケくんを見たとき、精霊の子どもかと思った」という。
(僕が精霊の子? いやいや、それはさすがに無理がある設定だよ。お父さんとお母さんは日本にいるし、そもそも、異世界で産まれたわけじゃないし……)
ミュオンについて調べるうち、森林域には、人間と精霊の血を引く子どもが存在する可能性が浮上している。亮介は、いつか逢ってみたいと思いはじめていた。
★つづく
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