拾った指輪で公爵様の妻になりました

奏多

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安心してくれたようです

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 色を変えた、とは言わない。
 そこは察してもらおう。
 父親が心底申し訳なさそうな表情をする。そこまで前の結婚話のことを嫌がっていたのかということと、それを娘に頼むしかなかったことを悔やんでいるんだと思う。
 悲しませたいわけではないのだけど、今のエミリアにはこんな風に話を変えることしか思いつかないので、許してほしい。

「でも、公爵家に迎えていただいたのなら、他の貴族との交流もあるのでしょう? まったく誰とも会わないわけにはいかないと思うのだけど」

 母親の質問に、よくぞ聞いてくれました、と思う。

「ええ。でも、もし私のことを覚えている人が後で現れたとしても、ロンザが貴族の妻にコンプレックスを持っていたせいで、みすぼらしく見える色にされていたんだ、と話すことにします。そうしたら、そこから私を救い出してくださった公爵閣下への評価が上がりますし、私が幸せな結婚をしたのだと思ってくれるかと考えたんです」

 幸せな結婚をしたのだと思えれば、シルヴェストが結婚相手が見つからずに不幸な娘に婚姻を持ち掛けた、なんて悪い噂も出ないだろう。
 以前の死神公爵の話が広まっているままでは、そうなりかねないし、エミリアの髪の色のことが先に広まれば、拍車をかけることになってしまう。
 せっかく救ってもらったのに、エミリアのせいでさらに評判を落とさせたくはない。

 これだけのことを一気に話したものの、つっかえたり口が動かなくなることはなかった。以前、貴族の家に訪問した時の話、と考えつつ口に出したからだろう。
 ほっとしつつ話し終えると、両親も納得してくれたようだ。

「そうね。先に良い印象が広まったうえであれば、公爵閣下が私たちにとっての救い主だとわかってもらいやすいかもしれないわ」

 母親は同意してくれる。
 うんうんとうなずいた父親も、それで髪色については話が終わったと考えたようで、他の心配事へ話題を変えた。

「それにしても……娘はお役に立てているでしょうか。何分、苦しい台所事情のため、私どもと一緒に土に触れる生活をしておりましたので、立派なお家の夫人としてやっていけているかどうか……」

 気をもんでいる父親に、シルヴェストは言う。

「彼女はしっかりとした人ですよ。一緒に暮らし始めてからも、彼女の芯の強さや落ち着いた考えなどに、今更ながら驚かされているばかりです。家政については臣下がおりますので、特に不安に思うことなどはありません」

(そもそも、試験が終わるまでは正式な妻ではないから、教えられないものね)

 まだエミリアは『お客様』なのだ。
 問題なく試験を終えれば、これから家政のことも把握しなければならないけど。

 試験の話までは両親にはできないので、シルヴェストの隣でにこりと微笑む。
 それに、エミリアがきちんと管理をできなかったとしても、それでも問題はないのだ。

(究極的には、私は公爵家の秘密を守って、後継者のことを考えるのが一番の役目だから……)

 そこまで考えて、ふっとシルヴェストの顔から眼をそらす。

(今日、試験を無事に終えたら、本当にこの人の妻になるんだと思ったら、なんだか恥ずかしいわ)

 抱きしめられたりするんだろうか。するんだろうなと思うと、想像するだけでもじもじとしてしまう。
 ふっと前を見ると、そんな私を両親は微笑ましそうに見ていた。

「本当に、良い方と巡り合えたわね」

 最後にそう言った母親は、心底安心した表情になったのだった。
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