男女比がおかしい世界の貴族に転生してしまった件

美鈴

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第二章

ティア5歳の生誕祭当日

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「ティア」 

「ラ…ランス」

 気持ちを伝えた後、ティアはこういう感じ。少しオドオドしているのがまた可愛く感じてしまう。

「昨日も言ったけど…伝えたかっただけだから。ティアがエルを好きなのは分かってるしね。今迄通り接してくれると僕は嬉しいな」

「う、うん」

「そ、それにしても…エル遅いね?まだ来てないよね?」 

「えっ…あっ…そうだね」 

「本当なら昨日到着してた筈なんだよね?」 

「ま、まさか…また私の生誕祭を忘れてる?やはりエルは監禁して…ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ―」 

「いや…そんな事は……………無いと思うけど…」

「ねぇ、ランス…その間は何?」 

「何でもない、何でもないよ!?」 

 早く来てくれるかな、エル?たまにティアの瞳がドス黒く真っ黒に染まる瞬間があるんだよね…。これ書物で見た事あるヤンデレって奴じゃないのっ!?い、今の所、黒ティアはたまにしか顔を出さないから良いけどさ…。(※黒ティア、命名byランス) 






  ティアの5歳の生誕祭が始まった…。まだエルの姿は…ない。どうしたんだよエル?ティアも待ってるし、僕も待ってるんだよ?

 それなのに…エルが居ないから…あんなに気落ちして、でも無理してあんな風に笑顔を作って…傍から見ていて痛々し過ぎるよ…。せっかくのティアの生誕祭なのに…。ティアの笑顔が僕は好きなんだ。

 エル…本当に忘れてないよね?忘れていたらその時は僕は君を絶対に許さないからね?


『陛下ぁぁーーー!!陛下ぁぁぁぁ!!!』 

 城内に誰かが慌てて入って来た…。一気にザワザワと騒がしくなり、みんな何があったんだと様子を窺っている。

 兵士の女性をよく見ると彼女は怪我をしているっ!?本来なら代わりの人が陛下の耳に話を入れる筈なのに、余程火急の事なのだとこの場に居る者が次々とそう口にしているのが聞こえてくる…。 

「…何があった?」 

「し、至急!!陛下のお耳においれせねばならぬ事がっ…はぁはぁ…」 

 慌てて他の兵士が駆け寄ろうとするのを陛下が止めた。

「怪我もしておるな…よい、そのまま申せっ!」 

「し、しかし…」 

「よいと言った!」 

「はっ!!エル殿が…エル殿がティア殿下の生誕祭を祝われる為に王都に向かっていた所…はぁはぁはぁ…」

 今…エルって言った…よね?良かった。忘れてた訳じゃあないんだね…。でも…じゃあ…なんで……
 
「エル殿が何者かの手により…攫われました…。昨日の事です…」

“パリーン…!” 

 ティアが持っていたグラスが床へと落ちて…いつの間にか静かになっていたこの空間にグラスの割れた音が鳴り響く…。僕だって危うく落とす所だった…。 

「う…嘘っ…エ…ル」 

 ティアは…ショックのあまり気を失った。

「そんな…エルが」 

 僕は体が震えて止まらなかった。エル…いやだよ。こんなのって…ないよ。

「陛下っ!!横から口を挟む事をお許し下さい!」

 母様!?そう言ったのは母様。母様のあんな怒った様な恐ろしいと思う顔は見た事がない。

 陛下が母様の言葉に静かに首を縦に振る…。 

「マリアは!?マリアやミーニャが居た筈よっ!?あの2人が負ける筈ないわっ!!」 

「マリア様は…おりませんでした…」

「ではミーニャは居たって事でしょう?彼女一人でも十分…」 

「襲撃してきた敵の数が多く…それに…何者かが我等の騎士団に紛れ込んでいたみたいで…食事にっ…毒がっ…。それにより多くの兵士が倒れ…ですが、それでも…エリン団長とミーニャ様の手により敵の数は半数近く迄減らされたのですがっ…」 

「…それで…2人共…死んだの?」 

「…いえっ…エル様がっ…エル様がっ、その場に生きている者の命と無事を引き換えに自ら…」


 エル…そんな状態で…君は… 


「陛下!どうか、どうか私に騎士団をお貸し下さい!」 

「母様!?」 

「私がその者達の後を追いかけてみます!それが昨日の事ならそんなに遠く迄は行ってない筈!」 

「よかろう!テレサに早馬の準備をっ!テレサよ!騎士団の一つをそなたに預ける!」 

「ありがとうございます!では…陛下」 

「うむ。そなたも無理するでないぞ?」

「はっ!」

 僕は母様に駆け寄る。母様が強いのは知ってるけど…それでも心配になる。 

「心配ないわ、ランス。必ず…エル君を無事に連れ帰ってみせるから、それまで待っててね?」 

「母様…どうか無事に帰って来てね?」 

「勿論よ!それに…今頃その報せをマリアも間違いなく聞いていて向かっている筈だわ…。私達2人に倒せない敵はいないもの!」 

「…うん…母様。どうかエルをお願い!」 

「任されました!時間が惜しいからそろそろ行くわっ!使用人と共に宿から出ない様に、良いわね?」 

「うん」 

 本当は僕も行きたい…。でも足手まといなのは言われなくても分かる…。母様もエルも…

 とにかく無事で……。
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