38 / 141
第二章
ティア5歳の生誕祭当日
しおりを挟む
「ティア」
「ラ…ランス」
気持ちを伝えた後、ティアはこういう感じ。少しオドオドしているのがまた可愛く感じてしまう。
「昨日も言ったけど…伝えたかっただけだから。ティアがエルを好きなのは分かってるしね。今迄通り接してくれると僕は嬉しいな」
「う、うん」
「そ、それにしても…エル遅いね?まだ来てないよね?」
「えっ…あっ…そうだね」
「本当なら昨日到着してた筈なんだよね?」
「ま、まさか…また私の生誕祭を忘れてる?やはりエルは監禁して…ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ―」
「いや…そんな事は……………無いと思うけど…」
「ねぇ、ランス…その間は何?」
「何でもない、何でもないよ!?」
早く来てくれるかな、エル?たまにティアの瞳がドス黒く真っ黒に染まる瞬間があるんだよね…。これ書物で見た事あるヤンデレって奴じゃないのっ!?い、今の所、黒ティアはたまにしか顔を出さないから良いけどさ…。(※黒ティア、命名byランス)
♢
ティアの5歳の生誕祭が始まった…。まだエルの姿は…ない。どうしたんだよエル?ティアも待ってるし、僕も待ってるんだよ?
それなのに…エルが居ないから…あんなに気落ちして、でも無理してあんな風に笑顔を作って…傍から見ていて痛々し過ぎるよ…。せっかくのティアの生誕祭なのに…。ティアの笑顔が僕は好きなんだ。
エル…本当に忘れてないよね?忘れていたらその時は僕は君を絶対に許さないからね?
『陛下ぁぁーーー!!陛下ぁぁぁぁ!!!』
城内に誰かが慌てて入って来た…。一気にザワザワと騒がしくなり、みんな何があったんだと様子を窺っている。
兵士の女性をよく見ると彼女は怪我をしているっ!?本来なら代わりの人が陛下の耳に話を入れる筈なのに、余程火急の事なのだとこの場に居る者が次々とそう口にしているのが聞こえてくる…。
「…何があった?」
「し、至急!!陛下のお耳においれせねばならぬ事がっ…はぁはぁ…」
慌てて他の兵士が駆け寄ろうとするのを陛下が止めた。
「怪我もしておるな…よい、そのまま申せっ!」
「し、しかし…」
「よいと言った!」
「はっ!!エル殿が…エル殿がティア殿下の生誕祭を祝われる為に王都に向かっていた所…はぁはぁはぁ…」
今…エルって言った…よね?良かった。忘れてた訳じゃあないんだね…。でも…じゃあ…なんで……
「エル殿が何者かの手により…攫われました…。昨日の事です…」
“パリーン…!”
ティアが持っていたグラスが床へと落ちて…いつの間にか静かになっていたこの空間にグラスの割れた音が鳴り響く…。僕だって危うく落とす所だった…。
「う…嘘っ…エ…ル」
ティアは…ショックのあまり気を失った。
「そんな…エルが」
僕は体が震えて止まらなかった。エル…いやだよ。こんなのって…ないよ。
「陛下っ!!横から口を挟む事をお許し下さい!」
母様!?そう言ったのは母様。母様のあんな怒った様な恐ろしいと思う顔は見た事がない。
陛下が母様の言葉に静かに首を縦に振る…。
「マリアは!?マリアやミーニャが居た筈よっ!?あの2人が負ける筈ないわっ!!」
「マリア様は…おりませんでした…」
「ではミーニャは居たって事でしょう?彼女一人でも十分…」
「襲撃してきた敵の数が多く…それに…何者かが我等の騎士団に紛れ込んでいたみたいで…食事にっ…毒がっ…。それにより多くの兵士が倒れ…ですが、それでも…エリン団長とミーニャ様の手により敵の数は半数近く迄減らされたのですがっ…」
「…それで…2人共…死んだの?」
「…いえっ…エル様がっ…エル様がっ、その場に生きている者の命と無事を引き換えに自ら…」
エル…そんな状態で…君は…
「陛下!どうか、どうか私に騎士団をお貸し下さい!」
「母様!?」
「私がその者達の後を追いかけてみます!それが昨日の事ならそんなに遠く迄は行ってない筈!」
「よかろう!テレサに早馬の準備をっ!テレサよ!騎士団の一つをそなたに預ける!」
「ありがとうございます!では…陛下」
「うむ。そなたも無理するでないぞ?」
「はっ!」
僕は母様に駆け寄る。母様が強いのは知ってるけど…それでも心配になる。
「心配ないわ、ランス。必ず…エル君を無事に連れ帰ってみせるから、それまで待っててね?」
「母様…どうか無事に帰って来てね?」
「勿論よ!それに…今頃その報せをマリアも間違いなく聞いていて向かっている筈だわ…。私達2人に倒せない敵はいないもの!」
「…うん…母様。どうかエルをお願い!」
「任されました!時間が惜しいからそろそろ行くわっ!使用人と共に宿から出ない様に、良いわね?」
「うん」
本当は僕も行きたい…。でも足手まといなのは言われなくても分かる…。母様もエルも…
とにかく無事で……。
「ラ…ランス」
気持ちを伝えた後、ティアはこういう感じ。少しオドオドしているのがまた可愛く感じてしまう。
「昨日も言ったけど…伝えたかっただけだから。ティアがエルを好きなのは分かってるしね。今迄通り接してくれると僕は嬉しいな」
「う、うん」
「そ、それにしても…エル遅いね?まだ来てないよね?」
「えっ…あっ…そうだね」
「本当なら昨日到着してた筈なんだよね?」
「ま、まさか…また私の生誕祭を忘れてる?やはりエルは監禁して…ブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツブツ―」
「いや…そんな事は……………無いと思うけど…」
「ねぇ、ランス…その間は何?」
「何でもない、何でもないよ!?」
早く来てくれるかな、エル?たまにティアの瞳がドス黒く真っ黒に染まる瞬間があるんだよね…。これ書物で見た事あるヤンデレって奴じゃないのっ!?い、今の所、黒ティアはたまにしか顔を出さないから良いけどさ…。(※黒ティア、命名byランス)
♢
ティアの5歳の生誕祭が始まった…。まだエルの姿は…ない。どうしたんだよエル?ティアも待ってるし、僕も待ってるんだよ?
それなのに…エルが居ないから…あんなに気落ちして、でも無理してあんな風に笑顔を作って…傍から見ていて痛々し過ぎるよ…。せっかくのティアの生誕祭なのに…。ティアの笑顔が僕は好きなんだ。
エル…本当に忘れてないよね?忘れていたらその時は僕は君を絶対に許さないからね?
『陛下ぁぁーーー!!陛下ぁぁぁぁ!!!』
城内に誰かが慌てて入って来た…。一気にザワザワと騒がしくなり、みんな何があったんだと様子を窺っている。
兵士の女性をよく見ると彼女は怪我をしているっ!?本来なら代わりの人が陛下の耳に話を入れる筈なのに、余程火急の事なのだとこの場に居る者が次々とそう口にしているのが聞こえてくる…。
「…何があった?」
「し、至急!!陛下のお耳においれせねばならぬ事がっ…はぁはぁ…」
慌てて他の兵士が駆け寄ろうとするのを陛下が止めた。
「怪我もしておるな…よい、そのまま申せっ!」
「し、しかし…」
「よいと言った!」
「はっ!!エル殿が…エル殿がティア殿下の生誕祭を祝われる為に王都に向かっていた所…はぁはぁはぁ…」
今…エルって言った…よね?良かった。忘れてた訳じゃあないんだね…。でも…じゃあ…なんで……
「エル殿が何者かの手により…攫われました…。昨日の事です…」
“パリーン…!”
ティアが持っていたグラスが床へと落ちて…いつの間にか静かになっていたこの空間にグラスの割れた音が鳴り響く…。僕だって危うく落とす所だった…。
「う…嘘っ…エ…ル」
ティアは…ショックのあまり気を失った。
「そんな…エルが」
僕は体が震えて止まらなかった。エル…いやだよ。こんなのって…ないよ。
「陛下っ!!横から口を挟む事をお許し下さい!」
母様!?そう言ったのは母様。母様のあんな怒った様な恐ろしいと思う顔は見た事がない。
陛下が母様の言葉に静かに首を縦に振る…。
「マリアは!?マリアやミーニャが居た筈よっ!?あの2人が負ける筈ないわっ!!」
「マリア様は…おりませんでした…」
「ではミーニャは居たって事でしょう?彼女一人でも十分…」
「襲撃してきた敵の数が多く…それに…何者かが我等の騎士団に紛れ込んでいたみたいで…食事にっ…毒がっ…。それにより多くの兵士が倒れ…ですが、それでも…エリン団長とミーニャ様の手により敵の数は半数近く迄減らされたのですがっ…」
「…それで…2人共…死んだの?」
「…いえっ…エル様がっ…エル様がっ、その場に生きている者の命と無事を引き換えに自ら…」
エル…そんな状態で…君は…
「陛下!どうか、どうか私に騎士団をお貸し下さい!」
「母様!?」
「私がその者達の後を追いかけてみます!それが昨日の事ならそんなに遠く迄は行ってない筈!」
「よかろう!テレサに早馬の準備をっ!テレサよ!騎士団の一つをそなたに預ける!」
「ありがとうございます!では…陛下」
「うむ。そなたも無理するでないぞ?」
「はっ!」
僕は母様に駆け寄る。母様が強いのは知ってるけど…それでも心配になる。
「心配ないわ、ランス。必ず…エル君を無事に連れ帰ってみせるから、それまで待っててね?」
「母様…どうか無事に帰って来てね?」
「勿論よ!それに…今頃その報せをマリアも間違いなく聞いていて向かっている筈だわ…。私達2人に倒せない敵はいないもの!」
「…うん…母様。どうかエルをお願い!」
「任されました!時間が惜しいからそろそろ行くわっ!使用人と共に宿から出ない様に、良いわね?」
「うん」
本当は僕も行きたい…。でも足手まといなのは言われなくても分かる…。母様もエルも…
とにかく無事で……。
340
あなたにおすすめの小説
男が少ない世界に転生して
美鈴
ファンタジー
※よりよいものにする為に改稿する事にしました!どうかお付き合い下さいますと幸いです!
旧稿版も一応残しておきますがあのままいくと当初のプロットよりも大幅におかしくなりましたのですいませんが宜しくお願いします!
交通事故に合い意識がどんどん遠くなっていく1人の男性。次に意識が戻った時は病院?前世の一部の記憶はあるが自分に関する事は全て忘れた男が転生したのは男女比が異なる世界。彼はどの様にこの世界で生きていくのだろうか?それはまだ誰も知らないお話。
最低のEランクと追放されたけど、実はEXランクの無限増殖で最強でした。
みこみこP
ファンタジー
高校2年の夏。
高木華音【男】は夏休みに入る前日のホームルーム中にクラスメイトと共に異世界にある帝国【ゼロムス】に魔王討伐の為に集団転移させれた。
地球人が異世界転移すると必ずDランクからAランクの固有スキルという世界に1人しか持てないレアスキルを授かるのだが、華音だけはEランク・【ムゲン】という存在しない最低ランクの固有スキルを授かったと、帝国により死の森へ捨てられる。
しかし、華音の授かった固有スキルはEXランクの無限増殖という最強のスキルだったが、本人は弱いと思い込み、死の森を生き抜く為に無双する。
転生?したら男女逆転世界
美鈴
ファンタジー
階段から落ちたら見知らぬ場所にいた僕。名前は覚えてるけど名字は分からない。年齢は多分15歳だと思うけど…。えっ…男性警護官!?って、何?男性が少ないって!?男性が襲われる危険がある!?そんな事言われても…。えっ…君が助けてくれるの?じゃあお願いします!って感じで始まっていく物語…。
※カクヨム様にも掲載しております
貞操逆転世界に転生したのに…男女比一対一って…
美鈴
ファンタジー
俺は隼 豊和(はやぶさ とよかず)。年齢は15歳。今年から高校生になるんだけど、何を隠そう俺には前世の記憶があるんだ。前世の記憶があるということは亡くなって生まれ変わったという事なんだろうけど、生まれ変わった世界はなんと貞操逆転世界だった。これはモテると喜んだのも束の間…その世界の男女比の差は全く無く、男性が優遇される世界ではなかった…寧ろ…。とにかく他にも色々とおかしい、そんな世界で俺にどうしろと!?また誰とも付き合えないのかっ!?そんなお話です…。
※カクヨム様にも投稿しております。内容は異なります。
※イラストはAI生成です
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
真祖竜に転生したけど、怠け者の世界最強種とか性に合わないんで、人間のふりして旅に出ます
難波一
ファンタジー
"『第18回ファンタジー小説大賞【奨励賞】受賞!』"
ブラック企業勤めのサラリーマン、橘隆也(たちばな・りゅうや)、28歳。
社畜生活に疲れ果て、ある日ついに階段から足を滑らせてあっさりゲームオーバー……
……と思いきや、目覚めたらなんと、伝説の存在・“真祖竜”として異世界に転生していた!?
ところがその竜社会、価値観がヤバすぎた。
「努力は未熟の証、夢は竜の尊厳を損なう」
「強者たるもの怠惰であれ」がスローガンの“七大怠惰戒律”を掲げる、まさかのぐうたら最強種族!
「何それ意味わかんない。強く生まれたからこそ、努力してもっと強くなるのが楽しいんじゃん。」
かくして、生まれながらにして世界最強クラスのポテンシャルを持つ幼竜・アルドラクスは、
竜社会の常識をぶっちぎりで踏み倒し、独学で魔法と技術を学び、人間の姿へと変身。
「世界を見たい。自分の力がどこまで通じるか、試してみたい——」
人間のふりをして旅に出た彼は、貴族の令嬢や竜の少女、巨大な犬といった仲間たちと出会い、
やがて“魔王”と呼ばれる世界級の脅威や、世界の秘密に巻き込まれていくことになる。
——これは、“怠惰が美徳”な最強種族に生まれてしまった元社畜が、
「自分らしく、全力で生きる」ことを選んだ物語。
世界を知り、仲間と出会い、規格外の強さで冒険と成長を繰り広げる、
最強幼竜の“成り上がり×異端×ほのぼの冒険ファンタジー”開幕!
※小説家になろう様にも掲載しています。
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
欲張ってチートスキル貰いすぎたらステータスを全部0にされてしまったので最弱から最強&ハーレム目指します
ゆさま
ファンタジー
チートスキルを授けてくれる女神様が出てくるまで最短最速です。(多分) HP1 全ステータス0から這い上がる! 可愛い女の子の挿絵多めです!!
カクヨムにて公開したものを手直しして投稿しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる