マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴

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第一章

えっ…?えっ…?

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「…えっ?…えっ…?」


 歌羽根さんはどうやら自分の身に起こった事に思考が追い付いていないようだ。

 そりゃあそうなるよなあ…。

「こういうのワープって言うんだっけっ?転移だっけっ?」

「確かワープって主にSFの文脈で使われていて、空間を歪ませて超光速で移動する技術の事じゃなかったかな。だからこの場合は転移とか瞬間移動とかの言葉の方が適切かも」

「よくそんな事知ってるわね」

「まあ、一応ね」

「ちょっ!?ふ、二人とも何でそんなに落ち着いてどうでもいい…事ではないけど話してるのっ!?さっきまで私達喫茶店の前に居たよね!?ここはどこっ!?明らかに喫茶店の前ではない事だけは分かるんだけどもっ!?」

 俺の胸ぐら辺りを掴み詰め寄ってそんな言葉を口にする歌羽根さん。その距離は余りにも近い。歌羽根さんが喋る度に息が吹きかかり、まつ毛の数を数えられる程に…

「ちょっ!?う、歌羽根さん!?近い近いからっ!?」

「天音…ちょっと近過ぎるわよ…。そ、そんなに近づくと毒牙のかかってしまうわよ」

「かけねぇわ!美樹子はどさくさに紛れて何言ってんのっ!?」

「っ!?ご、ごめんなさい!?わ、私…つい…」

 掴んでいた胸ぐら辺りからバッっと手を離して慌てて距離を取る歌羽根さん…。

「そ、そんなに慌てなくても毒牙にかけたりしないからね!?」

「あっ…違っ…慌てて離れたのは…そ、そうじゃなくて…れ、冷静になったら…その…早房君の顔が余りにも近かったから…」

 頬を真っ赤に染め、照れを誤魔化すように人差し指同士をツンツンしながらそんな事を言う歌羽根さん。初心なんだろうな…。そういえば彼女、ドラマに出演するのが決まった時の逸話があったな…。ラブシーンは全て断るという逸話が…。役でもなんでもそういうのは好きな人とだけしたいと発言したとかなんとか…。

 こうした姿を見ると…まあ、彼女のそんな発言はホントだったんだろうな…。
 現役トップアイドルの可愛らしい素の姿を拝めるとは…人生分からんもんだな…。


「馬鹿はデレデレしない!天音はこんな奴に照れないのっ!」

「馬鹿はないだろ?美樹子?それに俺は別にデレデレしてはいないだろ?」

「…ふんっ…。どうだか…。とにかく、私の大切な友達に変な粉だけは掛けないでよね」

「かけんわっ!」

「…も、もしかして…美樹子って…早房君の事が好きだったりする…?」

「はっ!?はぁぁぁぁぁぁぁぁあ──!?ななななななな、何とんでもない事言ってくれちゃってんのっ!?そそ、そんな事ないから!?」

「で、でも…顔が真っ赤に染まってるし…いつになく動揺してるみたいだし…そんな美樹子見た事ないし…」

 たぶん…それは怒ってるだけだと思うよ、歌羽根さん…。


「そ、それを言うなら天音の顔も真っ赤でしょうにっ!?しょ、しょうもない事言ってないで…その…あれよ!あれっ!早く契約済ませなちゃいよ!!」

 済ませなちゃい…って…。ちゃいってなんだよ。ちゃいって…。ツッコんだら怒られるから言わないけども…。
  
 まあ、美樹子の言う通りだな…。先に契約から済ませるか…。

「じゃあ…歌羽根さん」

「あ、はい」

「俺と契約して魔法少女になってよ」

「…へっ…?ま、魔法少女っ!?」


 歌羽根さんは非常に驚いている。

 そんな歌羽根さんの様子を楽しんでいると、ポコっと頭を殴られた…。

「この馬鹿っ!ま◯マギネタは今は要らないのよ!」

「いや…緊張をほぐそうかと…」

「冗談言うシーンじゃあ明らかになかったでしょうがっ!」

「じょ、冗談…だったんだね…」

 少し残念な表情を見せる歌羽根さん。あれ…?もしかして魔法少女に憧れてるとか…?

「豊和…?」

「あ…はい」

 おっと…コレ以上は美樹子を更に怒らせてしまうので止めておこう。本気で怒らせる怖いしな。

 まあ…魔法少女になれないこともないんだけど…それはとりあえず置いておいて…


「ここからは真面目な話です。今俺達が今居る場所を説明しますね。ここは俺のマンションの屋上テラスになります」

「えっ…?あっ、そうだった!私忘れてたけどそれを問い詰めるところだったんだよね…。何でそんな場所に一瞬に居るの!こ、コレって魔法とか超能力とかそういう言葉以外説明つかないよねっ!?」



 パチン!


 お互い手を伸ばせば届く距離に距離を詰め指を鳴らす。すると俺と歌羽根さんの足元に蒼白い淡い光を放つ五芒星の魔法陣が出現する。

「ななな、何っ!?この光っ!?やっぱり魔法っ!?」

「歌羽根さん」

「は、はいっ!な、何でしょう!?」

「俺は今から交わす契約により、その契約が続く限り歌羽根さんに危害が及ぶ事やあらゆる事から歌羽根さんを護る事をここに誓う」

「………」  

 うん…?何で俺の方を見てポーっとしてるんだろう…?魔法陣から放たれている光はそんなに眩しくはないと思うけど…。

「あの…歌羽根さん?」

「ひゃ、ひゃい。ニャンでしょう!?」

 慌てて返事するから噛んでるよ?現役アイドルのニャン語も珍しいのでは…?美樹子は美樹子で何を頬を膨らませてるんだか…。

「俺の契約内容は聞いてた?聞こえてなかったならもう一回言うけど」

「は、はい。き、聞いてました!だ、大丈夫でしゅ」

「じゃあ…次に。歌羽根さんは契約の証として年収の半分を納める事。割高だけど大丈夫?」

「は、はい。お願いします」

 さて…ここからが少し恥ずかしいんだよな…。まあ、昔から契約する時はこうだったみたいだし…仕方ないか…。

「では…歌羽根さん。手を前に差し出していただけますか?」

「えっと…こうですか?」


 俺はその場に跪くと同時に歌羽根さんの手を取る。


 そして…手の甲に唇を落とす…。



「…ふぇっ…?」



 ふぇっ…?とか言わない…。俺も凄く恥ずかしいんだから…。 


 とにかく…唇を落とした所が光輝き…光が消える…。



「コレで契約完了だよ。まあ、転移もこの契約も魔法だね」

「大事な事サラッと言ってるぅぅぅぅ!?今言うタイミングじゃなかった気がするんだけどっ!?」



 まあ、コレで契約は完了…。彼女の身の安全は保証されたというわけだ…。










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