マンションのオーナーは十六歳の不思議な青年 〜マンションの特別室は何故か女性で埋まってしまう〜

美鈴

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第三章

ホロホロスターズ

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 ──ジャジャーン!



 アンコール最後の歌を歌い終え音楽が鳴り止む。それと同時に鳴り響くように聞こえてくるのは拍手と喝采。



「今日は私達、ホロホロスターズのコンサートに来てくれて本当にありがとう!!」
「「「「ありがとうございました!」」」」


琴音ことねちゃーん!」
「優花ちゃーん!」
れんちゃーん!」
「アリサちゃーん!」
胡桃くるみちゃーん!」


 観客席からファンの人達が私達の名前をそれぞれ呼んでくれているのが聞こえる。私達は今日のコンサートはこれで終了だという事と帰りは気をつけて帰って下さいという旨を伝えて舞台袖へと消える。ありがたい事に舞台袖に消えてもしばらくの間は歓声が鳴り止む事はなかった。



♢♢♢


「──みんな、お疲れ様っ」

「「「「お疲れ様!」」」」

 ホロホロスターズのリーダーである琴音さんの言葉にウチ等メンバーも同じ言葉を返した。

「今日もたくさんの人が観に来てくれてたわね?」

「ホントですよね」

 感慨深くそう言った琴音さん。ウチもその言葉に同意するようにそう答えた。

「デビューした時なんかイベントを行っても数える人しかいなかったというのに…」

 蓮さんの言う通りだ。ホント数える人しかウチ達を観に来てなかった。それこそ観客席に一人の時もあったんだよね…。

「ワタシ達体張って頑張った。それこそ虫まで食わされた…」

 アリサの言った事は思い出したくない…。ゲテモノ食いさせられたんだよね…。うっ…思い出したら今でも気持ち悪くなる。こ、こんな時は先輩が作った料理を思い出して…


 あっ…思い出したらまたゴブリンの肉食べたくなってきた…。あっさりしてて美味しかったんだよね…。


「アリサ…それは言わないで欲しかったですぅ」

「琴音の言う通り…それは言わないでアリサ?私も気持ち悪くなっちゃうから」

「うん?ボクは平気だったよ?」

「それ…蓮さんだけですから」

「蓮は馬鹿舌です…」

「アリサ…それ酷くない?言うてそんなに馬鹿舌じゃないから」


 デビュー当時のそんな事を思い出しながら笑い合う。まだまだこれからだけどこの五人ならまだ上にイケる。


 天音先輩みたいに…そう思った…。






 その翌日──滞在先のホテルで…



「な、なによ…これっ…」

「「「「…………」」」」


 スキャンダルが一斉に報じられた。報じられたのは…


【ホロホロスターズリーダー琴音 未成年飲酒喫煙】


 と、いう内容。証拠写真とおぼしき写真も載っている…。写真の琴音さんはどこかの椅子に腰掛けていて、琴音さんの目の前のテーブルの上にはビールの缶…それにタバコとライターが置かれている。

 それだけならまだ良かったのかも知れない。それが琴音さんの物とは限らないわけで…。 

 でも…写真に写る琴音さんの右手には火が着いたタバコが摘むように持たれている……。


「こ、琴音…?この写真は…?」

「ちょっ!?蓮!?私がタバコを吸わないのはあなたも知ってるわよね!?勿論お酒も飲んだことなんてないわよ、私っ!!」

「知ってる!だから念の為に聞いてるんだよ!」

「し、知らないわよこんなの!私が聞きたいくらいよ!」

「琴音はワタシ達の前で吸ったり、飲んだりした事ない…」

「当たり前でしょ!それ以前に吸う気も飲む気もないわよ!」

「…そ、それなら…なんで…火が着いたタバコを…」

「ホントに知らないのよ!タバコなんて……あっ…」

「あっってなんですか!?」

「い、一週間前に…取材でコンサートの意気込みを聞かれたんたけど…」

「それで?」

「そ、その時に…その場にいた一人がタバコ吸ってたんだけど…火傷しないようにちょっと持っててって言われて…」

「持ったんですかっ!?」

「…し、仕方ないでしょっ!?でも…すぐにそれは返して…」
 
「これ…最初から琴音さんを嵌める為なんじゃあ…」

「だよね…」

「私もそう思います」

「…お、おかしいとは思ったのよ…。テーブルに開けてないとはいえ、何故かお酒が結構な数置かれてたし…。その写真みたいに無造作にタバコも置かれてたし…。と、とりあえず…社長に連絡して…」

「で、でも…」

「これ…否定しても…」

「無駄だろうね…」

「そ、そんな…じゃあ…どうすれば…」


 ウチはふと思った。こんな時先輩ならどうにかできるのに…と。だから…無意識に口に出していた…。

「先輩…」

 と…。




「──ああ…その…なんだ…。今呼んだよな?」

「っ!?先輩!?」

 どうして…?

「いや…ほら…優花が困ってそうな気がしたから…」

「先輩っ!」

 ウチは反射的に先輩に抱きついていた…。

「おっと…時間止めてなかったらどうすんだよ?」

「時間止めてなかったら…先輩はこの場に現れてませんよね?」

「…そりゃあそうだけど…」

「ウチ…先輩にキスしたい気分です」

「なんでそうなるっ!?」


 そんなの…当たり前だと思うんですけど?





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