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高等部 一年目 皐月
067 シン・王道転校生が現れた!
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**乾大和視点**
「乾大和デス。ヨロシクお願いシマス?」
教壇の脇で片言の日本語とオドオドとした様子でぎこちなく頭を下げる俺を、2年S組の生徒たちは物珍しそうに見つめた。
「そこの空いてる席に座りなさい。」
担任の吉田先生がいくつか空いている席のうち、廊下側の前から二番目の席を示した。
吉田先生が示した席に着いた俺は背中を丸めるように俯くと伊達眼鏡のレンズ越しに他の生徒達の様子を伺った。
教室内に漂ういくつかのαのフェロモン。
その中に数日前、偶然再会した「彼女」の香りがあった。
偶然か必然か、己の強運に気分が上がる。
幼少時に初めて出会った「彼女」は俺の初恋だった。
女優をしている母親がモデルに起用された老舗ブランドで新しく立ち上げた若者向けの新ブランドのモデル「シアン」が「彼女」だと気付いた時、母親に「彼女」の詳細を尋ねたがデザイナーの身内ということしか覚えていなかった。
去年、仕事で一時帰国した時に「シアン」の姉、デザイナーの宇佐美凪と会う機会があった。
向こうは幼少時に一度会っただけの俺の事は覚えていなかった。
何度も「会わせて欲しい」とお願いしても断られたが、代わりに尊敬している城山亮輔が撮ったポラを貰えたのは僥倖だった。
そして、つい数日前に再会した「シアン」が「彼女」でなく「彼」でαだったのには驚かされた。
大嫌いな男Ωじゃ無かったのは良かったが・・・
2時間目が終わって中休みに入るとクラスの何人かが興味津々に俺の席に集まって来た。
留学生や帰国子女が多いクラスのせいか、日本語以外の言語での質問もあった。
俺は、はにかみながら全ての質問に片言の日本語で受け答えした。
そのお陰か、それなりに好感は持たれたようだ。
「失礼するよ。」
不意に白衣を着た男が教室に入って来た。
「α専門のドクター、宇佐美先生だよ。」
俺の席の側にいた生徒が教えてくれた。
「宇佐美」ということは、シアンの兄弟か親戚だろうか?
宇佐美先生は窓際の席にいる数人の生徒と何かを話すと、誰かの机の荷物を片付け出した。
黒髪紅眼の少年がロッカーからリュックを持ってきて宇佐美先生に渡した。
宇佐美先生はリュックに荷物をしまうと、それを持って教室を出て行った。
「黒峯君に何かあったのかな?」
俺のすぐ前の席で、心配そうに呟いたのはクラス委員長の財前だった。
「クロミネ?」
「生徒会の書記で高等部の御三家の一人だよ。」
「ゴサンケ?」
「学園の人気者、アイドル的な?トップスリーって言えば分かりやすいかな?」
生徒会の書記と言えば、あの脚本の王道設定は寡黙、口下手、人見知り、剣道部、侍ワンコ系、だったか?
「健ちゃん、早退~淋しい~」
チャラ男会計・和泉が残念そうに黒峯という奴の席に座って机にベッタリと貼り付いた。
「「「「・・・」」」」
俺と他のクラスメイト達はそんな和泉を残念そうに見て見ぬ振りをした。
「乾君、彼とは、ね」
「サワラヌカミにタタリナシ?」
「そう、それ!」
あの脚本では攻略対象の立ち位置だけど設定と違いすぎる。
男Ωの副会長と同じく、攻略したくない部類の奴だな。
後は俺様会長とか双子庶務とか、風紀委員長にホスト系教師、一匹狼系不良、爽やかイケメン、だっけ?
「ゴサンケ、他はダレデスか?」
「生徒会長の鬼柳院君とA組にいる副会長の早乙女君。鬼柳院君は僕等と同じS組なんだけど、教室には週に一回来るかどうかなんだ。生徒会の役員と風紀委員で全教科の単位認定試験の合格者は授業免除なんだよ。一般の生徒も単位認定試験で合格した教科の授業は免除になってるよ。スポーツ特待生はそれを利用して空き時間に練習入れたり、大会とか遠征に行った時の補習の教科減らしたり、外国語の授業を多めに受けたりしてるんだ。」
「ダカラ、席、空いてる多イ?」
「そうそう。」
財前がそう言ったタイミングでチャイムが鳴って三時間目の数学担当の教諭が入って来た。
「さっき、宇佐美先生からの連絡で黒峯が体調不良で早退になった。怪我が原因の発熱らしいから皆も気を付けるように。では授業を始める。」
昼休みになると俺はクラス委員長の財前と留学生数人と一緒に学食で昼食を取ることになった。
「乾君は、どうしてこの学園に編入したんだい? うちの学園って編入試験が超難しいから、大変だったんじゃない?」
注文をし終わってから財前が興味津々に訊いてきた。
口にはしないが、一番の理由はαの帰国子女枠のS組に男Ωがいないからだ。
「シロヤマリョースケに会イタクテ。」
そう言って俺はスマホの待ち受けを財前達に見せた。
待ち受け画面にはこの学園の演劇部の過去の定期公演のポスター。
「これ、10年前の演劇部の定期公演のポスターだ。」
「シッテルの?」
「うん、僕さ演劇部の部員なんだ。この舞台、城山先生が出演した最後の舞台だよね。乾君は城山先生のファン?」
「yes カレの写真のファンデス。アト、演技モ、スキ。彼の出た戦隊ヒーローシリーズのDVDモ持っテルヨ。舞台降リタの残念、ネ。」
「怪我が原因だからね。日常生活は大丈夫なんだけど、後遺症がね。」
「・・・」
「城山先生、今は本業をセーブして臨時で教員と演劇部の顧問をされてるよ。担任は1年S組で教科は国語。午後の6時間目の国語、城山先生だよ。」
「えっ、マジ?!」
俺は一瞬、演技を忘れて歓声を上げた。
「乾大和デス。ヨロシクお願いシマス?」
教壇の脇で片言の日本語とオドオドとした様子でぎこちなく頭を下げる俺を、2年S組の生徒たちは物珍しそうに見つめた。
「そこの空いてる席に座りなさい。」
担任の吉田先生がいくつか空いている席のうち、廊下側の前から二番目の席を示した。
吉田先生が示した席に着いた俺は背中を丸めるように俯くと伊達眼鏡のレンズ越しに他の生徒達の様子を伺った。
教室内に漂ういくつかのαのフェロモン。
その中に数日前、偶然再会した「彼女」の香りがあった。
偶然か必然か、己の強運に気分が上がる。
幼少時に初めて出会った「彼女」は俺の初恋だった。
女優をしている母親がモデルに起用された老舗ブランドで新しく立ち上げた若者向けの新ブランドのモデル「シアン」が「彼女」だと気付いた時、母親に「彼女」の詳細を尋ねたがデザイナーの身内ということしか覚えていなかった。
去年、仕事で一時帰国した時に「シアン」の姉、デザイナーの宇佐美凪と会う機会があった。
向こうは幼少時に一度会っただけの俺の事は覚えていなかった。
何度も「会わせて欲しい」とお願いしても断られたが、代わりに尊敬している城山亮輔が撮ったポラを貰えたのは僥倖だった。
そして、つい数日前に再会した「シアン」が「彼女」でなく「彼」でαだったのには驚かされた。
大嫌いな男Ωじゃ無かったのは良かったが・・・
2時間目が終わって中休みに入るとクラスの何人かが興味津々に俺の席に集まって来た。
留学生や帰国子女が多いクラスのせいか、日本語以外の言語での質問もあった。
俺は、はにかみながら全ての質問に片言の日本語で受け答えした。
そのお陰か、それなりに好感は持たれたようだ。
「失礼するよ。」
不意に白衣を着た男が教室に入って来た。
「α専門のドクター、宇佐美先生だよ。」
俺の席の側にいた生徒が教えてくれた。
「宇佐美」ということは、シアンの兄弟か親戚だろうか?
宇佐美先生は窓際の席にいる数人の生徒と何かを話すと、誰かの机の荷物を片付け出した。
黒髪紅眼の少年がロッカーからリュックを持ってきて宇佐美先生に渡した。
宇佐美先生はリュックに荷物をしまうと、それを持って教室を出て行った。
「黒峯君に何かあったのかな?」
俺のすぐ前の席で、心配そうに呟いたのはクラス委員長の財前だった。
「クロミネ?」
「生徒会の書記で高等部の御三家の一人だよ。」
「ゴサンケ?」
「学園の人気者、アイドル的な?トップスリーって言えば分かりやすいかな?」
生徒会の書記と言えば、あの脚本の王道設定は寡黙、口下手、人見知り、剣道部、侍ワンコ系、だったか?
「健ちゃん、早退~淋しい~」
チャラ男会計・和泉が残念そうに黒峯という奴の席に座って机にベッタリと貼り付いた。
「「「「・・・」」」」
俺と他のクラスメイト達はそんな和泉を残念そうに見て見ぬ振りをした。
「乾君、彼とは、ね」
「サワラヌカミにタタリナシ?」
「そう、それ!」
あの脚本では攻略対象の立ち位置だけど設定と違いすぎる。
男Ωの副会長と同じく、攻略したくない部類の奴だな。
後は俺様会長とか双子庶務とか、風紀委員長にホスト系教師、一匹狼系不良、爽やかイケメン、だっけ?
「ゴサンケ、他はダレデスか?」
「生徒会長の鬼柳院君とA組にいる副会長の早乙女君。鬼柳院君は僕等と同じS組なんだけど、教室には週に一回来るかどうかなんだ。生徒会の役員と風紀委員で全教科の単位認定試験の合格者は授業免除なんだよ。一般の生徒も単位認定試験で合格した教科の授業は免除になってるよ。スポーツ特待生はそれを利用して空き時間に練習入れたり、大会とか遠征に行った時の補習の教科減らしたり、外国語の授業を多めに受けたりしてるんだ。」
「ダカラ、席、空いてる多イ?」
「そうそう。」
財前がそう言ったタイミングでチャイムが鳴って三時間目の数学担当の教諭が入って来た。
「さっき、宇佐美先生からの連絡で黒峯が体調不良で早退になった。怪我が原因の発熱らしいから皆も気を付けるように。では授業を始める。」
昼休みになると俺はクラス委員長の財前と留学生数人と一緒に学食で昼食を取ることになった。
「乾君は、どうしてこの学園に編入したんだい? うちの学園って編入試験が超難しいから、大変だったんじゃない?」
注文をし終わってから財前が興味津々に訊いてきた。
口にはしないが、一番の理由はαの帰国子女枠のS組に男Ωがいないからだ。
「シロヤマリョースケに会イタクテ。」
そう言って俺はスマホの待ち受けを財前達に見せた。
待ち受け画面にはこの学園の演劇部の過去の定期公演のポスター。
「これ、10年前の演劇部の定期公演のポスターだ。」
「シッテルの?」
「うん、僕さ演劇部の部員なんだ。この舞台、城山先生が出演した最後の舞台だよね。乾君は城山先生のファン?」
「yes カレの写真のファンデス。アト、演技モ、スキ。彼の出た戦隊ヒーローシリーズのDVDモ持っテルヨ。舞台降リタの残念、ネ。」
「怪我が原因だからね。日常生活は大丈夫なんだけど、後遺症がね。」
「・・・」
「城山先生、今は本業をセーブして臨時で教員と演劇部の顧問をされてるよ。担任は1年S組で教科は国語。午後の6時間目の国語、城山先生だよ。」
「えっ、マジ?!」
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