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第43話 終わる戦争
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(三人称視点)
ヴィシェフラドの隣国ワルショヴァの奴隷解放運動に端を発した『十年戦争』は、激化の一途をたどり、いつ果てるとも知れない戦いに終わりがないように見えた。
十年以上に渡り、『奴隷解放軍』と『正規軍』の争いが続いている。
聖なる戦は聖者ヤンによって、始められた。
聖者ヤンの願いはただ、奴隷という身分に追いやられた虐げられし民を救うことであり、亜人の尊厳を取り戻すことだった。
しかし、ヤンの死後、その願いに数多の人々の思惑が絡み、憎しみの連鎖を生むことになろうとは彼も思っていなかっただろう。
奴隷の解放を謳う義勇兵が各国から、派兵されることになり、大義名分を得た国々の謀にワルショヴァの領土が切り取られていく。
そんな中、ヴィシェフラドの第二騎士団を率い、『十年戦争』に従軍していたのがミロスラフ・ネドヴェトだった。
ミロスラフは朴訥な人柄で知られている。
家族を愛し、国を愛し、人を愛している。
そう信じて、生きている男だった。
少なくとも彼の中では……。
ミロスラフは奴隷という虐げられた人々を救うことこそ、自らに下された天命であると考えた。
奴隷にも愛すべき家族がいる。
救わねばならないと彼は考えた。
だから、彼は十年以上、その身を戦地に置いたままである。
愛する家族に何が起こっているのかも知らず、今日もその剣を振るう。
しかし、その日々に唐突なる終局が訪れる。
『十年戦争』が終わったのだ。
一進一退を繰り広げていた不毛な争いは、人ではない者の介入を誰も感じずにはいられない不思議な終わり方を迎えた。
ワルショヴァを前に対峙した両軍は、戦力が拮抗しているだけではなく、思惑が絡み、迂闊に動けない状況になっていた。
ただ睨み合うだけで疲弊していく両軍の兵の中には戦いに倦み、脱走する者が多数、出ている。
ミロスラフは第二騎士団の精鋭を率い、左翼を担っていた。
対する敵陣の右翼は勇猛にして、獰猛と噂されるワルショヴァ第三軍団である。
元傭兵という成り上がり者が軍団長を務め、油断のならない相手にミロスラフも気を引き締め、時を待っていた。
ところがミロスラフの敵は対峙している者ではなかった。
もっと身近にいたのだ。
信頼し、側に置いていた甥グスタフ・コラーがその牙を剥いた。
背を袈裟懸けに斬られ、深手を負ったミロスラフが最後に見たのは、青白い雷光を全身に纏った青年とグスタフだった忌まわしく、這いよるものが激しく、ぶつかり合う様子だ。
その姿はあまりにも巨大だった。
薄れゆく意識の中、全身を捉えることが困難な大蛇が地の底から、出現するのを見て、彼は意識を失った。
燦々と降り注ぐ太陽の光を浴び、煌めく鱗は美しい白銀の色をしている。
爛々と輝く瞳は血のように紅く、生々しい。
「ああ。私は死ぬのだ」と他人事のように思いながら。
そして、戦いが終わった。
世界が凍る。
時が止まる。
目にした者は淡々とした様子でそう語るだけだ。
戦う術をなくしたワルショヴァの『正規軍』は全面降伏を受け入れた。
こうして、ワルショヴァから奴隷という身分がついに撤廃されたのである。
ヴィシェフラドの隣国ワルショヴァの奴隷解放運動に端を発した『十年戦争』は、激化の一途をたどり、いつ果てるとも知れない戦いに終わりがないように見えた。
十年以上に渡り、『奴隷解放軍』と『正規軍』の争いが続いている。
聖なる戦は聖者ヤンによって、始められた。
聖者ヤンの願いはただ、奴隷という身分に追いやられた虐げられし民を救うことであり、亜人の尊厳を取り戻すことだった。
しかし、ヤンの死後、その願いに数多の人々の思惑が絡み、憎しみの連鎖を生むことになろうとは彼も思っていなかっただろう。
奴隷の解放を謳う義勇兵が各国から、派兵されることになり、大義名分を得た国々の謀にワルショヴァの領土が切り取られていく。
そんな中、ヴィシェフラドの第二騎士団を率い、『十年戦争』に従軍していたのがミロスラフ・ネドヴェトだった。
ミロスラフは朴訥な人柄で知られている。
家族を愛し、国を愛し、人を愛している。
そう信じて、生きている男だった。
少なくとも彼の中では……。
ミロスラフは奴隷という虐げられた人々を救うことこそ、自らに下された天命であると考えた。
奴隷にも愛すべき家族がいる。
救わねばならないと彼は考えた。
だから、彼は十年以上、その身を戦地に置いたままである。
愛する家族に何が起こっているのかも知らず、今日もその剣を振るう。
しかし、その日々に唐突なる終局が訪れる。
『十年戦争』が終わったのだ。
一進一退を繰り広げていた不毛な争いは、人ではない者の介入を誰も感じずにはいられない不思議な終わり方を迎えた。
ワルショヴァを前に対峙した両軍は、戦力が拮抗しているだけではなく、思惑が絡み、迂闊に動けない状況になっていた。
ただ睨み合うだけで疲弊していく両軍の兵の中には戦いに倦み、脱走する者が多数、出ている。
ミロスラフは第二騎士団の精鋭を率い、左翼を担っていた。
対する敵陣の右翼は勇猛にして、獰猛と噂されるワルショヴァ第三軍団である。
元傭兵という成り上がり者が軍団長を務め、油断のならない相手にミロスラフも気を引き締め、時を待っていた。
ところがミロスラフの敵は対峙している者ではなかった。
もっと身近にいたのだ。
信頼し、側に置いていた甥グスタフ・コラーがその牙を剥いた。
背を袈裟懸けに斬られ、深手を負ったミロスラフが最後に見たのは、青白い雷光を全身に纏った青年とグスタフだった忌まわしく、這いよるものが激しく、ぶつかり合う様子だ。
その姿はあまりにも巨大だった。
薄れゆく意識の中、全身を捉えることが困難な大蛇が地の底から、出現するのを見て、彼は意識を失った。
燦々と降り注ぐ太陽の光を浴び、煌めく鱗は美しい白銀の色をしている。
爛々と輝く瞳は血のように紅く、生々しい。
「ああ。私は死ぬのだ」と他人事のように思いながら。
そして、戦いが終わった。
世界が凍る。
時が止まる。
目にした者は淡々とした様子でそう語るだけだ。
戦う術をなくしたワルショヴァの『正規軍』は全面降伏を受け入れた。
こうして、ワルショヴァから奴隷という身分がついに撤廃されたのである。
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