45 / 56
第45話 心のむこうに
しおりを挟む
(ユスティーナ視点)
「叔母様。今、なんと?」
「ああ。可哀想なユスティーナ」
叔母様はそう言うとわたしを抱き寄せた。
まるで幼子をあやすようで心がむずがゆく感じるのに満たされるような不思議な感覚に全てを忘れそうになる。
長かった戦争がようやく終わった。
お父様が死んだ。
叔父様が死んだ。
お兄様が死んだ。
叔母様は事もなげに言った。
彼女にとってお兄様は目に入れても痛くない存在だった。
姪であるわたし達にも惜しみなく、愛を与えてくれた叔母様だ。
自分の家族である叔父様とお兄様を失った悲しみがどれほどに深いものか、わたしには図りようがない。
それなのにわたしのことを気にかけてくれる叔母様の愛を確かに感じる。
わたしにとって、お父様は特別な存在だ。
お父様が戦場に旅立ったのは随分と昔のことのように思い出される。
お母様は「お父様は立派な人なの。弱い人々を救うべく戦いに行かれるのだから」とまだ、小さかったマリーとわたしを抱き寄せた。
お母様は震えていたから、泣いている顔をわたし達に見せて、不安にさせないように考えてくれたのだろう。
別れの際にお父様は「ユナ。強い子になれ」と言ってくれたのを覚えている。
だから、それがわたしの全てになった。
お父様がいない間、お母様とマリーを守らなくてはいけない。
わたしがお父様の代わりになる。
そう決めたのだ。
わたしは元々、頑固な性格だった。
こうと決めたら、絶対に譲らない。
誰に何を言われようとどう思われようともかまわない。
女で騎士になれるものかと笑われ、揶揄われもしたが負けるものかと歯を食いしばって、耐えた。
わたしはわたしの信じる道をただ、進むだけ。
お父様との約束。
愛する家族を守るのはわたししか、いないのだから。
そう思っていた。
わたしの夢を応援してくれたのは家族だけ。
ロビーとお兄様が剣の修練に付き合ってくれたから、今がある。
叔母様が「ユナが信じる道を進むといいわ」と背中を押してくれたからだ。
戦争が終わったのにお父様は帰ってこない。
お母様はその報せを聞いて、卒倒してから目を覚ましていない。
張りつめていた糸が切れたようにやつれて、寝込んでいる姿を見ると涙がにじんでくる。
マリーも帰ってこない。
エミーも帰ってこない。
エヴァもいない。
誰もいない。
「大丈夫よ。ユナ。あなたは強い子よ。ワタシには分かる。ワタシを信じて」
「はい。叔母様」
「そう。ワタシと一緒に行きましょう。あなたの願いですもの。きっと叶うわ」
心が黒く、淀んでいく。
黒雲に遮られて、太陽が翳っていくようにわたしの心が死んでいく。
そんなわたしに光を感じさせてくれるのは叔母様だけだ。
待っていてください、お母様。
叔母様と一緒にお父様を迎えに行ってきます。
「叔母様。今、なんと?」
「ああ。可哀想なユスティーナ」
叔母様はそう言うとわたしを抱き寄せた。
まるで幼子をあやすようで心がむずがゆく感じるのに満たされるような不思議な感覚に全てを忘れそうになる。
長かった戦争がようやく終わった。
お父様が死んだ。
叔父様が死んだ。
お兄様が死んだ。
叔母様は事もなげに言った。
彼女にとってお兄様は目に入れても痛くない存在だった。
姪であるわたし達にも惜しみなく、愛を与えてくれた叔母様だ。
自分の家族である叔父様とお兄様を失った悲しみがどれほどに深いものか、わたしには図りようがない。
それなのにわたしのことを気にかけてくれる叔母様の愛を確かに感じる。
わたしにとって、お父様は特別な存在だ。
お父様が戦場に旅立ったのは随分と昔のことのように思い出される。
お母様は「お父様は立派な人なの。弱い人々を救うべく戦いに行かれるのだから」とまだ、小さかったマリーとわたしを抱き寄せた。
お母様は震えていたから、泣いている顔をわたし達に見せて、不安にさせないように考えてくれたのだろう。
別れの際にお父様は「ユナ。強い子になれ」と言ってくれたのを覚えている。
だから、それがわたしの全てになった。
お父様がいない間、お母様とマリーを守らなくてはいけない。
わたしがお父様の代わりになる。
そう決めたのだ。
わたしは元々、頑固な性格だった。
こうと決めたら、絶対に譲らない。
誰に何を言われようとどう思われようともかまわない。
女で騎士になれるものかと笑われ、揶揄われもしたが負けるものかと歯を食いしばって、耐えた。
わたしはわたしの信じる道をただ、進むだけ。
お父様との約束。
愛する家族を守るのはわたししか、いないのだから。
そう思っていた。
わたしの夢を応援してくれたのは家族だけ。
ロビーとお兄様が剣の修練に付き合ってくれたから、今がある。
叔母様が「ユナが信じる道を進むといいわ」と背中を押してくれたからだ。
戦争が終わったのにお父様は帰ってこない。
お母様はその報せを聞いて、卒倒してから目を覚ましていない。
張りつめていた糸が切れたようにやつれて、寝込んでいる姿を見ると涙がにじんでくる。
マリーも帰ってこない。
エミーも帰ってこない。
エヴァもいない。
誰もいない。
「大丈夫よ。ユナ。あなたは強い子よ。ワタシには分かる。ワタシを信じて」
「はい。叔母様」
「そう。ワタシと一緒に行きましょう。あなたの願いですもの。きっと叶うわ」
心が黒く、淀んでいく。
黒雲に遮られて、太陽が翳っていくようにわたしの心が死んでいく。
そんなわたしに光を感じさせてくれるのは叔母様だけだ。
待っていてください、お母様。
叔母様と一緒にお父様を迎えに行ってきます。
80
あなたにおすすめの小説
家出を決行した結果
棗
恋愛
フィービーの婚約者ミゲルには大切な幼馴染がいる。病弱な幼馴染をいつも優先するミゲルや母が亡くなって以降溝が出来てしまった父と兄との関係にフィービーは疲れていた。
デートの約束をしてもいつも直前になって幼馴染を理由にキャンセルされ、幼馴染にしか感情を見せないミゲルを、フィービーを見ようとしない父や兄を捨てる決心をしたフィービーは侍女や執事の手を借りて家出を決行した。
自分を誰も知らない遠い場所へ行ったフィービーは、新しい人生の幕開けに期待に胸を躍らせた。
※なろうさんにも公開しています。
私はどうしようもない凡才なので、天才の妹に婚約者の王太子を譲ることにしました
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
フレイザー公爵家の長女フローラは、自ら婚約者のウィリアム王太子に婚約解消を申し入れた。幼馴染でもあるウィリアム王太子は自分の事を嫌い、妹のエレノアの方が婚約者に相応しいと社交界で言いふらしていたからだ。寝食を忘れ、血の滲むほどの努力を重ねても、天才の妹に何一つ敵わないフローラは絶望していたのだ。一日でも早く他国に逃げ出したかったのだ。
地味で器量の悪い公爵令嬢は政略結婚を拒んでいたのだが
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
心優しいエヴァンズ公爵家の長女アマーリエは自ら王太子との婚約を辞退した。幼馴染でもある王太子の「ブスの癖に図々しく何時までも婚約者の座にいるんじゃない、絶世の美女である妹に婚約者の座を譲れ」という雄弁な視線に耐えられなかったのだ。それにアマーリエにも自覚があった。自分が社交界で悪口陰口を言われるほどブスであることを。だから王太子との婚約を辞退してからは、壁の花に徹していた。エヴァンズ公爵家てもつながりが欲しい貴族家からの政略結婚の申し込みも断り続けていた。このまま静かに領地に籠って暮らしていこうと思っていた。それなのに、常勝無敗、騎士の中の騎士と称えられる王弟で大将軍でもあるアラステアから結婚を申し込まれたのだ。
〖完結〗王女殿下の最愛の人は、私の婚約者のようです。
藍川みいな
恋愛
エリック様とは、五年間婚約をしていた。
学園に入学してから、彼は他の女性に付きっきりで、一緒に過ごす時間が全くなかった。その女性の名は、オリビア様。この国の、王女殿下だ。
入学式の日、目眩を起こして倒れそうになったオリビア様を、エリック様が支えたことが始まりだった。
その日からずっと、エリック様は病弱なオリビア様の側を離れない。まるで恋人同士のような二人を見ながら、学園生活を送っていた。
ある日、オリビア様が私にいじめられていると言い出した。エリック様はそんな話を信じないと、思っていたのだけれど、彼が信じたのはオリビア様だった。
設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
婚約者に愛する人が出来たので、身を引く事にしました
Blue
恋愛
幼い頃から家族ぐるみで仲が良かったサーラとトンマーゾ。彼が学園に通うようになってしばらくして、彼から告白されて婚約者になった。サーラも彼を好きだと自覚してからは、穏やかに付き合いを続けていたのだが、そんな幸せは壊れてしまう事になる。
三年の想いは小瓶の中に
月山 歩
恋愛
結婚三周年の記念日だと、邸の者達がお膳立てしてくれた二人だけのお祝いなのに、その中心で一人夫が帰らない現実を受け入れる。もう彼を諦める潮時かもしれない。だったらこれからは自分の人生を大切にしよう。アレシアは離縁も覚悟し、邸を出る。
※こちらの作品は契約上、内容の変更は不可であることを、ご理解ください。
[完結]いらない子と思われていた令嬢は・・・・・・
青空一夏
恋愛
私は両親の目には映らない。それは妹が生まれてから、ずっとだ。弟が生まれてからは、もう私は存在しない。
婚約者は妹を選び、両親は当然のようにそれを喜ぶ。
「取られる方が悪いんじゃないの? 魅力がないほうが負け」
妹の言葉を肯定する家族達。
そうですか・・・・・・私は邪魔者ですよね、だから私はいなくなります。
※以前投稿していたものを引き下げ、大幅に改稿したものになります。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる