聖女様の仰せのままに

黒幸

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賭け

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 弧を描く月が顔を出し、得体の知れない獣の鳴き声が木霊する。
 それを意に介さず、闇に包まれた周囲とまるで不釣り合いな精緻な意匠が施された豪奢なガーデンテーブルセットに二つの人影があった。

「そろそろ、頃合いかしら?」
「ボクはあまり気が乗らないなぁ」

 茶会を楽しんでいる雰囲気はない。
 何より、茶会を開くのにおよそ不向きな時間である。

 人影の一つは年代物と思われる古式ゆかしい純白のロングドレスに身を包む少女だ。
 少女の髪は長く、美しいが月が奏でる銀色の光で様々な色合いを見せていた。
 小首を傾げた少女の猫を思わせる意志の強そうな目でルビーの色をした瞳が強く、輝きを放っている。

 少女の投げかけた疑問に素っ気ない返事をしたもう一つの人影もまた、少女だった。
 収穫時期を迎えた小麦畑のような黄金色の髪は肩の辺りでばっさりとカットされている。
 少女の瞳はアメジストを思わせ、柔らかな空気を伴っていたがその目はまるで猫そのものだった。

「これは賭けだからね。面白くなければ、意味がないだろう?」

 どこから現れたのか、いつの間にか、テーブルセットの側に一人の男が立っていた。
 シルクハットを被り、燕尾服に身を包んだ紳士然とした装いをしている。
 シルクハットの隙間から除く髪は周囲の闇よりも黒かった。
 不思議なのは男の貌は捉えようにも捉えどころがない。
 まるで蠢く何かのように……。

「わたしは
「ボクも

 ルビーの少女とアメジストの少女は男が放つ不愉快な空気にさも興味ないとばかり、感情の色を全く感じさせないが、了承を表して頷いて見せた。

「それでかまわないさ。一年後が楽しみだよ。さあ。目覚めの時だ」

 シルクハット男の貌が蠢く。
 極めて醜い冷笑を浮かべていることに気付く者は誰もいない。
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