荷物持ちの代名詞『カード収納スキル』を極めたら異世界最強の運び屋になりました

夢幻の翼

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第138話【選択と交渉】

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 自分の馬車を購入してノエルを御者に隣国へ向かうか乗り合い馬車などを使うかを選ばなければならなかった。

(どちらもそれなりのリスクがあるが隣国への移動だけならば乗り合い馬車の方が無難だろうか?)

 考え込む僕を心配そうに覗き込むノエルに気がついた僕は彼女に相談をすることにした。

「ごめん。
 ひとりで考え込んでしまったようだ。
 いや、今後の移動に馬車を調達するかとりあえずは乗り合い馬車で移動するかで悩んでいたんだ。
 ここまではマリアーナさんの馬車で移動してたからね」

 僕の言葉にマリアーナが困った表情でノエルに説明をしてくれる。

「ごめんなさいね。
 本当は私も一緒に行動出来たら良かったのだけど、さすがに職務を放棄して隣国へと行くのは立場上かなり問題になるのよ」

「それで、そのふたつだとそれぞれにリスクがあるから良く考えて決めなければならないんだ」

「それぞれのリスクですか?」

「うん。
 例えば自分で馬車を買った場合は自由に移動が出来るんだけどマリアーナさんが抜けた事により旅の道中の護衛を新たに雇わなければならないんだ。
 これは商業ギルドで紹介して貰えば良いけれど僕たちは当面隣国で活動するつもりだから護衛にあたった人たちがこちらへ戻る馬車や仕事が無ければ片道の報酬では割にあわないことになるんだ。
 そして、馬車の維持費もそれなりにかかるだろうし小回りもきかなくなるだろう」

 僕はそう説明するともうひとつの方法について話し始めた。

「もうひとつの乗り合い馬車を利用する方法だがちょうど良いタイミングで隣国へ向かう馬車が確保出来るかが問題だし同乗者にスキルを見せて良いかも決めておかなければならないだろう。
 どちらも一長一短あるけど僕としては今の状況から自分の馬車を持つのは逆に邪魔になるんじゃないかと思ってるんだ」

「それはつまり乗り合い馬車で移動した方がいいと言うことですか?」

「そうだね。
 またはどこかの商隊を紹介してもらってカード収納で荷物運びをする代わりに乗せてもらうのも一つの手ではあると思う」

「そうですね。
 商業ギルドに問い合わせれば条件に合う商隊があるかもしれませんね。
 さっそく問い合わせてみるとします」

 マリアーナはそう告げると商業ギルドへと走って行った。

「とりあえずマリアーナさんが帰ってくるまでいろいろと準備をしておくとしよう」

 僕はそう言って近場の商店でいろんなものを買い次々とカード化してポーチにしまい込んだ。

「ミナトさん、おまたせしました」

 ひととおりの買い物を済ませた僕たちが集まるのを見越したようにマリアーナが戻ってくる。

「隣国へ向かう商隊をあたったところちょうど1件ほど南方にあるダルべシアへ向かう馬車があるようです。
 商隊主ともお会いしてきましたが怪しいところはありませんでしたのでミナトさん自身が会って契約をされたら良いと思います」

 マリアーナはたったあの短い時間に商隊を見つけて仮契約まで済ませて来ていたのだった。

「驚きました、凄まじく早い行動ですね」

「今の情報から今日中には王都を出た方が良いとの判断でしたので……。
 出発する商隊がいたのは偶然ですよ。
 それで今すぐお会いになれますか?」

「もちろん、そうさせてもらうよ。
 マリアーナさんが大丈夫だと判断したのだったらそれが今の最良の行動だと思うからね」

 僕はノエルの手をとり商隊主と話すために商業ギルドへと向かった。

「――お待たせしました。
 こちらが依頼人になります」

「ミナトと申します。
 ダルべシアへ向かうつもりで馬車を探していたところにこちらのマリアーナが話を持ってきてくれまして急ぎ来たまでです」

 僕は目の前にいる割腹の良い壮年の男性にそう挨拶をした。

「これはご丁寧に。
 私はアランガスタ王都と隣国のダルべシア王都の物流を担っているロロシエル商会筆頭御者を務めているトトルです。
 この商隊の御者たちのまとめ役を担っております。
 先ほどマリアーナ嬢からあなたの事をお聞きして少々興味が湧きましたのでお呼びした次第でございます」

 トトルはそう言ってギルドの職員から紙とペンを受け取ってから話を続けた。

「おおまかな話しはマリアーナ嬢からお聞きしておりますので単刀直入にお伺いしますがどの程度の荷物をカード化して運ぶ事が出来ますかな?」

「そうですね。
 とりあえず馬車1台分は問題なく出来ますね。
 それ以上は試したことがないのでなんとも言えないです」

 本当はそれどころではないのだがあまりにも規格外な量を言うと面倒なことになりかねないので僕たちを乗せるスペースに加えてお得ですよとのアピールするに十分かとの判断でそう答えた。

「なんと! 馬車1台だと!?
 そのような規模のカード収納など聞いた事もないが本当なのだろうね?」

 トトルはマリアーナの方を見て彼女がうなずくのを確認すると「ううむ」と唸った。

「……いいでしょう。
 他国とはいえギルドのサブマスターである彼女の推薦があることですし、馬車1台分の荷物を余分に運べるならばあなた方の運賃程度は十分に賄えてお釣りがくるでしょうからね」

「では私と婚約者のふたりをお願いします。
 その対価にそちらの運ぶ荷物をカード化してお渡ししますので何をカード化するかを指示してもらえると助かります」

 僕たちはお互いにそう言い合ってから握手を交わした。

「では、念のために契約書を交わしておきましょう。
 商人たるもの口約束で信用してはならないのが鉄則でしてご容赦ください」

 トトルはそう言って紙にスラスラと契約書を書き上げてからお互いに拇印を押して再度握手をした。

「無事に契約出来たようですね。
 ロロシエル商会は馬車物流の大手ですから情報も多くお持ちですので道すがらダルべシアの事を聞くのも良いかと思いますよ」

 マリアーナはそう言ってから「では、私はこれで。必ずロギナスに戻ってきてくださいね」と言い残して僕と別れた。

「では荷物の所へ案内しますのでついてきて頂けますかな?」

 トトルはそう言ってギルドを出ると停めてあった馬車に僕を乗せてから自ら御者として馬車を走らせた。
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