少女漫画の当て馬キャラと恋人になったけどキャラ変激しすぎませんか??

和泉臨音

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第三章 新隊員の選抜条件おかしくないですか??

第一話*side衛

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「あれ、日凪ひなぎくんだ。久しぶり!」

 医務室から事務室への廊下を歩いていれば、明るい声が俺の名を呼んだ。

月代つきしろさん、それに二階堂にかいどうも、お久しぶり」

 振り返れば養成学校、月読館での同期であり、少女漫画『月光乙女は帝都に舞う』の主人公、月代おとめとその幼馴染でこれから恋人に進展するはずの男、二階堂あきらが立っていた。
 二階堂は黒髪に紫の瞳とこれまた日本人にはない色彩をまとい、すれ違う人間すべてが振り返るんじゃないかって言うほどの美貌の持ち主だ。まあ、モブの俺とは違い少女漫画のメインヒーローなので当然だろう。

 二階堂はクール系無愛想キャラなので俺の挨拶にも少し視線を伏せるだけだ。これは養成学校時代から変わらないので特に気にならない。
 逆におとめは誰に対してもフレンドリーである。そんなおとめがいつの間にか、愛想のよい可愛らしい笑顔で俺との間合いを詰めてきた。
 手が触れそうな距離になったので思わず後ずさる。
 フレンドリーだとしても、さすがに異性に対してとる距離ではない。この世界の男女は相当親しくなければ接近することはないのだ。

 おかしい。なんか最近人との距離感がおかしい気がする。
 いや、近すぎるのは一条寺少尉だけだけど。

 とにかく、俺はこんなに近くで話すほどヒロインと仲良くはないはずなんだが?

 俺が違和感を感じて戸惑っていればおとめが会話を続けてきた。

「あのね、夜蝶部隊のことを聞きたいんだ。隊長って一条寺少尉だよね! 凄くかっこいい人!」
「えっ、ああ、そうだね」

 言われた意味が解らずに思わず二階堂を見てしまったが、二階堂は機嫌が悪そうに横を向く。俺は知らないぞ、という顔だ。助けは期待できそうにもない。

 夜蝶部隊は月光隊でも精鋭部隊として名を馳せている。
 変わり者だが有名人ばかりなので月光隊で知らない者はいないだろう。
 改めて聞くということは、一般的には出回ってない話を聞きたいということなんだろうか?

「えっと……なんで、一条寺少尉のことを?」
「あのね、私と晃、夜蝶部隊への引き抜きの話があって」
「っおい、おとめ! それはまだ極秘事項だろっ!」
「あ! そうだった。ごめん! 日凪くん、今の話は聞かなかったことにして!!」
「えと、あ、うん。……もちろん」

 月代おとめが夜蝶部隊に配属される。

 それは少女漫画の展開と同じだ。
 そして彼女に一条寺少尉は惹かれ、失恋することになる……。
 
 どくんどくんっと心臓の音がやたらと耳につく。

 緊張? 恐怖? なんだろうこれは。とにかく息が苦しい。

「それでね、日凪くん夜蝶部隊でしょ? 色々教えてほしくって」
「ごめん!」

 あんなに漫画の主人公月代おとめを影から見守るモブになろうと思っていたのに。

「いま、急ぎの資料を届けなくちゃいけなくて……また今度でいいかな」
「ああ! そうなんだ引き止めてごめんね」
「ううん、こちらこそごめん。またね月代さん、二階堂」

 俺は震えそうになる声をどうにか絞り出し、二人の前から逃げるように歩き出した。

 どうしよう、どうしよう。
 いや、俺がどうにか出来ることなんてない。

 一条寺少尉に初めて抱かれたとき、もしかしたら俺は手違いでなく少尉によって夜蝶部隊に呼ばれたのかもと期待した。
 漫画で手違いだと言われていたおとめが、のちのち実は少尉の画策で部隊に所属していたと判明するからだ。
 だからもしかして俺もそうなのではないかと思ったんだ。

「だけど……違ったのかも」

 俺は先程医務室で巻いてもらった左腕の包帯を、服の上から無意識に撫でた。

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