16 / 48
第三章 新隊員の選抜条件おかしくないですか??
第一話*side衛
しおりを挟む「あれ、日凪くんだ。久しぶり!」
医務室から事務室への廊下を歩いていれば、明るい声が俺の名を呼んだ。
「月代さん、それに二階堂も、お久しぶり」
振り返れば養成学校、月読館での同期であり、少女漫画『月光乙女は帝都に舞う』の主人公、月代おとめとその幼馴染でこれから恋人に進展するはずの男、二階堂晃が立っていた。
二階堂は黒髪に紫の瞳とこれまた日本人にはない色彩をまとい、すれ違う人間すべてが振り返るんじゃないかって言うほどの美貌の持ち主だ。まあ、モブの俺とは違い少女漫画のメインヒーローなので当然だろう。
二階堂はクール系無愛想キャラなので俺の挨拶にも少し視線を伏せるだけだ。これは養成学校時代から変わらないので特に気にならない。
逆におとめは誰に対してもフレンドリーである。そんなおとめがいつの間にか、愛想のよい可愛らしい笑顔で俺との間合いを詰めてきた。
手が触れそうな距離になったので思わず後ずさる。
フレンドリーだとしても、さすがに異性に対してとる距離ではない。この世界の男女は相当親しくなければ接近することはないのだ。
おかしい。なんか最近人との距離感がおかしい気がする。
いや、近すぎるのは一条寺少尉だけだけど。
とにかく、俺はこんなに近くで話すほどヒロインと仲良くはないはずなんだが?
俺が違和感を感じて戸惑っていればおとめが会話を続けてきた。
「あのね、夜蝶部隊のことを聞きたいんだ。隊長って一条寺少尉だよね! 凄くかっこいい人!」
「えっ、ああ、そうだね」
言われた意味が解らずに思わず二階堂を見てしまったが、二階堂は機嫌が悪そうに横を向く。俺は知らないぞ、という顔だ。助けは期待できそうにもない。
夜蝶部隊は月光隊でも精鋭部隊として名を馳せている。
変わり者だが有名人ばかりなので月光隊で知らない者はいないだろう。
改めて聞くということは、一般的には出回ってない話を聞きたいということなんだろうか?
「えっと……なんで、一条寺少尉のことを?」
「あのね、私と晃、夜蝶部隊への引き抜きの話があって」
「っおい、おとめ! それはまだ極秘事項だろっ!」
「あ! そうだった。ごめん! 日凪くん、今の話は聞かなかったことにして!!」
「えと、あ、うん。……もちろん」
月代おとめが夜蝶部隊に配属される。
それは少女漫画の展開と同じだ。
そして彼女に一条寺少尉は惹かれ、失恋することになる……。
どくんどくんっと心臓の音がやたらと耳につく。
緊張? 恐怖? なんだろうこれは。とにかく息が苦しい。
「それでね、日凪くん夜蝶部隊でしょ? 色々教えてほしくって」
「ごめん!」
あんなに漫画の主人公を影から見守るモブになろうと思っていたのに。
「いま、急ぎの資料を届けなくちゃいけなくて……また今度でいいかな」
「ああ! そうなんだ引き止めてごめんね」
「ううん、こちらこそごめん。またね月代さん、二階堂」
俺は震えそうになる声をどうにか絞り出し、二人の前から逃げるように歩き出した。
どうしよう、どうしよう。
いや、俺がどうにか出来ることなんてない。
一条寺少尉に初めて抱かれたとき、もしかしたら俺は手違いでなく少尉によって夜蝶部隊に呼ばれたのかもと期待した。
漫画で手違いだと言われていたおとめが、のちのち実は少尉の画策で部隊に所属していたと判明するからだ。
だからもしかして俺もそうなのではないかと思ったんだ。
「だけど……違ったのかも」
俺は先程医務室で巻いてもらった左腕の包帯を、服の上から無意識に撫でた。
177
あなたにおすすめの小説
ぼくが風になるまえに――
まめ
BL
「フロル、君との婚約を解消したいっ! 俺が真に愛する人は、たったひとりなんだっ!」
学園祭の夜、愛する婚約者ダレンに、突然別れを告げられた少年フロル。
――ああ、来るべき時が来た。講堂での婚約解消宣言!異世界テンプレ来ちゃったよ。
精霊の血をひく一族に生まれ、やがては故郷の風と消える宿命を抱えたフロルの前世は、ラノベ好きのおとなしい青年だった。
「ダレンが急に変わったのは、魅了魔法ってやつのせいじゃないかな?」
異世界チートはできないけど、好きだった人の目を覚ますくらいはできたらいいな。
切なさと希望が交錯する、ただフロルがかわいそかわいいだけのお話。ハピエンです。
ダレン×フロル
どうぞよろしくお願いいたします。
【本編完結】転生先で断罪された僕は冷酷な騎士団長に囚われる
ゆうきぼし/優輝星
BL
断罪された直後に前世の記憶がよみがえった主人公が、世界を無双するお話。
・冤罪で断罪された元侯爵子息のルーン・ヴァルトゼーレは、処刑直前に、前世が日本のゲームプログラマーだった相沢唯人(あいざわゆいと)だったことを思い出す。ルーンは魔力を持たない「ノンコード」として家族や貴族社会から虐げられてきた。実は彼の魔力は覚醒前の「コードゼロ」で、世界を書き換えるほどの潜在能力を持つが、転生前の記憶が封印されていたため発現してなかったのだ。
・間一髪のところで魔力を発動させ騎士団長に救い出される。実は騎士団長は呪われた第三王子だった。ルーンは冤罪を晴らし、騎士団長の呪いを解くために奮闘することを決める。
・惹かれあう二人。互いの魔力の相性が良いことがわかり、抱き合う事で魔力が循環し活性化されることがわかるが……。
追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました
水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」
身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。
死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。
カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。
「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」
献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。
これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。
勇者になるのを断ったらなぜか敵国の騎士団長に溺愛されました
雪
BL
「勇者様!この国を勝利にお導きください!」
え?勇者って誰のこと?
突如勇者として召喚された俺。
いや、でも勇者ってチート能力持ってるやつのことでしょう?
俺、女神様からそんな能力もらってませんよ?人違いじゃないですか?
悪役を幸せにしたいのになんか上手くいかない ~推しは間もなく退場予定~
はかまる
BL
ぼっちオタク高校生が転生したのはなんと大大大好きな恋愛小説。
…の、モブになっていた。しかも気づいた時点で既にストーリーはド終盤。
今まさに悪役のシルヴァ・ヴェントスが追放されそうになっている。
推しであるシルヴァの追放を阻止したい前世の記憶がゴリゴリあるオタク、アルス・チェルディは追放イベントを失敗に終わらせ強制的に悪役に学園生活を続行させる。
その後、悪役が幸せに学園を卒業できるようオタ活をしながら見守っていくはずが、なんだか悪役シルヴァの自分への態度が段々とおかしくなってきて……?
【CP】ヤンデレ?攻め×オタク包容力受け
短い話になりますがお付き合い頂けると嬉しいです。1日2回更新。
かっこいい攻めはいない不器用な青い恋。
(元となるSSから加筆した作品になります)
婚約破棄されるなり5秒で王子にプロポーズされて溺愛されてます!?
野良猫のらん
BL
侯爵家次男のヴァン・ミストラルは貴族界で出来損ない扱いされている。
なぜならば精霊の国エスプリヒ王国では、貴族は多くの精霊からの加護を得ているのが普通だからだ。
ところが、ヴァンは風の精霊の加護しか持っていない。
とうとうそれを理由にヴァンは婚約破棄されてしまった。
だがその場で王太子ギュスターヴが現れ、なんとヴァンに婚約を申し出たのだった。
なんで!? 初対面なんですけど!?!?
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる