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第四章 百鬼夜行殲滅作戦
第七話*side衛
しおりを挟む少尉が怪我をして実家に帰ったと聞き、俺の視界は真っ暗になった。
俺を庇ったせいだと思ったからだ。
前世でも交通事故は時間が経ってから重症化すると聞いたことがある。
まさしくそれじゃないか。
視界が真っ暗で指先まで冷たくなって、どうしたらいいのか解らなくなった俺を百園曹長は馬車に押し込み、立派な屋敷へ連れて行った。
豪華な廊下で頭を下げる人たちの前を通り抜け、入った部屋にはベッドに眠る少尉の姿があった。
その瞬間、涙腺が崩壊した。
あんなに強かった少尉が、俺のせいでまさか、死んでしまうなんて。
俺はベッドに走り寄ると「死んじゃ嫌だ」とか「俺のせいだ」とか、他にもなんだか訳のわからないことを喚きながら泣いてしまった。
泣いて泣いて泣きじゃくって。
いつの間にか優しい手があやすように俺の頭を撫でていた。
ふわりと甘い香りがする。
「……ぅぅ、少尉、生きて」
「ここは陽真と呼んでほしいな。衛」
顔を上げればベッドに上体を起こして眉を寄せ、困ったような表情で俺を見下ろす少尉の顔がある。
「はるま、さま、生きて……?」
「うん、生きてるよ。おはよう。目覚めに君が居るなんて最高だね」
「え? は? ええっ?!」
完全に俺の早合点だった。
めちゃくちゃ、恥ずかしい……。
一条寺少尉の怪我は俺を庇った時のものではなく、その後、馬車の落とし物を届けに行った時にうっかり足をひねってしまったのだと言われた。「百鬼夜行の疲れも取れていないのに仕事をするものじゃないね」と笑ってはいたが……多分これは少尉の嘘だろう。
馬車の落とし物、あの木片のことだ、の持ち主は今朝の新聞に百鬼夜行殲滅よりも大きく取り上げられていた失脚した大物政治家のことなんじゃないかと思う。
新聞記事では、大物政治家の悪事を告発しにきた人物に、暴行を加えているところを現行犯逮捕されたとあった。
殺人などの余罪も多いとのことだったが、多分この告発をした人というのが一条寺少尉なのだろう。
確証はない。
だけど、少尉がうっかりで怪我をするはずはなく、百鬼夜行が終わったばかりだというのに仕事をしたというなら馬車の持ち主に会いに行ったのだろうと察しはつく。
それに、この大物政治家の息子は第弐部隊の班長だったはずで、彼も失脚するのなら……馬車にあそこを横切らせたのはきっとその息子で、何かしら俺たちが狙われる裏があったのだ。
一条寺少尉は夜蝶部隊のために危険を冒して真実を追求し、正攻法では裁けない悪事を露呈させるために身を犠牲にしたに違いない。
本当なら俺も少尉の手助けがしたい。
だけど、モブの俺なんかが首を突っ込めば逆に少尉の邪魔になってしまうだろう。漫画とかでもよくある主人公のお荷物になるモブにはなりたくない。
百園曹長も言っていたが、俺なんかが知らなくていいこと、は確かに存在していると思う。
だから俺は、俺ができることで少尉の力になろうと決意した。
「あの、陽真様。毎日看病しに来てもいいですか?」
百鬼夜行殲滅の褒美で夜蝶部隊は一週間ほど休みだというので、俺は畏れ多くも少尉の身の回りの世話をすることを申し出た。
俺なんかより伯爵家の使用人の方がよっぽど優秀だと判っているけど、少尉のために何かしたかったのだ。
少尉が一瞬固まったので、断られるかと思ったら快諾されて。
俺はその日から少尉の身の回りのお世話をすることになった。
初日はなんだかんだと話し相手になっただけだったが、翌日から簡単な身の周りの手伝いを開始した。
体拭きも手伝って欲しいと頼まれ、足を捻挫しただけなら風呂には入れるのでは?? と思ったが、少尉のお願いを断るなんて選択肢は俺にはない。
少尉がパジャマの上着を脱げば綺麗に筋肉のついた逞しい身体が現れる。
何度か見たこともあるのに、思わずその美しさにドキリと胸が高鳴って、そういえばおとめも漫画でドギマギしながら少尉の体を拭いていたことを思い出した。
最初はただ本当に、純粋に、少尉の体に触れた。
おとめは上半身だけ手伝っていたが、俺は男だからか下もと頼まれたのでタオルを絞り、全裸の少尉の体を丁寧に拭っていく。
足の指を拭いている時、チラリと視界に入った少尉の陰茎が緩やかに頭をもたげていた。
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