少女漫画の当て馬キャラと恋人になったけどキャラ変激しすぎませんか??

和泉臨音

文字の大きさ
31 / 48
第四章 百鬼夜行殲滅作戦

第六話*side陽真

しおりを挟む
 
「しょう……陽真はるま様、林檎がけました、どうぞ」
「ん、ありがとう」

 最愛のまもるが僕のベッドの横に腰掛け、僕のために器用に剥いた林檎を差し出した。
 なんといい日だろうか。
 ちなみに林檎は一部皮を残した飾り切りで、細長く残された皮がウサギの耳のような形になっている。可愛い。
 最初見たときは驚いたが、むかし衛が体調を崩した時に家族に頼み、このように愛らしい姿に剝いて貰ったのだと教えてくれた。

 衛の大切な過去の記憶を僕と共有しくれたのがすごく嬉しい。もちろんこの剥き方を僕もすぐに気に入った。

 僕が小さく口を開けて甘えて見せれば、衛は甲斐甲斐しく僕の口元にウサギ林檎を添えてくれる。
 一口食べれば独特の食感のあと甘酸っぱさが口の中に広がった。

「林檎は栄養がありますから、ちゃんと食べてくださいね」

 まるでばあやのようなことを言う衛が本当に愛しくて、僕はだらしなく頬が緩みそうになるのを堪えて、口の中を空にしてからまた口を開け、衛に林檎を強請ねだった。

 さて、なぜ僕がベッドで衛に看病されているかというと、その理由は百鬼夜行の後始末までさかのぼる。

 合同殲滅作戦に夜蝶部隊のみであたることは、まあ許容範囲ではあったが、あのような暴挙を起こされては見過ごすことができない。 
 
 馬車でき殺すつもりはなかっただろうが、負傷者をださせるつもりだったのだろう。一般人を巻き込むなど言語道断だが、あれはあの御者もグルだったと考えるのが自然だ。
 なぜなら封鎖自体はきちんと行われていたことが確認できたからだ。
 本来であればあの場所に月光隊員以外が入ることも出ることもできない。入ることができるとすれば、それは手引した者がいるということだ。

 つまり、あの馬車は何かしらの理由をもってあの場所に存在した。 

 可能性が高いのは一般人を巻き込んでしまったとして、夜蝶部隊の功績に泥を塗ることだ。
 御者は命までも金で買われていたに違いない。

 まあ正直そのあたりはどうでもいい。

 問題は、僕の衛が大怪我をするかもしれなかったことだ。
 これは許されることではない。

 衛に危害を与えるものは、社会的にも身体的にも二度と表舞台には出られないように粛清しゅくせいする。これは当然のことであり自然の摂理だろう。 
 僕にはそれを出来るだけの力があるのだから。

 愛するものを傷付けられて黙っていられないのは血筋なのかもしれない。よく理解している薫子はいい仕事をしてくれた。
 馬車の一部を切り落とし、証拠を残してくれたのだ。

 それを手土産にあれやこれや出ない埃まで叩き出してやれば、気が触れてしまった可哀想な政治家とそのバカ息子が出来上がった。

 最後の抵抗とばかりに僕の足を負傷させてくれたが、それが決め手となり逮捕された。全く短絡的で愚かしい人だった。
 彼らの罪にはこれから更に身に覚えのない賄賂や殺人の罪も加わり、一生檻の中で生活することになるだろう。
 あの一家はだいぶ太り過ぎだったから、健全になって良かったんじゃないだろうか。ああ、でも規則正しい生活は体に合わなくて、早死してしまうかもしれないね。
 まあそうなっても自業自得なのだから諦めてもらおう。

 僕は足を痛めたが、彼らのには恩を売ることもできたので、結果としてはかなり上々だった。

 ただ、僕が怪我をしたと知った衛に我を忘れて泣かれるほど心配させてしまったので、それに関しては大失態だ。

 僕は僕の与える快楽以外で衛の涙が溢れ出るのを見たくない。まあ、百歩譲って幸せで流してしまう感涙は許容するが。
 悲しみや苦痛で泣いてほしくない。

 どうしたら喜びの涙を溢れさせられるだろうか、と思案しだした僕の心など知らないはずの衛から「毎日看病しに来てもいいですか?」と真面目すぎる言葉が飛び出した。

 毎日、衛が、僕の部屋へやって来る。

 なるほど、これは毎日衛に歓喜の涙を流させろという神の思し召しなのだろう。間違いない。
 なぜなら僕たちは恋人で、その恋人の部屋に毎日来るのだ。なにもないはずがないだろう。
 恋人としての営みが起きることなど微塵みじんも想定しないのは、純粋な衛くらいだ。

 打算まみれの僕はもちろん断ることなく、衛の提案を受け入れた。

 そして衛は今、僕の寝室にいる。
 ちなみに僕は実家の屋敷に療養名目で一週間ほど戻ってきている。色々手を回すのにこちらの方が都合が良かったからなのだが、衛との甘い時間も寮のベッドよりはこちらの方がいい。
 やはり、早く新居を手配しなくては。

 百鬼夜行も無事に殲滅したし僕の負傷もあるので、夜蝶部隊は一週間ほど全員休暇とした。
 なので毎日衛を泣かせても問題はない。これも神の采配と言うものだろう。

 この世のすべてが僕と衛の蜜月を祝福してくれているようだ。

 さて、おやつのウサギ林檎も食べ終わったし、恋人としてもっともっと、衛に甘えさせてもらうことにしよう。
 僕の視線だけで次に食べたいものを汲み取ったのか、衛が耳を赤く染めて口をキュッと横に結ぶ。

「タオルとお湯、取ってきます!!」

 脱兎とはこのようなことを言うのだろうか。
 衛は立ち上がると素早い動作で部屋を出て行ってしまった。 

「ふふ、美味しく食べてあげるから、早く戻っておいで」

 僕は衛が出ていった扉を見ながら、自然と笑みを浮かべた。

 
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

呪われた辺境伯は、異世界転生者を手放さない

波崎 亨璃
BL
ーーー呪われた辺境伯に捕まったのは、俺の方だった。 異世界に迷い込んだ駆真は「呪われた辺境伯」と呼ばれるレオニスの領地に落ちてしまう。 強すぎる魔力のせいで、人を近づけることができないレオニス。 彼に触れれば衰弱し、最悪の場合、命を落とす。 しかしカルマだけはなぜかその影響を一切受けなかった。その事実に気づいたレオニスは次第にカルマを手放さなくなっていく。 「俺に触れられるのは、お前だけだ」 呪いよりも重い執着と孤独から始まる、救済BL。です!

最弱白魔導士(♂)ですが最強魔王の奥様になりました。

はやしかわともえ
BL
のんびり書いていきます。 2023.04.03 閲覧、お気に入り、栞、ありがとうございます。m(_ _)m お待たせしています。 お待ちくださると幸いです。 2023.04.15 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます。 m(_ _)m 更新頻度が遅く、申し訳ないです。 今月中には完結できたらと思っています。 2023.04.17 完結しました。 閲覧、栞、お気に入りありがとうございます! すずり様にてこの物語の短編を0円配信しています。よろしければご覧下さい。

異世界転生した双子は今世でも双子で勇者側と悪魔側にわかれました

陽花紫
BL
異世界転生をした双子の兄弟は、今世でも双子であった。 しかし運命は二人を引き離し、一人は教会、もう一人は森へと捨てられた。 それぞれの場所で育った男たちは、やがて知ることとなる。 ここはBLゲームの中の世界であるのだということを。再会した双子は、どのようなエンディングを迎えるのであろうか。 小説家になろうにも掲載中です。

追放された『呪物鑑定』持ちの公爵令息、魔王の呪いを解いたら執着溺愛ルートに入りました

水凪しおん
BL
「お前のそのスキルは不吉だ」 身に覚えのない罪を着せられ、聖女リリアンナによって国を追放された公爵令息カイル。 死を覚悟して彷徨い込んだ魔の森で、彼は呪いに蝕まれ孤独に生きる魔王レイルと出会う。 カイルの持つ『呪物鑑定』スキル――それは、魔王を救う唯一の鍵だった。 「カイル、お前は我の光だ。もう二度と離さない」 献身的に尽くすカイルに、冷徹だった魔王の心は溶かされ、やがて執着にも似た溺愛へと変わっていく。 これは、全てを奪われた青年が魔王を救い、世界一幸せになる逆転と愛の物語。

異世界転生~女子高生が男の子に生まれ変わったのだが

松林 松茸
BL
「これは使命だ。多分だけど私だけに与えられた使命だ!だから・・・美味しく頂かなくては・・・」 女子高生の「西口 麗奈」は異世界に男の子「ハイネ」として転生してしまった。 迫りくる美少年、迫りくる亜人種相手に・・・軋むベッドの音、奏でるホーモニー。 体は男、心は女の冒険活劇が今始まる!・・・性的な意味で。 ※男性同士の性的描写を含みます。むしろ性的描写を描きたくてこの小説を書いています。  後半は普通にファンタジー内容になりますが性的描写はやはり入ります。苦手な方はご注意ください。 ※過去に「小説家になろう」で連載していた小説です。累計アクセス24万超えでした。 お知らせ~平日:17時更新、土日:12時更新に変更します。

中年冒険者、年下美青年騎士に番認定されたことで全てを告白するはめになったこと

mayo
BL
王宮騎士(24)×Cランク冒険者(36) 低ランク冒険者であるカイは18年前この世界にやって来た異邦人だ。 諸々あって、現在は雑用専門冒険者として貧乏ながら穏やかな生活を送っている。 冒険者ランクがDからCにあがり、隣国の公女様が街にやってきた日、突然現れた美青年騎士に声をかけられて、攫われた。 その後、カイを〝番〟だと主張する美青年騎士のせいで今まで何をしていたのかを文官の前で語ることを強要される。 語らなければ罪に問われると言われ、カイは渋々語ることにしたのだった、生まれてから36年間の出来事を。

処理中です...