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第八幕
しおりを挟むイワンが俺の護衛についてから二週間、今日は第一特務隊の会議があるとかで留守だ。
凄くほっとしている。だって毎日憧れの大好きなイワン・レイグナーがそれこそおはようからおやすみまで傍に居るんだぞ? 気なんか抜けないじゃないか。
しかも最近腹が痛い。腹の中がちくちくするような気もするし重いような熱いような気もする。あの変態脚本が書いたセリフの『お腹がうずく』ってこういうことかよ……と一瞬頭をよぎったが絶対に違うな。心理的ストレスによるものだろう。あまりひどくなるなら本気で護衛を誰か他の人間に代わってもらうしかない。
「シャクナさん寂しそうですね」
俺の洗濯物をせっせとクローゼットにしまいながらカイが声をかけて来た。稽古がないので用がなければ俺は一日自室で過ごす。今もカイが届けてくれた新聞に目を通していたところだ。
「寂しそう?」
「ええ、朝から沈んだ顔をしています。イワン様がいらっしゃらないからですよね」
「むしろあいつが居なくて清々しい気分だけどな」
「……意地っ張り」
パタンとクローゼットを閉める音とカイの呟きが重なって良く聞こえないんだが、なんか失礼なことを言われた気がする。俺はこういう直感は鋭いんだ。こちらに背を向けているカイの様子をみるが、なんとなくいつもと様子が違う。
「沈んでるのはお前じゃないのか、カイ?」
「そんなことありません。そういえばシャクナさん、最近お腹痛いんですよね」
「え、ああ。気付かれてたのか」
上手く隠していたつもりだが、知らないうちに腹さすってたからな、そりゃバレるか。
「勿論ですよ、僕はシャクナさんの従者ですから。お昼はお腹に優しいもの準備しますね」
「悪いな、ありがとう」
「いいえ」
カイはそういうと笑顔を浮かべて部屋を出て行った。
やっぱりおかしい。口元は笑ってたが目が死んでた。俺が知らないところで何かあったんじゃないか。俺の従者なんてやってるから他の従者からの当りも強いだろうし。
気になったらじっとしていられない性分だ。俺はとっとと気になることを調べることにした。
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