花形スタァの秘密事

和泉臨音

文字の大きさ
8 / 16

第八幕

しおりを挟む

 イワンが俺の護衛についてから二週間、今日は第一特務隊の会議があるとかで留守だ。
 凄くほっとしている。だって毎日憧れの大好きなイワン・レイグナーがそれこそおはようからおやすみまで傍に居るんだぞ? 気なんか抜けないじゃないか。

 しかも最近腹が痛い。腹の中がちくちくするような気もするし重いような熱いような気もする。あの変態脚本が書いたセリフの『お腹がうずく』ってこういうことかよ……と一瞬頭をよぎったが絶対に違うな。心理的ストレスによるものだろう。あまりひどくなるなら本気で護衛を誰か他の人間に代わってもらうしかない。

「シャクナさん寂しそうですね」

 俺の洗濯物をせっせとクローゼットにしまいながらカイが声をかけて来た。稽古がないので用がなければ俺は一日自室で過ごす。今もカイが届けてくれた新聞に目を通していたところだ。

「寂しそう?」
「ええ、朝から沈んだ顔をしています。イワン様がいらっしゃらないからですよね」
「むしろあいつが居なくて清々しい気分だけどな」
「……意地っ張り」

 パタンとクローゼットを閉める音とカイの呟きが重なって良く聞こえないんだが、なんか失礼なことを言われた気がする。俺はこういう直感は鋭いんだ。こちらに背を向けているカイの様子をみるが、なんとなくいつもと様子が違う。

「沈んでるのはお前じゃないのか、カイ?」
「そんなことありません。そういえばシャクナさん、最近お腹痛いんですよね」
「え、ああ。気付かれてたのか」

 上手く隠していたつもりだが、知らないうちに腹さすってたからな、そりゃバレるか。

「勿論ですよ、僕はシャクナさんの従者ですから。お昼はお腹に優しいもの準備しますね」
「悪いな、ありがとう」
「いいえ」

 カイはそういうと笑顔を浮かべて部屋を出て行った。
 やっぱりおかしい。口元は笑ってたが目が死んでた。俺が知らないところで何かあったんじゃないか。俺の従者なんてやってるから他の従者からの当りも強いだろうし。
 気になったらじっとしていられない性分だ。俺はとっとと気になることを調べることにした。

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~

倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」 大陸を2つに分けた戦争は終結した。 終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。 一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。 互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。 純愛のお話です。 主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。 全3話完結。

君さえ笑ってくれれば最高

大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。 (クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け) 異世界BLです。

聖者の愛はお前だけのもの

いちみりヒビキ
BL
スパダリ聖者とツンデレ王子の王道イチャラブファンタジー。 <あらすじ> ツンデレ王子”ユリウス”の元に、希少な男性聖者”レオンハルト”がやってきた。 ユリウスは、魔法が使えないレオンハルトを偽聖者と罵るが、心の中ではレオンハルトのことが気になって仕方ない。 意地悪なのにとても優しいレオンハルト。そして、圧倒的な拳の破壊力で、数々の難題を解決していく姿に、ユリウスは惹かれ、次第に心を許していく……。 全年齢対象。

もう一度、その腕に

結衣可
BL
もう一度、その腕に

美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?

あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

染まらない花

煙々茸
BL
――六年前、突然兄弟が増えた。 その中で、四歳年上のあなたに恋をした。 戸籍上では兄だったとしても、 俺の中では赤の他人で、 好きになった人。 かわいくて、綺麗で、優しくて、 その辺にいる女より魅力的に映る。 どんなにライバルがいても、 あなたが他の色に染まることはない。

【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話

日向汐
BL
「好きです」 「…手離せよ」 「いやだ、」 じっと見つめてくる眼力に気圧される。 ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26) 閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、 一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕 ・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・: 📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨ 短期でサクッと読める完結作です♡ ぜひぜひ ゆるりとお楽しみください☻* ・───────────・ 🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧 ❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21 ・───────────・ 応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪) なにとぞ、よしなに♡ ・───────────・

処理中です...