13 / 16
第十三幕
しおりを挟むぴちょりと乳首の上をなんかがうごめいている。片方はぬるぬるしててもう一方は摘ままれてるみたいに痛い。ぐりぐりするな。魔物かな。やっぱさっきの夢か、なんだよ、どうせならあのまま死なせてくれよ。
うっすらと目を開けると俺の胸の上に茶髪の頭があった。薄暗かったせいもあって一瞬カイかと思ったが頭から伸びている肩や背筋が絶対にカイじゃない。
しっかり筋肉が盛り上がっていて厚みがある。彫刻みたいだ。
ぼんやりみていると俺の乳首を舐めまくっているのは魔物ではないと判った。なんとなくだが察しはついた。俺は死ぬ間際に、もしかしたら死んだ直後かもしれないが、大好きなイワンに抱かれる夢を見ているのだろう。
本当の俺は魔物に食われてるんだろうな。
「ふふ……馬鹿みたい」
俺の声は掠れてて、美声だと誉めてもらってるいつもの声からは考えられないほどのダミ声だ。これはあまりにも酷すぎる。しかもララに文句つけといて自分も結局これかよ。下半身に忠実とか笑える。
俺が笑っていれば、乳首から舌がはなれて緑の瞳が俺を見る。
あーほんとイワンって格好よいなぁ。
俺の乳首舐めてヨダレだらけの唇してたって無駄に格好良い。すき。
手が動いたのでイワンの頭をなでなでした。意外に髪の毛が柔らかい。はは、いい夢だなぁ。
そんな俺の手をとって、ちゅっと指先にキスを落とす。はーやばいね、格好良い。うちの団員でも敵わない色男っぷり。
「目が…覚めましたか?」
なんかさっきもそれ聞いた気がするけど。
「覚めたくない、このまま死にたい」
「なっ……」
「だって好きなイワンに殺されて死ぬとか最高じゃない、はは、セックスのおまけもつくとか、俺の妄想すごすぎ……」
「???! 好き?? シャクナさんが? 私を?」
イワンが顔を真っ赤にして俺を見ている。ちょっと俺、さすがにそれはないわー。
「そこはきっとそんな反応じゃなくてさ、こう、クールに「そうか」くらいじゃないとさ」
「いえ、そんな…そんな落ち着いてはいられません!!」
「えー、氷の壁のイメージは不動だよ。落ち着こうよ」
「ぐっ……」
イワンが真っ赤な顔で口をへの字に結んでいる姿がおかしくて、俺はケラケラ笑った。俺の妄想ひどすぎるな。もっと恰好良いんだぞイワンは。
「今の貴方だって氷の華とは程遠いじゃないですか」
「だってもう死んだ? 死ぬ? し、どうでもいい」
死ぬはずなのに身体はだるいしやたら眠い。はふっと欠伸をすればイワンが口に啄ばむようにキスしてきた。それがくすぐったくて俺はまたケラケラ笑う。ふふふ、楽しい。
「どうせならララのベッドの上じゃなくて雲の上とか、そんな突拍子のないとこのが楽しかったかもな」
そしたら死んだって実感できるだろうに。
「すみません。とっさのことでララさんに部屋を借りました。ここはその……色々揃っていて丁度良かったので」
「色々?」
「挿入のための潤滑油とか、痛みを抑える麻酔香とか……」
「随分具体的な設定だな。俺そんなことララから聞いた事あったっけ?」
「それは判りませんが、設定ではないと言うか…、たぶんシャクナさんは勘違いをしてるというか寝ぼけてるんだと思うんですが……」
「ん?」
「貴方は生きています」
キスをしてたので間近にイワンの顔があって、その緑の瞳がじっと俺を見つめている。
「ははっ何言ってんの? 俺、イワンに刺されて死んだだろ? 今思い出すだけでもぞくぞくする……はぁ…凄い、格好良かったんだぞイワン・レイグナー。死ぬかと思った。あ、違うか、殺されたんだった。俺死んでた」
「いえ、だから生きています。あれは魔物だけ殺す魔剣です。神器とも呼ばれていますが、俺と総隊長しか扱えない武器で、使用許可に少々手間取りました。間に合って良かった」
イワンが俺を抱きかかえて上半身を起こしてくれる。すればとぷりと尻から何か流れ出た。そしてなぜか支えてくれるイワンの腕が……熱い。
そう、あまりにも肌に感触や体温をしっかりと感じてしまい、ぽかんと俺はイワンを見上げた。
26
あなたにおすすめの小説
貴族軍人と聖夜の再会~ただ君の幸せだけを~
倉くらの
BL
「こんな姿であの人に会えるわけがない…」
大陸を2つに分けた戦争は終結した。
終戦間際に重症を負った軍人のルーカスは心から慕う上官のスノービル少佐と離れ離れになり、帝都の片隅で路上生活を送ることになる。
一方、少佐は屋敷の者の策略によってルーカスが死んだと知らされて…。
互いを思う2人が戦勝パレードが開催された聖夜祭の日に再会を果たす。
純愛のお話です。
主人公は顔の右半分に火傷を負っていて、右手が無いという状態です。
全3話完結。
君さえ笑ってくれれば最高
大根
BL
ダリオ・ジュレの悩みは1つ。「氷の貴公子」の異名を持つ婚約者、ロベルト・トンプソンがただ1度も笑顔を見せてくれないことだ。感情が顔に出やすいダリオとは対照的な彼の態度に不安を覚えたダリオは、どうにかロベルトの笑顔を引き出そうと毎週様々な作戦を仕掛けるが。
(クーデレ?溺愛美形攻め × 顔に出やすい素直平凡受け)
異世界BLです。
聖者の愛はお前だけのもの
いちみりヒビキ
BL
スパダリ聖者とツンデレ王子の王道イチャラブファンタジー。
<あらすじ>
ツンデレ王子”ユリウス”の元に、希少な男性聖者”レオンハルト”がやってきた。
ユリウスは、魔法が使えないレオンハルトを偽聖者と罵るが、心の中ではレオンハルトのことが気になって仕方ない。
意地悪なのにとても優しいレオンハルト。そして、圧倒的な拳の破壊力で、数々の難題を解決していく姿に、ユリウスは惹かれ、次第に心を許していく……。
全年齢対象。
美人王配候補が、すれ違いざまにめっちゃ睨んでくるんだが?
あだち
BL
戦場帰りの両刀軍人(攻)が、女王の夫になる予定の貴公子(受)に心当たりのない執着を示される話。ゆるめの設定で互いに殴り合い罵り合い、ご都合主義でハッピーエンドです。
ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね
ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」
オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。
しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。
その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。
「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」
卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。
見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……?
追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様
悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。
染まらない花
煙々茸
BL
――六年前、突然兄弟が増えた。
その中で、四歳年上のあなたに恋をした。
戸籍上では兄だったとしても、
俺の中では赤の他人で、
好きになった人。
かわいくて、綺麗で、優しくて、
その辺にいる女より魅力的に映る。
どんなにライバルがいても、
あなたが他の色に染まることはない。
【完結】社畜の俺が一途な犬系イケメン大学生に告白された話
日向汐
BL
「好きです」
「…手離せよ」
「いやだ、」
じっと見つめてくる眼力に気圧される。
ただでさえ16時間勤務の後なんだ。勘弁してくれ──。
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
純真天然イケメン大学生(21)× 気怠げ社畜お兄さん(26)
閉店間際のスーパーでの出会いから始まる、
一途でほんわか甘いラブストーリー🥐☕️💕
・:* ✧.---------・:* ✧.---------˚✧₊.:・:
📚 **全5話/9月20日(土)完結!** ✨
短期でサクッと読める完結作です♡
ぜひぜひ
ゆるりとお楽しみください☻*
・───────────・
🧸更新のお知らせや、2人の“舞台裏”の小話🫧
❥❥❥ https://x.com/ushio_hinata_2?s=21
・───────────・
応援していただけると励みになります💪( ¨̮ 💪)
なにとぞ、よしなに♡
・───────────・
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる