まさか「好き」とは思うまい

和泉臨音

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それでも「好き」が止まらない

2.「いつ会える?」

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 ぐっと肌寒くなり、ハロウィングッズが店頭を賑わす季節になった。どこもかしこもオレンジや紫のディスプレイがかわいらしい。職場の机の上も毎週彼女と大型テーマパークのハロウィンに通っているという谷内たにうちくんからのお土産で、賑やかさを増していた。

 一方、俺の心はどんよりとしていた。色で言うなら真っ黒だ。なぜなら各務くんとまるっと一ヶ月、一緒にご飯を食べられていないからである。

 恋人と一緒に食事が出来ないくらいでなに泣き言を言ってるんだと自分でも思う。でもびっくりするぐらい食事が美味しくなくなったのだ。作ったり用意するのも面倒で、気付けばまた最近はコンビニおにぎりと缶チューハイを買う日々である。

 まあでも俺の食事がどうなろうとも、それは俺の問題でしかない。各務くんから「しばらく夕飯は一緒に食べられない」と可愛い猫のごめんなさいスタンブと共にメッセージアプリに連絡が来た時は、それも二週間くらいだろうと勝手に思っていた。
 しかし気付けばすでに三週間、トーク画面は更新されていない。
 もともと俺たちは必要なことしか連絡しないので、メッセージアプリも一週間くらいなら間が空くことは稀にある。でもさすがにこんなに間が空くことがなかったので、連絡のないトーク画面を見るとものすごく寂しい気持ちに襲われた。

 ……などと一人でする食事の寂しさに打ちひしがれてはいるものの、各務くんにまったく会えていないわけではない。

 もともと毎回ではないまでも、朝コンビニで働く各務くんに会ってから出勤していた。その習慣は今でも変わらない。なので今朝も他のお客さんの邪魔にならない程度に挨拶はした。

 しかしである。それでもやっぱり寂しいものは寂しいのだ。店員と客という関係ではなく、各務くんと俺で、ちゃんと会いたい。食事をして他愛もない話をするだけだけど、それがどれだけ俺にとって大事な時間で掛け替えのないものか、痛感した。
 寂しい。
 今週に入り、ついにメッセージアプリを開いて「いつ会える?」などと打ち込みそうになった。打ち込む前に我に返って慌てて閉じたが、これはもう重症だろう。だが、グッとここはこらえる必要がある。

 別に連絡しても各務くんは嫌がらないかもしれない。しかし真面目な各務くんのことだ。忙しい中、俺のために時間を作ろうとしてしまうだろう。そんなのは絶対にダメだ。
 俺の我儘に、彼を付き合わせるわけにはいかない。

 俺は大人なのだ。年下である各務くんの邪魔をするようなことは絶対に言うべきじゃないしするべきではない。各務くんに会う前は一人でいることなんて当たり前だったのだ。去年の今頃など、仕事以外はメッセージどころか会話すら誰ともしていなかった。

 ああでも、と思い出して思わず笑ってしまう。
 唯一悪態をつく各務くんとの会話だけは仕事に関係のない、例外だった。

 そんなことをつらつらと考えていれば、いつの間にか各務くんが在籍する大学にたどり着いていた。

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