25 / 43
25 王家の改善!効果の確認
しおりを挟む
長くなってしまいました・・・二話分です。すみません。
思いのほか早い段階で、効果の確認を目の当たりにすることができました。
王配殿下が馬車の外で女王陛下をエスコートされると、女王陛下はルイス様を気にしながらも、嬉しそうに王配の手を取ったのです。
女王陛下にとってオーディエンスである私たちがいるにも関わらず、ルイス様を置き去りになさったということは、ルイス様の仮説が正しいことの証明でしょう。
私とアレンさんは目を合わせて頷きあいました。
ルイス様は手を取り合って王宮に戻るお二人の背中を、本当に嬉しそうに見送られました。
巣立とうとする雛を見る母鳥の目線・・・やっぱり小鳥?
私たちはアイコンタクトだけで別れました。
さてさてリリの蒔いた種は目を出したのでしょうか・・・
ジュリアの奔走は?
ランドルさんの貞操は?
いろいろと気になることが多いですが、早急に意識合わせをするべく、屋敷に戻りました。
「アレンさん、本当にお疲れさまでした。そしてありがとうございました」
「奥様こそ良く頑張りました。裏ミッションをバラしちゃうからドキドキしましたよ」
「ははは~。だってここまでやってダメだったら実行あるのみですよ?」
「正解でしょう。そういう意味でも今日の謁見は成功ですね。でも・・・」
「やっぱり?」
「ええ、やっぱりヤツはダメですね。テキトーなことを言って切り上げました」
「ですよね・・・」
「ヤツのことはもう放っておきましょう。フォローも不要です。そこそこ頑張ってくれて、少しでも旦那様が楽になればラッキーくらいで・・・」
「はぁぁぁぁ~馬鹿ばっかりですね」
それから数日は何事もなく平穏な日々でした。
今日はリリさんが宰相と夕食の約束をしていると言っていましたので、報告が楽しみです。
「ただいま帰りました」
「おかえりなさ~い!早かったですね」
「結果さえ聞けば用はないです。時間の無駄です。でもこの先も使えそうなら使い果たしますので、ものすごく微かな望みだけは持たせて帰らせましたから安心してください」
「・・・ありがとうございます。で?どうでした?」
「あのおっさんは、加齢臭するしケチでアレですが、やるときはやる男なんですよ。まあそれくらいじゃないと血筋だけで宰相は張れませんから。結論から申しますと、前王はご自分の娘のことを全く理解しようともせず『ルイスさえ与えておけば大丈夫』のスタンスを崩さなかったみたいです」
「なるほど・・・」
「失敗したのなら二度と会わないと言いましたところ、もう少し時間が欲しいと粘るので、前王はもういいから、王配と女王陛下の仲を取り持てと厳命しておきました」
「すばらしい」
「そしたらあのおっさん、ちょっと調子に乗りやがりましてね。成功したら褒美が欲しいなんてぬかすので、このピンヒールをテメエがぶら下げている自慢の息子の先端からゆっくりと突き刺してやろうか?って申しました」
リリさんがドレスの裾を膝まで捲り上げてハイヒールを見せてくれました。
本当に刺さりそうなほど細いヒールで、足首がとてもきれいに見える素敵なデザインです。
アレンさんとランディさんは酸っぱいものを食べたときのような口になっています。
「そしたらあいつ・・・恍惚とした表情で何度も頷くんですよ?気色悪いでしょ?絶対変態だろうとは思っていましたが、正解でしたね。私の目に狂いはありませんでした」
「我が国の宰相って変態なんですね・・・」
「ええ、それもハード系被虐愛好者ですね。最初からわかっていれば、もっとやりようがあったのですが、下手に隠すから遠回りしちゃいましたよ。すみませんでした」
「いえいえ、リリさんに落ち度はないですよ」
リリさん・・・最強です!弟子にしてください!
それにしてもなぜアレンさんとランディさんは内股になっているのでしょう?
「なので、裏ミッションの準備を急ぎましょう。いろいろ仕込みが必要なので、ちょこちょこ姿を消しますが、ご了承くださいませ」
「勿論です。最優先でお願いします」
どうやら皆さん同じ意見のようですね。
裏ミッション・・・早急に作戦名を考えねば!
リリさんはニコッと笑って退出しました。
リリさんの背中を見送りながらホッと息を吐かれたアレンさんに聞きました。
「アレンさん、あんな優秀な人材をどのようにして発掘されたのですか?」
「一般公募ですよ?紹介状と履歴書を持って自分で応募してきたのですが、その履歴書がとてもユニークだったので採用しました。まあ、他に応募者もいませんでしたしね」
「ユニーク?」
「ええ、前職が宰相邸のメイド、前々職は隣国王家の暗部所属という職歴でした。冗談かと思いましたが事実だったみたいですね。隣国ってどこだろう・・・教え子の中にはいなかったから・・・国がちがうのかな?」
今ものすごくさらっとアレンさんの過去が・・・
「あ・・・あ・・・あ・・・」
「ええ、暗部です。この国では影と呼びますけど。履歴書の特技欄にはハニートラップと潜入とお菓子作り、免許及び資格の欄には拷問と暗殺と保育士だったかな」
「拷問と暗殺の有資格者・・・そんな検定があるのですね。しかも同列で保育士・・・」
「ふざけた履歴書だとは思ったのですが、現役宰相家の紹介状でしたからね。思えばリリもマリーも正解でした。二人とも一般よりかなり高給ですが、あのスキルならむしろ安い」
拷問と暗殺の資格って・・・まさか専門学校でもあるのでしょうか?
検定には実技試験もあるのでしょうか・・・
実技って・・・疑問は尽きません。
私はまだまだ世間知らずのようです。
今度ジュリアが来たら専門学校への入学を相談をしてみようかしら・・・
あら?うっかり流しましたが、今マリーさんの名前も出ましたか?
「マリーさんもですか?」
「ええ、あれ?お話ししていませんでしたか?彼女は薬物のエキスパートですよ?伯爵様がどこからか引き抜いてこられたのです」
「ソウナンデスネ・・・」
ええ、知りませんでしたとも!
知っていたらリリさんにもマリーさんにも、色紙にサインを貰っていましたよ!
それにしても、この屋敷の女性達はものすごいハイスペックだったのですね。
リリさんが王家暗部の出身で、マリーさんが薬物の専門家・・・すごい特技です。
それに比べて私の特技は・・・刺繡・・・正直へこみます。
数日後ジュリアがひょっこりやってきました。
いつものように花束と焼き菓子をくれました。
なぜでしょう・・・平凡なジュリアの顔を見ると妙に安心する私がいます。
「姉さん、今日は途中経過を報告に来たよ」
皆さん作戦会議室という名の応接室に集合しました。
まだ夕食をとっていないというジュリアのために、ランディさんがサンドイッチを用意してくださいました。
弟まで可愛がってくださって・・・みなさん本当にありがとうございます。
最近は私よりジュリアの方がみなさんとよくおしゃべりしていますものね。
「最近ね、王配殿下がちょくちょく女王陛下をエスコートして庭園でお茶をしているのを見かけるよ。もぐもぐ・・・でも女王陛下の後ろには必ず義兄さんが控えさせられているから、王配殿下はまだ女王陛下を満足させてはいないようだ。もぐもぐ・・・殿下も頑張って焼きもちを焼いている振りはするんだけど、芝居がクサすぎて、みんな笑いを嚙み殺すのに必死だよ。だってセリフは棒読みだし、時々カンペとか見るんだよ?もぐもぐ・・・あっ、すみませんお茶を下さい」
あらあら王配殿下も一応頑張ってはいるのですね・・・
きっと女王陛下のためというより愛しいリアトリス様のためでしょうけれど。
それにしてもジュリア・・・お口の中に食べ物を入れてしゃべるのはお行儀が悪いですよ?
「それから宰相が前王の別邸をちょくちょく訪問しているよ。それが理由かどうかはわからないけれど、最近は陛下と殿下が連れだって視察や謁見をする機会が増えた。前王が担当していた関係各所への訪問や外交使節団の接待もお二人の公務になるみたいだし」
全員がリリさんの顔を見ました。
リリさんは片方の口角を少し上げただけで、表情を変えません。
もうマジでかっこいいです。
「女王陛下はまだ義兄さんを解放する気配は見せないから油断は禁物だね。僕が思うに、女王陛下は誰からも愛されたことがないんじゃないかな。だから愛し方もわからない。彼女は束縛を愛だと勘違いしている。相手が自分の要求を受け入れる瞬間だけ、愛されていると実感するんだろうね。歪んでるよ。王配がそれに耐えられるとは思えない」
「それは・・・無理ね。彼も結局のところ王族然としたお花畑な性格だし」
「だよね・・・。まあ作戦の効果は出ているよ。義兄さんは自分の事務室にいる時間が増えたし、庶務本部に顔を出せるようにもなった。まだ帰宅許可は出ないけどね」
「そうなのね・・・」
「それがね、今回の件でいろいろな部署の幹部に会う機会が増えたでしょ?みんな不満を抱えてるってわかったんだ。まあ、前王のやり方は酷すぎたからね。やっぱり裏ミッションの方が確実だな。みんなも本命は裏で表はフェイクってつもりだったんでしょ?」
フェイク・・・
アレンさんが唸るように言いました。
「フェイクといえど時間稼ぎにはなるでしょうから、さっさと切り替えましょう」
「うん、僕もそう思います。まずは前王ですね。そういえば前王の住む別邸のコックさんが昨日急に辞めたのですが、何か仕掛けました?」
マリーさんがしゅぴっと手を上げました。
「私の仕業です。彼のお茶に軽く薬を入れました。無味無臭無色ですからバレません。それに薬が抜ければ味覚は戻りますから、彼の再就職は可能です。ランディさんが後任として赴く前に、ある程度の目撃証拠を認知させる必要があったので、速やかにご退場いただきました。それと同時に前王へのオペレーションも始めています」
リリさんがマリーさんの顔を見ます。
「どうかしら?三日くらい?」
「そうですね、三日もあれば十分です」
ジュリアが平然として聞きました。
「ああ、さすがだね。前王のものはどんな効果なの?」
「同じですよ?味覚を鈍くする薬です」
実行を担当したであろうリリさんが、紅茶の銘柄を言うくらいの軽さで言いました。
マリーさんがニコニコ顔で続けます。
「実はそれだけではないのですよ?継続して摂取すれば血管がぼろぼろになって破れやすくなるというエグい効果もあるのです。素敵でしょ?お薬の服用と並行して、きちんと不摂生な食生活を送れば・・・一週間は持ちませんね」
「バレない?」
リリさんが応えます。
「だからこその三日間ですよ。専属コックがいないので、新しいコックが来るまでは王宮から料理が運ばれます。前王は味がしないと不満を抱きます。でも文句を言う相手がいないので、仕方なく自分で塩をかけて食べます。その様子をメイドや侍従が目撃します」
「なるほど・・・そこでランディさんの登場だね?」
「ええ、ランディさんはいつも通りのおいしい料理を作ります。すると前王は味が薄いとランディさんを呼ぶでしょう。ランディさんは使用人たちにも同じ料理を食べさせて、薄味ではないことを証明します。それでも前王は食い下がります。そこでランディさんは前王の命令で仕方なく味を濃くします。それで十分です」
「それで一週間で結果がでるの?」
「ええ、お料理については前王の命令という衆目一致が得られます。この事実がランディさんの無実証明となり、長年の生活習慣が原因だと医師たちを誘導できるのです。後は飽和状態寸前まで塩を入れたワインと、レモンを浮かべたものすごく濃い塩水を毎日飲ませます。味は感じなくても喉はとても乾きますから、過剰に水分を摂取します。体内の水分量が増え、腎臓に負担がかかり、血管が異常膨張します。脆くなった血管は破れます」
全員がニヤッとしましたし、ジュリアも笑っています。
あの素直で優しくて気が弱かった弟はどこに行ってしまったのでしょうか・・・
お姉ちゃんはとても心配です。
私の心配など関係なくアレンさんがジュリアに説明を続けます。
「採用されたばかりなのに雇用主が突然いなくなったランディさんは、王配のパティシエの師匠ですから当然のようにスカウトが来ます。そしてめでたく王配専属のコックです」
「素晴らしい・・・心から尊敬します」
ジュリアは感嘆していました。
お姉ちゃんは本当に心配です。
思いのほか早い段階で、効果の確認を目の当たりにすることができました。
王配殿下が馬車の外で女王陛下をエスコートされると、女王陛下はルイス様を気にしながらも、嬉しそうに王配の手を取ったのです。
女王陛下にとってオーディエンスである私たちがいるにも関わらず、ルイス様を置き去りになさったということは、ルイス様の仮説が正しいことの証明でしょう。
私とアレンさんは目を合わせて頷きあいました。
ルイス様は手を取り合って王宮に戻るお二人の背中を、本当に嬉しそうに見送られました。
巣立とうとする雛を見る母鳥の目線・・・やっぱり小鳥?
私たちはアイコンタクトだけで別れました。
さてさてリリの蒔いた種は目を出したのでしょうか・・・
ジュリアの奔走は?
ランドルさんの貞操は?
いろいろと気になることが多いですが、早急に意識合わせをするべく、屋敷に戻りました。
「アレンさん、本当にお疲れさまでした。そしてありがとうございました」
「奥様こそ良く頑張りました。裏ミッションをバラしちゃうからドキドキしましたよ」
「ははは~。だってここまでやってダメだったら実行あるのみですよ?」
「正解でしょう。そういう意味でも今日の謁見は成功ですね。でも・・・」
「やっぱり?」
「ええ、やっぱりヤツはダメですね。テキトーなことを言って切り上げました」
「ですよね・・・」
「ヤツのことはもう放っておきましょう。フォローも不要です。そこそこ頑張ってくれて、少しでも旦那様が楽になればラッキーくらいで・・・」
「はぁぁぁぁ~馬鹿ばっかりですね」
それから数日は何事もなく平穏な日々でした。
今日はリリさんが宰相と夕食の約束をしていると言っていましたので、報告が楽しみです。
「ただいま帰りました」
「おかえりなさ~い!早かったですね」
「結果さえ聞けば用はないです。時間の無駄です。でもこの先も使えそうなら使い果たしますので、ものすごく微かな望みだけは持たせて帰らせましたから安心してください」
「・・・ありがとうございます。で?どうでした?」
「あのおっさんは、加齢臭するしケチでアレですが、やるときはやる男なんですよ。まあそれくらいじゃないと血筋だけで宰相は張れませんから。結論から申しますと、前王はご自分の娘のことを全く理解しようともせず『ルイスさえ与えておけば大丈夫』のスタンスを崩さなかったみたいです」
「なるほど・・・」
「失敗したのなら二度と会わないと言いましたところ、もう少し時間が欲しいと粘るので、前王はもういいから、王配と女王陛下の仲を取り持てと厳命しておきました」
「すばらしい」
「そしたらあのおっさん、ちょっと調子に乗りやがりましてね。成功したら褒美が欲しいなんてぬかすので、このピンヒールをテメエがぶら下げている自慢の息子の先端からゆっくりと突き刺してやろうか?って申しました」
リリさんがドレスの裾を膝まで捲り上げてハイヒールを見せてくれました。
本当に刺さりそうなほど細いヒールで、足首がとてもきれいに見える素敵なデザインです。
アレンさんとランディさんは酸っぱいものを食べたときのような口になっています。
「そしたらあいつ・・・恍惚とした表情で何度も頷くんですよ?気色悪いでしょ?絶対変態だろうとは思っていましたが、正解でしたね。私の目に狂いはありませんでした」
「我が国の宰相って変態なんですね・・・」
「ええ、それもハード系被虐愛好者ですね。最初からわかっていれば、もっとやりようがあったのですが、下手に隠すから遠回りしちゃいましたよ。すみませんでした」
「いえいえ、リリさんに落ち度はないですよ」
リリさん・・・最強です!弟子にしてください!
それにしてもなぜアレンさんとランディさんは内股になっているのでしょう?
「なので、裏ミッションの準備を急ぎましょう。いろいろ仕込みが必要なので、ちょこちょこ姿を消しますが、ご了承くださいませ」
「勿論です。最優先でお願いします」
どうやら皆さん同じ意見のようですね。
裏ミッション・・・早急に作戦名を考えねば!
リリさんはニコッと笑って退出しました。
リリさんの背中を見送りながらホッと息を吐かれたアレンさんに聞きました。
「アレンさん、あんな優秀な人材をどのようにして発掘されたのですか?」
「一般公募ですよ?紹介状と履歴書を持って自分で応募してきたのですが、その履歴書がとてもユニークだったので採用しました。まあ、他に応募者もいませんでしたしね」
「ユニーク?」
「ええ、前職が宰相邸のメイド、前々職は隣国王家の暗部所属という職歴でした。冗談かと思いましたが事実だったみたいですね。隣国ってどこだろう・・・教え子の中にはいなかったから・・・国がちがうのかな?」
今ものすごくさらっとアレンさんの過去が・・・
「あ・・・あ・・・あ・・・」
「ええ、暗部です。この国では影と呼びますけど。履歴書の特技欄にはハニートラップと潜入とお菓子作り、免許及び資格の欄には拷問と暗殺と保育士だったかな」
「拷問と暗殺の有資格者・・・そんな検定があるのですね。しかも同列で保育士・・・」
「ふざけた履歴書だとは思ったのですが、現役宰相家の紹介状でしたからね。思えばリリもマリーも正解でした。二人とも一般よりかなり高給ですが、あのスキルならむしろ安い」
拷問と暗殺の資格って・・・まさか専門学校でもあるのでしょうか?
検定には実技試験もあるのでしょうか・・・
実技って・・・疑問は尽きません。
私はまだまだ世間知らずのようです。
今度ジュリアが来たら専門学校への入学を相談をしてみようかしら・・・
あら?うっかり流しましたが、今マリーさんの名前も出ましたか?
「マリーさんもですか?」
「ええ、あれ?お話ししていませんでしたか?彼女は薬物のエキスパートですよ?伯爵様がどこからか引き抜いてこられたのです」
「ソウナンデスネ・・・」
ええ、知りませんでしたとも!
知っていたらリリさんにもマリーさんにも、色紙にサインを貰っていましたよ!
それにしても、この屋敷の女性達はものすごいハイスペックだったのですね。
リリさんが王家暗部の出身で、マリーさんが薬物の専門家・・・すごい特技です。
それに比べて私の特技は・・・刺繡・・・正直へこみます。
数日後ジュリアがひょっこりやってきました。
いつものように花束と焼き菓子をくれました。
なぜでしょう・・・平凡なジュリアの顔を見ると妙に安心する私がいます。
「姉さん、今日は途中経過を報告に来たよ」
皆さん作戦会議室という名の応接室に集合しました。
まだ夕食をとっていないというジュリアのために、ランディさんがサンドイッチを用意してくださいました。
弟まで可愛がってくださって・・・みなさん本当にありがとうございます。
最近は私よりジュリアの方がみなさんとよくおしゃべりしていますものね。
「最近ね、王配殿下がちょくちょく女王陛下をエスコートして庭園でお茶をしているのを見かけるよ。もぐもぐ・・・でも女王陛下の後ろには必ず義兄さんが控えさせられているから、王配殿下はまだ女王陛下を満足させてはいないようだ。もぐもぐ・・・殿下も頑張って焼きもちを焼いている振りはするんだけど、芝居がクサすぎて、みんな笑いを嚙み殺すのに必死だよ。だってセリフは棒読みだし、時々カンペとか見るんだよ?もぐもぐ・・・あっ、すみませんお茶を下さい」
あらあら王配殿下も一応頑張ってはいるのですね・・・
きっと女王陛下のためというより愛しいリアトリス様のためでしょうけれど。
それにしてもジュリア・・・お口の中に食べ物を入れてしゃべるのはお行儀が悪いですよ?
「それから宰相が前王の別邸をちょくちょく訪問しているよ。それが理由かどうかはわからないけれど、最近は陛下と殿下が連れだって視察や謁見をする機会が増えた。前王が担当していた関係各所への訪問や外交使節団の接待もお二人の公務になるみたいだし」
全員がリリさんの顔を見ました。
リリさんは片方の口角を少し上げただけで、表情を変えません。
もうマジでかっこいいです。
「女王陛下はまだ義兄さんを解放する気配は見せないから油断は禁物だね。僕が思うに、女王陛下は誰からも愛されたことがないんじゃないかな。だから愛し方もわからない。彼女は束縛を愛だと勘違いしている。相手が自分の要求を受け入れる瞬間だけ、愛されていると実感するんだろうね。歪んでるよ。王配がそれに耐えられるとは思えない」
「それは・・・無理ね。彼も結局のところ王族然としたお花畑な性格だし」
「だよね・・・。まあ作戦の効果は出ているよ。義兄さんは自分の事務室にいる時間が増えたし、庶務本部に顔を出せるようにもなった。まだ帰宅許可は出ないけどね」
「そうなのね・・・」
「それがね、今回の件でいろいろな部署の幹部に会う機会が増えたでしょ?みんな不満を抱えてるってわかったんだ。まあ、前王のやり方は酷すぎたからね。やっぱり裏ミッションの方が確実だな。みんなも本命は裏で表はフェイクってつもりだったんでしょ?」
フェイク・・・
アレンさんが唸るように言いました。
「フェイクといえど時間稼ぎにはなるでしょうから、さっさと切り替えましょう」
「うん、僕もそう思います。まずは前王ですね。そういえば前王の住む別邸のコックさんが昨日急に辞めたのですが、何か仕掛けました?」
マリーさんがしゅぴっと手を上げました。
「私の仕業です。彼のお茶に軽く薬を入れました。無味無臭無色ですからバレません。それに薬が抜ければ味覚は戻りますから、彼の再就職は可能です。ランディさんが後任として赴く前に、ある程度の目撃証拠を認知させる必要があったので、速やかにご退場いただきました。それと同時に前王へのオペレーションも始めています」
リリさんがマリーさんの顔を見ます。
「どうかしら?三日くらい?」
「そうですね、三日もあれば十分です」
ジュリアが平然として聞きました。
「ああ、さすがだね。前王のものはどんな効果なの?」
「同じですよ?味覚を鈍くする薬です」
実行を担当したであろうリリさんが、紅茶の銘柄を言うくらいの軽さで言いました。
マリーさんがニコニコ顔で続けます。
「実はそれだけではないのですよ?継続して摂取すれば血管がぼろぼろになって破れやすくなるというエグい効果もあるのです。素敵でしょ?お薬の服用と並行して、きちんと不摂生な食生活を送れば・・・一週間は持ちませんね」
「バレない?」
リリさんが応えます。
「だからこその三日間ですよ。専属コックがいないので、新しいコックが来るまでは王宮から料理が運ばれます。前王は味がしないと不満を抱きます。でも文句を言う相手がいないので、仕方なく自分で塩をかけて食べます。その様子をメイドや侍従が目撃します」
「なるほど・・・そこでランディさんの登場だね?」
「ええ、ランディさんはいつも通りのおいしい料理を作ります。すると前王は味が薄いとランディさんを呼ぶでしょう。ランディさんは使用人たちにも同じ料理を食べさせて、薄味ではないことを証明します。それでも前王は食い下がります。そこでランディさんは前王の命令で仕方なく味を濃くします。それで十分です」
「それで一週間で結果がでるの?」
「ええ、お料理については前王の命令という衆目一致が得られます。この事実がランディさんの無実証明となり、長年の生活習慣が原因だと医師たちを誘導できるのです。後は飽和状態寸前まで塩を入れたワインと、レモンを浮かべたものすごく濃い塩水を毎日飲ませます。味は感じなくても喉はとても乾きますから、過剰に水分を摂取します。体内の水分量が増え、腎臓に負担がかかり、血管が異常膨張します。脆くなった血管は破れます」
全員がニヤッとしましたし、ジュリアも笑っています。
あの素直で優しくて気が弱かった弟はどこに行ってしまったのでしょうか・・・
お姉ちゃんはとても心配です。
私の心配など関係なくアレンさんがジュリアに説明を続けます。
「採用されたばかりなのに雇用主が突然いなくなったランディさんは、王配のパティシエの師匠ですから当然のようにスカウトが来ます。そしてめでたく王配専属のコックです」
「素晴らしい・・・心から尊敬します」
ジュリアは感嘆していました。
お姉ちゃんは本当に心配です。
149
あなたにおすすめの小説
私が生きていたことは秘密にしてください
月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。
見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。
「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」
王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!
gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ?
王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。
国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから!
12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。
【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!
ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。
※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。
婚約破棄された堅物令嬢ですが、鬼の騎士団長の娘として宮廷の陰謀を暴くのに忙しいので、美貌のカストラート(実は王子)に溺愛される暇はありません
綾森れん
恋愛
「お前のような真面目くさった女はいらない。婚約は破棄させてもらう!」
婚約者だった公爵令息に冷酷に言い放たれたリラ・プリマヴェーラ。
だが、彼女の心にあったのは悲しみではなく―― 十年前の王族暗殺事件を調査したいという情熱だった。
伯爵令嬢であるリラは、鉄の掟を守る『鬼の騎士団長』の娘。
彼女には恋よりも何よりも優先すべき使命があった。それは、十年前に幼い王子が暗殺された事件の真相を暴き、父を、そして王国を陰謀から救うこと。
婚約破棄直後、彼女の前に現れたのは、天使の歌声を持つ美貌のカストラート(去勢歌手)、アルカンジェロだった。
彼が十年前の事件について密かに調べていることを、リラは知ってしまう。
真相を探るため、リラは彼を自分の音楽教師として迎え入れ、距離を縮めていく。
事件解決の協力者として彼と接するうち、リラは謎めいたアルカンジェロに危機を救われることになる。
しかし、リラは知らない。
アルカンジェロの正体が、十年前に暗殺されたはずの第三王子であることを。
そして彼にとってリラこそが、初恋の女性であることを。
彼は十年間、密かにリラを想い続けていたのだ。
王位を狙う者たちから身を隠すため、声楽の技術を駆使して、教会歌手として大聖堂で生き延びてきたアルカンジェロだったが、王家を巡る不穏な陰謀が静かに動き始めていた。
捜査に猪突猛進な堅物令嬢と、彼女を影から支え執着を見せる、カストラート歌手のふりをした王子。
宮廷の闇を切り裂く二人の恋と事件の行方は――?
※本作は、過去に投稿していた『真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています』の設定・キャラクター・構成を大幅に改稿し、新作として再構成したものです。
物語の結末やキャラクターの掘り下げを強化しておりますので、初めての方も、以前お読みいただいた方もお楽しみいただけます。
なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた
たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。
女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。
そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。
夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。
だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……?
※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません……
※他サイト様にも掲載始めました!
プロローグでケリをつけた乙女ゲームに、悪役令嬢は必要ない(と思いたい)
犬野きらり
恋愛
私、ミルフィーナ・ダルンは侯爵令嬢で二年前にこの世界が乙女ゲームと気づき本当にヒロインがいるか確認して、私は覚悟を決めた。
『ヒロインをゲーム本編に出さない。プロローグでケリをつける』
ヒロインは、お父様の再婚相手の連れ子な義妹、特に何もされていないが、今後が大変そうだからひとまず、ごめんなさい。プロローグは肩慣らし程度の攻略対象者の義兄。わかっていれば対応はできます。
まず乙女ゲームって一人の女の子が何人も男性を攻略出来ること自体、あり得ないのよ。ヒロインは天然だから気づかない、嘘、嘘。わかってて敢えてやってるからね、男落とし、それで成り上がってますから。
みんなに現実見せて、納得してもらう。揚げ足、ご都合に変換発言なんて上等!ヒロインと一緒の生活は、少しの発言でも悪役令嬢発言多々ありらしく、私も危ない。ごめんね、ヒロインさん、そんな理由で強制退去です。
でもこのゲーム退屈で途中でやめたから、その続き知りません。
白い結婚を言い渡されたお飾り妻ですが、ダンジョン攻略に励んでいます
時岡継美
ファンタジー
初夜に旦那様から「白い結婚」を言い渡され、お飾り妻としての生活が始まったヴィクトリアのライフワークはなんとダンジョンの攻略だった。
侯爵夫人として最低限の仕事をする傍ら、旦那様にも使用人たちにも内緒でダンジョンのラスボス戦に向けて準備を進めている。
しかし実は旦那様にも何やら秘密があるようで……?
他サイトでは「お飾り妻の趣味はダンジョン攻略です」のタイトルで公開している作品を加筆修正しております。
誤字脱字報告ありがとうございます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる