せっかく傾国級の美人に生まれたのですから、ホントにやらなきゃ損ですよ?

志波 連

文字の大きさ
24 / 43

24 アレンさんの造詣

しおりを挟む
「私から少々よろしいでしょうか」

アレンさんが私の後ろに立ったまま話し始めました。

「うん、いいよ」

「はい、私共が王配殿下にお願いしている関係修復には二つメリットがございます。そして上手くいけばオマケが三つ付いて参ります」

「なかなか興味深いね」

「まず、王配殿下にお願いしている関係修復行動とは、同衾のことではありません」

「そうなの?」

「はい、陛下と殿下がご公務でご一緒される機会を増やすということです。できるだけ国民や王宮官吏に『私たちは本当は仲がいいんだぞアピール』をしていただきたい」

「なぜ?」

「王家の安寧を印象付けることで、国の存続を確信させるのです。今の状況では女王陛下がご懐妊されても、その出自に疑心を抱く者が出ます。その疑心はやがて・・・」

「なるほどね。火種となって王家を揺るがしかねないということだ。確かに一理あるね」

「そして二つ目、お二人の仲が認識されると、ご愛妾であるリアトリス様からの愛情が、より深いものになるのです」

「ん?逆じゃない?リアはクールだから私とエルザが仲よくしていても関係ないって態度だと思うけど?」

「いえいえ、殿下。私こう見えて、なかなかその道には造詣が深いのでございます」

「ほう?御高説を賜りたいものだ」

「では、僭越ながら・・・女性心理とはなかなか不可解なものでして、追うと逃げたくなり、引かれると切なくなるのです。引いては攻める、引いては攻めるを繰り返しつつ、最後には追わせる。これが極意かと存じます」

「へぇぇ・・・追うと逃げるか・・・なるほどね。心当たりがあるな」

「たとえば殿下が陛下の寝室に向おうとされたとき、あのクールなリアトリス様が悋気を出されて『殿下・・・行かないで・・・私を抱いて下さいまし』と言われたとしたらどうでしょう?」

アレンさん・・・説得力抜群ですが、その形態模写・・・ちょっと引きます。

「最高じゃないか!考えただけでも興奮してきた!」

「殿下は、縋るリアトリス様を抱き寄せて『我慢しておくれ、君の為でもあるんだよ』と耳元で囁く。涙を溜めて頷くリアトリス様・・・『愛してますわ』『私もだ』って感じでしょうか」

だから!その形態模写ヤメロ!

「凄いな・・・君のことは師匠と呼ぼう。うん・・・凄いよ、あのクールビューティーを泣かせて縋らせるなんて男冥利に尽きるな」

王配が夢見心地のお顔で頬を赤らめておられます。
この状況から察するに、いつもは泣いて縋る側なのでしょうね・・・しかもかなりちょろいヤツ扱い?

「それで?三つのオマケは何かな?」

「はい、一つ目は政治の天才であらせられる王配殿下の血をこの国の王家に残せます。必ずや優秀な為政者となられることでしょう。まあ、これは女王陛下とあんなことやこんなことをなさる必要がありますが・・・。そしてオマケの二つ目は、女王陛下がご懐妊なさった場合のみ発生するのですが、ご愛妾様を側室に格上げすることが叶います」

「エルザを満足させていれば、リアに対して寛容になるということか?」

「はい、妊婦は房事をなるべく控えなくてはなりません。ですからどこの馬の骨ともわからない女に手を出されるより、すでに見知った女性を相手にして貰った方が良いと考えるはずです。プライドの高い女性の心理とはそういうものです!」

おお!アレンさん言い切りましたね!

「なるほど・・・さすが師匠だ。納得できる。確かに愛妾より側室の方がエルザの配下に置きやすいからな・・・うんうん。超納得だ。で、三つ目は?」

「エルランド家の安泰でございます」

「ははは!君たちの本命をオマケにしたのか。面白いな。でも良く理解できた。いずれにしてもこのまま放置するわけにはいかないからね。うん、まずは公務を共にする機会を増やそう。私もなるべくエルザのご機嫌を取ろう。それでいいかい?」

「はい、そして二人の女性を手玉に取る・・・王配殿下の腕の見せ所でございますね」

「任せてくれ!って言いたいけれど、時々呼ぶから相談に乗ってね?」

「仰せのままに」

なんだか説得に成功したようです。
めでたしめでたし。

「ところでもしも私が話に乗らなかったらどうするつもりだったの?」

ルイス様以外の全員で決めた裏ミッションですが、私は正直にお話しすることにしました。

「夫の美貌で王家を転覆させるつもりでした」

「えっ!それはどういうことかな?」

「不敬罪に問われません?」

「絶対に問わないから教えてよ」

「はい、私の夫は美貌と共に性剣を隠し持っているのです。それらを武器に、女王陛下を虜にして、言うがまま為すがままに仕込みます。妻の私が公認しますので、夫は思う存分手練手管の限りをつくし・・・陛下はこちらの言いなりですわ・・・ふふふふふふ」

「性剣・・・なんだかルイスならできそうで・・・すごくリアルだな・・・」

「そうでございましょう?せっかく傾国級の美貌を持って生まれたのですから、それを使わなきゃ損ってものですわ」

「君・・・怖いね・・・敵に回したくない」

そういうと王配殿下は立ち上がりました。
終了予定時間が来たようです。
私たちは深々とお辞儀をして退出しました。
部屋の扉が閉まった瞬間、二人でガッツポーズを決めながら、雄叫びを上げたことは大目に見てくださいね。
衛兵が反射的に腰の剣の柄に手を掛けましたが無視しました。

馬車のところでジュリアとランドル様が偶然を装いつつ待っていました。
私たちは同時にサムズアップして成功を伝えます。
二人は踊るようにぴょんぴょん飛び跳ねながら戻っていきました。
さあ、後は幹部たちにたくさん公務を作ってもらうだけですよ!
頑張れジュリア!
負けるなランドル!
私は心の中で二人にエールを送りました。

私たちが馬車に乗り込むと、来るときにすれ違った馬車が戻ってきました。
ふと見ると王配殿下がお迎えに来られているではありませんか!
有言実行、思い立ったら即実践!
さすがです。

疲れ切った顔で馬車を降りたルイス様が、私に気づいて小さな投げキスをされました。
ルイス様・・・それは反則です。
しおりを挟む
感想 78

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

私が生きていたことは秘密にしてください

月山 歩
恋愛
メイベルは婚約者と妹によって、崖に突き落とされ、公爵家の領地に倒れていた。 見つけてくれた彼は一見優しそうだが、行方不明のまま隠れて生きて行こうとする私に驚くような提案をする。 「少年の世話係になってくれ。けれど人に話したら消す。」

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi(がっち)
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

なりゆきで妻になった割に大事にされている……と思ったら溺愛されてた

たぬきち25番
恋愛
男爵家の三女イリスに転生した七海は、貴族の夜会で相手を見つけることができずに女官になった。 女官として認められ、夜会を仕切る部署に配属された。 そして今回、既婚者しか入れない夜会の責任者を任せられた。 夜会当日、伯爵家のリカルドがどうしても公爵に会う必要があるので夜会会場に入れてほしいと懇願された。 だが、会場に入るためには結婚をしている必要があり……? ※本当に申し訳ないです、感想の返信できないかもしれません…… ※他サイト様にも掲載始めました!

【本編完結】伯爵令嬢に転生して命拾いしたけどお嬢様に興味ありません!

ななのん
恋愛
早川梅乃、享年25才。お祭りの日に通り魔に刺されて死亡…したはずだった。死後の世界と思いしや目が覚めたらシルキア伯爵の一人娘、クリスティナに転生!きらきら~もふわふわ~もまったく興味がなく本ばかり読んでいるクリスティナだが幼い頃のお茶会での暴走で王子に気に入られ婚約者候補にされてしまう。つまらない生活ということ以外は伯爵令嬢として不自由ない毎日を送っていたが、シルキア家に養女が来た時からクリスティナの知らぬところで運命が動き出す。気がついた時には退学処分、伯爵家追放、婚約者候補からの除外…―― それでもクリスティナはやっと人生が楽しくなってきた!と前を向いて生きていく。 ※本編完結してます。たまに番外編などを更新してます。

婚約破棄された堅物令嬢ですが、鬼の騎士団長の娘として宮廷の陰謀を暴くのに忙しいので、美貌のカストラート(実は王子)に溺愛される暇はありません

綾森れん
恋愛
「お前のような真面目くさった女はいらない。婚約は破棄させてもらう!」 婚約者だった公爵令息に冷酷に言い放たれたリラ・プリマヴェーラ。 だが、彼女の心にあったのは悲しみではなく―― 十年前の王族暗殺事件を調査したいという情熱だった。 伯爵令嬢であるリラは、鉄の掟を守る『鬼の騎士団長』の娘。 彼女には恋よりも何よりも優先すべき使命があった。それは、十年前に幼い王子が暗殺された事件の真相を暴き、父を、そして王国を陰謀から救うこと。 婚約破棄直後、彼女の前に現れたのは、天使の歌声を持つ美貌のカストラート(去勢歌手)、アルカンジェロだった。 彼が十年前の事件について密かに調べていることを、リラは知ってしまう。 真相を探るため、リラは彼を自分の音楽教師として迎え入れ、距離を縮めていく。 事件解決の協力者として彼と接するうち、リラは謎めいたアルカンジェロに危機を救われることになる。 しかし、リラは知らない。 アルカンジェロの正体が、十年前に暗殺されたはずの第三王子であることを。 そして彼にとってリラこそが、初恋の女性であることを。 彼は十年間、密かにリラを想い続けていたのだ。 王位を狙う者たちから身を隠すため、声楽の技術を駆使して、教会歌手として大聖堂で生き延びてきたアルカンジェロだったが、王家を巡る不穏な陰謀が静かに動き始めていた。 捜査に猪突猛進な堅物令嬢と、彼女を影から支え執着を見せる、カストラート歌手のふりをした王子。 宮廷の闇を切り裂く二人の恋と事件の行方は――? ※本作は、過去に投稿していた『真面目くさった女はいらないと婚約破棄された伯爵令嬢ですが、王太子様に求婚されました。実はかわいい彼の溺愛っぷりに困っています』の設定・キャラクター・構成を大幅に改稿し、新作として再構成したものです。 物語の結末やキャラクターの掘り下げを強化しておりますので、初めての方も、以前お読みいただいた方もお楽しみいただけます。

アルバートの屈辱

プラネットプラント
恋愛
妻の姉に恋をして妻を蔑ろにするアルバートとそんな夫を愛するのを諦めてしまった妻の話。 『詰んでる不憫系悪役令嬢はチャラ男騎士として生活しています』の10年ほど前の話ですが、ほぼ無関係なので単体で読めます。

我儘令嬢なんて無理だったので小心者令嬢になったらみんなに甘やかされました。

たぬきち25番
恋愛
「ここはどこですか?私はだれですか?」目を覚ましたら全く知らない場所にいました。 しかも以前の私は、かなり我儘令嬢だったそうです。 そんなマイナスからのスタートですが、文句はいえません。 ずっと冷たかった周りの目が、なんだか最近優しい気がします。 というか、甘やかされてません? これって、どういうことでしょう? ※後日談は激甘です。  激甘が苦手な方は後日談以外をお楽しみ下さい。 ※小説家になろう様にも公開させて頂いております。  ただあちらは、マルチエンディングではございませんので、その関係でこちらとは、内容が大幅に異なります。ご了承下さい。  タイトルも違います。タイトル:異世界、訳アリ令嬢の恋の行方は?!~あの時、もしあなたを選ばなければ~

処理中です...