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最初に口を開いたのはレイラだった。
「恐れながら申し上げます。私はあれから一度もお見舞いすることもできずにおります。最後のお願いでございます。どうかラランジェ王女殿下に直接お詫びをさせてくださいませ」
ワンダイリア王がシラーズ王へ顔を向けた。
「お任せしよう」
「ありがとうございます。ではシラーズ王というより、ラランジェの兄としてお答えしましょう。あなたが望むのであれば、ラランジェに会うことはやぶさかではない。その時あなたは姉だと伝えるのか?」
レイラがゆっくりと首を振る。
「申し上げるつもりはございません。ラランジェ王女と私は会うたびに口喧嘩をしておりました。では憎かったのかと問われると、それは違うと答えるでしょう。いつからか、この口喧嘩が楽しかったのでございます。互いに互いの姿を見かけると、遠くからでも走り寄っていたのも、きっと同じ気持ちだったのだと思います」
「口喧嘩? どんな内容で争っていたの?」
「最初はアラバス殿下の取り合いだと思っていたのですが、どうやら勘違いのようで、まったく的外れな言い争いを繰り返していたのです。そのうちに、どちらのドレスが高価かとか、どちらの宝石が大きいかなど、本当にくだらない内容ばかりでしたわ」
シラーズ王が怪訝な顔で聞いた。
「そのような内容が刃傷沙汰にまでなるなど考えにくいのだが」
「あの日は、ラランジェ王女についていた侍女が、私を挑発してきたのです。あの者はラランジェ王女が、毎夜アラバス殿下の寵愛を受けていると申したのです。そして懐妊しているかもしれないと……バカな私はそんな安い挑発に乗ってしまったのです」
シラーズ王がアラバスを見た。
「私もカーチスも一度たりともラランジェ王女をお誘いしたことはございません。どうか誤解なきよう」
「ははは、それは分かっておりますよ。ねえレイラ嬢、あの子はね、とても孤独な子なんだ。兄姉といっても私やすぐ下の妹とは馴染めなかったんだよね。だから最後にあなたから姉妹だということを伝えてはどうだろうか。喜ぶのではないかな」
レイラは暫し考えた
「せっかくのお言葉ではございますが、私のようなものが姉だとはあまりにもラランジェ王女が不憫でございます。罪人は罪人らしく、罪を受け入れ静かに消える方がよろしいかと」
「そうかい? 君も一人っ子なのだろう?」
「はい、幼いころから父と使用人の中で育ちました」
「だったら!」
そこまで言ったとき、静かにドアが開きラランジェが入ってきた。
顔の斜め上半分を包帯で覆われ、ワンピースの首元からは背中に巻かれた包帯が覗いている。
付き添っているのは王宮医っだ。
「お兄様! おいでになっていると聞き、いてもたってもいられずに参りましたの」
「そうか。すぐに会いにいけなくて悪かったね。いろいろと忙しくしていたんだよ」
ラランジェが前に進み出て、三人の王の前でゆっくりとお辞儀をした。
シラーズ王が改めてラランジェを紹介した。
「バッディ国王陛下、これが先ほどから話に出ております我が妹、ラランジェにございます」
頷いたバッディ王がラランジェの顔を見た。
「初めまして、ラランジェ王女殿下。なるほど、似ていないですね」
「そうでしょう?」
「しかし、あなたとは少し似ているような気もします。目が一重で切れ長なところなど、そっくりだ」
照れたシラーズ王が、頭を搔きながらラランジェに言った。
「私たちは似ているそうだよ」
「嬉しゅうございます」
ラランジェはそう答えるとレイラの方に向き直った。
「レイラ様、まだカーチス殿下を? 私は諦めませんことよ?」
ラランジェがレイラに言った。
「いいえ、私は最初からアラバス殿下一筋ですわ」
「え? カーチス殿下を追いかけて……え?」
カーチスが慌てて間に入った。
「ごめん! どうやら僕の勘違いだったみたいなんだ。二人とも悪かったね。ホントにごめんなさい」
兄たちの計略の犠牲となった上に、勘違い男のレッテルまで貼られた哀れなカーチス。
「そうですの?」
「はい」
「でもアラバス殿下は私と……」
今度はカード元宰相が声を出した。
「それは私の勘違いでございました! 姫様、どうかお許しください」
「え? え? どういうこと? ではなぜ私はワンダリアに参りましたの?」
「それは……」
アレンが慌てて叫ぶように言った。
「ラランジェ王女はお勉強に来られたのでしょう? だって留学ですからね!」
「お勉強? 私が? そうですの?」
シラーズ王が立ち上がり、ラランジェの横に並んだ。
「ララ、お前は勉強をするためにワンダリアに来たのだ。それで良いじゃないか。それより私は君に確認しなくちゃいけないことがあるのだが、この後で時間をくれないか?」
「お兄様?」
シラーズ王は、ラランジェが企んだマリアへの嫌がらせを追求しようとしていた。
「恐れながら申し上げます。私はあれから一度もお見舞いすることもできずにおります。最後のお願いでございます。どうかラランジェ王女殿下に直接お詫びをさせてくださいませ」
ワンダイリア王がシラーズ王へ顔を向けた。
「お任せしよう」
「ありがとうございます。ではシラーズ王というより、ラランジェの兄としてお答えしましょう。あなたが望むのであれば、ラランジェに会うことはやぶさかではない。その時あなたは姉だと伝えるのか?」
レイラがゆっくりと首を振る。
「申し上げるつもりはございません。ラランジェ王女と私は会うたびに口喧嘩をしておりました。では憎かったのかと問われると、それは違うと答えるでしょう。いつからか、この口喧嘩が楽しかったのでございます。互いに互いの姿を見かけると、遠くからでも走り寄っていたのも、きっと同じ気持ちだったのだと思います」
「口喧嘩? どんな内容で争っていたの?」
「最初はアラバス殿下の取り合いだと思っていたのですが、どうやら勘違いのようで、まったく的外れな言い争いを繰り返していたのです。そのうちに、どちらのドレスが高価かとか、どちらの宝石が大きいかなど、本当にくだらない内容ばかりでしたわ」
シラーズ王が怪訝な顔で聞いた。
「そのような内容が刃傷沙汰にまでなるなど考えにくいのだが」
「あの日は、ラランジェ王女についていた侍女が、私を挑発してきたのです。あの者はラランジェ王女が、毎夜アラバス殿下の寵愛を受けていると申したのです。そして懐妊しているかもしれないと……バカな私はそんな安い挑発に乗ってしまったのです」
シラーズ王がアラバスを見た。
「私もカーチスも一度たりともラランジェ王女をお誘いしたことはございません。どうか誤解なきよう」
「ははは、それは分かっておりますよ。ねえレイラ嬢、あの子はね、とても孤独な子なんだ。兄姉といっても私やすぐ下の妹とは馴染めなかったんだよね。だから最後にあなたから姉妹だということを伝えてはどうだろうか。喜ぶのではないかな」
レイラは暫し考えた
「せっかくのお言葉ではございますが、私のようなものが姉だとはあまりにもラランジェ王女が不憫でございます。罪人は罪人らしく、罪を受け入れ静かに消える方がよろしいかと」
「そうかい? 君も一人っ子なのだろう?」
「はい、幼いころから父と使用人の中で育ちました」
「だったら!」
そこまで言ったとき、静かにドアが開きラランジェが入ってきた。
顔の斜め上半分を包帯で覆われ、ワンピースの首元からは背中に巻かれた包帯が覗いている。
付き添っているのは王宮医っだ。
「お兄様! おいでになっていると聞き、いてもたってもいられずに参りましたの」
「そうか。すぐに会いにいけなくて悪かったね。いろいろと忙しくしていたんだよ」
ラランジェが前に進み出て、三人の王の前でゆっくりとお辞儀をした。
シラーズ王が改めてラランジェを紹介した。
「バッディ国王陛下、これが先ほどから話に出ております我が妹、ラランジェにございます」
頷いたバッディ王がラランジェの顔を見た。
「初めまして、ラランジェ王女殿下。なるほど、似ていないですね」
「そうでしょう?」
「しかし、あなたとは少し似ているような気もします。目が一重で切れ長なところなど、そっくりだ」
照れたシラーズ王が、頭を搔きながらラランジェに言った。
「私たちは似ているそうだよ」
「嬉しゅうございます」
ラランジェはそう答えるとレイラの方に向き直った。
「レイラ様、まだカーチス殿下を? 私は諦めませんことよ?」
ラランジェがレイラに言った。
「いいえ、私は最初からアラバス殿下一筋ですわ」
「え? カーチス殿下を追いかけて……え?」
カーチスが慌てて間に入った。
「ごめん! どうやら僕の勘違いだったみたいなんだ。二人とも悪かったね。ホントにごめんなさい」
兄たちの計略の犠牲となった上に、勘違い男のレッテルまで貼られた哀れなカーチス。
「そうですの?」
「はい」
「でもアラバス殿下は私と……」
今度はカード元宰相が声を出した。
「それは私の勘違いでございました! 姫様、どうかお許しください」
「え? え? どういうこと? ではなぜ私はワンダリアに参りましたの?」
「それは……」
アレンが慌てて叫ぶように言った。
「ラランジェ王女はお勉強に来られたのでしょう? だって留学ですからね!」
「お勉強? 私が? そうですの?」
シラーズ王が立ち上がり、ラランジェの横に並んだ。
「ララ、お前は勉強をするためにワンダリアに来たのだ。それで良いじゃないか。それより私は君に確認しなくちゃいけないことがあるのだが、この後で時間をくれないか?」
「お兄様?」
シラーズ王は、ラランジェが企んだマリアへの嫌がらせを追求しようとしていた。
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