婚約白紙?上等です!ローゼリアはみんなが思うほど弱くない!

志波 連

文字の大きさ
45 / 68

43 子供たちの活躍

しおりを挟む
 到着初日の居間では我がイーリス国の国王陛下の姉君であり、ノース国正妃であるテレサ皇后と、ノース国に潜入したクーデター作戦参謀のジョアン、全ての作戦の中心となるサミュエル殿下とアレクとドレックと国王が、通信のブースターであるミセスサリバンと私を経由して繋がりました。
 それぞれの場所はYという文字の形で、全ての線が集まる部分がミセスサリバンの居る温泉地です。

〈リラが元気でいてくれてうれしいわ〉

 テレサ皇后が話し始めました。

〈王女殿下、ご無沙汰しております。私はお陰様で元気にしております。老体ではございますがお役に立てて嬉しゅうございます〉

 ミセスサリバンが返事をしました。
 サミュエル殿下が少し苛ついたように言葉を被せました。

〈叔母上そしてミセスサリバン、懐かしい話は解決後ゆっくりということで、早速始めたいと思います。余裕のないことで申し訳ございませんが、何卒ご理解ください〉

〈ええ、そうね。ではこちらで把握していることから話すわね。現在国王陛下は病床にあり執務を行える状況ではないわ。恐らく微弱な毒を盛られているのだと思う。私にも届いているけど口にはしていないから安心してね。皇太子はつい最近まで王弟にべったりだったのだけれど、なぜか仲違いをして殺してしまったの。それから暴走が始まったわ〉

〈なるほど。では暴走してからは単独ですか?〉

〈そうね、恐らく胆略的に目先のことだけを追っているから単独行動でしょう。このままでは国が崩壊するわ〉

〈叔母上だから言いますけど、この際崩壊してもらおうと思っています〉

〈あら!いいわね。民主化するの?共和国かしら?〉

〈未定です。どちらにしてもクーデターは起こします。皇太子妃マリアとその恋人役のエヴァンの居場所はどこですか?〉

〈マリアは王宮で優雅に暮らしているらしいわ。それとエヴァンなのだけれど不明なの〉

 私は思わず立ち上がってしまいました。
 叫ばなかっただけでも褒めてほしい位です。

〈不明とは?〉

〈私の影が探っているのだけれど、王宮にはいないみたい。全ての部屋と牢獄や離宮まで探したけど見つからなかったわ。そこにその者の婚約者がいると聞いたけれど?〉

〈はい、ローゼリア・ワンドと申します。ノース国ではマリー・ヤングと名乗っております〉

〈あなたもテレパス能力を持っているのね。その能力は何かの切っ掛けが無いと自分でも分からないから驚いたでしょう?ああ、また脱線してしまったわ。ローゼリア、あなたの婚約者は絶対に生きています。それは言い切れるわ。でもそれは国王が生きている間だと考えた方がいい。恐らく皇太子はマリアとその者に罪を着せて公開処刑するつもりよ〉

〈公開処刑!〉

 私は眩暈を起こして座ってしまいました。

〈ローゼリア!しっかりしろ!〉

 ジョアンが私の胸に顔を擦り付けながら言いました。

〈大丈夫だ、ローゼリア。そうさせないために来たんだから。僕が絶対に兄上を救うから〉

 私はジョアンを抱きしめて泣きました。

〈ローゼリア、泣くとの脳波は乱れて通信に影響が出る。頑張ってくれ。叔母上、エヴァンを隠すとしたらどこが考えられますか?〉

〈実はエヴァンのことはまだ公表されていないのよ。一番効果的なシーンで登場させるつもりなのだと思うわ。でもマリアは平気で王宮にいるから、きっと自分は殺されないと信じているのね〉

 ジョアンが静かに言いました。

〈アランを押さえよう。アランが来ないとなるとマリアが予定外の行動を起こすはずだ〉

〈そうだな、アランの身柄はこちらで確保する。兄上たちはまだノースに滞在しているから、ワンド調査団の慰問という形でそこに向ってもらう。アランが居なくなったという話はリーカス兄上からそれとなくマリアの耳に入るように動いてくれ。それと諜報員からの報告によると、そちらのクーデターグループの拠点は王立研究所だ。そこには王立図書館もあるからジョアンとエスメラルダを連れて行っても不思議ではないだろう?〉

〈好都合だな。副所長達が市街地の地質調査をしているときに脆弱な場所をみつけたとでもすればいい〉

〈うん、副所長の調査にはできるだけエスメラルダが同行してくれ。できれば隈なく王宮周辺を歩き回ってほしい。エスメラルダの視覚はミセスサリバンを通してアレクに繋がる。アレクがそっくりそのままを描き取ってくれる〉

〈わかった。じゃあ私は副所長にいろいろ教わっているってスタイルね〉

〈よろしく頼むよ。王宮への有効な侵攻経路を探りたい。そしてジョアンはローゼリアと図王立図書館に通ってくれ。ローゼリアはできるだけノースの国力が分かるような本を広げてほしい。こちらでドレックが視覚を共有して写すから。まるでジョアンに教えているような感じで座っていれば不自然ではないだろう。その間ジョアンは状況を判断して作戦を組み立ててほしい。数日後にはあちらのリーダーと接触でいるように動く〉

〈待ってください!エヴァン様は?エヴァン様の居場所はどうやって探すのですか!〉

 私は脳内で叫びました。

〈それは私に任せてちょうだい。必ず見つけ出すわ〉

 皇后陛下が力強く励ましてくれました。

〈わ…かり…ました〉

〈そろそろミセスサリバンが限界だ。また明日にでも〉

 サミュエル殿下の声が途切れました。
 中継地点として頑張って下さっているミセスサリバンには、かなりの負担をかけているのでしょう。
 テスト的に皇后陛下に呼びかけてみると、普通にお返事を下さいましたので、やはり限界距離があるという事です。

 副所長の提案で、その日は全員で海鮮レストランに行きました。
 海鮮料理といえば、ハイド領の港でエヴァン様とララと一緒に食べたオサシミを思い出します。
 あの時の優しい眼差しを思い出すと、また泣きそうです。

 でも明日からはしっかり頑張らねばいけません。
 私は気合を入れてメニューを開きました。

「あれ?オサシミがある?ワサビも?」

 あの料理はハイド領のあの店でしか食べられないと思っていたので、不思議に思いウェイターに聞きました。

「料理長にご挨拶ができますか?」

 ウェイターは不思議そうな顔をしていましたが、料理長に聞いてくると言って厨房に向かいました。
しおりを挟む
感想 14

あなたにおすすめの小説

言いたいことはそれだけですか。では始めましょう

井藤 美樹
恋愛
常々、社交を苦手としていましたが、今回ばかりは仕方なく出席しておりましたの。婚約者と一緒にね。 その席で、突然始まった婚約破棄という名の茶番劇。 頭がお花畑の方々の発言が続きます。 すると、なぜが、私の名前が…… もちろん、火の粉はその場で消しましたよ。 ついでに、独立宣言もしちゃいました。 主人公、めちゃくちゃ口悪いです。 成り立てホヤホヤのミネリア王女殿下の溺愛&奮闘記。ちょっとだけ、冒険譚もあります。

今日も姉の物を奪ってやりますわ!(完)

えだ
恋愛
 姉のドレスや髪飾り。お気に入りの侍女に、ひいては婚約者まで。どんな物でも奪って差し上げますわ。何故って?ーーー姉は昔から要領が悪くて鈍臭くて、何でも信じてしまうお馬鹿さんなんですの。このドレスだってセンスのカケラもないしダサくてガキくさいったらありゃしません!なんですかこのショッキングピンクは!!私が去年買っていたこのドレスの方がまだマシなので差し上げますわ!お下がりですけどね!妹からお下がりをもらうなんてお恥ずかしくないのかしら?!  髪飾りだってそうですのよ。姉の透明感のある甘栗色の髪に、ビカビカのルビーなんて似合いませんわ!センスが悪すぎですのよ!!  そのうえ少し前から姉に仕えている侍女はか弱いふりをして姉から同情されて何かと物を贈られていますの。そういうのに気付けないんですのよ、私の姉は。それから婚約者。あれはだめね。一癖どころか二癖も三癖もありますわ。腹が黒いったらありゃしません。姉はそういうのを見抜く能力が1ミリもございませんから、泣かされるに決まってますわ。女癖も悪いという噂もお聞きしますし、疎くて汚れのない姉には不向きなんですの。別にあの男じゃなくもっと条件の良い殿方は沢山いらっしゃいますし!  え?私??姉が好きなのかって??ーー何を言ってるんですの?私は、馬鹿で騙されやすくて要領の悪い姉が知らず知らずのうちに泣きを見ることがアホくさくて見てられないだけですのよ!!  妹に奪われた系が多かったのでツンデレ妹奮闘記が書きたくなりました(^^) カクヨムでも掲載はじめました☆ 11/30本編完結しました。番外編を書いていくつもりなので、もしよろしければ読んでください(*´꒳`*)

<完結> 知らないことはお伝え出来ません

五十嵐
恋愛
主人公エミーリアの婚約破棄にまつわるあれこれ。

謹んで、婚約破棄をお受けいたします。

パリパリかぷちーの
恋愛
きつい目つきと素直でない性格から『悪役令嬢』と噂される公爵令嬢マーブル。彼女は、王太子ジュリアンの婚約者であったが、王子の新たな恋人である男爵令嬢クララの策略により、夜会の場で大勢の貴族たちの前で婚約を破棄されてしまう。

婚約破棄された私は、号泣しながらケーキを食べた~限界に達したので、これからは自分の幸せのために生きることにしました~

キョウキョウ
恋愛
 幼い頃から辛くて苦しい妃教育に耐えてきたオリヴィア。厳しい授業と課題に、何度も心が折れそうになった。特に辛かったのは、王妃にふさわしい体型維持のために食事制限を命じられたこと。  とても頑張った。お腹いっぱいに食べたいのを我慢して、必死で痩せて、体型を整えて。でも、その努力は無駄になった。  婚約相手のマルク王子から、無慈悲に告げられた別れの言葉。唐突に、婚約を破棄すると言われたオリヴィア。  アイリーンという令嬢をイジメたという、いわれのない罪で責められて限界に達した。もう無理。これ以上は耐えられない。  そしてオリヴィアは、会場のテーブルに置いてあったデザートのケーキを手づかみで食べた。食べながら泣いた。空腹の辛さから解放された気持ちよさと、ケーキの美味しさに涙が出たのだった。 ※本作品は、少し前に連載していた試作の完成版です。大まかな展開や設定は、ほぼ変わりません。加筆修正して、完成版として連載します。 ※カクヨムにも掲載中の作品です。

王宮勤めにも色々ありまして

あとさん♪
恋愛
スカーレット・フォン・ファルケは王太子の婚約者の専属護衛の近衛騎士だ。 そんな彼女の元婚約者が、園遊会で見知らぬ女性に絡んでる·····? おいおい、と思っていたら彼女の護衛対象である公爵令嬢が自らあの馬鹿野郎に近づいて····· 危険です!私の後ろに! ·····あ、あれぇ? ※シャティエル王国シリーズ2作目! ※拙作『相互理解は難しい(略)』の2人が出ます。 ※小説家になろうにも投稿しております。

今度は、私の番です。

宵森みなと
恋愛
『この人生、ようやく私の番。―恋も自由も、取り返します―』 結婚、出産、子育て―― 家族のために我慢し続けた40年の人生は、 ある日、検査結果も聞けないまま、静かに終わった。 だけど、そのとき心に残っていたのは、 「自分だけの自由な時間」 たったそれだけの、小さな夢だった 目を覚ましたら、私は異世界―― 伯爵家の次女、13歳の少女・セレスティアに生まれ変わっていた。 「私は誰にも従いたくないの。誰かの期待通りに生きるなんてまっぴら。自分で、自分の未来を選びたい。だからこそ、特別科での学びを通して、力をつける。選ばれるためじゃない、自分で選ぶために」 自由に生き、素敵な恋だってしてみたい。 そう決めた私は、 だって、もう我慢する理由なんて、どこにもないのだから――。 これは、恋も自由も諦めなかった ある“元・母であり妻だった”女性の、転生リスタート物語。

王命により、婚約破棄されました。

緋田鞠
恋愛
魔王誕生に対抗するため、異界から聖女が召喚された。アストリッドは結婚を翌月に控えていたが、婚約者のオリヴェルが、聖女の指名により独身男性のみが所属する魔王討伐隊の一員に選ばれてしまった。その結果、王命によって二人の婚約が破棄される。運命として受け入れ、世界の安寧を祈るため、修道院に身を寄せて二年。久しぶりに再会したオリヴェルは、以前と変わらず、アストリッドに微笑みかけた。「私は、長年の約束を違えるつもりはないよ」。

処理中です...